機動戦士ガンダムSEED REVERSE   作:meitoken

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遂にここです。ただし……


PHASE-22 惨劇

アークエンジェルは間もなく修理が完了しようとしていた。フブキとキサカも交えてアラスカへのルートを話していた時、ナタルが口を開いた。

 

「アスハ前代表は…当時この艦とMSのことをご存じなかったという噂は本当でしょうか?」

 

「ああ、父上は知らなかった。一部が大西洋連邦の圧力に屈してな……後の結果はご存じの通りだ。誰かさん達のせいでこちらの学生が戦争に巻き込まれ、家を失った。」

 

露骨とも言えるフブキの糾弾にマリュー達は返す言葉がなかった。だが……

 

「随分と地球軍がお嫌いなのね。」

 

「憎いさ…特にグラン・ハーベストがな。」

 

グラン・ハーベスト…ブルーコスモスともパイプがある大西洋連邦軍人の中でも指折りのタカ派だ。彼と因縁が。

 

「やつのように地球の国はプラントを撃つべき、だという輩はクズだ。自分達が地球の中心か何かだと思い上がっている。大国の軍人とは傲慢だからな、あんたもそれじゃないのか?」

 

射殺すような眼でナタルを睨み、睨まれたナタルも顔を伏せた。実際、マリューもそう思う。地球の国なら地球軍に着くべき……そういう節を匂わせながら、ウズミの提案を受けるのを反対していた。

 

「それで、キラ達を理由にあんたはオーブの国民も地球軍に入隊するべき、とでもいって徴兵するか?」

 

「……民間人を強制的に兵役させるべき、とまでは言わない。少なくとも、今の私は。」

 

以前、ナタルはキラとユリを両親を人質に軍に残そうとした。それを切り離したということは、やはり彼女なりにヘリオポリスは思うところがあるようだ。

 

「フブキ、それくらいにしておけ。」

 

「………アラスカに着いたら、キラ達を除隊させられるのか?」

 

「本人達も、元々アラスカまでのつもりだったから多分。」

 

「そうか……キサカ、彼らになら話して良いぞ。」

 

それだけ言って、フブキは出て行った。

 

「話していい、とは?」

 

「ああ、これは政府や軍…というよりオーブ国内では比較的有名だが、フブキはウズミ様の実の息子ではないのだ。」

 

マリュー、ナタル、ノイマンが息をのんだ。

 

「ブルーコスモスに酷い目に遭わされて、どこかから逃げてきたらしい。そのまま密航でオーブに来たところを軍で事情を聞いた後、ウズミ様が引き取ると決めたんだ。」

 

ブルーコスモスの被害者だったのか。ならば、確かに連合にも多少なりと支持者がいるブルーコスモスないし連合はブルーコスモスの狗に見えるのだろう。

 

「そんなことが…だから我々に。」

 

「冷静を装っていても、そういう事情ではな。頭では分かっても、地球軍とブルーコスモスはグルだと決めつけている。アラスカについても、このことは口外しないでくれよ?」

 

「はい……色々とありがとうございました、キサカ一佐。」

 

「いや、こちらこそ助けてもらった。既に家族はないが私はタッシルの生まれでね。」

 

あの時、『砂漠の虎』に焼かれた街の出身?確かに中東系やアフリカ系には見えたが。

 

「暴れん坊の家で娘を連れて帰ることも出来た。無事を祈っているよ。」

 

 

 

「全く!一体どういうつもりなんだ!?」

 

「確かに…山張りなんて、あの二人らしくないぜ。」

 

母艦の自室でイザークは毒づいて、遊びに来ていたイリアも頷いた。あの後、結局アークエンジェルの手がかりは見つからず、彼らは引き返した。問題はその後でのブリーフィングの内容だ。アスランは突然アークエンジェルがオーブにいると言い出したのだ。根拠が無いというのにアスランは譲らず、シオンまでが同意していた。しかも補給まで受けた。確かにアラスカに行く以上、あの艦は今自分達が網を張っている場所を通過する。いればの話だが…

 

「これでここに二日だ!違ってたら足つきはもう遥か彼方だぞ!」

 

「のしちゃうんなら、手ぇ貸すよ?」

 

グラビア雑誌を見ていたディアッカの言葉にイザークは一瞬詰まる。ディアッカも単に退屈なだけなのだろう。しかし…

 

「あいにく、それほど単純な頭でもなくてね。」

 

何故二人がここで網を張ると言い出したのかは判らないが、この待ち伏せが空振りならアスランが恥をかく場面が見られるし、当たればストライクを撃てる。どちらにしてもイザークにとっては好都合なのだ。

 

 

 

シオンは食堂でドリンクを飲んでいた。あの時、工場で見かけた少女。遠目ではあったが、あれは間違いなくレナだ。彼女がいるならばアークエンジェルがオーブにいるという事になる。それよりも、気になるのはアスランの方だ。アスランは指揮官としてもパイロットとしてもシオンやイザークよりも優秀だ。そんな彼がヤマを張るような策を取るなど、自分には信じがたい事だ。

 

「ここにいたの、シオン…」

 

脇からした声に振り向くと、ミサキが入口に立っていた。

 

「補給が終わったらしいわ。」

 

「そうか。後は、足つきが来るのを祈るだけだな……」

 

シオンは自分の言葉に内心呆れていた。祈る必要など無い。必ず来るのだから。しかし、ジブラルタルで危惧していた事が現実に起こってしまった事に関しては恐怖を感じていた。その上、本当に誰か死ぬような事になれば。

 

そこへ手が震えているのに気付いたミサキがそっと自分の手を重ねた。

 

「怖いの?」

 

ミサキが心配そうに横から自分の顔を覗き込んだ。

 

「ああ……あのパイロット達は確実に強くなっている。もしかしたら俺か、他の誰か死ぬんじゃないかって……」

 

胸の内の不安をこぼしていると、ミサキが突然肩にもたれかかった。

 

「シオン…私も正直言って怖いわ。誰かやられるかもしれない…私が死ぬかも知れない。だから、暫くこうさせて……不安を誤魔化したいの………」

 

シオンはミサキの不安を理解しつつ、彼女の気が済むまで肩を貸し続けていた。

 

 

 

デッキの上でアスランはキールとニコルを交えて雑談をしていたが、アスランはふとニコルに問いかけた。

 

「ニコルは何で軍に志願したんだ?」

 

容貌は別として、どう見ても戦場には向いていない性格の彼が銃を持っているのか、それは前から気になっていた。

 

「『戦わなきゃいけないな僕も。』って思ったんです。ユニウスセブンのニュースを見て。」

 

彼の解答は殆どの若者が抱えていた物と同じだ。実際シオンやミサキも同じような志願動機だと聞いている。

 

「そうか。俺は家族を養う、なんて昔からある平凡な理由だけどな。」

 

「平凡でも良いじゃないですか……」

 

「そうだな、ミゲルも身体の弱い弟の治療費だったんだ。」

 

そうすると、間にいるキールがアスランとニコルを引っ張り寄せた。

 

「全く、お前ら二人とも本当に良い子だよ。」

 

「は、はあ…」

 

「あの、少し痛いんだが。」

 

「片が付いたら、三人でぱーっとやらないか?」

 

キールの誘いにアスランも苦笑して、頷いた。

 

「ああ、そうだな。」

 

コペルニクスに行く以前の記憶は少ないが、キールはよく遊んでくれた。交友関係が少なく、血のバレンタインの直後も会いに来てくれた。兄がいれば、こんな感じだったのだろう。

 

 

 

修理の完了したアークエンジェルはオーブ艦隊のエスコートを受けながら出港する手はずになっていた。また、カガリとフブキが降りてしまったスカイグラスパー二号機と四号機の空席はシミュレーションを丹念に重ねていたトールとシュウが埋める事となった。しかし、先日のカガリの失踪があるので、マードックは無論のことムウとレイラも難色を示していた。特にトールは正規の軍人では無いのだ。

 

「ストライクとフレイムの支援と上空監視だけだよ!それくらいなら俺達にだって!」

 

トールの志願についてレイラが問いかけた。

 

「バジルール中尉がそうしろと?」

 

「志願したんですよ!俺だって、頑張らないと!」

 

「………本当に、支援だけにしてよ…」

 

レナが不安げな声を出すが、トールは二人に楽観的な笑顔を向ける。

 

「だから大丈夫だって!」

 

もう止める事はできないようだ。キラは諦め、その場を去っていった。

 

 

 

カガリは防弾チョッキを着て、アークエンジェルへ向かおうとした。しかし、そこへウズミが入ってきた。後ろにフブキもいる。

 

「あの艦と共に行く気か?」

 

「そうです。」

 

「では、地球軍の兵としてプラントと戦うのか?お前はそれほどまでに戦いたいか?」

 

父はまるでカガリの言い分を理解してくれない。だが、カガリは引き下がらない。

 

「違います!彼らを助けたいのです!それで、こんな戦争を一日でも早く終わらせたい!」

 

「お前が戦えば終わるのか?」

 

私が戦えば、戦争は終わる?前にモルゲンレーテでキラが言った。

 

『戦っても戦争は終わらない。』

 

『なら、どうやって勝ち負けを決める?敵である者を全て滅ぼして、かね?』

 

バルトフェルドがいっていた。『戦争には明確な終わりのルールがない』……カガリ自身も気づかず、あの男の言葉が胸に突き刺さっていた。

 

私が戦っても、終わらない。じゃあ、どうやって?

 

「お前が誰かの夫を討てば、その妻はお前を恨むだろう。お前が誰かの息子を討てば、その母はお前を憎むだろう。そして、お前が誰かに討たれれば私やフブキはそいつを憎むだろう。こんな簡単な連鎖が何故分からん?」

 

「分かっています!しかし、この国で自分だけのうのうと…!」

 

「そんな安っぽい独りよがりの正義感で何が出来るか!」

 

久しぶりの父の怒号にフブキさえびくりとするが、すぐに父が両肩に手を置く。

 

「銃を取るばかりが戦いではない。戦争の根を学べ、カガリ。」

 

「お父様…」

 

「撃ち合っていては何も終わらん。フブキ、お前もそれは同じだ。今のは、お前にも言ったことなのだ。」

 

兄様にも?

 

カガリもフブキの身の上は聞いている。ブルーコスモスから逃れ、この国に密航してきたこと。孤児であることも………

 

 

 

アークエンジェルは護衛艦群がエスコートに着く形で出港することになっていた。まもなく出港する時、キラとユリを上部デッキに上げて欲しいと言ってきた。

 

「キラー!ユリー!」

 

カガリが礼服で走ってきて、フブキも後から着いてきていた。

 

「お前達の、ご両親!あそこに!!」

 

展望デッキを見ると、そこから母が自分達を呼んで父が手を振っていた。そして、大急ぎできたカガリが上部デッキに来た。

 

「お前ら、何で会ってあげないんだよ?」

 

「…今は、ごめんって伝えてくれる?」

 

会えない…会ったら、全部言ってしまいそうだ。母親同士が仲が良かったからアスランと月であそこまで仲良くなった。

 

言えない……アスランの母が血のバレンタインで死んだことも、アスランがそれでザフトに入って、ヘリオポリスを攻撃したなんて…!そして、何度もアスランと撃ち合ったなんて、姉さんも…アスランと戦ったなんて。

 

「いいのか?」

 

「……うん、今会ったら…色々、話せないこと全部言いそうだから。」

 

「ユリ……」

 

「フブキも、レナに会ってきたら?レナ、喜ぶわよ?」

 

「……ああ。」

 

きょとんとしたフブキが答えた。

 

「それじゃあ、キラ。先に降りてるから。」

 

ユリは両親に手を振って、フブキと一緒に一足先に降りていった。

 

「カガリも元気で…その、色々とありがとう。」

 

本当に、彼女と会えて良かった。もし、砂漠で彼女と会わなかったらどうなっていたか分からない。

 

「キラ!」

 

呼び止められた、かと思ったらカガリが勢いよく抱きついてきた。

 

「お前…死ぬなよ?」

 

「大丈夫…もう、大丈夫だから。」

 

 

 

ユリはフブキと一緒に歩いていた。

 

「…本当に良いのか?」

 

「うん……会ったら、ワンワン泣く以上にね。」

 

言えない…アスランがザフトにいたなんて。母はアスランのことを友人の息子、というのを差し引いてもいたく気に入っていた。昔は冗談めかして、自分と結婚して欲しいなんて言ったほどだ。

 

「で、話は変わるがカガリに気を遣ったのか?」

 

「………まあ、ね。フレイと比べればあの子ならキラのこと…安心できるから。」

 

「過保護だな……」

 

「貴方は?」

 

問い返すと、フブキも数秒うなる。

 

「その辺に転がるお坊ちゃんよりは、キラの方が良いな。」

 

「そう……」

 

最初、良い印象はなかった。だが、彼のカガリへの想いは本物だし、仲間と普通にコミュニケーションを取っていた。心を開くのに時間がかかる、というタイプなんだろう。

 

「フブキ…」

 

レナが来た。

 

「それじゃ。」

 

 

 

「フブキ…あの、父さん達のことありがとう…」

 

「俺は何もしていない。父上の采配だ。」

 

どうしても、フブキの顔を直視できない。

 

「アラスカに着いたら、除隊するか?」

 

「え?……まだ、決めてない。」

 

アラスカに着いたら、どうするか。どうしよう。本当に考えていない。兄のことを放っておいて良いのだろうか?

 

「………俺は除隊を勧めるぞ。碌な事にならないだろうからな。」

 

「心配、してくれているの?」

 

「…ヘリオポリスでお前達三人に助けられたんだ。寝覚めが悪い。」

 

そのまま降りようとしたところで、レナはフブキの背中に抱きついた。

 

「レナ?」

 

「……また、会える?」

 

「…………安請け合い、は無理だな。」

 

「嘘でも、うんって言ってよ。」

 

「悪かったな、そういう気の回し方は出来ない。」

 

 

 

ザラ隊はオーブ艦隊が出ているのを捉えていた。演習というスケジュールはなく、艦の誰もがその中にアークエンジェルがいるというのを期待していた。そして、その期待は実った。

 

〈敵艦隊より離脱艦あり!艦特定………足つきです!〉

 

〈何!?〉

 

イザークが予想だにしない声を上げた。ディアッカが口笛を吹き、ニコルが弾んだ声で叫んだ。

 

〈当たりましたね、アスラン!〉

 

「出撃する!今日こそ足つきを落とすぞ!」

 

 

 

〈レーダーに反応!数七……いや八!〉

 

クルーの顔にやはりという色が浮かんだ。当然敵は考えるまでもないだろう。

 

〈機種特定!イージス、バスター、ブリッツ、デュエル、シューター、シグー三!〉

 

機体のコクピットでユリは一人確信していた。キラも同じ思いだろう。先日モルゲンレーテで突然トリィが外へと飛び出していき、それを追いかけてキラと外へ出たら、一人の少年の手に止まっていた。アスランだ。彼は仲間と共に自分達の行方を求めてオーブへ潜り込んでいたのだろう。そして、彼からトリィを受け取ったキラこそが確たる証拠だ。

 

〈逃げ切れればいい!厳しいとはいえ各員健闘を!〉

 

 

 

 

アークエンジェルから煙幕が放出され、船体を覆い隠した。

 

〈煙幕?〉

 

「ち!こしゃくな真似を!!」

 

イザークは舌打つが、煙幕の中から戦闘機が現れた。

 

「戦闘機?」

 

ビームライフルを撃つが、四機は寸前にそれを躱した。そして、その直後に煙幕からビームが飛んできた。幸いその攻撃は八機を貫くことはなかった。

 

〈散開!〉

 

アスランが指示し、右にイージス、ブリッツ、シューター、キール機、左にデュエル、バスター、イリア機、ミサキ機に別れた。そして、それから間もなくランチャー装備のストライクとアックス装備のフレイムが飛び出してきた。オワゾに乗ったウインドもアスラン達の方へ向かってくる。

 

「ストライクゥゥゥ!!!」

 

〈こっから先へは行かせねえよ、フレイム!!〉

 

イザークはグゥルのミサイルをストライクに撃ち、バスターもライフルとガンランチャーを撃つが、バスターの砲撃を躱したフレイムがバルカンでグゥルを撃ち抜き、更に蹴りを入れてバスターを落下させる。

 

「このぉ!!」

 

イザークはバルカンをフレイムへ撃ちながら突進するが、間に入ったストライクが左肩のガトリングでグゥルのエンジンを破壊した。

 

 

 

「にゃろう!!」

 

イリアは重斬刀でアックス装備のフレイムに斬りかかる。フレイムはパンツァーアイゼンで受け止め、殴り飛ばし、シグーは海へ真っ逆さまとなった。

 

「もう終わりかよ!」

 

 

 

「こぉのぉぉぉ!!」

 

ミサキはライフルとガトリングを撃ちながらストライクと距離を置く。ランチャーを躱して海に墜とそうとした時、後ろからグゥルが撃たれた。

 

「戦闘機!?もうっ!!」

 

エールを装備した戦闘機を撃つが、それより先にウインドがビームライフルでグゥルを撃ち抜き、ミサキも海に落下した。

 

 

 

「イザーク!イリア!」

 

〈ディアッカとミサキもやられた!?〉

 

早くもやられた四人にアスランは目を奪われ、その間にフレイムは艦に着艦し、戦闘機がガトリングを射出した。

 

〈空中換装!?〉

 

キールが驚きつつもストライクとウインドを攻撃するが、煙幕から出てきたアークエンジェルも砲撃をし、フレイムも艦上からガトリングで砲撃する。それをかろうじて躱し、ブリッツがビームライフルをウインドに撃つ。しかし、フライトユニットの機動力がグゥルを越えていることもあって躱され、その間にストライクもランチャーからエールに換装した。

 

〈ウインドは俺が!!〉

 

シューターが先行し、キャノンを撃つ。ウインドはシールドでそれを受け止め、ライフルで応戦する。そして、キールもシューターの援護に向かった。

 

 

 

「てえええい!!」

 

ニコルは吠え、グレイプニールを発射するが、ストライクは余裕と言わんばかりにビームサーベルでグレイプニールを切り裂いた。ニコルは間髪入れずにビームサーベルで斬りかかるが、ストライクに押される。

 

「くそぉ!」

 

毒づいてビームライフルを撃とうとした時、右腕にミサイルが着弾した。

 

「こいつぅ!!」

 

今ミサイルを撃った戦闘機をライフルで撃つが、ニコルの中でストライクから注意がそれた。その隙を着いてストライクはブリッツの右腕を切り落とし、そのままブリッツをたたき落としてグゥルを奪う。

 

 

 

キラはブリッツのグゥルを奪ってシューターと共にウインドと交戦するシグーを蹴り、グゥルからたたき落とす。シューターがライフルで狙うが、ウインドがウルカヌスでライフルを破壊した。キラはシューターをウインドに任せ、そのままイージスと交戦に入る。

 

「アスラン……!」

 

イージスはライフルで応戦し、キラも撃ち返す。二機が交差し、イージスは変形してスキュラを撃つが、シールドを弾いただけに終わった。しかし、イージスは更に攻撃を繰り出して自身のグゥルをキラのグゥルに突っ込ませた。キラはストライクをジャンプさせ、イージスを狙うが二号機のトールが通信を入れる。

 

〈キラ!ソードを射出するぞ!!〉

 

 

 

レナはシグーがストライクに墜とされた後、シューターと斬り合っていた。シューターは切られたライフルを捨てて両手にビームサーベルを持ってウインドに対抗する。二機は互いに二本の剣で斬り合い、攻めあぐねていたがシューターのリニアキャノンがオワゾをかすめた。

 

「くっ!」

 

レナはウインドをオワゾから跳ばし、バルカンでグゥルを破壊した。支えを失った二機は地上へ落下していった。

 

 

 

 

「アスラン、もう下がれ!君達の負けだ!」

 

〈何!?〉

 

ソードに換装したストライクの中でキラは叫んだ。既にグゥルを失い、最後の僚機のシューターもウインドに抑えられている。更に上空には四機のスカイグラスパー。自機の後方にはアークエンジェルとガトリングを装備したフレイムがいる。彼らの敗北は明らかであった。

 

たのむ、引き下がってくれ。もう僕は殺したくないんだ。

 

キラはアスランが撤退してくれるのを祈ったが、アスランはなおも食い下がった。

 

「やめろ、アスラン!これ以上戦いたくない!!」

 

〈何を今更!討てばいいだろう!お前もそう言ったはずだ!〉

 

「アスラン!」

 

イージスがサーベルで斬りかかり、ストライクのシュベルトゲベールがそれを受け止める。

 

〈お前も俺を討つと言ったはずだ!!〉

 

 

 

〈兄さん!もう下がって!〉

 

「くっ…!」

 

確かにレナの言うとおりだ。どう考えても自分達の敗北だ。シューターもイージスもエネルギーが残り少ない。僚機の復帰も間に合わないだろう。しかし、ここで退いたらアークエンジェルを完全に逃がしてしまう。以前、次に会う時は討つと言った。しかし、自分は討つ意思のない相手に苦戦しており、今にも負けようとしている。そしてその相手は実の妹だ。

 

俺は…どうすれば……!

 

再び心に迷いが生じたその時だった。

 

〈どけ、アスラン!!〉

 

〈アスラン、下がって!〉

 

突然キールとニコルの声が聞こえた。突然の声にシオンは機体をイージスの方へ向け、それに反応したウインドも同じ方向を向いた。何時の間に戻ったのか、シグーが両手に重斬刀を持ってストライクへ突っ込んだ。ブリッツもミラージュコロイドを解除して、ランサーダートで突っ込む。艦上にいたフレイムがミサイルで二機を狙い、シグーはジャンプして躱すがブリッツはミサイルが直撃した衝撃で倒れる。

 

そのまま、空中から突進して剣を振り下ろすシグー。いくらPSでもあの高さから振り下ろされれば、パイロットにダメージを与えられる。と思われた時、ストライクはシオンから見ても鮮やかな動きで剣を突進してきたシグーのコクピットに突き刺した。

 

ストライクが剣から手を放し、そのまま呆然としているかのように立って、シグーも膝をついていた。一連の流れを見ても何が起こったのかシオンは理解できなかった。それがアスランとレナ、ストライクとフレイムのパイロットも同じなのかは分からなかった。

 

〈アスラン……無事か…〉

 

キールの声が聞こえたが、それはすぐに途絶えた。その直後、シグーが爆散した。

 

今の爆発は?ストライクがキールを?キールが………死んだ?

 

〈キールーーー!!〉

 

 




誠に申し訳ございません。ニコルは助かりましたが、ミゲルとは違うベクトルでみんなの長兄役のキールが死にました。

ネタバレですが、ニコルをブリッツのままヤキン・ドゥーエまでとなると…こういう手しか浮かばなかったので。

アスランにとってもキールは実の兄同然で、イザーク達にも慕われていました。
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