機動戦士ガンダムSEED REVERSE 作:meitoken
キラがカガリ、彼はレナとできるだけ絡めます。
戦闘に介入したレジスタンスとコンタクトを取るべく、マリューはムウとレイラの三人で地球軍を代表する形で挨拶に伺った。
「助けてくれてありがとう、と言うべきかしら?地球軍第八艦隊所属、マリュー・ラミアスです。」
「あれ?第八艦隊ってのは全滅したんじゃなかったっけ?」
少年の嘲りをマリューがにらみつけるが、銀髪の少年がにらみ返す。
「事実を言っただけだろう?上官達を見捨てて、逃げてきたか?」
「……交渉をする気があるのかしら?」
「よせ…」
マリューは内心、怒りを抑えきれずにいたがリーダーと思しき男が二人を窘めた。
「別に助けたつもりはねえ。俺達は『明けの砂漠』だ。俺はサイーブ・アシュマン…礼なんざいらねえ。こっちも、こっちの敵を撃っただけでね。」
「『砂漠の虎』を相手にずっとこんなところで?」
ムウの問いに対し、リーダーの男は問い返す。
「あんた達の顔は見たことがあるな。」
「ムウ・ラ・フラガだ。この辺に知り合いはいないよ。」
「レイラ・ウォン…右に同じく、よ。」
「『エンデュミオンの鷹』と『新星の隼』に会えるとはな。」
少し意外だ……こんな砂漠のど真ん中のレジスタンスがいくら地球軍のエースとはいえ、ムウとレイラのことまで知っているとは。
「随分と情報通のようね、私達のことも。」
「地球軍の新型特装艦アークエンジェルだろう?クルーゼ隊に追われて、地球に逃げてきた…そして、あれが。」
「X105、ストライクと呼ばれる地球軍のMSのプロトタイプだ。」
金髪の少女がMSの名前を口にし、先ほどの銀髪の少年が並ぶ二機をキラよりやや濃い紫色の瞳でにらみつける。
「あちらの二機がX104フレイム、X106ウインド……ヘリオポリスでザフトに奪われた五機と同じ、地球軍のMSだ。」
今度は本当に驚かされた。まさか、大西洋連邦の最重要機密のMSまで知っているとは。レジスタンスではあろうが、マリューの中にあるレジスタンスのイメージとは大きくかけ離れている。少なくとも、情報網だけは正規軍相手に張り合えるだけある。
「さて、お互い何者か分かったが、こっちはあんたらがどうするか知りたいんだが?」
サイーブは無害そうな口調で言うが、こちらから何か引き出そうとしているのは明白だ。無論それはこちらも同じだ。
「力になっていただけるのかしら?」
すると後ろから出てきた銀髪の少年が嘲るような笑みを浮かべる。
「話そうというなら、銃をおろしてもらおうか?あんた達がブルーコスモスのペットでないという事を証明する意味でも。」
どうやら彼らは艦に待機していた兵士の事も知っていたようだが、少年の侮辱の言葉にマリューは敵意がわいた。しかし少年はこちらの思惑などお構いなしに続けた。
「あの三機のパイロットもだ……会わせてくれなければ信用できない。」
敵意を抑えてマリューは短く息をつくと、Gに向かい呼びかけた。
「……三人とも、降りてきて。」
マリューが呼びかけるのが聞こえて、キラはコクピットから降りてきた。ユリとレナも同様に降りてきて、歩きながらヘルメットを外すとレジスタンスからざわめきが聞こえた。
「あれがパイロットか?」
「ガキに女じゃねえかよ。」
その中から一人、金髪の少女がキラの前に飛び出した。
「お前ッ…」
先程までの慎重なやりとりとは逆に、ぴりぴりした空気が流れ、少女がキラに手を上げた。
「お前達が何故あんな物に乗っている!?」
キラが反射的に拳を受け止め、相手の顔に見入った。彼女はまるで前から自分達を知っているかのような口調で話すので、キラは怪訝そうな顔になった。後ろから来た銀髪の少年も唖然としている。この二人、どこかで……横からレナが口を挟んできた。
「あなた達…あの時モルゲンレーテに来ていた!?」
そうだ、あの日カトウ教授に会いに来ていた二人だ。一体、どうしてこの二人がこんな砂漠に?
「くっ…放せ、このばか!」
もう一方の拳がキラの頬にあたり、キラは思わず殴られた頬を抑えた。
「キラ、大丈夫?」
「大丈夫…」
ユリがいたわり、キラは半ば呆然としたように答える。
「カガリ……」
後ろの銀髪の少年に咎められ、カガリと呼ばれた少女は渋々引き下がった。
何故、彼女がこんなところでレジスタンスに?
そして、銀髪の少年がこちらを見つめる。MSのコクピットから見えていた敵意に満ちた目とは真逆で、安堵と困惑が同居した目だ。
「……お前達こそ、地球軍のパイロットだったのか?」
「あ…えぇと、話すと長くて…」
レナがしどろもどろする。本当に…あのヘリオポリスから、まだ何ヶ月も経っていないのに…この二人とこんなところで再会するなんて。
レジスタンスの拠点に案内されたアークエンジェルの士官四人は奥の司令室で、彼らがザフトの勢力圏となった街から集まった有志だと聞く。だが、その中であの二人はどう見てもこのあたりの人間ではない。移住してきた、ならば話は付くが…
銀髪の少年がチラリとこちらを見て、仲間と共にパネルを見る。
「あの子達、一体何なの?」
あの金髪の少女と銀髪の少年………キラ達とヘリオポリスで会っていたらしいが、この土地に移住したという線も薄い。
「俺達の勝利の女神とその騎士だ。」
勝利の女神と守護する騎士………また随分と大げさだが。
「名前は?女神様と騎士様じゃ、困るでしょ?」
ムウの問いにサイーブはコーヒーを一口飲んで答える。
「カガリ・ユラとフブキ・クラだ。」
名前だけ聞き、改めて士官達はサイーブから情勢を聞く。中でも衝撃的なのは、つい三日前にビクトリアが陥落したという。東アジア共和国の高雄、そして南アフリカ統一機構のビクトリア……地球が宇宙へ進出する施設、マスドライバーを抑えて地球と宇宙におけるプラントの物資流通と同時に地球軍の月面基地を枯渇させる『オペレーション・ウロボロス』………残るは南アメリカ合衆国のパナマということになる。
「今、私達がいるのはアフリカ共同体……新プラントの立場を取っている国ね。」
レイラが地図を見ながら分析する。南アフリカ統一機構がプラント傘下に入った以上、アフリカは完全にザフトの勢力圏だ。オマケにユーラシア大陸にはザフト地上軍の二大拠点の一つ、ジブラルタルがある。
アークエンジェルの目的地はアラスカ……そして現在地はアフリカ…改めてみると、絶望的なまでに遠回りだ。
「ジブラルタルがすぐそこにあるから、通れない…」
「なら、頑張って紅海へ抜けるしかないな。」
紅海……つまり、太平洋を通るしかない。
「補給路の確保なしにいける距離ではありませんね。」
「大洋州連合は完全にザフトの勢力圏だろう?赤道連合はまだ中立か?」
ナタルとムウの分析通りならば、大洋州連合はジブラルタルと並ぶもう一つの拠点カーペンタリアがある。そして、開戦以来オーブと共に中立を表明した赤道連合の勢力圏。通るだけならば、赤道連合も許してくれるだろうか?
「おいおい、気が早いな。」
サイーブが小さな街を指す部分を指す。
「ここ、バナディーヤにはレセップスがいるんだぜ。」
そういうことか……『砂漠の虎』アンドリュー・バルトフェルドの地上母艦レセップス、ザフト地上軍の顔役ともいうべき相手が彼らの敵。そして、虎が駐留する都市がすぐそこにある。
「はあ……全く、前門の虎後門の狼とはよく言ったものね。」
「虎の方が狼より規模が少ないだけマシだろう?」
キラ達はMSでアークエンジェルを隠すシートをかぶせ、少し息をついた。と、そこに先ほどの二人がやってきた。カガリとフブキ、だったか……
「あ、さっきはすまなかったな…許せ。」
「…お前、謝る気あるのか?」
フブキは長い銀髪を降ろしており、容姿も良く整っている。カガリは男勝りを絵に描いたような口調でやはり男にしか見えない。何でも、兄妹らしいがとても似ていない。
「で、なんでお前達が地球軍のMSに?学生じゃあなかったのか?」
「…貴方達こそ、オーブの人じゃあなかったの?」
「………話せば長い。」
先ほどと同じ言葉を返され、レナはフブキの整った顔に見とれていた自分を取り戻した。
「あ……えぇと、さっきのラミアス少佐に拘束されて…軍の重要機密を見て。」
「なるほど、軍としては当然だな。殺されない条件として入隊させられたのか?」
「ち、違うの!あ、その……志願、したの。あの後、色々あって…」
キラとユリも顔を伏せる。
言えるわけない……ヘリオポリスを襲撃したザフトに兄がいたなんて。レイラにだって、あの先遣隊の後に勢いで言ってしまったにすぎないのだ。
日が傾き、子供達は外に出ていた。といっても、一面砂の土地。珍しいものなど何もない。
アラスカに降りるまでは、のつもりの彼らだったがいつの間にか正反対の方向に来ている。
「あーあ、こんなことなら残るなんて言うんじゃなかった。」
「けど、あそこでシャトルに乗ってたら今頃死んでるぜ。」
カズイのぼやきをトールが説き伏せた。シュウにとっては、彼らといられる時間が増えたのは嬉しいが、こういう話を聞くと…そんな自分に嫌気がさす。そこへ、彼らもブリッジから見た銀髪の少年がいた。
「おい、金髪の女を見なかったか?」
レジスタンスの中にいた銀髪の少年だ。たしか、フブキ・クラといったか。
「あの子なら、艦の方へ行ったわよ。」
「そうか。」
ミリアリアが答えると、フブキは礼も言わずにアークエンジェルの方へ向かった。
「何だよ、アイツ。礼も言わずに。」
トールが不機嫌そうに言うが、ミリアリアが場違いなことを言った。
「でも、かっこいいわよ。」
「…思っても、トールの前で言わない。」
サイが言ったように彼氏がいるのにその発言はどうかと思うが、確かにそうだとシュウは思った。顔立ちは整っているし、背中まで伸びた銀色の髪にキラよりもやや濃い紫の瞳がそれを引き立てている。しかし、性格は動物に例えれば……特定の仲間としか交流しない狼みたいだ。常に他者を拒絶し、レジスタンスでもリーダーの男の他にあのカガリという少女と彼女の脇にいるキサカと名乗った大男以外に交流がない。まるで周囲は全て敵と認識しているような雰囲気だ。
フブキはカガリをアークエンジェルの方で見つけた。
「カガリ、どうした?」
「あ、兄様…」
カガリが先程見ていた方向には、連合のMSのパイロットの一人、キラとクルーの二人がなにやら揉めていた。少女は知らないが、眼鏡の少年はサイという名だったか。
「フレイに話があるんだ。キラには関係ない。」
どうやらサイがあの赤髪の少女に話があり、そこにキラが絡んでいるようだ。フレイと呼ばれた少女はキラにしがみつき、堂々と言い放った。
「関係なくないわ!…だって私、夕べはキラの部屋にいたんだから!」
サイの顔が強張った。そんな気がした。カガリも隣でぎょっとしていた。横を見やると何時からいたのか、キラの姉のユリともう一人のパイロットのレナも顔を赤くしていた。呆然としていたユリが何か言おうと飛び出した。フブキはそれを止めようとしたが、僅かに遅かった。
「キラ!それどういう事よ!?」
ユリがキラに掴みかかり、問い詰めた。
「言葉通りだよ、姉さん。」
「な……フレイ!あんた、キラに何を吹き込んだの!?」
「何も無いわよ!お姉さんだからって保護者面しないで!!」
ユリが痛いところを突かれたように黙り込んでしまった。すると、レナも飛び出した。
「キラ、貴方フレイとサイの仲知ってるでしょう!?」
「レナは黙ってろよ!」
「そうよ!別にあんたの彼氏って訳じゃないんだから!」
滅茶苦茶になってきた。そして、そのままキラはフレイと艦内へ入ろうとしたが、サイに呼び止められた。しかし、キラはそれに実力で応えた。
「やめてよね。本気で喧嘩したら、サイが僕に敵うはずないだろう?」
「な、キラあんた!!」
ユリがキラに掴みかかろうとするが、キラはユリを睨んだ。フブキから見ても、酷い顔だ。
「なんだよ、姉さん!悔しいなら、サイかシュウあたりに慰めてもらえば良いじゃないか!レナだって、大尉とそうなんじゃないの!?」
「あ、あんた…!」
「いい加減にしてよ!」
遂にユリとレナがキラに掴みかかり、キラが二人をあしらう。
「同じコーディネイターでも、二人がかりでも僕に勝てないくらい姉さんもレナも弱いくせに!!僕がどんな気持ちで戦ってきたのか、みんな知りもしなかったくせに!!」
「キラ、いい加減に…」
ユリに対し、キラが勢いでか平手打ちをしてしまった。
「な!」
流石のカガリもこれには唖然としてしまった。
「姉さんだって同じだろう!頼ってなんて言っておいて、自分のことばっかりじゃないか!嘘つきじゃないか!!」
ユリが詰まってしまい、レナも呆然としている。あの後、気になっていた三人とこんな場所で再開したかと思えば、とんでもない場面に出くわした。
どうしようかと、フブキも出方を伺っていると仲間の声が聞こえた。
「空が燃えている!タッシルの方向だ!」
フレイとサイのあれはちょっと方向性を変えて、ユリやレナとも争うようになりました。
しかも、キラにもそれとなく気づかれてキラ本人も喚くようにシュウやレイラとのことを持ち出す。