機動戦士ガンダムSEED REVERSE   作:meitoken

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ザラ隊との決戦、そして死んだキールの弔い合戦の前です。原作ではニコルが死んだ後の三人、こっちではニコルが生きていて、人数も多いからそこを少し力入れます。




PHASE-23 後悔と約束

黒いシグーが爆散し、レナは呆然とみていた。

 

キラが、殺した…兄さんの、仲間を…

 

通信越しにキールという名前が聞こえた。イリアじゃ、なかった。けど…キラが、私が…兄さんの仲間を…

 

 

 

ユリも震えていた。キラが、私達が…殺した…アスランの、仲間を……ヘリオポリスでもやった。だが、今回はトリィを一緒に探しに行った時に遠目だが見てしまった。彼の仲間を…あの中にいた誰かを…

 

私達が、あの中の誰かを……殺した。

 

遠目だが、皆がユリと同年代ばかりだった。それを、キラが…自分達が殺した…

 

 

 

アスランもまた、呆然と眺めた。つい数時間前……ニコルを交え、三人で騒ぎたいと言って約束したキールが…兄同然だった。血のバレンタインの後、母を失ったアスランを気遣ってくれたキールが…死んだ。

 

キラが、殺した…!ミゲルに続いて、今度は……キールを!

 

〈キ、キール?〉

 

〈馬鹿な…!〉

 

ディアッカとイザークの声が聞こえた。いつの間にか、バスターとデュエルも復帰していた。

 

〈な、何なんだよ…これ!〉

 

〈嘘、でしょ?〉

 

イリアの青いシグーとミサキの緑のシグーも合流し、起き上がったブリッツでニコルがつぶやいた。

 

〈そん、な…!〉

 

ザラ隊の誰もが彼の死に呆然としていた。ミゲルと同期で……衝突しがちなアスランとイザークを窘めて、地球生まれのシオンにも親身になっていたキールが………彼らにとって、ミゲルとは違う意味で兄に等しい存在だった。

 

その沈黙を破ったのはイザークだった。

 

〈クソぉ、ストライク!!〉

 

〈アスラン!〉

 

〈てめえら、よくもキールを!!〉

 

デュエルとバスターがストライクを攻撃し、イリアはウインドにライフルとガトリングを一斉に撃った。

 

〈ニコル、後退して!〉

 

ミサキも戦闘力が落ちたイージスとブリッツの前に躍り出てアークエンジェルにライフルを撃つ。

 

シオンもようやく我に返って、ウインドを無視してストライクにレールガンを撃つ。集中攻撃を受けるストライクにアークエンジェルとフレイムが援護射撃をして、ウインドもこちらにライフルを撃つが、ミサキがシールドでかばう。

 

母艦の援護射撃を受け、ストライクがアークエンジェルに戻ってウインドも続いた。

 

〈待て!〉

 

〈逃がすか!〉

 

ニコルもようやく自失から目が覚め、ランサーダートを投げてデュエルもライフルを撃つが、アークエンジェルの機関銃で阻まれた。

 

〈よせ、イザーク!今は下がるんだ!〉

 

バスターが散弾砲でアークエンジェルを牽制し、シューターもアークエンジェルにレールガンで砲撃する。

 

〈アスラン、早く!〉

 

〈しっかりしろ、お前が一番危ないんだよ!〉

 

ミサキとイリアが急かし、アスランはようやく自分がするべきは仇討ちではなく撤退するべきだと判断した。それが正しいのだ。

 

〈くっ!ニコル、先に行け!〉

 

〈…はい!〉

 

イザークが促し、一番損傷が酷いブリッツがデュエルに庇われながら後退し、シグー二機が後退し、バスターとシューターも続く。撤退の間際、一瞬だけキールのシグーの残骸を見てアスランもまた母艦へ戻った。

 

 

 

艦に戻ったキラ達を待っていたのはGこそ逃したが因縁の敵の一機を討った労いの言葉だった。それは彼らが自分達の事を仲間だと認識してくれている。コーディネイターのキラ達を。

 

だからこそ自分達が同胞を手に掛けている事を忘れ、労ってくれる。逃げるように格納庫を去っていき、ムウとレイラがいたわりの言葉を掛ける。

 

「みんな、お前らの事を仲間だと思っている。悪気がある訳じゃない。」

 

「分かって、います。」

 

ユリが肯定するようにムウの言う事は判る。しかし、だからこそ辛いんだ。レイラがキラの肩に手をかけ、強い口調で言った。

 

「キラ、私達は軍人で人殺しじゃないのよ。」

 

「……そんなの、建前じゃないですか…!」

 

レナが怒りの篭もった口調で言った。

 

「そうだ、建前だ。戦争はそういうことだ。でも、撃たなければ撃たれる!俺も!お前も!みんな!」

 

「知ってます!」

 

キラはやけになったようにはき出し、ムウが厳しい目で見る。

 

「なら、迷うな!命取りになるぞ!」

 

そうだ。わかっている。撃たなければみんなを守れない。

 

姉さんも…フレイも……

 

キラはうつむいたまま、パイロットロッカーへ向かった。

 

『友達が乗っているんだ!』

 

アスランに何度も返した、あの言葉……今となっては、それすらキラにとっては自分で自分にかけた呪いだった。友達を…みんなを守るために、アスランの仲間を殺した。

 

 

 

「くそぉぉ!!」

 

イザークはパイロットスーツのままロッカーを殴り続け、叫んでいた。

 

「くそっ、くそっ、くそっ!くそ、くそ、くそ!くそぉぉぉっ!くそ!このぉ!!」

 

イザークが蹴ったロッカーが開き、そこから緑の制服が出てきた。それを見た瞬間、彼の表情が凍った。それを着る者はもういないことを改めて思い知らされたから……

 

「ちょっと、イザーク…」

 

「何故あいつが死ななきゃならない!こんなところで!ええっ!?」

 

男性陣より先に着替えて様子を見に来たミサキが咎めるのをイザークはわめきながら打ち消し、アスランに詰め寄った。当たり前だ。自分達の中で一番キールと付き合いが長く親しかったアスランがいつもと変わらない態度なのだ。実際、シオンもアスランの冷徹とも言える態度に怒りを覚えていた。

 

そこで突然、アスランが最初に詰め寄ったイザークに掴みかかり、ロッカーに押しつけた。

 

「言いたきゃ言えばいいだろう!?俺のせいだと…!俺を助けようとしたせいで死んだと!」

 

「アスラン!」

 

ディアッカが諫めるのを見ながらシオンは自分の認識の間違いを悟った。自分やイザークだけじゃない。ここにいる誰もがキールの死にショックを受けているのだ。そして誰よりもアスランが。

 

「僕が、もっと早く戻れば…!」

 

既に着替えて、ソファーに座っていたニコルの襟をイリアが掴んだ。

 

「それで、代わりに死ねばよかったとでも言う気か?臆病者のお前なら、イザークや俺が泣かないとでも思ってるのか!?」

 

ニコルがイリアを振り払い、いつもなら見せない怒りの顔で逆に掴みかかる。今にも殴り合いに発展しかねない。

 

「じゃあ、どうすれば良かったんですか!?」

 

「やめて、イリア!」

 

「よせ、ニコル!」

 

「イザークもやめろ!」

 

ミサキが口ではなくイリアを力ずくで押さえて、ディアッカは皮肉屋の態度を出す事さえ忘れて掴み合っているアスランとイザークを引き離し、シオンもニコルを抑える。イリアが引き離した後、ミサキは崩れ落ちた。

 

「やめてよ……ここでみんなが殴り合ってもキールは戻ってこないわよ…」

 

「その怒りをぶつける相手は、誰だ!分かってるだろう!?」

 

シオンは自分でも珍しく熱くなり、二人の間に入った。

 

「お前に言われなくてもわかっている!そんな事は……!!」

 

イザークは涙を流しながら宣言する。

 

「ミゲルもあいつらにやられた!俺も傷をもらった!」

 

イリアがイザークの言葉を更に付け加える。

 

「ミゲルだけじゃねえ。ラスティもあの艦のために死んだ…オロールとマシューもあいつらにやられた……次で今まで連中にやられた奴ら全員分の落とし前を付ける!」

 

「……ええ。」

 

ミサキもそれに同意し、外へ出て行き、シオンも決意した。

 

そうだ!もう迷わない!例えレナでもこの手で討つ!キールと、仲間達の死に報いるために…!

 

「ニコル…」

 

シオンは同じくブリッツの修理に向かおうとしたニコルを呼び止め、殴った。

 

「二度と同じようなことを言うな…!」

 

涙が頬を伝うのを感じながらニコルを睨み付け、格納庫へ向かった。

 

 

 

シオンに殴られたニコルが最後に出て行き、一人ロッカールームに残ったアスランは自分の甘さを今になり自覚した。甘えていたのだ。自分は今までキラが自分を撃つ事など無いと、同時に自分がキラを撃つ事など無いと思っていた。その甘えの結果、キールの命を奪ってしまった。兄同然の彼を。彼を殺したのはアスラン自身の甘さだ。

 

『討たねば次に討たれるのは君かもしれんぞ。』

 

ラクスを送り届けたときにラウが言った言葉……討たれるべきだったのは俺だったのに、代わりにキールが死んだ。

 

「俺の……甘さが……お前を殺した…!…俺のせいだ!」

 

アスランは心に誓った。この甘さを完全に捨てきるために。いつもキラとユリのことばかり考えて、傍にいたキールのことを考えなかった自分と完全に決別するために。

 

「キラを討つ。今度こそ……必ず…!」

 

 

 

イリアは一番損傷が酷いブリッツの修理に参加していた。ニコルが死に物狂いで武器の調整を行い、イザークとディアッカも自分の機体は今回は整備班に任せていた。ミサキとシオンも参加していた。

 

ストライクのパイロットがレナだったかもしれない……だが、もう関係ない。例え、シオンの親戚だったとしても。

 

殺さなかった、俺が甘かったんだ!例え殺さなくても、腕ずくで連れてくれば…!

 

俺のせいなんだ…キールが死んだのは俺のせいでもある!

 

 

 

「代わります。」

 

ナタルがブリッジに上がり、マリューと交代する。マリューは「ありがとう。」と礼を述べて席を立つ。相変わらず、Nジャマーのせいでアラスカとの連絡はつけられない。まだ遠いのだ。

 

「このまま行けば明日には北回帰線を越えられるわ。そうすれば、連絡も付くでしょうけど。」

 

「ボズゴロフ級は高速艦です。あの後こちらをロストしてくれればよいのですが……」

 

しかし、その可能性は低いだろう。わざわざオーブを出るまで網を張っていた程のクルーゼ隊…このギリギリの状況で仕掛けてこないはずはないだろう。黒のシグーを一機失ったとはいえ最大の戦力である五機のGは健在で、まだあの青と緑のシグーもいるのだ。間違いなく、あの八機はクルーゼ隊の最強格のパイロットだ。

 

「因縁の隊ね…確かにしつこいわ。」

 

だが、次のナタルの言葉にマリューは首をかしげることとなる。

 

「フラガ少佐とウォン大尉はアレがクルーゼ隊ではないことを仰っていましたが…」

 

「え?だって、アレは……」

 

見間違えようのない五機のG、そしてあの黒いシグー……なのに何故クルーゼ隊ではないのだ?ラウ・ル・クルーゼと副官のレイス・シェイドがいるのが普通ではないのか?

 

「私は知りません。ただ、そう呟かれたのを耳にしただけで。」

 

どうなっているの?そもそも、何故あの二人だけ判るの?

 

それはマリューがヘリオポリスの時から感じていた疑問だ。ムウはラウ・ル・クルーゼの……そして、レイラは彼の副官でありラウと並ぶザフトのエース…レイス・シェイドの存在を最初から口にしていた。あの八機がいるなら母艦からの指揮で彼らがいても不思議ではないのに二人はそれを否定した。

 

あの二人にしか判らない要素でもあるというのかしら?

 

 

 

ブリッツの修理は整備班が彼らの熱意に応えてくれた上にニコル以外の六人全員もかかっていたおかげで通常より遙かに速いペースで進む。

 

「ニコル、お前は先に休め。」

 

「え、ですが…」

 

イザークが促し、ニコルが戸惑った。

 

「良いから休んでおけ!最終チェックでお前がいなかったら話にならん。」

 

ディアッカも肩をたたく。

 

「二時間位したら戻ってこい、そうしたら次はミサキとイリア。その後がイザークとアスラン、最後に俺とシオン。良いよな、アスラン。」

 

「ああ、分かった。ニコル、先に休んでくれ。」

 

「…わかりました。右腕の配線接続が途中です。」

 

 

 

レナはコーヒーのブレンドをする気も起きず、アラートで休んでいた。

 

あの機体に乗っていた兄さんの仲間、どんな人だったんだろう?

 

声が聞こえたわけではないが、あの中にイリアもいた。全員で一斉にキラに襲いかかったということは、それだけ大きな存在だったということだ。

 

敵、なのよね?私は…兄さんと、イリアの………

 

 

 

ユリは部屋で眠ろうとしていた。最近はシュウに手を握ってもらわなくても、眠れるようになった。でも……

 

キラが、アスランの仲間を殺した………私がアークエンジェルにいるのも、アスランは知ってしまった。

 

アスラン…私もキラも…殺しに来る、のよね?

 

その時、私はアスランを殺せるのかしら?

 

 

 

明け方、母艦でザラ隊の誰もが待ちかねた報告が耳に入った。

 

「レーダーに艦影!足つきです!!」

 

「間違いないんだな!?」

 

イリアが待ちかねたように聞く。

 

「間違いありません!」

 

パネルを見て、今までキールがしていた分析を今度はシオンがしている。

 

「北回帰線が目前で……小島だらけの海域だ。もうすぐ夜が明けるし、仕掛けるには有利か?」

 

誰もが悟った。これがアークエンジェルを討つ最後のチャンスだと。

 

「ストライク…フレイムもウインドも……今日でカタを付けてやる!!」

 

イザークが声を荒げ、ミサキが彼女らしからぬ言葉を発する。

 

「イザークの傷もキールの仇も、全部私が取る!」

 

「ミサキ一人でじゃない。全員で仇を取るんですよ!」

 

「ああ、そうだな!」

 

ニコルがミサキの言葉を訂正し、ディアッカも頷く。そして、自然とキールの後釜になったシオンにアスランが進言する。

 

「アスラン、これがラストチャンスだ…!」

 

「ああ……出撃する!」

 

アスランの命令に呼応し、パイロット達は機体へ向かった。そして、指示を受けた艦長も準備を進める。ブリッツも七人が一丸となって修理に参加したことで既に戦えるだけの状態に戻っている。ニコルだけでなく、アスランやイザークも最終チェックに参加したのだ。

 

皮肉なことに、兄役のキールが死んだことがきっかけでまとまるきっかけが出来たのだ。

 

 

 

北回帰線を目前にしたアークエンジェルは敵を捉えた。クルーゼ隊だ。やはり逃がしてはくれなかった。勝っても負けてもおそらくこれがどちらにとってもアラスカへ行く上での最後の戦闘となるだろう。だが、マリュー達に負ける気はさらさらなかった。

 

警報が響く艦内でフレイはパイロットロッカーへ向かうキラを見つけた。

 

「キラ!」

 

呼び止めはしたものの、言葉が浮かばない。膨れるのは今まで彼を好きでもないのに好きなふりをして騙し続けてきた罪悪感ばかりだ。先日のオノゴロでの喧嘩もあり、本当になんと言えばいいのか……

 

「キラ……キラ、私…」

 

言葉の見つからないフレイにキラが優しい声をかけた。

 

「ごめん…あとで。帰ってから。」

 

キラはそう言い残して、パイロットロッカーへ向かった。

 

そうだ。帰ってきてから全て話して、謝ろう。あの時だって必死だった。敵のパイロットが友達なら、きっと辛かったのかもしれない。それを知らずに父を守れなかったことを責めたこと…騙していたこと……

 

この前、カガリとレナが戻らなかった時なんてレナはともかく、カガリがあのまま死んでいれば良いとさえ思った。そうすれば、キラはまた自分の元へ来る。そう思ってしまったのだ…キラが二人のことを心配していたことなんて、考えようともしなかった。ユリにも、キラを騙して取ったことを謝って………レナにも、この前の遭難のことを。許してくれるかは分からないけど……そして、キラに。

 

オノゴロでキラは自分達が間違っていたと言った。ならばこれから正していこう。大丈夫…今度もまた無事に帰ってくる。今までだってそうだったんだから。

 

フレイはキラが帰ってくるのを信じて疑わなかった。

 

キラ、帰ってきて……今度は本当に、優しくしてあげるから。

 

 




弔い合戦と最後の戦いの前まで行きました。

出撃前のキラとフレイをアルタイムで見た人、これがキラとフレイの……と思わなかったでしょうね
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