機動戦士ガンダムSEED REVERSE   作:meitoken

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やっとJOSH-Aです。本部の偉い人は省きます。


PHASE-27 JOSH-A…前編

敵の追撃を受けながらも、アークエンジェルはアラスカ・JOSH-Aに辿り着いた。しかし、やっとの思いで辿り着いた彼らへ与えられたのは現状のままでの艦内待機である。バスターの回収も捕虜の扱いに関しての指示もないままというのは異常だ。ザフトがパナマに進攻しようとしているという噂も考えると仕方のない事ではあるが、だからこそアークエンジェルのデータが重要視されるのではと思う。

 

このとき、彼らは知るよしもない。自分達が死に物狂いで目指した本部が既に軍組織の不敗の震源地であり、その震源地が間もなく地獄に変わることを。

 

 

 

キラ・ヤマトは目を覚ました。視界がぼんやりしていると、そこからピンクの髪をした見覚えのある顔が覗いていた。

 

「ラクス……さん?」

 

「あら。ラクスと呼んでくださいな。キラ。」

 

自分は死んでいなかった?でも、なんで彼女がここに?

 

「あなたは傷つき、私の祈りの庭にたどり着いたのです。」

 

三十代後半の男が事実を告げる。

 

「そして、私がここへお連れしました……」

 

「っ!あ、ああ…」

 

キラはあの時の、トールを殺され、アスランと戦った記憶を思い出した。

 

「僕は……アスランと戦って…死んだ…はず……なのに…」

 

密着したイージスの自爆。それに焼かれて自分は死んだはずだった。自分はアスランの仲間を殺し、彼もトールを殺した。

 

ユリも自分を助けようとして爆発に巻き込まれた。ユリ!?

 

「ね…姉さん……も…死んだ…?」

 

ラクスの手がキラの手に重なる。そのぬくもりに涙があふれた。

 

「大丈夫です…キラ。お姉様もお友達も生きています。」

 

 

 

ユリはキラより早く目が覚めていた。

 

「私、は?」

 

「気がついた?」

 

まだ視界が定まらない中、同い年くらいの少女が覗き込んでいた。

 

「貴女、ユリ・ヤマトよね?ヘリオポリスのスポーツサークルで助っ人をやってた。」

 

「……貴女、は?」

 

「メイ・ハーベスト、貴女と同じヘリオポリスの学生よ。」

 

ヘリオポリスの、学生?ここは、オーブ?

 

「ここ、は?」

 

「プラントよ……プラントのアプリリウス……ラクス・クライン様の屋敷。」

 

プラント?ラクス……クライン?あの歌姫の?

 

「キ、ラ…キラ、キラは!?」

 

「貴女と一緒にいた男の子ね?大丈夫、違う場所で寝てるから。それと、隣を見て…」

 

指を指された方を見ると、隣のベッドではレナが眠っていた。

 

「私達…助かったの?」

 

「ええ……」

 

 

 

レナは…ゆっくりと目を覚ました。

 

「わ、たし……たしか…」

 

そうだ、あの時シューターと斬り合っていた。コクピットハッチを斬られてレナはその衝撃で気を失った。

 

どれくらい時間が経ったか、なんとか自力でコクピットから這い出してアークエンジェルに戻ろうとした。だが、彷徨えど彷徨えどアークエンジェルは見つからず、代わりに小さな家を見つけた。誰かいるかもしれないと、助けを求めようとしたところで力尽きたのは覚えている。

 

「ここ、天国?地獄?」

 

地獄にしては、随分と綺麗だが天国にしては随分と人間じみている。

 

「まだ、現世にいるわよ。」

 

レナより一つか二つ上の少女が覗き込んできた。

 

「わ、私…生きてる?」

 

「ええ、貴女の仲間も。」

 

 

 

カーペンタリアに帰投したシオンは外をぼんやりと眺めていた。オペレーション・スピットブレイクの準備が進められており、カーペンタリアとジブラルタルからも部隊が派遣されるのだ。

 

「シェイドだ、失礼する。」

 

副長のレイスがやってきて、シオンは敬礼をしようとするがレイスは手で制する。

 

「さて、報告は受けている。」

 

「……私のせいで、キールは。」

 

「イザーク達も同じようなことを言っていた。それを言えば、私と隊長も同罪よ。それだけに強敵だったということだな…アレのパイロット達は。」

 

そう、ストライクとフレイムのパイロットも…レナも……たった三機のパイロットに多くのザフト兵が倒れた。キールも、ミゲルも……

 

「……ウインドのパイロット、それが貴方に縁のある人間であったのならば、辛いのは貴方でしょうね。」

 

シオンは肩が震えた。

 

「………やはり、図星のようね。悪いけど、かまをかけさせてもらったわ。」

 

「仮にそうだとして、処刑するのですか?」

 

「いや、今更言ったところで傷を抉るだけだからね。………慰めにもならないが、それを討ち取った貴方とアスランは本国でも高く評価されているわ。アカデミーで貴方に嫌がらせをしたという生徒や教官も、今更文句は言わないでしょう。」

 

ああ、あいつらか。地球生まれを理由に言いがかりをつけて、教官にも嫌がらせをされた。アスラン達が助けてくれたのが懐かしいとさえ思う。見返してやりたい、と言う気持ちはどこかにあった。だが、レナを殺してまで見返したいとは思わないのに……そのレナを殺してしまった。

 

「貴方とアスランにはネビュラ勲章が授与されることになったわ。」

 

ネビュラ勲章……ラウとレイスが授与されたザフトで最上位の勲章だ。それを、俺とアスランが?

 

「それともう一つ、その戦果を評価されて…貴方とアスランは特務隊への転属が決まったわ。」

 

特務隊……現在国防委員会直属となっているザフトのトップエリート部隊、通称FAITH。

 

「それに併せて、貴方とアスランには本国の最新鋭MSの受領のためにも本国へ戻ってもらうの。」

 

「副長、それは…!」

 

「アスランのお父上がクライン議長の後任として評議会議長になってね……スピットブレイクもザラ新議長の元で勧められるわ。」

 

レイスはなだめるように穏やかな口調で語りかけるが、バイザー越しで表情の全てを窺えない。

 

「貴方もアスランも、キールのことで今は心が追いつかないでしょう。本国で英気を養い、戦争を終わらせるためにも力を尽くして。」

 

 

 

最高評議会では連合の事務総長オルバーニからマルキオ導師を通じてプラントとの和平交渉のための譲歩案が送られてきた。が、その内容は彼と会談を続けていたシーゲルも到底納得できるような物ではなかった。プラント政府が求めている完全な独立自治は認めず、これまでと同じく大西洋連邦、ユーラシア、東アジア共和国の連合中核であるプラント理事国の監視下に置かれるという根本的な状況は変わっていなかった。

 

強硬派トップのパトリック・ザラが議長となった上に、元々穏健派から強硬に移りつつあったユーリ・アマルフィも我が子同然だった青年の戦死を受け、完全に強硬派に転じている。息子がMIAになったことでタッド・エルスマンが穏健よりになったが、それでも旗印のシーゲルが辞任してしまったのは痛い。

 

マルキオ導師への一応の礼はパトリックからも伝えられることとなるが、結局スピットブレイクそのものは実行されることとなった。

 

 

 

「アラスカは核の直撃にも耐えうる構造を持つと言われている。最も今は使えんし、ザフトは使うつもりもないがな。」

 

アスラン達と別れたクルーゼ隊もスピットブレイクのための調査任務に出ていた。

 

「叩くにはグランドホローと呼ばれる内部に侵攻するしかないが、それもまた至難の業だ。不用意に手をだせんところだがな。」

 

スピットブレイクの目標は、目下パナマとされている。地球軍が有するマスドライバーを完全に潰すか、奪取することで地上軍と月艦隊を分断するためだ。何故、それでアラスカ本部を調査せねばならないのか……

 

「アラスカの情報は我らは常に手にしておかねばならん。が、今回この偵察も特務故に守秘義務が課せられている。誰かに冒険譚を聞かせたくとも戦後まで待てよ?」

 

最後に冗談めかして、ブリーフィングを終えて兵士達が退室した後……ラウとレイスの二人だけになった。

 

「情報という物はどこから漏れるか分からないものね…」

 

「ああ…思わぬところから、漏洩するから恐ろしいのだよ。」

 

 

 

アークエンジェルがJOSH-Aに到着して五日が経とうとした頃……上陸さえ許されないクルー達はストレスをためつつあり、マリューが確認を取っても軍令部のウィリアム・サザーランド大佐からの指示あるまで待機の一点張り。まるで平行線だ。

 

その状況下、トールが死んだ事実からミリアリアは殆ど食事も喉を通らず、日に日にやつれていた。そんなミリアリアをサイが医務室に連れて行き、入った後。

 

「なあ、先生よぉ。」

 

聞き覚えのない声に反応すると、ベッドに横たわっていたのは捕虜になったバスターのパイロットだ。

 

 

 

医務室に誰もいなかったため、医師を探しに行こうとしたらフレイに呼び止められた。それとほぼ同時にトリィがサイの肩に止まった。数少ないキラの遺品で唯一、整理せずに残しておいた物だ。時折艦内でも飛んでいるのを見かける。まるで、トリィだけは今もキラを探しているような気もしていた。

 

「俺に何?」

 

「何って…」

 

だが、それとなくサイは気づいていた。

 

「トールがいなくて、キラがいなくて…ユリも…レナもいなくて、みんな悲しいんだ。俺も…悲しい。」

 

一度、あの砂漠で買い出しに行ったときに戻ってこなければいい、それどころかコーディネイター嫌いのフレイが何でコーディネイターのキラなんかと……とさえ思った。あの時の自分の勝手さと、キラの言葉でサイは自分がいかに無意識でキラを傷つけてきたのかを思い知らされていた。フレイを取られた悔しさとない交ぜになって、ストライクに乗った。だが、それで今………キラとトールがいない事への喪失感がこんなにも大きくのしかかる。

 

「だから俺…今、君を慰めてやることなんか出来ないよ。ごめんな、誰か他の奴に言って。」

 

「けど、サイ!」

 

「フレイ!」

 

「貴方、分かってたじゃない!私、本当はキラのことなんか!」

 

余りに勝手すぎる。その言い分にサイは遂に怒鳴った。

 

「いい加減にしろよ!君はキラのこと好きだったろう!?」

 

「違うわ!」

 

「違わないさ!最初はどうだったか知らないけど、あいつ優しくて…!だから…そういう奴だから!」

 

「違う!違うわ!」

 

なんて勝手なんだ!どんな思惑かは分からないけど、キラに寄り添って…それで本当に好きになって!今更、俺に縋るなんて!?

 

「フレイ…サイ…どうしたんだ?」

 

シュウだ。シュウもまだどこか憔悴している。どことなく、気づいていた。ユリのことが好きだったんだ。『エイプリルフール・クライシス』を引き起こしたコーディネイターのユリを……同じコーディネイター嫌いでも、なんでこんなに差があるんだ!?

 

「シュウ!貴方だってそうじゃない!貴方、どうせユリのこと本気で好きだったわけじゃ」

 

シュウが突然フレイをひっぱたいた。

 

「本気で好きだったんだよ!一目惚れだった!!アラスカについたら、除隊するかもしれない!だから、その時に言おうとしたのに…!俺、は……!」

 

「何よ、地球軍の軍人のくせに!勝手なことばっかり!!」

 

「勝手なことばかり言っているのはお前だろう!?キラに何か吹き込んで、そのキラが死んだらサイとよりを戻すなんて!!勝手にも程があるだろう!!」

 

 

 

「何だよ、その面は?俺が怖い?珍しい?」

 

最初に見たときと同じく、あからさまにナチュラルを見下して嘲笑してくる態度だ。

 

「大丈夫だよ。ちゃんと繋がれてっから。」

 

わざと縛られている腕を見せて、再び横になる。

 

「つうか、お前また泣いてんの?何でそんな奴がこんな艦に乗ってるんだか?そんなに怖いなら、兵隊なんかやってんじゃねえっつうの。」

 

こいつが、こいつがトールを……!

 

初めて目の当たりにする敵兵への恐怖とトールが死んだ絶望でミリアリアの心が限界を超えようとしている中……

 

「ああ、それとも馬鹿で役立たずなナチュラルの彼氏でも死んだか?」

 

馬鹿で…役立たずな……ナチュラル…!!

 

ミリアリアの心が遂に限界を超えた。

 

こいつが!こいつらがトールを!キラを!ユリを!レナを殺した!!みんなもう帰ってこない!なのに、何でこいつが入れ替わるように!?

 

ふと、目に入ったナイフで襲いかかった。パイロットは咄嗟に身を起こして、躱すが。

 

「な、何すんだよこいつ!」

 

「うぅぅ…うぅ………うわあああああああ!!!」

 

再びナイフを振りかぶって、ベッドのカーテンが破かれて二人共飛び出す。今度こそ殺してやろうとしたところでサイが羽交い締めにした。

 

「ミリアリア!」

 

「離してぇ!!」

 

「落ち着くんだ、ミリィ!!」

 

「トールが!トールがいないのに!!なんで、こんな奴!こんな奴がここにいるのよぉ!?」

 

暴れに暴れ、ようやくミリアリアはナイフを手放した。

 

「なんで、トールが…トールがいないのになんでぇ…!」

 

シュウがそっとナイフを拾い、パイロットの額の出血を止めようとしたところで何か音が聞こえた。

 

いつの間にか、入り口にいたフレイが銃をパイロットに向けていた。

 

「フレイ?」

 

「おい、よせ…!」

 

シュウがなだめようとするが、フレイは聞こえていない。

 

「コーディネイターなんて……みんな、死んじゃえば良いのよ!!」

 

ミリアリアはその言葉に反応し、思わずフレイに飛びかかった。同時に銃が発射され、照明を割った。

 

その光景を見た、三人は呆然としていた。




虎と同じく、前編と後編でわけます。

ミリィの暴走はやはり、入れたいと思ったのでやりました。
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