機動戦士ガンダムSEED REVERSE 作:meitoken
もう一つのタイトル通り、イリアとレナの二人だけの戦争で行きます。
イリアはシグーをなんとか近くの島に着陸させた。海に落ちていたら、新品をダメにして始末書を書かされるところだっただろう。
「つっても、生きて帰ることが出来るかどうか。アスランもどこにいるかわかんねえし。」
あの時、アスランの輸送機も撃たれてしまった。幸いイージスがパージされたのは目撃しているし、どこか違う島に落ちていると考えよう。
「とりあえず、救難信号だな。」
救難信号のユニットを発射し、イリアは非常食のバッグを持ってコクピットから出る。
「カーペンタリアにそこそこ近いから、拾ってもらえれば良いんだが。とりあえず、水場だな。」
小さな島だが、池か湖でもあれば当面の水は確保できる。
「にしても、なんつう場所だ。プラントと全然勝手が違う。」
プラントにも自然公園はあるが、それにしたってここは酷い。何ら整理もされない生い茂った草木。
「これが本物の自然ってやつか?なんで、ナチュラルはこんなところで生きられるんだよ。」
アークエンジェルではレナとカガリが帰還しない報告を受けていた。カガリが被弾して帰投しようとして、レナがディンを撃墜した後に突然方向転換をしたという。
「推測だけど、カガリさんを連れ戻そうとしたと考えるべきでしょうね。」
「MIAと認定されますか?」
ナタルの進言にサイが問う。
「なんです、それ?」
「ミッシング・イン・アクションだ。戦闘中の行方不明、まあ確認していませんが戦死って事だよ。」
トノムラの解説にミリアリアもぎょっとする。
「それは早計ね、バジルール中尉。撃墜されたとは限らないのよ。日没までの時間は?」
「約一時間です。」
ミリアリアが答えると、ナタルが意味を悟った。
「捜索されるおつもりですか!?ここはザフトの勢力圏です!」
「上空からはもう辛いわね。簡単な整備と補給が終わったら、ストライクとフレイムにやってもらうしかないわ。」
「艦長!」
「報告にでも記録にでも、好きに書きなさい!」
いつもより強い口調にナタルも思わず黙ってしまった。確かにウインドを失うのは痛手だが、それ以上に二人を放ってもおけない。
レナは草をかき分けながら、後ろからザフト兵にゆっくりと近づく。だが、落ちていた枝を踏んで気づかれた。
振り返ると、レナやキラとさして変わらない少年だが髪の色は真っ白だった。相手が飛びのき、レナも思わず木陰に隠れる。
相手が銃を撃ってきて、かすめた。
「ひ!」
慌てて銃を抜こうとするが、思うように手が動かない。その間に相手がナイフで近づいてきた。
反射的に避け、ようやく銃を手にしたが向けるより先に落としてしまった。
「いや…!!」
ナイフを向けられ、思わず両目をつぶった。直後にナイフが突き刺さる音がした。ゆっくりと目を開けると、左頬をかすめるところで後ろの木に突き刺さっていた。
「お、女かよ…」
「あ…ぁあ……」
そのままレナはへたり込んでしまった。少年が銃を拾うと、大きなため息をつかれた。
「おい、セーフティ外してないじゃないか。」
「………え?」
セーフティ?確か、銃には暴発防止のためにそういう装置があるのは知っているが……
「あ…」
「ったく、地球軍のパイロットスーツ着てるからどんなのかと思えば、さっきの動きに銃の扱いもろくに出来てない。素人丸出しじゃないか。」
銃を向けられ、少年が心底呆れた表情になる。
「認識票は?パイロットスーツにあるだろ?」
「あ、えぇと…」
「変な真似するなよ?やったらその可愛い顔に風穴空くぞ?」
慌てて認識票を探し、首から下げていたのを思い出して差し出す。
「第八艦隊アークエンジェル所属…レナ・クールズ。ん、クールズ?」
「…何?」
「何でもない。……クルーゼ隊、イリア・カシムだ。」
自己紹介をされ、レナは大きく目を見開いた。
「クルーゼ隊…ヘリオポリスを攻撃した!」
レナは反射的に飛びかかるが、少年…イリアに足払いをかけられて倒れ込み、今度は後頭部に銃を向けられる。
「動くなって言っただろ?今度は脅しじゃない…本当に殺すぞ。」
カーペンタリアについたザラ隊の面々であるが、肝心の隊長ともう一人の隊員がまだ着いていなかった。アスランとイリアの輸送機はトラブルが発生したためにシオン達だけ先に行く事となったが、すぐに追いつくと聞いていた。しかし、もう夕方だというのに二人の輸送機は確認されない。そればかりか輸送機が消息を絶ったというのだ。イザークとシオンが基地司令部に確認を取りに行き、ちょうど戻ってきた。
「イザーク!アスラン達の消息……」
ニコルが言いかけたのを遮り、イザークが芝居じみた口の開き方をした。
「ザラ隊の諸君!さて、栄えある我が隊最初の任務を通達する!それは、これ以上ないと言うほど重要な…」
「隊長達の捜索だ。」
シオンの冷静な声にディアッカは馬鹿みたいに笑い出したが、シオンはそれを無視して続けた。
「実際、大変だ。輸送機が落ちてしまったからな。基地の方もスピットブレイクの準備で忙しいから自分達の隊長は自分達で探せと言っている。」
「それはまた…幸先の良いスタートだねー。」
ディアッカはいつもの用に皮肉った。
「とは言え、今日はもう日が暮れる。捜索は明日かな?」
「ちょっと!何よそれ!」
イザークの言葉にミサキが声を荒げるが、キールが制した。
「落ち着け。二人の機体は輸送機が落ちる前にパージしたそうだ。機体があるならそうそう死ぬような事はない。」
「そういう事だ。今日は宿舎でお休み。明日になれば母艦の準備も終わる。捜索はそれからだな。」
「あんた、いい加減にしてよ!アスランとイリアが死んでも良いって言うの!?」
ミサキが遂にイザークに掴みかかるが、イザークもそれを受け止めた。
「これは副長の決定でもある。分からないお前ではないだろう?」
「く…!」
「輸送機が落ちた海域は無人島がいくつかある。無事ならそこに不時着しているだろうし、エマージェンシーを拾える可能性もある。」
シオンが窘め、ようやくミサキも引き下がった。
「ザラ隊改め、クールズ隊にするか?」
「イザーク、それ以上は俺でも怒りたくなるぞ?」
「ふん、分かったよ。心配なら、お前達二人で朝一番で探しに行けば良い。」
ニコルとミサキもそれで頷くしかなかった。実際、闇雲に探して見つかる場所でもない。
戦闘後、アークエンジェルからカガリとレナの捜索に駆り出されたキラとユリは二時間というマリューの命令も無視して、バッテリー切れギリギリまで探し続けていた。キラがとにかく、カガリを探すのに執着していた上にユリもまたレナを放っておけずに帰還命令を無視して探し続けた。
「だから、僕は大丈夫ですって!言われたとおりに休んだし!」
「何が大丈夫だ!休んだと言ったって、アラートで一時間転がっていただけだろう!」
「大体、二人とも艦長に言われた二時間という命令も無視してたのよ?」
上官の二人に叱責されても尚、二人共まともに眠りもしないで再度の捜索に出ようとしたところを止められていた。そこにフブキがドリンクを持ってきた。
「……朝になれば、俺も一緒に探しに出る。だから、お前達はまず休め。」
「フブキは平気なの?」
キラが疑るような目で見るが、逆に睨んできた。
「…誰が一番、探しに行きたいと思っているんだ?」
キラは自分の無神経な発言に気づいた。そうだ、カガリに限れば一番心配しているのはフブキなんだ。本当はスカイグラスパーで飛び出したいのを必死に我慢している……
「………兄貴がこれだけ我慢しているんだ。お前達も我慢しろ…」
「……私達も大概悪いの。あの時、私達の誰かが一緒に行っていれば…」
年長の二人も責任を感じている。それを言われ、キラはフブキからドリンクを受け取って口にした。
イリア・カシムはレナ・クールズの両手を縛り、近くの洞窟に来ていた。スコールが来たおかげで、予備の水は確保できたのが幸いした……
「で、ヘリオポリスのことでなんで俺に食ってかかる?お前は地球軍の兵士だろう?」
全くの無関係、というわけでもないがここまでムキになるのはどうもおかしい。
「当たり前じゃない……私はヘリオポリスの学生よ。」
ヘリオポリスの、学生?
「なんでそれが地球軍に?」
「地球軍の新型艦とMSを見たからよ……軍の重要機密を見たから拘束されてね。」
なるほど、この少女はそれで足つきのクルーか。しかもそういう理由ならば納得は出来る。
「そりゃそうだ。けどな、元を辿れば中立と言っておいてあんな物作ってたお前さんの国が悪いんじゃないの?」
「だから、攻撃したザフトは悪くない?第八艦隊との戦闘でデュエルはヘリオポリスの人達が乗ったシャトルを撃ち落としたのよ!?そっちはどうなるの!」
「…え?」
今、なんて言った?あの時、イザークが撃ち落としたシャトルに乗っていたのがヘリオポリスの避難民?
「それとも、ユニウスセブンに核を撃ったナチュラルは民間人も殺していいってザフトでは教わるの?」
「っ、そんなわけないだろう!?俺達はプラントを守るために、ユニウスセブンのようなことをしないために…」
「もうやったじゃない!地球軍やオーブ政府を言い訳にヘリオポリスを!」
「その地球軍よりは良いだろう!?ユニウスセブンで俺が世話になった人も死んだ!避難すら出来ず!こんな髪で捨てられた俺に優しかったんだ!!」
レナは息をのんだ。捨てられた?
「捨てられたって……どうして?」
「先天的な遺伝子欠陥だ…俺の髪の色は。だからいらないって事になったんだろう?生まれつき白髪の子供なんざ。」
生まれつき、髪の色が白い?それだけの理由で捨てられる、そんなことが?
「あの人は俺にとって姉や母親だったんだ。あんなことさえなければ、一週間後には結婚していたんだ…!」
「私の親戚だって、あそこにいたのよ!」
親戚?イリアは認識票を見たときから気になっていた……シオンと同じ名字に髪の色も顔立ちもよく似ている。
シオンの叔父夫婦が血のバレンタインで死んだのはアカデミーで聞いている。いや、だからといって……偶然、だよな?
しかし、どうしても嫌な可能性が拭えなかった。彼女がシオンの親戚であり、シオンが彼女のいるコロニーを攻撃したなんて……
「……やめよう。只の水掛け論になる。」
「不毛な議論って、言いたいの?」
「そっちはどうなの?」
レナも黙って、何も言わずに手を縛られたまま横になった。
「………ったく、本当に素人かよ。寝込みを襲われるくらい考えろっての。」
そう毒づきながら、イリアは携帯された毛布を羽織らせ、自分は薪を多く入れて火の側で眠りについた。
日が昇り始めた頃、ニコルが真っ先にヘリを借りて輸送機が落ちたポイントへ向かう。それに続いてシオンとミサキが捜索に出ていた。捜索を始めて太陽の光が眩しくなり始めた頃、ザフトのエマージェンシーを探知した。
だが、同じポイントで地球軍のものと思われるエマージェンシーを発見した。
「ニコル、俺とミサキでこっちのエマージェンシーに向かう。」
〈分かりました。そちらには多分、地球軍の捜索も来るかもしれません。〉
〈ええ、イリアを見つけたらすぐに引き上げるわ。〉
レナは目を覚ました。最初に眠ったときより身体が温かいと思ったら、毛布が二枚重ねられていた。イリアの分だ……
「よ、お目覚め?」
「…これ、貴方が?」
「ああ、なんなら添い寝が良かった?」
「セクハラ?」
イリアが苦笑し、ナイフでロープを切った。
「んなこと言う元気があるなら大丈夫だな……お迎えが来た。そっちにも捜索が来るみたいだ。」
「じゃあ、これでお別れ…?」
「で、済めば良いんだがな。今からでも投降する?」
投降…一瞬、そちらに誘惑を感じたが。
「嫌…」
「そうかい……じゃ、お互いにこのことは忘れよう。寝覚めが悪くなるだけだ。」
「…そうね。」
だが、嫌でもまたどこかで撃ち合うかもしれない。バルトフェルドの時のように……
「会わなければ…良かったのに。」
「そりゃお互い様だ。」
イリアの方から素っ気なく返し、レナもその後ろ姿を見送ってウインドの方へ向かった。改めて機体を起動させると、フレイムの識別信号が近づいてきていた。
「ユリ、聞こえる?」
〈レナ?良かった!ザフトの救難信号もあるけど、大丈夫?〉
「大丈夫!機体のバッテリーがまだあるから、こっちからも行くわ!」
そして、レナはフレイムと合流してアークエンジェルへ帰還……カガリもまたキラが発見して連れて帰る事に成功した。
アスランとカガリが原作そのままだったのに対し、イリアとレナは血のバレンタインの遺族同士……しかも、イリアは最悪の可能性の一端に触れてしまいました。
次回はオーブ入港……カガリとフブキの正体発覚も入れます。