機動戦士ガンダムSEED REVERSE   作:meitoken

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バルトフェルドの屋敷も間髪入れずに、行きます。


PHASE-14 宿敵の牙…後編

キラ達はバルトフェルドによって、彼が拠点としている屋敷に招待された。屋敷内に砂漠仕様のジンやバクゥが陣取っており、まるで逃げれば殺すと言っているような気もする。

 

「あの、僕達本当に…」

 

「そうはいかんよ。助けてもらったし、お嬢さん達はなんとかしてあげないと。」

 

キラとフブキはともかく、女子三人はお茶にケバブのソースを被っている。

 

「この子達ですの、アンディ?」

 

出迎えた女性は黒髪の妖艶な美女だ。思わず、見とれてしまう。

 

「ああ、お茶とチリソースとヨーグルトも被ってしまってね。頼むよ、アイシャ。」

 

「あらあら、ケバブね。」

 

アイシャと呼ばれた女性はカガリを案内し、もう一人の青年が現れる。案内の士官だろう。

 

「そこの銀髪の坊や、あなたもよ。せっかくの綺麗な髪が砂とホコリにまみれているわ。クラウド君、お願い。」

 

クラウドと呼ばれた黒髪の青年は「はい。」と答え、フブキを案内した。フブキもため息をついて何の反応もなく着いていったが、一人取り残されたキラはバルトフェルドに呼ばれ、部屋に入っていった。

 

「僕はコーヒーに五月蠅くてね。一杯どうだい?」

 

キラは少々警戒しながらコーヒーに口を付けたが、顔を歪めた。苦すぎる。この人はこれだけの物をよく平気で飲める。その前に、何をどうしたらこうなる?これなら、アークエンジェルで飲むインスタントの方がマシだ。

 

「おやおや、どうやらまだ君にコーヒーは分からないようだな。」

 

バルトフェルドが愉快そうに言った直後、控えめなノックの音が聞こえて、アイシャが入ってきた。しかし、カガリだけでなくユリとレナも彼女の陰に隠れているのか、姿がよく見えない。

 

「なあに?恥ずかしがることないじゃない。」

 

アイシャが笑ってカガリを押し出した。と……キラはポカンと口を開けた。

 

髪を結い、薄化粧をされてイブニングドレスを着ていた。洗剤を使っているのか、ほんのりといい香りもする。一言で言うなら、別人と思うほどに魅力的だ。

 

「おい、そこにいられると俺が入れん…」

 

声に気付いたアイシャが退いて、フブキが入ってくるが、ユリとレナが息をつくのが聞こえた。

 

「驚いたよ。まさかここまで変身するなんて。」

 

クラウドが褒めるが、それには同意できる。フブキは下ろしていた髪をポニーテールに結い、紺のスーツに身を包んでいた。よく見ると睫毛や眉毛も整えられており、社交の場に出たらほぼ間違いなく周囲の女性の気を引いているだろう。男性用の香水でも使っているのか、良い香りもする。

 

ユリは水色のアフタヌーンドレス、レナは赤いカクテルドレスを着ていたが、二人もカガリに負けていない。キラは魅力的に仕上がった少女三人に言葉が見つかず、ふと「おんな…の子…」と呟くが、カガリが聞こえたのか喚きだす。

 

「てっめえ!」

 

「い、いや!『だったんだよね。』って言おうとしただけで……」

 

「キラ、それじゃあ同じよ…」

 

ユリに指摘されるまでもなくその通りだ。女の子を喜ばせるようなことを言えない自分が情けない。

 

「見事に仕上がっているな…社交辞令の場に出れば注目されるぞ……」

 

「え?あ…ありがと…」

 

フブキは馴れているかのようにレナに言ったが、言われた本人は馴れないほめ言葉に舞い上がってしまった。

 

 

 

「あ、コーヒーはおいしいです。」

 

「おお、分かるか。嬉しいね。」

 

思わず、反射的に飲んでしまったコーヒーだがこれは良い。キラは顔をしかめているが、ユリも目を丸くする。

 

「キラ、これが分からないなんて貴方お子様ね。」

 

「姉さんは平気なんだ…」

 

ユリも分かるようだ。実際、苦みはきついがかなり良い。

 

「ドレスやスーツもよく似合うね。というか、そちらの二人はそういう姿も実に板に付いている感じだ。」

 

さらりと褒められて、カガリはぶすっとなった。

 

「勝手に言ってろ。」

 

「しゃべらなきゃ完璧。」

 

「同感だ…兄としてはもう少し女らしくして欲しい……」

 

「余計なお世話だ!」

 

三人の会話を聞きながら、レナはちらりと周りを見回すが、アイシャとクラウドは部屋を出ている。先程こっそりと彼が合図をしたのだろう。レナが周りを警戒していると、カガリが鋭い目をしながら口を開いた。

 

「何で人にこんな物を着せる?お前、本当に『砂漠の虎』か?それとも、これも毎度のお遊びなのか?」

 

「ドレスを選んだのはアイシャだよ。それに、毎度のお遊びとは?」

 

「変装をしてお忍びで街へ出たり、住民だけ逃がして街を焼いてみたり…ってことだよ。」

 

レナはヒヤリとする。そんなに直球で聞いたりしたら怪しまれる恐れがある。

 

「いい目だねぇ、まっすぐで。」

 

その口元が曲がり、不敵な笑みを浮かべる。

 

「実にいい目だ。」

 

「ふざけるな!」

 

キラがカガリを落ち着かせようとしたが、先日のことを思い出した。彼女は仲間を殺されたばかりなのだ。落ち着けるわけがない。

 

バルトフェルドは先程とは違う鋭い目で五人を見る。

 

「君も死んだ方がマシなクチかね?」

 

彼は不意にキラを見やり、訪ねてきた。

 

「そっちの彼、君はどう思っている?」

 

「え…?」

 

「この戦争はどうしたら終わると思う?MSのパイロットとしては。」

 

「お前…どうしてその事を!」

 

カガリが叫んだ直後、バルトフェルドは笑い出した。

 

「おいおい、あんまりまっすぐすぎるのも考えもんだぞ。」

 

「カマをかけたのか…」

 

フブキの言ったとおりだ。カガリはそれにまんまと引っかかってしまった。

 

バルトフェルドは笑いながら立ち上がる。

 

「戦争には制限時間も得点もない……スポーツの試合みたいにはね。」

 

キラがカガリを引き寄せ、レナもユリと共にフブキに引き寄せられる。

 

「なら、どうやって勝ち負けを決める?どこで終わらせればいい?」

 

どこで?今まで自分は向かってくる敵を討つので精一杯だった為にそんなことを考えることはなかった。それはキラとユリも同じだろう。そもそも終わり方があるのかすら分からない…そしてスポーツと違い、戦争は人が死んでいく。レナ自身、キラやユリと一緒に何人も殺している。

 

「敵である者を全て滅ぼして、かね?」

 

バルトフェルドが引き出しから出した物を向けた。銃だ。そしてその目も先程とは違い、相手を射抜く鋭い視線だ。

 

キラが周囲を窺っている。ここから逃げ出す手段を考えているのだろう。その事を見抜いていたのかバルトフェルドが口を開いた。

 

「やめておきたまえ。君がいくらバーサーカーでも、暴れてここから出られると思うなよ。ここにいるのは、みんな君やお友達の少女らと同じコーディネイターなんだからな。」

 

キラが息を呑むのが聞こえ、彼の背後のカガリが「お前……」と呟いた。ユリを見やると、やはり顔を背けていた。さっきのブルーコスモスのテロで三人の身のこなしで見抜いたんだ。

 

「君達が何故同胞と敵対する道を選んでいるのかは判らん。少女らもかなりの物だが、茶髪の少年は私の知る中では特にずば抜けている。」

 

「な、何を…」

 

「ストライクは君だろう?接地圧の調整と、熱対流のパラメータ対応。」

 

レナは息をのんだ。だが、確かにキラはずば抜けている。同じコーディネイターのレナから見ても異常なほどだ。一泊遅れているとはいえ、着いていくユリも凄まじい。それに対し、レナは二人に言われてようやく接地圧の調整もできた。砂漠の熱対流もキラに言われ、ようやく判断できた。

 

そんなレナの逡巡をよそに三人を睨みながらバルトフェルドは今にも引き金を引かんという様子だったが。

 

「やっぱり、どちらかが滅びなくてはならないのかねぇ?………ま、今日の君達はお客さんだ。」

 

バルトフェルドは突然、先程の飄々とした顔に戻った。

 

「帰りたまえ。話せて楽しかったよ。よかったかどうかはわからんがね。」

 

ドアの前ではアイシャがカガリ達の服を持って待ちかまえていた。

 

「あなた達の服よ。もう乾いてるわ。」

 

服を渡されたカガリ達はドレスを返そうとしたが、アイシャはせっかく似合うのだからという理由で譲ってしまった。女性の大胆さにもレナは肝を抜かれたような気がした。

 

「さっきの騒ぎで駄目になった荷物もそろえてある。巻き込んだお詫びに僕のブレンドコーヒーやサイホンのセットもある。お下がりだが、使いたまえ。」

 

確かに、先程買いそろえた時にはなかったコーヒーの袋がいくつか入っている。コーヒーサイホンまで。キラとフブキがそれを受け取る。

 

「また戦場でな。」

 

バルトフェルドの言葉と振る舞いに戸惑いながらも、キラ達は邸を後にした。解放された彼らにはバルトフェルドの姿と言葉が強く印象に残っていた。レナは振り返り、敵将の城をもう一度見つめた。

 

あれが…あの人が……敵。

 

あんなおいしいコーヒーを入れてくれた人が……

 

 

 

キラ達がバルトフェルドの元に招かれていた頃…アークエンジェルの格納庫である異変が起こっていた。まだキラ達が戻っていないのに突然ストライクが動き出したのだ。

 

「おい、どうなっているんだ?まだ坊主達は戻ってきてないんだろう?」

 

マードックが足早にストライクを追いながら搭乗者を伺い、騒ぎに気付いたムウやミリアリア達も駆けつけた。

 

「何?これ、どういう事?」

 

「誰がストライクに乗っているの?」

 

ミリアリアとレイラが周囲に問うと、シュウがハッとなる。

 

「そういえば、さっきサイがここを彷徨いていたけど…もしかして!?」

 

その時、これまでギクシャク動いていたストライクが倒れ込み、ミリアリアの悲鳴が響き、皆が目を覆った。大きな音がし、恐る恐る目を開くと、ストライクが土下座をするように倒れていただけで、怪我人はなかったようである。しかし、そのストライクのコクピットでサイが泣いていたことを誰も知らなかった。

 

そして、同じように離れた場所で見ていたフレイは見ていられなくなり走り出した。

 

「馬鹿ね…!」

 

コーディネイターのキラに勝てるはずもないのに。それが先日証明されたというのに、まるで懲りていない様子だったサイをフレイは毒づいた。目尻から涙をこぼしながら。

 




ユリとレナもドレスアップし、フブキもスーツで武装しました。カガリの兄妹ならなおのことでしょう。

そして、ユリとレナはバルトフェルドのコーヒーが合うという凄い味覚でした。
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