機動戦士ガンダムSEED REVERSE   作:meitoken

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今回は小休止もかねた、クルーゼ隊の休暇重視です。本編キャラではニコルをこっちオリジナルで行きます。


PHASE-15 穏やかな日に

L5に点在する百を超えるプラント群の一箕、アプリリウス・ワン。アスラン・ザラは今日、婚約者のラクス・クラインと会う約束をしていた。そして現在、彼女の邸のテラスでお茶を飲みながら話をしていた。周囲では彼女に送り続けたペットロボット……ハロが跳ね回ってはしゃいでいる。

 

「この頃は、また軍に入る方が増えてきているみたいですわ。私のお友達も何人か志願して行かれて…」

 

彼女らしからぬ言葉にアスランは視線をそらす。ザフトの殆どは志願兵だ。そして血のバレンタインの悲劇を目の当たりにしたことで最近は自分のように若い者が増えてきている。

 

「戦争が…大きくなっている気がします。」

 

「そうなのかも知れません…実際。」

 

一日でも早く、戦争を終わらせるために軍人になった。しかし、その思いとは裏腹にどんどん戦火は広がっている。ヘリオポリスが崩壊し、現在評議会では『オペレーション・ウロボロス』の最終作戦、『オペレーション・スピットブレイク』実行についての議論が行われているだろう。

 

同時にアスランの脳裏には灼熱の大気圏に落ちていくストライクの姿がよぎった。今キラは地球にいる。そしておそらくブレイズかウインドに乗っているユリも……現在分かっているのはそれだけだ。

 

キラ…ユリ……

 

 

 

ミサキ・グールドは自宅でパトリック・ザラの演説の放送を見ていた。内容は主戦論を煽り、ヘリオポリスやラクス・クラインの遭難事件での人質の非難。

 

血のバレンタインで両親を失った彼女は現在、父方の叔父であるヘルマンの養子として世話になっている。

 

「ザラ委員長の仰るとおりだ。敵に情けをかけてはこの戦争は終わらない。」

 

「叔父さんは戦って終わらせる方が正しいと思うの?」

 

ミサキは陰を含んだ口調で叔父にたずねた。

 

「ああ、クラインは交渉で解決しようなどと言うが、地球に住む者の言葉などあてにならん。戦った方が確実だ。」

 

「でも…戦えば戦うほど、戦争が酷くなっている気がする…」

 

「それはナチュラル共があんなMSを造るからだ。お前もあんな地球生まれなんぞにうつつを抜かすな。私が最適の相手を探してやる。」

 

シオンのことだ。地球出身ということで、シオンがザフトで浮いているのはアカデミーの頃から知っている。同期や一部の教官からも嫌がらせを受けて成績の不正操作…挙げ句に不正のでっち上げが起きて、イザークやディアッカでさえ抗議したことがあるほどだ。

 

「シオンだってコーディネイターじゃない。」

 

「地球生まれならナチュラル共のスパイだ。」

 

そう言い、ヘルマンは出ていった。ミサキは叔父の言うことの全てを支持しきれない。確かに、中立宣言をしていたオーブが地球軍のMSを開発していたのは許せない。しかし、崩壊したヘリオポリスを考えると、複雑な気持ちになる。

 

何よりシオンを、自分が想いを寄せている少年を同じコーディネイターなのに地球生まれという理由だけで差別する叔父に反感を抱いていた。

 

「もう亡くなっているけど…お爺ちゃん達はナチュラルなのに。」

 

 

 

イリア・カシムはヤヌアリウスファイブにある孤児院を訪れていた。イリアは二世代目としては珍しい先天的な遺伝子の欠陥から来る白髪という理由だけで捨てられ、この孤児院で育った。12歳の時にここの出資者であり、現在の評議会議員アリー・カシムの両親に引き取られた。彼の両親と院長が旧知で、白髪を理由に他の子供達はともかく、周りの大人にも虐められていたのを重く見たのだ。

 

「イリア君、軍に志願したと聞いた時は心配したが、元気そうで何よりだ。」

 

目の前にいるこの年配の男性は孤児院の院長だ。この髪のおかげで苛められていたが、この人とここで働いていたあの人は自分に優しく接してくれていた。おそらく彼女がいなければもっと歪んだ人間になっていたかもしれない。

 

「お久しぶりです、院長先生。」

 

彼は今もこの孤児院で働いているが、あの女性はもうこの世にいない。ユニウスセブンの実家に帰っていたところで、あの惨劇に巻き込まれたのだ。許せない。彼女を奪った地球軍に復讐してやりたい。それこそイリアが軍人になった理由の底にあるものだ。

 

「お兄さんは評議会かね?」

 

「ええ。重要作戦の実行についての議題です。兄は反対のようですけど…」

 

「君は、どうなんだい?ザラ委員長とクライン議長、どちらを指示しているのかな?」

 

「ザラ委員長ですよ。はっきり言ってクライン議長は生ぬるいね。対話による解決と言っているけど、どうせ聞きっこないんだから。だったら戦った方が早く戦争を終わらせられるでしょう。」

 

突然の質問にイリアはあっさりと答えた。

 

「そうか…私はクライン議長を支持している。」

 

「何故?」

 

イリアは彼の言葉に疑問を抱かずにいられなかった。何故生ぬるい議長を指示する?

 

「ザラ委員長の言う事もわかるが、そうなればより多くの犠牲が出る。ならば、話し合いで解決した方がいい。それに私は両方が共存できれば戦争など起こらないと思っている。」

 

理想論だ。彼の言うように信じることができればいいだろうが、ナチュラルの中でも特に野蛮な地球軍。彼女を奪った彼らを何故院長は信じられる?戦った方がいいに決まっている。戦わなければただやられるだけで、また彼女のような犠牲が出るのだから。

 

「オーブだって味方してたんですよ?」

 

「だから、ヘリオポリスの住民も殺して良いのかね?大半はユニウスセブンと同じだよ?」

 

それを言われると、イリアも詰まってしまう。イリアとて、ヘリオポリスがああなってしまうとは思わなかった。壊滅的な打撃は受けても、完全崩壊するなど想像だにしなかった。

 

「それは地球軍の奴らが……」

 

「戦争なら、抵抗するだろう?」

 

イリアは余計に詰まってしまう。どうも、昔からこの人には頭が上がらないためか強く反論できない。しかも、何故かこの人と話していると持論が覆されそうな気がする。

 

 

 

ニコルはクライン議長やザラ委員長の承認で外出を許されたメイ・ハーベストと地元プラントの街を歩いていた。大西洋連邦の上級将校の娘である以上、外交のカードとして使えるがヘリオポリスの学生でもある。手荒に扱う事も出来ず、評議会でもナチュラルの彼女を軍の収容施設に入れるか現在のままか、意見が割れている。父のユーリ・アマルフィは前者よりだ………

 

今回はそんな彼女の外出希望があり、ガモフで出会ったニコルを護衛監視に指名してきていた。半分任務だが、休暇の延長と思いニコルはそれを快諾していた。

 

「ヘリオポリスとは…やっぱりコロニーの形状が違うから少し違和感がありますね。」

 

「あそこは円筒状のコロニーが回転していましたから。」

 

メイが街並みを眺め、ぼんやりとつぶやく。

 

「プラントも…ヘリオポリスも……平和に暮らしている人がいるのは同じですね。」

 

「……ええ、でもユニウスセブンが核攻撃で崩壊しました。」

 

「……………父が、関与していたかもしれない。」

 

「でも、貴女が何かしたわけじゃないでしょう?」

 

彼女は元々別居中で、学生だ。地球軍の軍事作戦に関与できるはずがない。

 

「プラントの人達は……どう思うの?」

 

プラントの人達…その言葉に、ニコルは顔を伏せてしまう。

 

本当に…どう思うんだろう?親が地球軍の高官で核攻撃に関与しているから、娘も共犯者?いくら何でも、筋が通らない。ニコルでもそう思うが……今は話題をそらすべきか?

 

「あ……ちょっと、僕の家に来ませんか?」

 

「え?でも…」

 

「父はもう、評議会に行っていますし……実は僕、ピアノを弾いているんです。」

 

「ピアノ?」

 

「ええ、昔から好きで……戦争が終わって、ある程度落ち着いたら地球の音楽の街…ウィーンとかに行ってみたいんです。」

 

芸術の都、等と当時は言われていたオーストリアのウィーン。ユーラシア連邦の加盟国だから難しいが、戦争が終わった後のプラントからの親善音楽家……なんて名目で行ってみたいと思っている。

 

「でも、今の状況じゃあ…あそこはユーラシア加盟国だし。」

 

「ええ、でもやっぱり音楽家として行ってみたいんです。」

 

「……ナチュラルの音楽家なんかより良い音楽を作れるっていう人、多いんじゃないんですか?」

 

「中にはいますね…でも、遺伝子の概念が広く知れ渡る前、地球で有名なモーツァルトやベートーベンまで引き合いに出すのは違う気がします。」

 

そこまで遡って引き合いに出すのは流石に無理がある。ニコルは少なくとも、漠然とそう考えていた。

 

「自分で、作曲とかしてるんですか?」

 

「ええ…実際に何度かコンサートを開いているんです。今度、同じ部隊の仲間も呼んでコンサートをやるから、来てくれます?」

 

「……良いんですか?」

 

「ええ、ちょっと父に頼ることになるけど……監視付きでなら、通るかもしれません。」

 

 

 

シオン・クールズは血のバレンタインで犠牲になった叔父夫婦の墓参りに来た。元々シオンは植物学者になるための勉強としてプラントへ渡っていた。プラントの植物学研究を地球に持って帰れば、未だに尾を引く地球の環境問題にも光明が差し、そこだけでも地球とプラントの軋轢が解消されるのでは?と。

 

元々植物学者の叔父夫婦もそう考えていた節があり、彼らを頼ったために生活にも困らなかった。子供もおらず、甥である自分を可愛がってくれていた。充実していた日々は、あの血のバレンタインにより消えた。あの日、自分は別のプラントにいる友人を訪ねていた。そして、帰ろうとした直後であのニュースを見て、愕然とした。

 

何故?民間のプラントを?あそこには叔父と叔母が………

 

絶望と怒りがシオンを叩きのめした。それからしばらくの間、シオンは友人の家に泊めて貰えたが、数日間ショックで寝込んでいた。立ち直ってから間もなく、シオンは軍に志願した。生活もあるが、彼らのような犠牲を出さないために。一日でも早く戦争が終わって欲しいから。しかし、戦争は更に激しくなっていく。戦火はオーブにも広がり、ヘリオポリスが崩壊し、今は妹のレナと殺し合っている。

 

何時になれば、こんなことが終わるのだろう?

 

シオンは返す者のいない問いをしながら、人工の空を眺めた。

 

 

 

キールは久しぶりの実家に帰った後……父の墓参りに来ていた。

 

「父さん、戦争はまだ終わりそうにないよ。」

 

不思議なものだ……アスランとは彼が月の幼年学校から戻ってきてからも付き合いが続き、更に入隊後は父の友人であったユーリ・アマルフィの息子のニコルとも知り合った。過去を思い起こしながら、キールは空を見上げる。

 

「レノアさん……アスランはまだ元気です。」

 

父が三年前に事故死して、キールは生活の糧を求めて軍に入隊した。同じように第二世代でありながら弟が病に冒され、その治療費を求めて入隊したミゲルとは自然と気が合った。その後、血のバレンタインをきっかけにアスランが入隊し、父の友人の息子であるニコルとも知り合った。

 

イザークやディアッカ、イリアには頭を悩まされるがそれはそれで充実している。アスランやニコルなどはキールにとって弟同然だった。

 

「あいつらが、死ぬより早く戦争が終われば良いんだけどな。」

 

パトリック・ザラとシーゲル・クライン……強硬派と穏健派、どちらも言い分は正しい。それがキールの考えだが、どちらかといえばキールはクラインよりだ。戦争が終わっても、アスランやニコルが死んでいたらキールにとっては意味がない。

 

だが、勝ってプラントの自治を獲得しなければ二人がどうなるかも分からない。その言い分も理解できていた。可能な限り、有利な条件での講和……あの二人の間の考えが出来る人ならばそう結論づけたのだろうか?

 

「やめよう……今は。」

 

ニコルからアスランやイリア、ミサキと共にコンサートに招待されている。家族へのいい土産話が出来るだろう。そう思い、キールは墓地を後にした。

 

 

 

軍の官舎のある一室で一人の男がもがき、苦しんでいた。ベッドサイドに置いてあるピルケースから錠剤を一つ飲むが、まだ苦痛が続く。そんな中、端末に連絡が来る。

 

「クルーゼです。」

 

〈私だ。〉

 

「これはザラ委員長閣下、この時間ではまだ評議会の最中では?」

 

〈こちらの案件は通った。まだ二、三あるが、時間は掛かるまい。終わったら、君達も呼んで細かな話がしたいが…ひとまずそれだけは知らせておこうと思ってな。真のオペレーション・スピットブレイクを任せることになる君らにはな。〉

 

電話から聞こえる声の主はパトリック・ザラ。そして彼と話しているのは……

 

「でしたら次は、まもなくの議長選ですね。」

 

〈ん?〉

 

虚をつかれて聞き返すパトリックにラウ・ル・クルーゼはささやきかける。

 

「クラインの後任は、間違いなく閣下でしょうから…お準備はぬかりなく。」

 

おだてるような言葉にパトリックは上機嫌に笑い出した。

 

〈はは、我らが本気になれば地球など、だな。〉

 

通話が終わると、ラウは再び床で悶え苦しみだした。苦しみながらもラウはうっすらと笑う。

 

パトリックは信じ切っている。全て自分の思い通りに進んでいることを。愚かな男だ。奴は自分やレイスを利用していると思っているようだが、実はその逆だとも知らずに。

 

「ふん、せいぜい思い上がれよ……パトリック・ザラ……」

 

そうだ。思う存分思い上がり、踊るがいい。すぐに全てが終わる。

 

 

 

「……今になってあの頃の夢を見るとはな…」

 

レイス・シェイドは目を覚ました。あの日から憎み続けていたあの男の夢を見ることになるとはレイスも思わなかった。何もない、ラウと同様飾り気のない部屋だ。棚にあったタオルを取って汗を拭いていると、電話のコールが鳴り、レイスは受話器を取った。

 

「はい…」

 

〈レイス…私だ。〉

 

ラウ・ル・クルーゼだ。彼が電話をしてくるという事は例のオペレーション・ウロボロスの強化策の件だろう。

 

〈パトリック・ザラがお呼びだぞ……真のオペレーション・スピットブレイクについて話したいそうだ。〉

 

「わかった、すぐに行く。しかし愚かね…私達が利用しているとも知らずに。」

 

〈ふふ……そう言うなよ。馬鹿である方が、我々にとって都合がいいのだ。〉

 

「そうだったわね……」

 

そうだ。あの男は蛇だ。そして、ブルーコスモスを率いるあいつも蛇。自分達と敵対する者も踊らされているとも知らずにいるのだ。

 

「互いに食い合い、滅びるが良いわ。」

 

ウロボロス、か。遡れば、宇宙や世界を象徴するとも言われる。滑稽だ………どちらも自らがそれだと思い上がっている。だが……ラウとレイスにとっては、好都合だ。そう、互いを飲み込もうとその尻尾を食い合う蛇の方が……

 

 

 

地球…アークエンジェルでは子供達がスカイグラスパーのシミュレーションをしていた。シュウとノイマンも見物している。今はカガリがその中に入っている。

 

「なにしてんの?」

 

「ああ、トール。この二人凄いの。」

 

カガリとフブキもスカイグラスパーのシミュレーションに加わり、今はカガリが行っている。

 

「実際に凄いな…君ら、二人共空戦経験でもあるの?」

 

「秘密だ。」

 

シミュレーションを終え、カガリが総合二位を獲得した。

 

「二発喰らっちゃったけど、こんなところだな。まだ兄様には勝てないか。」

 

「ああ、でも凄いよ。俺なんかすぐ墜とされたのに。」

 

「私も。シュウは頑張ったけどね。」

 

カズイやミリアリアもやったが、二人共駄目だった。シュウは二人より頑張ったが、それでも訓練をクリアできなかった。フブキが無傷でクリアし、カガリが二発被弾だがクリアした。ダントツだ。

 

「軍人のくせに情けないぞ。銃も撃ったことないんだって?」

 

「そんなことじゃあ、死ぬぞ。後…シミュレーターと違い、一発当たれば死ぬ。脱出できればまだ助かる望みもあるが、別問題だ。」

 

フブキが淡泊に返すが、同時に……

 

「自発的に学ぼうと思えるだけ、お前達は良いよ……」

 

「え?」

 

影のある言い方に、隣にいたノイマンが目を丸くした。

 

「どういう意味?」

 

「ゲリラでもレジスタンスでも、自分から習えるのよね?」

 

カズイとミリアリアはよく分からない。そこへトールが割って入った。

 

「ねえ、俺もやってみていい?」

 

「ゲーム機じゃないんだぞ?」

 

「は!訓練と思い、真剣にやらせていただきます!」

 

「それならよし!撃墜されたら、飯抜きだからな!」

 

子供達の笑い声が響き、フブキはそれをチラリと見ていた。

 

あそこにいた頃は、あんな風に親身になってくれる大人はいなかった。同世代の子供も似たり寄ったりだ。お互いにナイフや銃を学び、戦闘機のシミュレーターをやらされた。成績が悪ければ、食事抜きなんて懲罰はなかった。

 

少しだけ、ああいう軍人に囲まれる彼らが羨ましかった。

 

 




レイスもレイスで、陰湿な過去を抱えております。レイラとの因縁もそこから起因しています。

フブキは、もうSEEDのファンなら察しているかもしれませんね
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