機動戦士ガンダムSEED REVERSE 作:meitoken
爆発する工場区から五機のMSが飛び出し、内二機は工場区の周りを攻撃するザフトのジン三機の近くに降り立った。
アスラン・ザラはGAT-X303イージスで工場から出て攻撃を続けていたジンの一機に搭乗していたミゲル・アイマンから通信を受けた。
〈アスラン!あっちの三機は?〉
〈ラスティ達は失敗だ。残りの機体には地球軍の士官が乗っている。後……断定は出来ないが一機に民間人が乗るのを見た。〉
イージスと共に飛び出したGAT-X107シューターからシオン・クールズの声が聞こえた。彼も無事だったようだがラスティ達は……
〈そんな…〉
〈ナチュラルめ…!〉
合流た二機のジンから同僚のミサキ・グールドとイリア・カシムの絶望と怒りの入り交じった声が聞こえてきた。しかし、アスランはラスティ達の事以上に気掛かりな事があった。あそこにいたのは確かに三年前に月で別れた友人キラ・ヤマトだった。
〈なら、あの機体は俺達が捕獲する!イリア、ミサキ、付いてこい!〉
ミゲルが先ほどアスランが見た機体へ向かうが、思考はすぐに先ほどの少年に戻る。
彼が何故此処に?しかも地球軍のMSの開発現場に。まさかユリも此処に?……いや、そんなはずはない。あの二人がここにいるわけが……
アスランは自分に言い聞かせ、まずイージスのOSの書き換えを行うことにした。
GAT-X107シューターを奪ったシオン・クールズは動揺していた。妹が、レナがヘリオポリスに居たなんて…。確かに自分達はオーブ出身だがよりにもよってあの工場に。偶然居合わせただけ?もし、本当にアレがレナであのMSの内の一機に乗っているとすれば。
ミゲル達がパイロットを生かしたまま捕獲してくれればいいが…
キラは工場から飛び出した機体、GAT-X105ストライクのコクピットから見える外の様子に言葉を失った。ずっと変わる事の無いと思っていた風景。今それが目の前で焼かれていた。更にモニターの一つに映った映像を見て思わず身を乗り出した。シェルターがなかったのか外に出ていた友人達がすぐそこにいたのだ。だが事態は彼らの思いに構わず進む。
外にいたジンがこちらを攻撃してきた。キラを機体に押し込んだ女性が何とか動かしてはいるがその動きはコクピットの中から分かるほど酷い。
両脇にいるユリとレナが乗り移ったと思われる機体も同じ状況だ。二機ともジンを相手に回避さえ覚束ない有様。まだ調整が終わっていない?そんな不安がキラの脳裏をよぎった。
その時、ストライク目掛けてジンがサーベルを振り下ろした。やられると思った瞬間、女性が何かのスイッチを押した。そして、ストライクは腕を交差させ、ジンのサーベルを受け止めた。
「タキカワ伍長!PS(フェイズシフト)を展開させて!!」
〈りょ、了解!!〉
もう一機の機体GAT-X104フレイムの方から自分と同世代の少年の声が聞こえ、その直後に機体の色がトリコローレに変わり、ブレイズからユリの声が聞こえた。
〈キラ!無事なの?〉
「姉さん!?こっちは大丈夫!姉さんとレナは?」
キラの問いかけにレナの言葉が返ってくる。
〈私も何とか!〉
どうやら二人とも無事なようだ。色が群青色に変わったGAT-X106ウインドという機体にレナが乗っているようだ。しかし状況は相変わらずだ。PSというシステムのおかげで実弾兵器が主体のジンの攻撃は効かないが、戦えない事には変わりない。
ジンのサーベルがコクピットを狙ったのと前後して、友人達がストライクの後ろにいるのが見えた。このまま行けば、機体は無事でも彼らが倒れた機体に押しつぶされてしまう!
キラは咄嗟に操縦桿を動かし、ストライクを体当たりさせた。突然の反撃に驚いたのか、残りの二機もこちらに回った。
その間にもキラは女性を押しのけ、機体のOSを見た。
「無茶苦茶だ!こんなOSでこれだけの機体を動かそうなんて!!」
〈まだ全て終わってないんだ!仕方ないだろう!!〉
フレイムから先程の少年の声が聞こえたがキラは構わずに作業を進めた。
「姉さん!レナ!機体のOSを書き替える!僕に続いて!!」
〈え?……う、うん!〉
〈判った!〉
キラは驚異的なスピードで機体のOSを書き換えていく。
〈待って、キラ!早すぎる!〉
レナが悲鳴を上げるが、キラには聞こえない。起き上がったジンが再びこちらへ向かってきて、キラは頭部バルカン・イーゲルシュテルンでジンを迎撃する。ダメージを与えることは出来ないが、命中させることで突進の勢いを殺すことには成功した。
その間にもキラはバルカン以外に武器がないか確認すると、あるのは腰部に内蔵されたナイフ・アーマーシュナイダーのみ。
「これだけか!」
キラは毒づきながら、ナイフを抜いた。
ストライクは最初の出来の悪いロボットのような動きから一転、ジンのライフルの弾が避けているかのような身のこなしを発揮し、遅れてフレイムとウインドも動きが俊敏になる。
〈キラ、大丈夫!?〉
「なんとか!」
キラは先ほどから狙ってくる機体に狙いを定め、ナイフを持ったまま機体を突っ込ませた。
「こんなところで…!やめろぉぉぉ!!」
ジンの肩と首にナイフを突き刺し、動力を破壊した。それからまもなく、コクピットからパイロットが飛び出していった。それを見た女性が声を荒げた。
「まずいわ!ジンから離れて!」
キラはその言葉の意味を理解するより先にジンが爆発し、ストライクは吹き飛ばされた。
白髪の少年…イリア・カシムは今の状況が信じられなかった。先程まで動く事すらままならなかった機体の動きが急に良くなりミゲルのジンを撃破したのだ。
「ミゲルが機体を失っただと!大体何でいきなりあんなに動けるようになったんだ?」
〈イリア!ひとまず退きましょう!何故かはわからないけどあれだけ動ける上に武器が効かないならこっちが不利よ!〉
「…クッ!わかったよ!!」
ミサキ・グールドの正論にうなずかざるを得ず、イリアは機体を母艦へ引き返させた。
一方、コロニーの外では輸送船が撃沈された上に発進したMAメビウスは全滅していた。残ったのはムウとレイラが乗るメビウス・ゼロのみだ。
二人は空間認識能力の高い人間でしか扱えないガンバレルを巧みに操り、二機のジンを被弾させて撤退に追いやる。
〈大尉、このまま母艦をたたきますか!?〉
「そうしたいが、戦力差がありすぎる!……これは!?」
ムウは妙な気配を感じた。あのエンデュミオン・クレーター以来のこの感覚があるということは!?
レイラは青紫に塗られたメビウス・ゼロでムウのメビウス・ゼロが突然進路を変えるのに驚いた。
「大尉、一体…!?」
この気配は……間違いない。今はザフトの宇宙要塞ボアズとなった新星で戦った、あいつの気配だ!あいつがいる!!
ナタルはシャフトの中で目を覚まし、同じく難を逃れていたノイマンと合流して爆破されずに残ったアークエンジェルに乗り込んでいた。
「無事だったのは爆発の時に艦内にいた数名だけです。」
最悪だ……艦長以下主立った士官達はさっきの爆発でほぼ全滅してしまい、生き残ったのは僅かな下士官と艦内で発進準備をサポートしていた工員達だけ。実質、この艦で無事だった士官はナタルだけという最悪の状況だ。加えて、港は塞がれて身動きが取れない。
ナタルはブリッジのパネルを操作し、通信を開くがノイズだらけで何も聞こえない。
「まだ、電波妨害が生きている。」
ザフトの目標はアークエンジェルではない。いや、こちらも目標だが優先順位としては二番目……つまり、陽動!目標はモルゲンレーテのMSだ!
しかし、ここでは何も出来ない!
〈こち…X105……地球軍…応答を…〉
歯噛みするナタルの耳に僅かな声が入った。耳を澄ますと、何者かがこちらに通信を試みているようだ。モルゲンレーテにいる誰かが通信を試みているのか?
もし、Gを動かしている者からだとすれば少なくとも一機は無事だということだ。ナタルは決断を下した。ここでじっとしていても何も変わらない。ならば、すべきことは一つだ。
時間を少し遡り……キラ達はMSから女性を下ろし、介抱していた。ユリと一緒にMSに乗り込んでいた工員の少年も先ほど戦闘中に頭を打って気を失ってしまい、応急手当を受けていた。その間、サイ達がMSを見物していたところで二人が目を覚ますと、間髪入れずに銃を突きつけてきた。
女性は地球軍の将校マリュー・ラミアス、少年は下士官のシュウ・タキカワと名乗った。
「軍の重要機密を見てしまった貴方達をこのまま解散させるわけにはいきません。貴方達にはしかるべき場所で措置がとれるまで、私と同行してもらいます。」
「そんな!地球軍って……中立のコロニーであんな物を造っていたくせに!!」
ユリが反論するが、マリューは銃を再度向ける。
「黙りなさい!何も知らない子供が!」
シュウも銃を向けながら、諭すように言う。
「ラミアス大尉の言うとおりだ……中立という論理はもう通じない。お前達の外の世界はこれだ。地球とプラント、ナチュラルとコーディネイターは戦争をしているんだ。俺も志願して、入隊した。『エイプリルフール・クライシス』の暴動で両親が死んだから。」
『エイプリルフール・クライシス』………この戦争初期にザフトが核兵器抑止のために地球へ放った兵器、Nジャマーで発生したエネルギー枯渇事件だ。それによって、当時地球上の原子力エネルギーは無力化されて多くの凍死者や餓死者を出したのはオーブ出身のキラ達でも知っていることだ。
自分達とさほど変わらない少年がそんな目に遭って、戦争に参加した。自分達の外の世界を彼らは否応なく突きつけられた。
「私がお前を感じるように、お前もまた私を感じるのか。」
ラウ・ル・クルーゼはあの気配を感じ、ZGMF-515シグーで出撃していた。気配を追うと、そこにはあの時と同じMAがいた。間違いない、あの男がアレに乗っている。
「不幸な宿縁だな、ムウ・ラ・フラガ。」
「貴様、ラウ・ル・クルーゼか!」
ムウは出撃してきたシグーから感じている気配で確信していた。エンデュミオン・クレーターで戦ってから何度も撃ち合った、地球軍でも知らない者はいないザフトの仮面の男だ。
レイラはムウの通信からシグーのパイロットがあのラウ・ル・クルーゼだと聞こえた。そして、今自分が戦っているダークブラウンに塗られた高機動型ジン、通称ハイマニューバからあの女の気配を感じていた。
「レイス・シェイド…!」
うまく人に説明できないこの感覚が新星で戦って以来の宿敵の物であることをレイラは確信した。ハイマニューバの機関銃を躱し、ガンバレルを展開する。しかし、ハイマニューバは元々通常のジンより高い機動力を持つ上にこの機体はそれを更に超えている。ガンバレルでも追尾がやっとだ。
「相変わらず、因果な物ね。愛しく憎い、レイラ・ウォン……でも、今回は相手をしている暇はないのよ。」
レイスはハイマニューバをヘリオポリスの内部へと操縦した。残ったMSを破壊する方が優先順位が高いからだ。
それに、開けた場所でその武器を相手にするのは避けたいしね。
ガンバレルは全方位からの攻撃が可能な武器。だからこそ、既に前時代の兵器と化しているMAばかりの地球軍では数少ないMSに対抗できるのだ。わざわざ相手のテリトリーで戦う必要などない。
結局、キラ達はマリューの指示に従う事となった。キラのストライクとユリのフレイムは背中に武器を追加できるストライカーパックシステムを運用するMSだ。サイとトールが二機のトレーラーを運転し、シュウはウインドの武器を積んだトレーラーを運転し、同時に予備バッテリーを交換した。
「どれですか、パワーパックって?」
「武器とパックは一体になっているの。そのまま装備して!」
渋々指示に従う中、ユリはシュウが先ほどからこちらをチラチラと見ているのに気づいた。
「何?」
「いや……悪い。お前達の言うことも分かる………俺達地球軍が、勝手に中立のコロニーに戦争を持ち込んだ。少し前まで、地球の国だからオーブも地球軍に着けって思ってたけど…」
「謝るくらいなら解放してよ。」
「それは無理だよ……あ、ガトリングストライカーは実弾装備がメインだ。」
ガトリングストライカー……モニターで確認すると、左肩に200ミリの三連装ミサイルポッドとケーブルで直接繋がった65ミリ高エネルギービーム砲を、そして武器の名前通り大型の実弾式の86ミリガトリング砲を装備する追加武装だ。武器とバッテリーを一体にするということは、このフレイムとキラのストライクは追加装備の運用を主目的としたMSのようだ。キラのストライクも火力のあるランチャーストライカーを装備しようとしている。そして、レナの乗ったウインドはトレーラーにあったビームライフル以外に二本の対艦刀を装備した接近戦重視の機体だ。
先ほど乗っただけでも分かるが、間違いなくジンより全てにおいて勝っている。こんな機体をモルゲンレーテで極秘に造っていたなんて。工業カレッジの学生らしい興味をそそられる中、爆発音が響いた。
「増援か!?」
シュウがすぐに反応し、MSの手で下ろしてもらう。
「早く、装備を!PSを起動させるんだ!!」
既にウインドがビームライフルで応戦しているが、所詮レナは素人。当てられるはずもない。
〈キラ!ユリ!急いで!!〉
レナが半ばパニックになってビームライフルを撃ち続ける。MSに続いて出てきたMAも援護射撃をするが、被弾して高度を下げていく。それに前後して……コロニー地表で爆発が起き、そこから巨大な物体…………白い艦船が現れた。
「アークエンジェル!」
マリューがその名を口にした。アークエンジェル…アレが、あの白い艦の名前。とても戦争用とは思えない美しい姿に思わずユリは見とれてしまうが、警告音で正気に戻る。既に武器を装備し終え、PSも起動できる。
ストライクと共に生身のマリュー達を庇い、戦艦も援護射撃をするがMSの機動力では追い切れない。それどころか、こちらに近づいてきた。
「こ、こっちに来た!?」
ユリはガトリング砲を構え、ジンに狙いを定める。ジンは回避行動を取るが、僅かにガトリング砲の発射が早く、左腕を打ち抜かれた。だが、シグーがまだストライクを狙っていた。
〈じょ、冗談じゃないよ!〉
「待って、それは!」
キラがランチャーを構えるが、マリューが同時に制止するも遅かった。ストライクのランチャーはシグーを撃墜できなかった。否、もっと悪かった。シグーの腕を破壊することには成功したが、それと引き換えにコロニーの地表に大穴を開けてしまった。
「あ…そんな…!」
〈な、なんて武器を積んだの?〉
レナの言うとおりだ。今のビームが当たった場所に人がいたら……考えただけで恐ろしい。
その後、マリューからの指示で三機は戦艦、アークエンジェルへと向かった。
最初に書いたとおり、一部省いていますが基本は本編準拠。
下手の横好きで書いた物なので、お許しを。
因みにフレイムのストライカーパックシステムはエール以外は本作オリジナルです。同じ火力重視でもランチャーが対艦、拠点攻撃用のストライカーパックならばガトリングは拠点防衛、艦防衛、ミサイル迎撃重視の武器です。といっても、ガトリング砲の口径はイーゲルシュテルンより大きいからジン相手には十分な威力を誇るイメージで、メインも実弾だからランチャーより稼働時間は長い代わりに一発の威力で負ける武器で考えました。
尚、当初はエール相当も考えたのですが…機動力重視だと後発にジェットもあるし、ならば用途の違う接近戦と火力の装備にしました。
ウインドは最初からソードストライカーを一機のMS、シューターはバスターと比較した場合中距離、長距離支援を重視したMSをイメージしました。ただし、シューターは近接防御用で両肩のウェポンケースにビームサーベルが入っています。