機動戦士ガンダムSEED REVERSE   作:meitoken

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アークエンジェルとの再会、アスランとシオンの再出発がメインです。

ペースが速いから、これの後はもうパナマ、そしてオーブです。


PHASE-30 正義と真実

アスランはシオンと合流せずに父パトリックに事の真偽を確かめるために執務室へ入った。そこではパトリックが部下達からの報告を聞いていた。

 

「使用されたのはサイクロプスのようです。基地の地下にかなりの規模のアレイが…」

 

「クルーゼは?」

 

「まだコンタクトは取れていませんが、無事との報告を受けております。」

 

どうやらラウは無事のようだ。となれば、イザーク達も無事の可能性もあるだろう。安堵したアスランの耳に今執務室に入った部下が報告する。

 

「アイリーン・カナーバ以下、数名の議員が事態の説明を求めて議場に詰めかけています。」

 

彼の報告を耳にしてようやくパトリックはアスランに気付き、「少し待て。」と言う。アスランは敬礼してそれを返し、先程入った部下が続ける。

 

「臨時最高評議委員会の招集を要請する物と思われますが…」

 

パトリックはため息をつき、命令を続ける。

 

「ともかく、残存の部隊をカーペンタリアに急がせろ!浮き足立つな!欲しいのは冷静且つ客観的な報告だ!クラインらの行方は?」

 

「まだです。かなり周到にルートを作っていたようで、思ったより時間がかかるかもしれません。」

 

その報告を聞いたパトリックが歯ぎしりをして怒鳴る。

 

「司法局を動かせ!カナーバら、クラインと親交の深かった議員は全て拘束だ!!」

 

「は、しかし…」

 

渋る議員に苛立つようにパトリックは机を叩く。

 

「スパイを手引きしたラクス・クライン!共に逃亡し、行方の判らぬその父!その下に預けられていた大西洋連邦少将グラン・ハーベストの娘!漏洩していたスピットブレイクの攻撃目標!子供でも判る簡単な図式だぞ!!」

 

その言い分にアスランは息を呑んだ。内部からスピットブレイクの攻撃目標が漏れたのは判るが、評議会ですら知らなかった事を辞任したシーゲルが知っているとも思えない。そして、いくら大西洋連邦の将軍の子とはいってもメイ・ハーベストはヘリオポリスの学生だ。そして、噂によると彼女はザフトに保護された事を知るやいなやハーベストに母共々絶縁されたというではないか。これは「子供でも判る簡単な図式」ではなく、「パトリックに都合の良い子供じみたこじつけ」だ。

 

「クラインが裏切り者なのだ!なのに、この私を追求しようというのか!カナーバらは!奴らの方こそ…いや!奴らこそ匿っているのだ!そうとしか考えられん!!」

 

パトリックの剣幕に押された部下が退室し、執務室にはアスランとパトリックだけになった。

 

そして、アスランは父からラクスがスパイを手引きしたという証拠映像を見せられた。それには確かに特徴的なピンクの髪の少女とザフトの赤服を着た三人の後ろ姿がある。

 

「ラクス・クラインは既にお前の婚約者ではない。まだ非公開だが国家反逆罪で指名手配中の逃亡犯だぞ。」

 

パトリックはモニターを切り、アスランと向き合う。

 

「お前とシオン・クールズは奪取されたX07Aブレイブ、X08Aアフェクション、そしてX10Aフリーダムの奪還とパイロット、及び接触したと思われる人物、施設、全ての排除に当たれ。」

 

全ての排除…つまり、疑わしき者は全て殺せということだ。

 

「工廠でX09AジャスティスとX06Aトゥルースを受領し、準備が終わり次第任務に就くのだ。奪還が不可能な場合は三機とも完全に破壊せよ!」

 

「せ…接触したと思われる人物、施設までをも全て排除、ですか?」

 

「X-06Aトゥルースを初めとした五機はNジャマーキャンセラーを搭載した機体なのだ。」

 

Nジャマーキャンセラー。その単語を聞いたアスランは余りに苛烈な命令の意図を理解した。それと同時に戦慄した。

 

「Nジャマーキャンセラー…そんな!」

 

キャンセラーという言葉を聞けば、その意味は分かる。つまり、核の封印を解いたということだ。

 

「何故、そんな物を!プラントは全ての核を放棄すると!」

 

「勝つために必要となったのだ!あのエネルギーが!!」

 

勝つ、ため?守るための戦争で、プラントの自治権を地球に認めさせるための戦争ではなかったのか?

 

戦うことでしか守れないのならば、戦うしかない。以前、父が言っていた言葉だ。守る戦いが、勝つ戦いになった?そんな疑念を抱いたまま、アスランはシオンと合流し、ニコルの父のユーリ・アマルフィと共に工廠を訪れていた。

 

「ニコルもキールも…彼女の歌は好きだったというのに。」

 

「キールの、ことは……」

 

ユーリ・アマルフィが立ち会い、アスランとシオンはZGMF-X09AジャスティスとX06Aトゥルースを見ていた。アスラン達が奪取したMSのデータまで取り入れたようだが、ということはヘリオポリスの時から既に核動力搭載機の開発が進んでいたということになるのか?

 

「いや……済まないな。私達には、ニコルがまだいる。だが……彼のご家族は。」

 

「……お母様と弟さんたちは、やはり?」

 

シオンの問いにユーリも頷いた。

 

「ああ、ロミナが付き添っているが……彼の弟たちもとても泣いていた。」

 

会ったことはないが、幼い弟達がいるのは聞いた。プラントを守る気持ちはあっただろうが、キールの戦う動機は正に弟たちの生活だったのだ。

 

「分かっているのだがな、戦争なのだから。あのメイ・ハーベストも…息子の好意を何で裏切れるのか!」

 

彼女のことはよく分からない。アスランはニコルが呼んだあのコンサートで顔を合わせただけだ。ナチュラルではあるが、とても可愛らしく……ニコルとも話が弾んでいた。

 

ニコルも戦争が終わったら、彼女をオーブへ送り届けたいと言っていた。

 

好き、だったのだろうか?

 

本当に、あの子はスパイなのだろうか?

 

 

 

アラスカ…JOSH-Aの跡で投げやりに着陸しているアークエンジェルから降りたマリューらは先程のユリの機体が穴を掘り、キラが自身の手で助けたジンのパイロットの身体を埋葬しているのを見た。どうやら、彼はサイクロプスの影響で死んでしまったようだ。

 

そして、アークエンジェルの後部デッキに着艦していたシグーのパイロットはユリに促されてコクピットから出てきて、青いシグーのパイロットもレナに支えられて降りてきた。機体の方はどうやらもうサイクロプスの影響と戦闘の負荷で使えないようだ。

 

一足先にキラがゆっくりと歩み寄り、マリューらの前で立ち止まる。ザフトのパイロットスーツを着ているとはいえ、その幼い顔立ちは紛れもなくキラの物だ。

 

「間に合って…よかったです。」

 

「本当に…キラ君達なのね?」

 

マリューの問いにしばし間をおいてキラが「はい。」と答えた。その答えを聞いた途端、ミリアリアが走り出して抱きついた。それに即発されてノイマンやトノムラらも駆け寄る。

 

「お前ら、一体どうして!」

 

「ホントに…ホントに……幽霊じゃないんだな!?」

 

「幽霊だったら足無いでしょう?」

 

ユリが学生達の間で見せていた屈託のない笑顔でチャンドラの問いに答え、レナも合流した。

 

「もうちょっと遅かったら、って思うと…恐かった。」

 

レナが言い終わるより早く、シュウがユリに駆け寄り抱きついた。

 

「シュウ…?」

 

「よかった…生きてて、よかった……!」

 

背中越しではあるが泣いているのがマリューにも判り、ユリもシュウの背中に片腕を回す。

 

「心配かけて…ごめんね。」

 

「当たり前だ…!どれだけ、心配したと思ってるんだ?」

 

サイが弱々しい声でキラの前に歩み寄る。

 

「サイ、カズイ…」

 

「よく、生きていてくれた…!」

 

サイが泣きたいのを堪えているのを察したキラが「ごめん」といってその肩を叩く。そして、三人を代表するかのようにキラはマリュー達の元へ歩み寄ってくる。

 

「お話ししなくちゃならない事が…たくさんありますね。」

 

「…ええ。」

 

「僕達もお聞きしたいことがたくさんあります。」

 

「そうでしょうね。」

 

彼らだって知りたいはずだ。なぜ、基地の地下にあんな物が仕掛けられていたのかを。

 

「ザフトにいたのか?」

 

「そうですけど…僕はザフトではありません。そしてもう……地球軍でもないです!」

 

ムウの問いにキラは答える。以前とは違う、強い眼で…

 

「判ったわ…とりあえず話をしましょう。あの機体は、どうすればいいの?」

 

マリューは三機を見て問う。一体どこであれほどの高性能機を三機も手に入れたのか…それはやはり気になっていた。

 

「整備や補給のことを仰っているのなら、今のところ不要です。」

 

「整備や補給が不要って…あれで?」

 

レイラがもっともな疑問をぶつける。あれだけの火力とスピード、どう考えてもバッテリーが尽きる寸前であるだろう。

 

「いらないのよ…あの三機には、私のブレイブも含めてNジャマーキャンセラーが搭載されているから。」

 

「Nジャマーキャンセラー…核動力?どうやってそんなMSを!」

 

レイラが動揺を隠せない口調で問うが、キラはそれを睨み付ける。

 

「データを取りたいと仰るのならお断りして、僕はここを離れます。奪おうと仰るのなら敵対してでも僕は守ります。」

 

「キラ君…」

 

「お前……」

 

「一体、何が。」

 

三人の士官の問いに今度はユリが答える。

 

「アレを託された、私達の責任なの。これは……」

 

ユリとレナもキラと同じ今までとは違う眼で見つめてくる。そして、マリューは感じ取った。彼らの中で何かが変わったことを…

 

「判りました。機体には一切手を触れないことを約束します。良いわね?」

 

「…ありがとうございます。」

 

キラが礼を述べた時、全く聞き覚えのない少年の声が聞こえる。

 

「あの。」

 

振り返ると、先程の二機のシグーのパイロット達が立っていた。

 

「感動の再会だった……?それが終わったところで悪いんだけど…俺ら、どうなるの?」

 

言われてマリューはようやく気付いた。彼らはサイクロプスからは逃れられた物の、完全に友軍から孤立してしまった。最も、それは自分達も同じだが。

 

「とりあえず…捕虜として本艦で拘束します。」

 

「そうなるわよね…やっぱり。」

 

緑の髪の少女がため息をついた。

 

 

 

アスランはクライン邸を訪れたが、家具まで荒らされた凄惨な光景に言葉が出なかった。以前の休暇で訪れた面影すら邸には残らず、当てもなく彷徨うように花園に来ると、今度は怒りすら覚えた。いくら国家反逆罪の邸宅とはいえ、花まで荒らすというのが理解できる物ではなかった。その時……草陰で物音がした。反射的に銃を構えると、その中からはハロが現れ、アスランに飛びつく。ふと、僅かに残っていた花を見てアスランは以前訪れた時のラクスの言葉を思い出した。

 

『この花は、私が初めて歌った場所です……記念のお花ですの。』

 

確か…この薔薇の名前はホワイトシンフォニー。そして、アスランはその名前に心当たりがあった。

 

 

 

地球への降下軌道……

 

シオンはアスランより一足先に任務に就いていた。シオンの受領したZGMF-X06Aトゥルースは砲撃戦仕様の機体だ。おそらく、デュエルとバスターの運用データを更に煮詰め、そこにランチャーストライク、ガトリングフレイムとの交戦データを取り入れたのだろう。腰部の大型ビームライフルは並列連結することで要塞、艦隊攻撃用の二連装高エネルギービーム砲として運用可能で、腕部にはフリーダムやジャスティスと同じラケルタビームサーベルをマウントし、接近戦も行える。加えて、核動力という性質上機体のパワーが規格外だから大気圏内の飛行機能も有している。

 

これだけの火力を保持するためにNジャマーキャンセラーを搭載するという理屈は理解できる。それにこれだけの機体を使えるのは痛快だが、任務と機体受領の経緯がシオンの心に影を落としていた。

 

任務はアスランと共に奪取されたMSの奪還、或いは破壊、接触したと思われる人物、施設の排除であった。Nジャマーキャンセラーを搭載しているのならば機密保持として当然ではあるが、それならば何のためにNジャマーを開発したのだ?使わないと宣言しておきながら自分達でその封印を解くというのは本末転倒ではないのか?

 

『こんなのがあれば、ナチュラル共も一人残らず宇宙から消えるな!』

 

『これで世界は俺達コーディネイターの物だぜ!』

 

整備を行っていた者達の言葉が甦った。

 

ナチュラルを消す?守るためではなく滅ぼすための戦争?

 

それに…勲章もこの機体もレナとキールの命で貰った物だ。そんな物で手に入れた勲章や機体なんていらない。いっそ人殺しや「お前がもっと早く撃破しなかったから自分の家族が奴らに殺された。」とでも罵ってくれればどんなに良い事なのか。

 

本当にこれで…俺が望んだ平和が来るのだろうか……

 

〈進路クリアー。X06A、発進準備完了。〉

 

オペレーターのアナウンスが聞こえた。

 

〈我らこそ、この宇宙の真実たらんことを。〉

 

真実……何を持って、真実というのだろうか?

 

「…シオン・クールズ、トゥルース発進する!」

 

PSがオンになり、孔雀緑と黒のツートンになった機体はプラントを発進し、地球へ向かった。どこへ行ったかは分からないが、あの時シャトルと一瞬すれ違ったMSがそうだとすれば地球だ。

 

 

 

先日、自分が恋人の死を嗤って殺しに来たかと思えば、仲間に殺されそうになったところを庇ったあの少女のことを考え続けているディアッカの耳にドアが開く音がした。格子越しに覗くと、見慣れた顔が入ってきた。

 

「イリア?……ミサキ!?」

 

「ディアッカ?」

 

「生きてたか……」

 

ミサキがポカンと呟き、イリアがいつもより暗い口調で挨拶する。そして、イリアが隣に、ミサキが向かい側に入れられた。

 

「何でお前らまで?」

 

「いや、スピットブレイクでアラスカに来たんだけど色々あってね。」

 

「はあ?」

 

どうなっている?噂じゃあパナマのマスドライバーを潰すのが目的じゃなかったのか?

 

「なんでアラスカなんだよ。パナマじゃなかったのか?」

 

「私達だって知らなかったわよ。でもって、サイクロプスで死にかけたんだから。」

 

サイクロプス?確か、月で地球軍が使ったレアメタルの融解装置。兵器転用可能なのは知っているが……

 

「なんで本部にそんな物あるんだよ?」

 

「知らないわよ……情報が漏れたんじゃないの?」

 

「んじゃ、俺は寝るわ。詳しい話はまた後でな。」

 

ディアッカが問おうとしたら、イリアは本当に寝てしまい、ミサキもまた疲れていたのか、すぐに壁にもたれて眠ってしまった。

 

「おいおい……何がどうなってるんだ?」

 

 

 

キラ達三人は、あの戦闘の後に地球軍側の和平新書を持ったマルキオ導師に助けられ、そのままプラントへ移送されてラクス・クラインの元で匿われていたことを話す。その後、アークエンジェルのブリッジでアラスカ基地での件と今後の事を話していた。基地での事はブリッジの誰もが気分が悪くなる内容であった。

 

「それが作戦だったんですか?」

 

キラの問いにレイラがうんざりと答える。

 

「ええ、本部はかなり前からアラスカが狙われていることを知っていた。でなきゃあんなの出来るわけがないわ。」

 

「私達には…何も知らされてなかったわ。」

 

マリューが苦い口調で呟き、キラはクライン邸で聞いたアイリーン・カナーバの言葉を思い出す。彼女は攻撃目標がアラスカに変わったことが最高評議会も知らされていないと言っていた。つまり、議長に就任したアスランの父の独断だ。

 

「プラントも同じだわ…」

 

同じ事を考えていたユリが呟き、レナが補足する。

 

「新しい議長がパナマを攻撃するって、評議会さえ騙したみたいなんです。多分、議長と他の偉い人達の間でアラスカを攻撃する手はずだったんだと思います。」

 

プラントの最高評議会さえ知らなかった攻撃目標の変更に全員が沈黙し、ほぼ悟った。つまり、評議会のトップにかなり近い人間が地球軍に今回の計画をリークしたのだ。

 

一体誰が、という憤りを抱きながらキラはマリュー達を見る。

 

「それで、アークエンジェル…マリューさん達はこれからどうするんですか?」

 

戸惑う彼らにかけられたキラの質問にレナが重ねた。

 

「パナマに行くんですか?」

 

レナに言われてマリュー達はやっとこれからの事が浮かんだようだ。

 

シュウが習慣的に伝える。

 

「Nジャマーとさっきの磁場の影響で通信は駄目です。」

 

ノイマンが肩をすくめた。

 

「応急修理をして、自力でパナマまで行くんですか?」

 

ユリがその結果を危惧する。

 

「でも、私達は本部の壊滅の真相を知っているし…」

 

「命令なく戦列を離れた本艦は敵前逃亡艦…ということになるんでしょうね。」

 

マリューの言うとおり……今回の件を仕組んだ連中が、本部が味方と敵をまとめて自爆したなどという事を知っているアークエンジェルのクルー達を生かしておく訳がない。着いた途端、撃たれるのが目に見えている。

 

「原隊に復帰しても軍法会議、か。」

 

「また罪状が追加される訳ね。」

 

ノイマンとチャンドラだけでなく、全員が同じような気持ちだった。孤立させられ、何度も死ぬ思いをして辿り着いた本部で待っていたのは敵と一緒に本部ごと死ね……今度は本当に味方に殺されるためにパナマに行くのか?

 

これでは何のために何と戦っているのか判らなくなってしまう……

 

「こんな事を終わらせるためには……何と戦わなくちゃいけないとマリューさんは思いますか?」

 

キラの問いに皆が注目した。

 

「僕は…僕と姉さんとレナは、それと戦うべきだと思うんです。」

 

 

 

アスランはクライン邸にあった薔薇と同じ名前の劇場……ホワイトシンフォニーへやってきた。左手を吊したまま銃を持って劇場へ足を踏み入れると、澄み切った歌声が聞こえた。画面越しでも聞いたことのある声……ラクスの物だ。

 

舞台まで入り込むと、ラクスはステージの上で舞台衣装らしきドレスを着て座っていた。ゆっくりと舞台へ近づくと、手に持っていたハロがアスランの手を離れラクスの元へ向かう。

 

「まあ、ピンクちゃん。やはり貴方が連れてきてくださいましたね……ありがとうございます。」

 

普段あっていた時と全く変わらない様子のラクスにアスランは強く呼びかける。

 

「ラクス。」

 

「はい?」

 

舞台へと上がり、ラクスと向き合う。

 

「どういう事ですか?」

 

強気な問いに対してラクスはいつものにこやかな表情で答える。

 

「お聞きになったからここにいらしたのではないですか?」

 

「では、本当なのですか?スパイの手引きをしたというのは!何故、そんな事を……!」

 

「………スパイの手引きなどしてはおりません。」

 

スパイの手引きではない?では、あの映像は何だ?困惑するアスランの耳に予期せぬ名前が入り込んでくる。

 

「キラとユリにお渡ししただけですわ。新しい剣を。」

 

キラと……ユリ?

 

「今のキラとユリに必要で、キラとユリが持つに相応しい者だから。」

 

「キラ?……ユリ?何を言っているんです、キラとユリは…あいつらは!」

 

「貴方が殺しましたか?」

 

ラクスの率直な問いにアスランは胸をナイフで刺された様な衝撃に襲われた。そうだ……ストライクとフレイムを討った。キラとユリを……殺した。なのに、そんなはずは!

 

ラクスはいたわるような口調でアスランへ伝える。

 

「大丈夫です。キラもユリも生きていますわ。」

 

「嘘だ!一体…どういう企みなんです!ラクス・クライン!!」

 

そうだ!キラとユリは俺が殺した!殺したと思っていた二人の友が……

 

「そんな馬鹿な話を…!あいつが…あいつらが生きているはずがない!!」

 

「マルキオ様が私の元へお連れしました。キラも貴方と戦ったと、ユリも貴方を殺そうとしたと言っていましたわ。」

 

マルキオ導師……連合とプラントの双方で使者の役割も担う人物の名前を出され、アスランは徐々にその希望に引かれる。

 

「言葉は信じませんか?」

 

ラクスは向けられた銃に動じず、問いかける。

 

「では、ご自分でご覧になったものは?戦場で、久しぶりにお戻りになったプラントで何もご覧になりませんでしたか?」

 

戦場で見た物……兄のように慕っていた友を友に奪われ、その友と殺し合った。禁じられていたはずの核で動いているアスランとシオンの新しい機体。守るためではなく勝つためにすり替わった戦争。

 

「ラクス…」

 

「アスランが信じて戦う物は何ですか?いただいた勲章ですか?お父様の命令ですか?」

 

信じて戦う物…かつての自分なら父の方針と答える。だが、今は……

 

「ラクス…!」

 

「そうであるならば、キラとユリは再び貴方の敵となるかもしれません。そして、私も…」

 

再び敵となる?キラとユリが?そして、今度はラクスまでも?

 

ラクスは立ち上がり、ゆっくりとアスランへと歩み寄る。

 

「敵だというのなら、私を撃ちますか?『ザフトのアスラン・ザラ』。」

 

敵だというのなら…父が否定する者であるならば彼女を撃たねばならない。だが……!

 

逡巡するアスランの耳に複数の足音が聞こえてきた。アスランは咄嗟にラクスを背後に庇い銃を向ける。

 

「ご苦労様でした、アスラン・ザラ。」

 

「何だと?」

 

劇場へやってきた男達の一人が舞台へ上がってくる。

 

「流石は婚約者ですな、助かりましたよ。」

 

アスランは悟った。父は最初からこういう魂胆だったのだ。こいつらをラクスの元へ案内させるために。

 

「さ、お退きください。国家反逆罪の逃亡犯です。やむを得ない場合は射殺とのご命令も出ているのです。それを庇うおつもりですか?」

 

「そんな、馬鹿な!」

 

いくら何でも話が進みすぎている!パトリックはスピットブレイクの失敗をクライン派の仕業であることを完全な形に仕立て上げる気だ!カナーバ達を拘束してラクス達を殺せば自分の指導者としての地位は絶対の物となる!

 

だが、今のアスランにこの人数を相手にラクスを守ることなどできない。その時、銃声が響き舞台を囲っていた男の一人が倒れた。

 

一瞬の隙が生じ、アスランはラクスを抱えて部隊のセットの影に飛び込む。その間に何者かが父の配下達を次々と撃ち倒していき、最後の一人も褐色の肌の男が撃ち殺した。そして、彼と共にアスランにも見覚えのある顔が現れる。

 

「ラクス、大丈夫?」

 

以前の休暇でニコルがコンサートに招待したメイ・ハーベストだ。ラクスと行方不明ならば共にいるとは思っていたが……

 

「はい…メイこそ、こんな場面を見せてしまいごめんなさい。」

 

撃ち殺された男達を見て、メイは少し顔を背ける。

 

「……いえ、プラントにいて私なりに考える時間はあったから。」

 

「……マルキオ様は?」

 

「無事お発ちになりました。」

 

褐色の肌の男が答え、ラクスは再びアスランを振り向く。

 

「では、アスラン。ピンクちゃんをありがとうございました。」

 

〈マイド、マイド!〉

 

先程とは打って変わったよく知る顔にアスランは呆気にとられてしまった。

 

「キラとユリは地球です。」

 

地球にキラとユリがいる。更にラクスは妙な話をする。

 

「それと、貴方と共にプラントへ戻られたシオンさん。彼に言づてを。」

 

シオンの名前が突然出てきたことにアスランは目を丸くした。

 

「もう一機、ブレイブに乗っている方はシオンさんのよく知る方ですよ。」

 

「シオンが…よく知っている?」

 

「では、お願いします。」

 

ラクスは礼をし、メイがこちらをじっと見つめ、共に歩き出す。

 

 

 

シオンは一度残存部隊が向かったというカーペンタリアで、スピットブレイクの様子をイザークとニコルから聞いていた。

 

「サイクロプス…」

 

「ええ、危うく僕達も死ぬところでした。」

 

ニコルが苦い口調で説明をした。しかし、先ほどからイリアとミサキが見当たらない。

 

「イリアとミサキは…どうしたんだ?」

 

それを聞くと、イザークとニコルは顔を伏せる。その表情…

 

「おい、まさか…」

 

「………はい。」

 

ニコルがこらえながら、肯定した。イザークがその内容を告げる。

 

「イリアとミサキは……MIAだ。」

 

MIA……つまり…

 

「そ、そんな…!」

 

シオンは愕然とし、ソファーに力なく座り込んだ。

 

キールを殺されて、レナを殺して…今度はミサキとイリア?

 

シオンの胸に絶望の風が吹き込み、気付いた時にはイザークとニコルは退室していた。

 

 

 

アスランはジャスティスのコクピットでラクスの言葉を思い出していた。自分が信じて戦う物……そして、今の自分はそれに従えるか。地球にいるというキラとユリ………ブレイブのパイロットがシオンのよく知る人。シオンは一体何を?

 

思えば、あのアークエンジェルの待ち伏せにシオンは同調した。それと、関係が?

 

キラ、ユリ…お前達は何を?

 

アスランは生きているかもしれない友を思い、新たな機体のペダルを踏む。

 

〈我らの正義に星の加護を!〉

 

正義……一体、ザフトの正義とはなんなのだ?父の意志?それとも?

 

「アスラン・ザラ、ジャスティス出る!」

 




今回は大容量になりました。

本編のクルーゼ隊のメンバー、イザークとニコルだけ取り残されることとなりました。大昔、個人サイト等で見かけた生存系でニコルはアークエンジェルという展開が主で、それと同じではちょっと芸がないと思って私はあえて、ニコルは最後までザフトにしました。

つまり、イザークと一緒にアレを見るということになります。

シオンのトゥルースはシューターが中距離、長距離支援を重視したように、バスターとデュエルを徹底的に砲撃型にしたガンダムです。

武器の構成上、ビームサーベルは腕から取り出す形になってシールドはありません。盾を左肩だけにするかは悩みましたが。その代わり、本体の冷却機能が高いから盾を使わずとも突入角度の調整などを入力することで大気圏に突入できます。バスターもあのまま降りられたわけですし。



この次で、フリーダムとジャスティスに並ぶ最強のガンダムのブレイブ、トゥルース、アフェクションの設定にはいります。英単語が大半とはいえ、いかにもザラ派のつけそうな名前は探すのも一苦労です(笑)
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