機動戦士ガンダムSEED REVERSE   作:meitoken

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アニメ本編のあの見せ場です。


PHASE-29 舞い降りる剣

ザフトによる奇襲を受けたアラスカ守備軍は迎撃に出ていた。しかし、主力を全てパナマに移してしまった為に、残っている部隊はたいした数ではなかった。基地に残っている僅かな数の艦船、戦車、戦闘機はザフトのMSに次々と討たれていった。

 

「ちっ、面白くない的だな。こんなもんしかないのか?」

 

イザークは余りに歯ごたえのない相手ばかりで拍子抜けしてしまった。いくら数が少ないといっても、本部なんだ。落とされれば危ないことくらい分かるだろうに。

 

〈ぼやかないの、こっちはチャンスなんだから。〉

 

〈ええ、早めにゲートを潰して降伏を促しましょう。〉

 

ミサキが窘め、ニコルはいかにも彼らしい考えを口にする。

 

〈まあ、その前に守備軍全滅もアリかな?〉

 

グゥルを狙ってくる戦車隊に向けてイリアがシールドのガトリングを撃ち込み、ミサキは戦闘ヘリを撃墜してデュエルとブリッツはバクゥとザウートを上空から援護する。

 

 

 

「生贄はユーラシアの部隊とあれか…」

 

ラウ・ル・クルーゼは戦場から離れた場所で双眼鏡を覗いていた。双眼鏡にはメインゲートの防衛艦隊の中に、一際目立つ白い艦が映っていた。隣のレイス・シェイドもほくそ笑む。

 

「色々と面白い構図を考える物ね……地球軍も。」

 

二人は、余興は終わりと言わんばかりの素振りで指揮官用とパーソナルカラーの塗られたディンに搭乗した。ラウのディンのコクピットには地球軍の軍服を着た赤髪の少女が気を失っていた。

 

「強固な守り手が立ち塞がるほど、その奥の宝への期待は高まるという物だぞ、レイス。」

 

そして、ザフトではクルーゼ隊が取り逃がしたとしてその名が広まっているアークエンジェルは正に恰好の餌だ。

 

「そうね、頑張ってもらわなきゃいけないわね。足つきには…」

 

二人は知っている。この戦闘の結末を……

 

 

 

ムウはアラスカ基地内でバイクを飛ばしていた。あれから自分は最後にもう一目だけマリューの顔を見ようとアークエンジェルへ戻ろうとしたところで敵襲の警報が鳴り響いた。基地の中を移動していながら妙な感じがした。基地の内部はもぬけの殻で行き交う人すらいない。更に司令本部にラウ・ル・クルーゼの姿があった。司令室の中でラウは「地球軍では既に用済み」と言った。その意味は、司令部に残されていたデータが物語っていた。

 

何かの間違いであって欲しいと思ったが、それならばあの異常なまでのごった返しも説明がつく。

 

急がなければ!早くこのことをアークエンジェルに!!

 

やっと搬入用のエレベーターに辿り着くと、聞き慣れた声が耳に入ってきた。

 

「少佐ーー、待ってーー!」

 

声のした方向へ向けると、レイラ・ウォンがジープでこちらへ向かってきた。ムウは慌ててエレベーター内部の脇へ逃げた。その直後、ジープは荒っぽい飛び込み方をした。もう少し逃げるのが遅れていたら自分は死んでいただろう。

 

「ふぅ、間に合ったぁ…」

 

ムウは目の前の女性に唖然としながら尋ねた。

 

「な、なんでここに?ていうか、俺を殺す気か!?」

 

レイラが慌ただしく答えた。

 

「そんなことより!!あの後、ちょっとおかしいと思って基地を調べたんですよ!そうしたら基地はもぬけの殻だから!」

 

彼女の意思を理解したムウはエレベーターを上へ移動させた。

 

 

 

ナタルは旧友のレベッカと同じ艦に乗り込んでいたが……

 

「まるで荷物か難民ね…私達。」

 

レベッカの言うとおり、これでは正に難民か荷物だ。ムウとフレイ、レイラは今頃何をしているのだろう?

 

「え?まさか、そんな!」

 

「しっ…やばい話なんだからさ、これは!」

 

同じような下士官達が何かを話している…何か変な噂でもしているのか?

 

「しかし…それじゃあ、アラスカに残っている連中は…」

 

「奮戦やむなく、全滅だろうな。」

 

何!今、なんと言っていた!?

 

「な、何の話?危なそうだけど…」

 

レベッカも聞き耳を立てている。

 

「そして、本部は最後の手段に出る。全て、ドカンさ。」

 

全滅!?最後の手段!?全て、ドカン!?

 

全て、ドカン。本部が、と言うことは!

 

アークエンジェルは!彼女は、子供達は!?

 

「お、おい!その話!!」

 

 

 

 

「バリアント一番、二番!沈黙!」

 

「艦の損害率、30%を超えます!」

 

次々と来る報告にブリッジは騒然としていた。数少ない友軍艦や戦闘機が次々と破壊され、アークエンジェルも追い込まれつつあった。

 

「イエルマーク、ヤロスラフ、轟沈!」

 

「司令部とのコンタクトは?」

 

マリューがカズイに振り返るが、カズイはパニックになりながら伝えた。

 

「とれませんー!どのチャンネルもずっと同じ電文が返ってくるだけですよ!『各自防衛線を維持しつつ、臨機応変に応戦せよ。』って!!」

 

どういう事だ?既に防衛線など崩れていて友軍の戦車も戦闘機も戦艦も残り少ない。一体司令部は何をしているのだ!?マリューは上層部の対応に怒りを覚えた。

 

「既に指揮系統が分断されています!艦長、これでは!」

 

「パナマからの救援隊は!?」

 

「全然、何も見えねえよ!」

 

「ミサイル来ます!」

 

状況は悪化の一途を辿る時、ミリアリアが違う報告をする。

 

「友軍機接近!被弾している模様!」

 

ミリアリアの報告を聞くと、モニターに映った副座式の戦闘機が一機、こちらへ向かっていた。

 

「着艦しようとしているの!?」

 

「そんな無茶な!」

 

ノイマンのいうとおりだ。マリューは慌てて艦内通信を開く。

 

「整備班!どっかのバカが一機突っ込んでこようとしているわ!退避!」

 

そのバカは先程被弾し、剥き出しとなった右舷デッキへの着艦に成功した。マードックがネットを用意したのだろう。しばらくして、ブリッジに入ってきた人物にマリューは目を疑った。

 

「少佐!?大尉!?あ、あなた達一体何を!?転属は?」

 

「そんな事はいいのよ!それより、すぐに撤退よ!」

 

「こいつはとんだ作戦だぜ!守備軍は、一体どういう命令受けてんだ!?」

 

 

 

撤退の進言にマリューが目を丸くした。当然だ。本部を敵に落とさせるわけにはいかない。だからこそこんな作戦をできるのだから。

 

「艦内に流して!早く!」

 

「は、はい!」

 

パルが慌てて、計器を操作してスピーカーをオンにする。

 

被弾の衝撃に耐え、艦長席の右脇のムウが怒鳴る。

 

「いいか、よく聞けよ!本部の地下にサイクロプスが仕掛けられている!作動したら、基地から半径十キロは溶鉱炉になるってサイズの代物が!!」

 

マリューの目が大きく見開かれる。

 

「この戦力では、防衛は不可能だ!パナマからの救援は間に合わない…」

 

ムウの言葉をレイラがうんざりしたように続けた。

 

「やがて守備軍は全滅し、ゲートは突破され、本部は施設の破棄をかねて、サイクロプスを作動させるの……」

 

サイクロプス。それはレアメタル融解用の装置で、強力な兵器にもなるのだ。かつて、ムウがその名を馳せたエンデュミオン・クレーターで使われたという話をレイラは聞いた事があった。こうなってくると、その時にも使われたに違いない。

 

「それでザフトの戦力の大半を奪う気なんだよ!それがお偉いさんの書いたこの戦闘のシナリオだ…!」

 

「そんな!」

 

マリューが信じられない、信じたくないという表情になる。レイラだって信じたくない。

 

「俺達はこの目で見てきたんだ。司令本部はもう、もぬけの殻さ!残って戦ってるのはユーラシアの部隊と、アークエンジェルのようにあっちの都合で切り捨てられた奴らばかりだ!」

 

ブリッジが静まりかえり、クルーの誰もが黙ってしまった。呆然と聞いていたノイマンがつぶやく。

 

「俺達はここで死ねと…?そういう事ですか?」

 

レイラが苦々しげにはいた。

 

「ええ、全部終わったら最後まで勇敢に戦った。とでも言うでしょうね…」

 

かつてトールの座っていた席にいるシュウが愕然と呟く。

 

「そんな…俺達、何のためにアラスカまで……!」

 

シュウでなくても、そう言うだろう。ヘリオポリスから、あれだけの状況をくぐり抜けてきたのに……待っていたのは上層部による裏切りだ。

 

「こ、こういうのが…作戦なの?」

 

ミリアリアの泣き笑いのように問いかける。

 

「戦争だから…?私達、軍人だから……そう言われたら、そうやって死ななきゃいけないの…?」

 

その問いに、誰も答えることが出来なかった。

 

今、こうしている間にも友軍は本部を落とさせまいと…パナマからの救援が来ると信じて戦い続けている。上の連中に騙されている事など夢にも思わず。これでは、先に死んだ方がまだ幸せではないか?

 

「…ザフト軍を誘い込むのが、この戦闘の目的だというのなら。本艦は既に、その任を果たしたと判断します!」」

 

つまり、それは。

 

「尚これは、アークエンジェル艦長マリュー・ラミアスの独断であり、乗員には一切、この判断に責任はありません!」

 

この状況でも、あくまで自分の独断であるとしてクルー達を守ろうとする。レイラは改めて、彼女が艦長であった事に感謝した。

 

「そう気張るなって…」

 

ムウも彼女の決意を労る。

 

「本艦はこれより、現戦闘海域を放棄、離脱します!僚艦に打電!『我に続け!』機関全速!取り舵!湾部の左翼を突破します!」

 

「脱出も厳しいが、諦めるな。俺達も出る。」

 

「少佐、大尉…」

 

「大丈夫よ…こっちには『不可能を可能にする男』がいるんだから。」

 

不可能を可能にする…以前、アルテミスで補給を受けられなかった際にデブリベルトで物資を確保しようと考えたときにムウが自称した物だ。

 

「よく、分かってらっしゃる!」

 

エンジンが出力を上げ、艦が前へ進み出した。

 

 

 

帰還したラウとレイスはデュエルとブリッツを見つけた。

 

「隊長!副長!」

 

イザークがこちらを呼び、ラウが答える。

 

「イザーク、ニコル、補給かね?」

 

「ゲートを二つ落としました!今度は中で暴れてきますよ!」

 

「イリアとミサキは先に終えてもう出ています!」

 

ニコルがいつもよりも高いテンションだ。本部中枢の高官達を交渉材料にして戦争が早期終結へ向かうという希望でも抱いているのだろう。レイスが、先ほど見つけた生け贄を持ち出した。

 

「足つきがいるせいか、メインゲートがまだ破れずにいるのよ。流石に頑張るわ。」

 

二人の顔色が変わるのが見えた。

 

「できれば貴方達にはそちらを応援してもらいたいけど、イリアとミサキにも伝えてもらえるかしら?」

 

「はい!」

 

「ありがとうございます!」

 

勇んで答えた二人は搭乗機のコクピットに飛び込んだ。

 

「…良いでしょ?」

 

「ああ、そうだな。さて…お目覚めかな、お嬢さん?」

 

ラウは不敵に笑い、ディンのコクピットの中で目を覚ました少女を見る。

 

先ほど捕虜にした赤毛の少女が目を覚ました。が、すぐにザフト兵だと分かるとディンのコクピットに隠れてしまった。

 

「おやおや…」

 

 

 

ゾノとグーンの水中からの攻撃により、遂にメインゲートが破られた。崩壊したメインゲートにジンが、ディンが次々となだれ込んだ。

 

〈ゲートを突破したっていうのに、念が入りすぎよ!〉

 

「ったく!!こっちは見逃してくれたって良いだろうが!」

 

スカイグラスパー1号機で出たムウはアークエンジェルに接近するMS隊をランチャーストライカーの全ての火器で撃ち、レイラの3号機もガトリングストライカーのミサイルで海面に出ているゾノとグーンを撃つ。

 

〈後方よりデュエル、ブリッツ、シグー二!〉

 

「くそっ!こんなときに!」

 

〈あいつらがいる時点で予想して然るべきだけど!よりにもよって、ここで!〉

 

ムウは舌打ちする。これだけの数のジンだけでもやっかいなのにクルーゼ隊のエース達まで来るとは!

 

ムウがデュエルを、レイラがブリッツの相手をするがその間に二機のシグーが後ろからアークエンジェルを撃つ。何とか撃たせまいとするが、只でさえ兵器として劣るスカイグラスパー二機であの四機を相手にするのは荷が重い。

 

 

 

ムウとレイラのスカイグラスパーはデュエルとブリッツ、シグー二機の相手が精一杯でアークエンジェルの援護に廻る事ができなかった。

 

「リューリク、自走不能!ロロ、轟沈!」

 

着弾で艦が更に揺さぶられ、ミリアリアの悲鳴が響く。

 

「64から72ブロック閉鎖!艦稼働率、43%に低下!」

 

サイがより絶望的な報告をし、遂にカズイがパニックになってしまった。

 

「うわぁ、もうダメだー!」

 

「落ち着け、馬鹿野郎!」

 

遂にパニックになったカズイをパルが叱責する間にもマリューは指示を出す。

 

「ウォンバット、てぇー!機関最大!振り切れーー!!」

 

しかし、ザフトの潜水艦とMSの攻撃によりアークエンジェルのミサイル発射管が潰され、艦が傾いた。

 

「推力低下!艦の姿勢、維持できません!」

 

「緊急パワー、エンジンに回しますが供給が追いつきません!」

 

ノイマンとシュウが艦の推力を維持するが、損害が酷く既に追いつかない。その間にもイーゲルシュテルンの迎撃をくぐり抜けたジンがライフルを向けた。ノイマンとシュウが表情を引きつらせ、ミリアリアが目をつむり、サイが硬直して、カズイが逃げだそうとした………

 

ここまで、きて……!

 

ブリッジが撃たれる瞬間……上空からの一条の光がジンのライフルを貫いた。何事かわからず、上空を見上げると、次の瞬間にジンは頭部を何かに切り落とされていた。

 

その何かは、アークエンジェルのブリッジの前に舞い降り、十枚の青い翼を広げた。更に、続けて二つの光がアークエンジェルの前に現れた。最初に現れた機体と非常に酷似したフレームに六枚の緑の翼を広げた機体、二機はまるで天使にも見え、最後の一機は青と黒のツートンに背中に大型のスラスターと二本の剣を背負った剛剣士を思わせるようだ。三機ともXナンバーと似通っているが、マリューには見覚えのない機体だ。

 

新型?誰が?

 

〈こちら、キラ・ヤマト。援護します。今の内に退艦を!〉

 

「キラ……?」

 

「キラだよ……」

 

無線から聞こえる聞き慣れた声にサイとミリアリアが信じられないという声を上げた。

 

「キラ…君?」

 

生きていた?しかし、どうやって?それにそのMSと残りの二機のパイロットは!?

 

〈私も忘れないで!〉

 

ユリの顔がモニターに映った。ザフトのパイロットスーツを着ているが、その顔は紛れもなく先の戦闘で死んだと思っていた姉弟の顔だ。彼女も生きていたという事は……もしや!?

 

〈マリューさん!敵は私達に任せて、退艦の準備を!〉

 

レナだ。三人とも生きていた!

 

キラとユリの機体は突然の新手に戸惑う敵に手持ちの火器と本体に装備された砲を開き、一斉射した。

 

二機の砲撃はアークエンジェルを囲んでいたMSの頭部や武装を貫き戦闘不能にした。砲撃を受けなかった機体もレナが対艦刀とビームサーベルを抜き、武装や頭部を破壊されていく。三機とも致命傷は与えず、ただ戦闘力のみを奪っていた。マリューはMSの性能と、それを使いこなし、且つ相手を殺さずに機体を損傷させるだけのキラ達の技量に唖然とした。

 

 

 

「くそっ!なんだよあれは!」

 

突然現れた機体にイザークは声を荒げる。

 

〈地球軍の新型でしょうか?〉

 

ニコルの言うとおりだろう。アークエンジェルを守っているのだからそう考えるのが自然だ。

 

〈ザフト、連合、両軍に伝えます!〉

 

〈え、両軍に?〉

 

全周波で奇妙な警告にミサキが呟いた。青い翼の新型からだ。

 

〈アラスカ基地は間もなくサイクロプスを作動させ、自爆します!〉

 

〈何!?〉

 

イリアが驚愕の声を上げた。

 

〈両軍共、直ちに戦闘を停止して撤退してください!〉

 

サイクロプスを作動させる!?そんな事をすれば味方も一緒に死んでしまう!イザークは警告を見苦しい脅しだと踏んだ。

 

「下手な脅しを!」

 

イザークはサーベルを抜き放ち、青い翼の機体に切り掛かった。敵機はサーベルをシールドで防いだ。

 

〈やめろと言っただろう!死にたいのか!?〉

 

「何!?」

 

イザークは剥きになりシヴァを撃ったが、敵機は頭をそらし、かわした。

 

この至近距離で避けただと!?

 

敵機はデュエルから離れ、ビームサーベルで切り掛かってきた。その光刃はコクピットを確実に捉えていた。

 

しかし、斬撃はデュエルの足を奪うだけに終わった。

 

〈早く脱出しろ!もう、やめるんだ!〉

 

青い翼の機体に蹴飛ばされたデュエルはディンに受け止められた。

 

「あいつ…何故?」

 

確実に殺せたはずなのに……なんで?

 

 

 

「イザーク!!」

 

ニコルは緑の翼の機体にランサーダートを撃つが、敵はビームライフルで全て撃ち落とした。

 

貫徹弾をビームライフルで!?一体、どういう反応速度だ!

 

ビームサーベルで斬りかかるが、相手は腕を掴んだ。

 

〈聞こえなかったの!?もう、時間がないのよ!!〉

 

すると、敵はライフルを腰に戻して自由になった右腕でブリッツを投げ飛ばした。そのまま腰のレールガンでグゥルを破壊した。

 

〈それで、帰れるでしょう!早く、戻りなさい!!〉

 

放り投げられたブリッツもディンに受け止められ、母艦へ連れて行かれた。

 

「なんで……殺す気がない?」

 

 

 

脱出した潜水母艦でウィリアム・サザーランド大佐が本部の上官達を待っていた。

 

「そろそろですな、よろしいですか?」

 

司令はうなずき、サイクロプスの遠隔装置に起動キーを差し込む。

 

「この犠牲により、戦争が早期終結へ向かわんことを切に願う。」

 

「青き清浄なる世界のために……3,2,1。」

 

二人が起動キーを回し、その時が来た。

 

 

 

JOSH-A最深部のMS隊に異常が起きた。中のパイロットの身体は破裂し、機体は爆発した。そして、基地内部にいた地球軍の兵士にも同じ事が起こった。サイクロプスが起動したのだ。

 

「アラスカ基地内に強烈なエネルギー放射を確認!これは!」

 

後方の潜水母艦で異常を察知した。すぐにMS隊に通達されるが、殆どのMS隊が基地内部かその近くにいたために気づいても退避は間に合わない。中のパイロットは破裂し、機体も同様に爆発した。

 

ゲート近くにいたバクゥとザウートは異常に気付き、後退しようとしたが間に合わず、海か河口にいたゾノとグーン、ディンもそのマイクロ波に飲まれた。

 

 

 

アークエンジェルに取り付けずにいたイリアも異常に気付き、グゥルを跳ばした。しかし、後少しでマイクロ波から離れられるといったところでグゥルが爆発した。

 

「しまった!」

 

マイクロ波に呑まれ、死ぬと思ったその時、何かが機体を引っ張り上げた。先程の青い機体だ。

 

〈しっかり捕まって!放さないで!〉

 

青い機体から聞こえた声は聞き覚えのある声だ。

 

こいつ……まさか…

 

ふと、ミサキの消息が気になり、モニターを見回す。

 

 

 

「グゥルが!」

 

ミサキのシグーはグゥルが爆発しそうだった。咄嗟に機体をジャンプさせ、スラスターを全開にする。ふと、すぐ近くにアークエンジェルがいた。もうこの際足をつけて逃げられれば何でもいい!!

 

何とかシグーをアークエンジェルに向かわせ、着地した。それと同時にスラスターがマイクロ波とオーバーヒートで爆発し、その衝撃でミサキは気を失ってしまった。

 

 

 

「サイクロプス、起動!」

 

「機関全速!退避!!」

 

半分以下の稼働率で残ったエンジンを全開にして、シュウが緊急パワーの全てをエンジンに回す。クルーゼ隊のシグーが取り付いたが、相手ももはやそれどころではないのか攻撃する気配もなく膝をついた。

 

 

 

そして、マイクロ波が最大規模になってアラスカ基地は内部から巨大な爆発を起こして崩壊した。

 

「…なんという事。」

 

「してやられましたな。ナチュラル共に。」

 

潜水母艦のラウ・ル・クルーゼとレイス・シェイドは呟いた。その言葉を発した口元はつり上がっていた事には誰も気がつかなかった。

 

 

 

プラント本国に帰国したアスランとシオンは軍本部の騒ぎに戸惑っていた。「全滅」や「正確な情報を」という会話が成されているが、アスランはアカデミーで世話になったユウキ隊長を見つけた。地球出身のシオンにも公正に接し、ナイフのフレッド教官と並びシオンが慕っている教官でもある。

 

「ユウキ隊長!」

 

「アスラン・ザラ、シオン・クールズ…どうしたんだ、こんな所で?」

 

「いえ、それよりこの騒ぎは?」

 

ユウキが沈痛な面持ちになり、事実を告げる。

 

「スピットブレイクが失敗したらしい。」

 

「え、ではパナマが?」

 

シオンがもっとよく話を聞こうと前に出る。

 

「いや、直前で目標がアラスカに変わった…詳しいことは判らぬが、全滅との報告もある。」

 

「そ、それじゃあ…ミサキが……」

 

シオンは一歩後ずさった。アスランの脳裏にも別れたイザーク、ニコル、イリアの姿が浮かんだ。

 

「シオン・クールズ、すまないが外してくれ。アスラン・ザラと話がしたい…」

 

「は…はい。」

 

シオンは呆然から醒め、退場した。

 

「なんです?ユウキ隊長。」

 

「ああ…君にはもう一つ悪いニュースがある。極秘開発されていた最新鋭のMSが何者かに奪取された。」

 

そのMSというのはおそらく帰国するシャトルとすれ違った三機の事だろう。シオンと一緒にそれを見ている。その次に出た言葉にアスランは今度こそ愕然とした。

 

「その手引きをしたというのがラクス・クラインだという事で、国防委員会は大騒ぎだ。」

 

アスランは鞄を落とした事にさえ気付かなかった。ラクスがスパイの手引き?

 

「そんな、まさか…ラクスが?……そんな!」

 




遂にフリーダム、ブレイブ、アフェクションがアークエンジェルに来ました。

三人とも殺さないスタイルですが、ブレイブはやはりシールドのビーム砲とライフルと心許なく、アフェクションもフリーダムほどじゃないけどフルバーストが出来ます。

そして、イリアとミサキはディアッカと違う流れでアークエンジェルの捕虜になります。まあ、サイクロプスで破裂死するよりはずっとマシでしょう。ディアッカだって何も知らずに破裂するところだったんだから。

次はアスランのジャスティスと共にシオンも新しいガンダムに乗り換えるので、お待ちください。
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