機動戦士ガンダムSEED REVERSE   作:meitoken

27 / 65
今回はザラ隊の潜入と、あのフェンス越しです


PHASE-21 フェンス越しに

子供達に嬉しい報せがマリューから告げられた。情勢故に帰宅は出来ないが、今日の午後の間だけ家族との面会が許されたのだ。

 

ヘリオポリスではぐれ、ハルバートンから無事だけは伝えられていた家族……少なくともアラスカまで行って、そこで除隊するまでは会えないと思っていた家族。オーブに来て、流石に恋しくなった節があっただけに皆の喜びは大きなものだった。

 

そんな様子を脇で見ていたノイマン達も微笑ましく見つめていた。

 

だが、彼らは気づいていなかった。フレイがそれを見ていたことを……

 

フレイはサイ達を見向きもしないで艦内をぶらぶらと歩いた。父はあの時に死んで……母は小さい頃に亡くなった。一人っ子のフレイにはきょうだいもいない。

 

そして、カガリとフブキにも嫉妬の矛先が向いた。理不尽だ……あんながさつな女と、顔だけの無愛想な男がこの国のお姫様と王子様…砂漠でレジスタンスなんかしていたくせに。だが、フレイは二人のように戦闘機を動かすこともキラ達のようにMSを動かすことも出来ない。サイ達のようにブリッジの計器操作もできない。今更ながら、思い知った。この艦にはキラの傍以外に居場所がないことを。

 

 

 

モルゲンレーテの作業着を協力員から受け取ったアスラン達は分担してアークエンジェルの行方を調査していた。

 

アスランとニコルは平和な街並みにプラントと違うものを感じた。何せ、ヘリオポリスのように隔壁があるわけでもないからだ。地球特有の地震や雷などの自然現象の災害はあっても、ミサイルなどに比べれば可愛いものだろう。

 

「見事なまでに平穏ですね。」

 

「ああ、昨日自国の領海近くであれだけの騒ぎがあったというのに。」

 

「中立国だから、でしょうか?」

 

「平和の国、か。」

 

確かに平和だ……赤道連合やスカンジナビア王国も中立を表明しているから、こんな感じなのだろうか?子供達が走り回り、学生が普通にカフェでコーヒーブレイクを楽しむ。

 

 

 

イザークはディアッカの目を盗み、こっそりと土産物屋に入っていた。民俗学……特に東アジア共和国とオーブの成立に伴い、自然消滅した日本の文化に興味を示しているイザークにとってその名残が強く残っているオーブは巨大な資料室と言ってもいいだろう。モルゲンレーテの作業服と顔の傷のおかげで店員に疑惑の目を向けられたが、結果的にお守りを買う事ができた。イザークは急いでディアッカに合流した。

 

「おいおい、イザーク。どこに行ってたんだよ?」

 

「ちょっと用を足してきただけだ。」

 

アスランやニコルにも知られたくはないが、ディアッカとイリアに知られたらそれこそ言いふらされかねない。しばらくおかしそうに見られたが、イザークは睨み付けてこれ以上の詮索を封じた。

 

 

 

「何が悲しくて、男なんぞとコーヒー飲まなきゃならないのかね?」

 

イリアは公園で一服がてら、缶コーヒーを飲んでいた。隣で飲んでいたキールも一息つく。

 

「シオンとミサキのペアに賛成したのは誰だ?」

 

「ぐ…!にしても、平和だね。」

 

ふと、イリアはレナのことを思い出した。あの時、彼女が言っていたことが出任せだとは思わない。出任せであそこまで敵意を向けたりはしないだろう。

 

あの子もヘリオポリスではここの人達みたいに平和に暮らしていたのかな?

 

 

 

シオンはファーストフードショップのテイクアウトメニューを買い、ミサキに手渡した。

 

「ありがとう…」

 

「……こんな形で帰ってくるとはな。」

 

一口かじり、感慨深げに街並みを眺める。留学前と店舗などは変わっているが、平和な光景はあの頃と同じだ。

 

「…シオンの家族、今も元気なの?」

 

「ああ……アカデミーで話したよな?両親がモルゲンレーテに努めてるって。」

 

「ええ、でも無理よね?見学させて、なんて。」

 

「『血のバレンタイン』から連絡を取っていなかった。オーブ軍に引き渡されて銃殺が関の山だよ。」

 

両親に会いたくない、と言えば嘘になる。ヘリオポリスにいたかもしれないからだ。

 

レナ……この国にいるのなら、お前だけでも父さん達に会ってくれていると良いが。

 

 

 

一端、集合した八人は軍港が見える公園に集まっていた。

 

「そりゃ、軍港に堂々とあるとは思っちゃいないけどさ。」

 

「あのクラスの艦だから……秘密のドックにでもないと隠せないよな。」

 

「民間人の目に堂々と入れるわけにもいかないもの。」

 

ディアッカとイリアの分析通り、アークエンジェルは既存の地球軍艦より遙かに大型だ。加えて大気圏内の飛行も可能と来ている上にあの形状だ。そして、ミサキが言うように地球軍の所属である以上は民間人の目に入れるわけにはいかない。

 

「軍港にモルゲンレーテ、海側の警戒は驚くほど厳しい。外国の軍隊の視点に立つと、自分の国がいかにやりにくい国か実感させられる。」

 

「現地人のお前が言うと、説得力があるな。」

 

シオンの感想にキールが頷き、八人は再度調査を進めることとした。

 

 

 

モルゲンレーテの工場でキラ達は自分達のMSのOS調整をしていたが、レナはここに勤めている両親と再会して今は作業を中断している。カガリとフブキもやってきて、キラとユリは作業を中断していた。

 

「レナは家族と会っているんだって?」

 

「ああ……モルゲンレーテでMSを造っていた話で一悶着あると思ったが、久しぶりに会ってな。泣いてたよ。」

 

「まあ、無理ないよな…でも、珍しいですね。」

 

「何が?」

 

「私と父以外ならキサカやエリカぐらいにしか気を許していない兄様がこうやってキラ達には頻繁に会っている。」

 

そうなのか……そういえば、レジスタンスの時もサイーブ以外にはまともに接していなかったのをキラは思い出した。

 

「それはそうと、社員達がそのMSのことでぼやいていたぞ。三機とも限界ギリギリまで扱ったみたいだな。特にストライク……あのまま戦い続けていたら自壊していたぞ。」

 

それは社員達の雑談でも聞いて取れた。だが、それだけ乗り続けても守れなかったものがある。

 

「でも、カガリ……いくらお父さんがヘリオポリスのこと知らなかったからって、親子げんかして飛び出すなんて。」

 

ユリがコーヒーを手渡し、フブキも飲んでいた。

 

「父にお前は世界は知らないって言われたんだ。だから、見に行った。」

 

「…それが、砂漠でバクゥに喧嘩を売るって……大西洋連邦かプラントに留学じゃないのね。」

 

「砂漠ではみんな戦ってた。あんな砂ばかりの土地でも、必死に。」

 

「……ああ、ついていった俺も驚かされた。」

 

フブキも彼らの戦いには思うところがあったようだ。ただ、カガリを守るためだけじゃなかったのか。

 

「なのにオーブは……これだけの力を持ちながら、あんなことまでしておいてプラントにも地球軍にもいい顔をしようとしてる。ずるくないか?いいのか、それで!」

 

「……カガリは戦いたいの?」

 

キラの問いにカガリが詰まった。

 

「戦争を終わらせたいだけだ!」

 

いかにも直情的なカガリらしい答えだ。しかし……

 

「でも、戦っても終わらないよ。戦争は…」

 

それはキラが痛いほど分かっている。いくら守っても、次から次へと新しい敵が襲ってくる。現にアスランまで地球に降りてきて、追ってきたのだ。

 

「キラ、ユリ。」

 

レナが入ってきた。

 

「レナ、お父さんとお母さんはもう良いの?」

 

「うん……それとサイ達も家族に会っているそうよ。」

 

キラが新しいドリンクを手渡し、受け取るとサイ達の状況を伝えた。そういえば、今日はその日だった。キラは会わないことにして、ユリもそれに付き合った。

 

「…本当に良いのか?」

 

フブキが冷たいようで労るような目を向ける。

 

「良いんだ…それで。」

 

 

 

行政府のある一室……ウズミがある夫婦と対面していた。

 

「ヤマトご夫妻…ですな?」

 

キラとユリの母カリダが申し訳なさそうに頭を下げる。

 

「ウズミ様…二度とお目にかからないというお約束でしたのに。」

 

「運命のいたずらか、子供らが出会ってしまったのです。致し方ありますまい。」

 

二人の父ハルマもまた沈痛な面持ちになる。彼らはある秘密の共有者だった。でなければ、国の指導者と一市民がこうして出会うことなどない。

 

ウズミ自身、名前を聞いて驚いたのだ。キラ・ヤマトとユリ・ヤマトの姉弟……この二人が、あの時の子達ではと。

 

「どんな事態になろうと、絶対に私達があの子達に真実を話すことはありません。」

 

「…きょうだいのことも、ですな?」

 

きょうだい……まるで、キラとユリに他にきょうだいがいるかのような口ぶりだ。

 

「可哀想な気もしますが、その方がキラとユリのためです。」

 

「全ては最初のお約束通りに…ウズミ様とお会いするのもこれが本当に最後でしょう。」

 

「分かりました……しかし、知らぬというのも恐ろしい気がします。現に子供達は知らぬまま、出会ってしまった。」

 

そう、子供達は知らないまま出会った。彼らがひた隠しに、絶対に話さないと決めていることを。どれだけあの子達に憎まれようと、それはひとえに子供達を愛しているから。

 

「因縁めいて考えるのはやめましょう。私達が動揺すれば、子供達にも伝わります。」

 

ハルマの言葉にウズミも頷いた。

 

「ですな……しかし、どうして彼らは今日?」

 

ウズミは子供達が家族と面会できるように計らった。両親がモルゲンレーテに勤めているレナ・クールズも彼女が乗るウインドの整備を担当する形で面会を取り付けた。だが、キラとユリは面会を断った。その理由をカリダが明かした。

 

「今は…会いたくないとしか。」

 

ハルマも表情が暗くなる。

 

「キラが、そう言って……ユリも、自分だけ会うのは悪いと。」

 

「……お優しい子達です。」

 

そう、とても優しい子に育った。だが、それ故に悲しい。ひたすらに悲しすぎる。

 

 

 

時間が少し遡って、キラはM1のOS調整の結果を披露した。あの時のストライクより幾分かマシ程度に動くM1が今じゃストライクに勝るとも劣らぬ動きを披露していた。殆どキラが一人で構築したようなもので、ユリとレナが一般的なナチュラルのパイロットに合わせる微調整を行った。

 

ムウとレイラも興味があって、それを見学していた。が、二人は三人とも浮かない表情をしていることに気づいた。レナなど、仕事もかねてとはいえ子供達とは両親と過ごす時間が特に長いのに。

 

「レナ、どうしたの?」

 

「あ、大尉……いえ、何でも。」

 

「何かあるわよ……せっかくご両親と会えて…」

 

「……兄さんのこと、話せないから。」

 

兄さん……そうだ、シューターがあの時追撃部隊にいた。それはつまり………

 

「久しぶりに会えて、嬉しかった。このまま残りたいって思った…でも!」

 

レナがウインドの傍で座り込んでうずくまった。

 

「父さん達の造ったMSで、私と兄さんが、殺し合ってるなんて……ひっ、…ぇ……ぐ…!」

 

言えるわけ、ない……もし先遣隊の後にレイラに思わず話していなかったら、今どうなっていたのだろうか?只でさえ、父親達も仕事だったとはいえヘリオポリスが襲われる事態に関与していたのだ。レナは両親の都合で間接的に平和な暮らしを奪われ、兄と撃ち合うこととなってしまったのだ。

 

「兄さんと…戦うの、父さん達のせいだって……どこかで、思っちゃうの…!」

 

 

 

キラはOSの調整を終えたが、先ほどのフレイとの喧嘩が心に引っかかっていた。両親との面会を断ったのが、既に家族がいないフレイには同情していると思われた。キラはその時に気づいてしまった。フレイがまだサイへの気持ちを捨て切れていないことも……本当は、自分を好きではなかったことも。

 

間違ってしまった…何を、間違えたんだろう。僕達は?

 

「キラ。」

 

「なんです?」

 

「君こそ、その不機嫌づらはなんです?」

 

「そんな顔してませんよ。」

 

「してますって。」

 

呼び止めて、しつこく声をかけるムウに一応答えながら、ストライクの調整を行う。

 

「ご両親、会いたがってるぞ。ユリまで断ったみたいだしよ。」

 

ユリはシュウが手伝いながら、フレイムの調整を行っている。

 

「姉さんだけ、会っても良かったのに。」

 

「お前が会わないって言ったからだろうが。」

 

「僕…軍人で、こんなことしてます。MSの開発を手伝ったり、オーブを出ればまた戦うし。」

 

死にたくなかったから、怖くて必死に戦って、大勢殺している。

 

「それに、今会ったら言っちゃいそうで怖いんです。」

 

「何を?」

 

「なんで、僕と姉さんをコーディネイターにしたの?って…」

 

 

 

シオンはモルゲンレーテの近くにいた。昔は両親に近くまで連れて行ってもらったこともあったが……

 

「まさか、父さんと母さんがいるなんてこと…!?」

 

シオンは咄嗟に木陰に隠れて、チラリと工場を見る。遠目だが、間違いない。

 

レナ…父さん…母さん!

 

レナと、両親だ。レナがここにいる、と言うことは………

 

「シオン、どうした?」

 

キールに声をかけられ、シオンは我に返った。

 

「いや、何でもない。昔…両親に連れられてこのあたりを見せてもらったから……」

 

「そうか……」

 

 

 

アスランはシオン達も合流し、工場の近くにいたが軍港より警戒が厳しい。チェックシステムの攪乱も何重になっていて時間がかかる。知っている人間を捕まえた方が早いが、そうそう分かるものでもない。

 

完全に手詰まりだ……と思われたとき。

 

「トリィ。」

 

聞き覚えのある電子音声が聞こえた。空を見ると、それは……あのコペルニクスからプラントに行く間際、キラがマイクロユニットの課題でキラが造ろうと言って、アスランが別れ際に送ったトリィだ。前の休暇でラクスに会った時、彼女からキラが今も大事に持っていると聞いていた。

 

思わず右手を挙げると、トリィは主人を見つけたようにその手に止まった。イザーク達もそれを見つけた。

 

「なんだ、そりゃ?」

 

「へえ、ロボット鳥だ。」

 

「シオン…こんなペットロボット売ってるのか?」

 

イリアの問いにシオンが首を横に振る。

 

「いや、俺が留学する頃にはなかったから…オーダーメイドか、誰かの手作りじゃないか?」

 

「そうなの、でも可愛い。」

 

ミサキが指でツンツン、と頭を触る。

 

「トリィ!」

 

聞き覚えのある声……アスランは息をのんだ。

 

キラ……だ。トリィがここにいるということは……そこへ、もう一人作業服の少女が出てきた。

 

「キラ、トリィは?」

 

青紫の髪に緑の瞳………母親と同じ髪の色の少女、間違いない。ユリだ。

 

アスランは仲間に気づかれないようにゆっくりとフェンスの方へ歩いた。

 

「君の?」

 

「うん……ありが、とう。」

 

なんとか他人を装うが、難しい。ユリもそれを察して…言葉を出せない様子だ。

 

「おい、行くぞ。」

 

「昔、弟が友達に……大事な友達にもらった、引っ越す前にくれたものなの。」

 

ユリが他人を装った説明をして、アスランも納得した。

 

「……そう。」

 

後ろから、見覚えのある顔が走ってきた。無人島で出会った少女…カガリだ。

 

もう、いる理由はない。あの三人がその証拠だ。




フレイとの喧嘩は省いた代わりにレナの両親を罵倒しそうなこと、そして本編で重要なきょうだいを重視しました

シオンの両親を、という手はなりふり構わないならありなんでしょうが……素人意見ながら後々厄介なことになるでしょう。

何せ、留学生がコーディネイターとはいえザフトに入隊。連合に何を言われるか。それでシオンの両親を捕まえて、尋問も道徳的にも軍紀的にもまずいでしょうね。総合的に見て、危ない橋でしょう
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。