機動戦士ガンダムSEED REVERSE 作:meitoken
アスランは目を覚ました。ぼんやりとした頭で辺りを見回すと、どこかの飛行艇のようだ。左腕を固定されている。誰かが手当てをしてくれたのか?
「気がついたか……ここはオーブの飛行艇だ。」
オーブの、飛行艇?よく見れば、話しかけてきたのは無人島で出会ったカガリ・ユラ・アスハだ。
「中立のオーブが俺に何のようだ?それとも、今は地球軍か?」
「……ストライクとフレイムをやったのは、お前だな?」
ストライクと、フレイム……ああ、そうだ。俺は、キラを殺した……
「見つからないんだ…キラが……ユリも。」
ユリ…!?じゃあ、やっぱりユリもあの艦に!?
「俺が、殺した…イージスで組み付いて、自爆した。フレイムが巻き込まれるのが見えた。」
あれじゃあ、二人共跡形もなくなったか蒸し焼きだろうな?
「……キラは、訳わかんなくて…!すぐ、泣いて!ユリも……そんなキラの保護者を気取って、喧嘩する普通の姉弟だったんだ!!」
カガリが二人のことを喚く。ああ、そうだ。俺は彼女にとって、二人の仇か。
「変わらないんだな。」
「え?」
「気がついたようだな……」
目を覚ましたシオンの目に入ったのは、銀髪の少年だ。
「誰、だ?」
「フブキ・クラ・アスハ……オーブ連合首長国、アスハ家の長兄だ。」
オーブのアスハ家?
「何故、ザフトの俺を?」
「我々は地球軍艦、アークエンジェルから人命救助の要請を受けた。人道的見地から現場に急行し、お前ともう一人のザフト兵を発見した。」
もう一人?あの状況だと…アスランかディアッカ?
「認識票を見た…シオン・クールズ、ウインドはお前がやったのか?」
ウインドの名前を聞き、シオンは震えた。うっすらとしていた物が鮮明になっていく。
「あ、ああ…お、俺は……!レナを…殺した…!!」
「泣き虫で、甘ったれで、優秀なのにいい加減な奴で……ユリも俺達の姉を気取って尻に敷いていたな。変わってないのか…」
カガリは呆然とアスランの独り言を聞いていた。
「キラと、ユリを知っているのか?」
「ああ、友達…だった。小さい頃から一緒だった。」
小さい、頃から?友達?キラと、ユリと……
「それで…なんで!それでなんで、お前があいつらを殺すんだよ!?」
「分からない…分からないさ、俺にも!!」
アスランは目が覚めたときの虚ろな態度から一変して、声を荒げた。
「別れて…次に会ったときには敵だったんだ!一緒に来いと何度も言った!あいつらはコーディネイターだ!俺達の仲間なんだ!地球軍にいることの方がおかしい!!」
コーディネイターだから?カガリも問いかけた。なんで、コーディネイターで地球軍にいるか?だが、カガリは知っている。守りたい仲間がいるから。
「でも、あいつは聞かなくて!俺の仲間を傷つけて…キールを、殺した!」
「だから…キラと、ユリを殺したのか?」
「敵なんだ、今のあいつらはもう!なら、倒すしかないじゃないか!!」
無人島で会った時のアスランは冷静沈着な軍人だった。だが、今は実年齢よりも幼い子供のように見えた。
「馬鹿野郎!何で、そんなことになる!何でそんなことしなくちゃならないんだよ!!」
「あいつらはキールを殺した!母が死んだ後、俺に会いに来てくれた…!俺にとって、兄さんだった!!ニコルも、あいつらに殺されるところだった!!」
「キラだって、守りたい物のために戦っただけだ!それで、なんで殺されなきゃならない!それも、友達のお前に!?」
こんな話があるか!?キラとユリが、アスランの友達で……そのアスランが二人の住んでいたヘリオポリスを襲い、二人がアスランの仲間を殺して、今度は二人がアスランに殺された。
「殺されたから殺して、殺したから殺されて…それで本当に最後は平和になるのかよ!?」
『お前が誰かの夫を討てば、その妻はお前を恨むだろう。お前が誰かの息子を討てば、その母はお前を憎むだろう。そして、お前が誰かに討たれれば私やフブキはそいつを憎むだろう。こんな簡単な連鎖が何故分からん?』
分かっていなかった…本当に……!ただ、キラ達を助けたいからアークエンジェルと行こうとした。甘ったれた、独りよがりの正義感だ!
「レナを、知っているんだな?」
顔を見て、認識票を見た時からフブキは恐ろしい仮説が浮かんでいた。そして、今のシオン・クールズの反応で確信してしまった。
「……妹、だ。」
フブキは息をのんだ。当たって、いた。親戚かと思ったが、妹だった。
「何故…何故、妹を殺した!?」
フブキは銃を向けながら、問いつめる。
「分からないよ……プラントに留学して、ザフトに入隊して………ヘリオポリスにいた!MSの開発現場に!」
「な、何?」
ヘリオポリス?あの時、確かにあそこにはストライク、フレイム、ウインドに加えてイージスとシューターもあった。二人共、分かっていて
「知っていて……妹が乗っている機体まで分かっていて殺したのか!?」
「じゃあ、教えてくれよ!?なんで、レナが地球軍にいる!オーブの学生で、しかもコーディネイターだ!」
「……仲間を、守りたいからだよ!」
「だったら、友達と一緒に来れば良いじゃないか!地球軍は叔父さんと叔母さんをユニウスセブンで殺したんだ!」
ユニウスセブンで……砂漠を出た後、身の上話で聞いた。つまり、こいつがザフトに入隊した理由はそれか!
「なんで、叔父さんと叔母さんを殺した地球軍に味方してまで友達を守るんだ!ヘリオポリスに戦争を持ち込んだ地球軍を!」
「お前だって、戦争を持ち込んだザフトだろうが!そんな言い訳がレナに通じると思っているのか!?」
シオンは息をのんだ。だが…!
「それで、平気なのか?お前は!」
「平気じゃないよ!でも、叔父さんと叔母さんのような人を出さないために…!レナは、俺の仲間を…殺したんだ!地球生まれの俺に対等に接してくれた、キールを…ミゲルを!」
「その結果はどうだ!?妹が住んでいるコロニーをお前が攻撃して、レナがお前の仲間を殺して、最後はお前がレナを殺した!」
「そ…それ、は……!」
「戦争が終わって…オーブに帰って、お前は両親になんて言う気なんだ!平和のためにレナを殺した?」
父上……これが、貴方のおっしゃっていた戦争の根?
シオンがレナのコロニーを攻撃し、レナはザフトと戦った。その結果、レナは多くのザフト兵を殺した。その中に兄の仲間もいた。そして、シオンはレナを殺した。これが戦争の根?敵であるならば例え兄妹でも討ち、仲間を討たれたから誰かを討ち、また誰かが討たれるという繰り返し。
そして、今度はシオンが両親に憎まれる。いや……フブキはレナを、キラやユリを憎からず思っている。命の恩人だから。それを殺したこの男を憎めれば、どんなに良いか?だが、そうなれば二人の両親は残される。
フブキはシオンに向けた銃を下ろし、壁を殴りつけた。
あそこにいたら、こんなことを知る機会なんてなかった……だが、知るには大きすぎる代償だ。キラも、ユリも、レナも……死んでしまった。
これが戦争の根だと言うのなら、どうやって絶てばいい?
しかし、フブキにはその方法も答えも分からなかった。
アークエンジェルは追撃に晒されながらも、辛うじてアラスカの防空圏内に入った。流石にたった三機でアラスカ本部JOSH-Aとやり合う訳にはいかず、追撃のディン隊も撤退してくれた。
だが、今度はムウとレイラがキラ達の捜索に行くと整備班に無茶をやらせていた。
「少佐!大尉!発進は許可できません!整備班をもう休ませてください!」
「オーブからはまだ何も言ってきてないんだろう?」
「それにもう本部の防空圏でしょ?もう安全じゃない。」
二人共、子供のような言い草で聞く耳を持たない。
「いえ、認めません!」
「けど、あいつらもし脱出してたら!」
「分かっています!私だって、すぐに助けに行きたいです!でも…それは出来ないんです!」
今のマリューの胸にあるのはあの子達を拘束した事への罪悪感と後悔だ。こんなことなら、本当にあの子達だけでもザフトに保護を要請なり何なりしてするべきだった。だが、もう遅い。
「今の状況で、貴方達を出すわけにはいかないんです!それで、少佐まで戻ってこなかったら私は…!」
思わず、この艦で共に過ごす内に育っていた気持ちが出てしまいそうになり、マリューはなんとかそれをしまい込んだ。
「今はオーブと、キラ君達を信じて留まってください。」
「……分かりました。」
レイラが小さなため息と共に納得し、ムウも頷いた。
「アーガイル二等兵。」
サイはシュウの様子を見に行ったところでナタルに呼び止められた。
「ヤマト少尉達の遺品を整理しろ。」
「遺品!?だって、まだ!」
何の情報も届いていない!そもそも、死んだという確認が出来ていないし認定から一日しか経っていないのに!
「艦長がMIAと認定したんだ、これが決まりだ。」
ナタルがいつものように淡々と伝えるが、少し口調を落とす。
「よすがを見つめて悲しんでいれば、次には自分がやられる。戦場とはそういうところだ。」
そんな……そんな、あっさりと!?
既にフレイはカズイから聞いた話が理解できなかった。一日経とうとしていたのに、キラは戻った様子がない。ユリとレナも、トールも見当たらない。聞いたところ、MIA……軍事用語で戦闘中の行方不明だという。訳が分からなくて問い詰めると…カズイ自身も自暴自棄になったように『キラが死んだ』と答えた。ユリも、レナも、トールも。
「死んだ…キラが?」
なんで?分からない……計画通りのはず。戦わせるだけ戦わせて、死んでもらうはずだった。そのために身体まで使ったけど…いつしか、本当に優しくしてあげようと思った。
分からない……計画通りなのを喜んで良いのかさえ。
翌日……アスラン達を出迎えに来たザフトのヘリがやってきた。
アスランはカガリに促され、ぼんやりとしながら立ち上がった。
「ちょっと待て!」
カガリに呼び止められると、彼女は自分の首から下げていた何か……ペンダントをかけた。
「ハウメアの守り石だ。お前、危なっかしい。守ってもらえ。」
ハウメア…確か、オーブで信仰される女神の名前だと聞いたことがある。なら、オーブの姫である彼女にとっては尚更大事な物のはずなのに。
「キラとユリを殺したのに…か?」
「……もう、誰も死んで欲しくない。」
シオンもまた、頭と腹部に包帯を巻いた状態でフブキに促されてボートに乗り込んだ。
「…世話になった。」
「……ハウメアの守りが、今もお前にあることを祈る。」
「妹を殺した俺を、許してくれるとは思えないな。」
自嘲するシオンにフブキはにらみつけてきた。
「懺悔くらいは聞いてくれるだろう?」
「……だと、良いが。」
ザフトの飛行艇へ向かうと、イザークが真っ先に身を乗り出してきた。
「貴様らぁ!どの面下げて戻ってきやがった!」
「おいおい…相手は怪我人だぞ。まあとにかく、無事でよかったよ……」
「捕まって。」
ニコルは相変わらず気を使って手を貸すが、イリアも安堵していたのが少し変に感じた。
「ストライクとフレイムは討ったさ…」
怒るかと思ったイザークは小さな微笑みを浮かべた。どうやら本気で自分達を案じていたようだ……アカデミーの頃から、事あるごとにぶつかっていたイザークの態度とは思えない。
「シオン…一言言ってやれ。」
イザークの言葉の意味が分からなかったが、ミサキを見て納得した。
シオンの姿を認めたミサキは彼が怪我人というのを忘れて飛びついた。
「よかった…無事で……本当に……」
シオンは痛みで顔を歪めるが、「ゴメン。」と一言呟いた後、
「ウインドは俺がやった……」
何か言われるかと思ったが、イリアは軽く背中をたたいた。
「ああ、そんなのはもうどうでも良いから……」
「カーペンタリアについたら起こしますから、それまで休んでください。」
ニコルが二人を簡易ベッドに横たえ、ミサキが毛布を用意しながら知らせる。
「ディアッカは、まだ捜索中だから。」
「そうか…」
個人的に出迎えたイザークの場面が好きです。
原作より人数は多いけど、ニコルは勿論イリアとミサキも心配していました。
もう四人ともアークエンジェルより二人の無事の方が大事なほど