機動戦士ガンダムSEED REVERSE 作:meitoken
ようやく語り合う時を得た……彼らは互いが仲間にも黙って抱えていたものを明かしあった。レナがシューターのパイロットが兄であるのを黙っていた件は、思わず明かしてしまったレイラが事情を説明し、キラとユリがイージスのパイロットと友達だったのはサイとミリアリアからも説明された。どちらもあの先遣隊の時に一部のアークエンジェルのクルーも知っていたのだ。
五人は互いに自己紹介し、カガリとフブキも交えていた。少し離れた場所でザフトのパイロットとアークエンジェルのメンバーも様子を見ていた。そして、地球軍がマスドライバー欲しさにオーブをザフト支援国という言いがかりで攻めてきたこと、オーブが戦う道を選んだことを聞かされた。
「しかし、それは!」
オーブが戦場となった理由を聞いたアスランは声を荒げる。
「うん、大変だって事は判ってる。」
カガリとフブキがドリンクを持ってきて、五人は受け取る。
「でも、仕方ないわ…私もキラも、そう思うから。」
ユリの言葉をレナが頷いて肯定する。
「カガリとフブキのお父さんの言う通りだと思うの。」
「オーブが地球軍につけば、大西洋連邦はその力も使ってプラントを…ザフトについても同じ事…ただ殺す相手が変わるだけだから……」
キラの言葉をレナが続ける。そして、再びキラが締めくくる。
「そんなのはもう…嫌なんだ。僕達は。」
「だが…!」
シオンがキラに反論しようとする。しかし、キラは若干顔を暗くして口を開く。
「僕は…君達の仲間、友達を殺した。」
アスランの脳裏にヘリオポリスで死んだミゲルと…キラに突っ込んで死んだキールの顔が蘇る。
「でも……僕やレナは、彼らを知らない。殺したかった訳でもない。」
キラの言葉を聞いてカガリとフブキが眼を細める。
「アスラン…貴方はトールを殺した。でも、貴方達はトールを知らず、殺したかったわけでも無いでしょう?」
ユリの言葉にアスランは息を呑む。そうだ…自分はトールという人がどういう人間なのかも知らなければ殺したいと思ったわけでもない。
「…だが、俺達は…お前達を、殺そうとした…!」
アスランが苦しげに出した本音にキラは微笑む。
「僕もだよ。姉さんとレナは?」
「正直…トールが死んで……ストライクがイージスに組み付かれたのを見て……キラを助けるより、アスランを殺すのが先になってた。」
「私も…ヘリオポリスを壊して、トールを殺した兄さんを殺したいって。」
ユリとレナも一拍おいて本音を見せた。
「………戦わないで済む世界ならいい…そんな世界に、ずっといられたなら……でも、戦争はどんどん広がろうとするばかりで。」
レナの憂いはシオンにも理解できた。ヘリオポリスに始まりアラスカのサイクロプス、パナマでの虐殺、強制的に連合に加盟させられた中立国の数々、中立を理由に向けられた銃口、そして……今彼らのすぐそこにある禁じられた核で動く五機のMS。
「このままじゃ、プラントと地球は本当にお互いを滅ぼし合うしか無くなるよ……」
「だから、戦うの。私達も。」
キラとユリが決意を述べ、キラは顔を俯かせる。
「例え守るためでも…もう銃を撃ってしまった僕達だから。」
守るため…以前から言っていた友達を守るために…彼らはミゲルを、キールを殺した。そして、アスランやシオンも同じだ。知ってしまった…彼らから平和を奪ったことを。
「私達も、また戦うの?」
レナの言葉にシオンは今度こそ息を呑んだ。
また、殺し合う?レナと?ザフトならば、任務のためにアスランの友達であるキラとユリを、そしてオーブを滅ぼさなければならない。下手をすればディアッカ達も。だが……オーブの、いや、シオン・クールズとしては…そして、アスラン・ザラとして彼は?
「もう作業に戻らないと。攻撃、何時再開されるか判らないし。」
「待ってくれ…」
シオンがキラ達を呼び止めて問う。
「フリーダムに、ブレイブとアフェクションにはNジャマーキャンセラーが搭載されている。そのデータをお前達は?」
その問いにキラは表情を変えず、されど毅然と言い放つ。
「ここで、それを何かに利用しようとする人がいるなら、僕が討つ。」
そのキラに、ユリが軽く拳を降ろす。「いて!」とキラが呻いてユリが頬を引っ張る。
「『僕が』じゃなくて『僕達が』でしょ?」
レナも不機嫌そうな顔になる。
「一人だけで決めないでよ。」
「ごめん…」
ミリアリアが飛び出し、ディアッカは呼び止めた。
「あ、あの…トールって奴、殺したの……」
「だから、何?あの人を殺せば、トールは帰ってくるの?」
「あ、いや…そうじゃなくて……」
イリアとミサキはディアッカを見て、考えていた。
「あの子の恋人、私達がヘリオポリスを攻撃しなければ…今でも、ヘリオポリスで暮らしていた、のよね?」
「あの子だけじゃねえ…レナも、あいつらもそうだよ。」
あの少女、ミリアリアも恋人のトールという人を殺したアスランを憎む理由がある。いや、ここにいるザフトからの参加者全員をだ。トールを殺したザフトの軍人だから。
なのに、彼女はそれを乗り越えようとしている。分かっているからだ。アスランを殺せば、今度はディアッカが…いや、キラとユリがミリアリアを殺そうとする。そう、相手が友達で、兄妹だと分かって殺し合ったキラやレナのように。
イリアは感じ入った。彼らは強い……身体が劣るナチュラルなのに、いや…その考え自体が間違いなのかもしれない。レナも例えシオンは兄妹の情で堪えても、ヘリオポリスでの平和を壊したイリア達は殺して良いのに、それをしない。理解しているからこそ、銃を下ろそうとしているのだ。シオンと殺し合うのを分かっているから。アークエンジェルのクルー達もだ。コーディネイターのレナ達を受け入れ、何と戦うべきなのかを探している。
単純に地球軍とザフト、ナチュラルとコーディネイターの問題ではないのだ。
ミサキはあのシオンの妹がウインドのパイロットであることを聞き、驚愕した。シオンはずっと分かっていて撃ち合っていた。もし、自分がレナを殺したらシオンは憎んだだろう。
あのミリアリアのように……そして、レナがシオンを撃ったらミサキはレナを憎んでいた。相手がシオンの実の妹であることなど知らないまま。
知らないことが、こんなに怖いことだったなんて。そして、知っていて殺し合うということはもっと怖い。アスランもあのストライクのパイロット…キラと偶然再会して戦った。ミゲルやキールを殺した張本人と………一体、どんな気持ちなんだ?
フレイムのパイロットだったユリはキラの実の姉だったが、キラは黙っていた。敵が自分のよく知る人だった……しかも、あの様子だとアークエンジェルのクルー達にはキラ達の事情を知っている者もいた。
私がもしも、同じ立場だったらどうなっていたのかしら?
少女は目を覚ました。視界も思考もはっきりとしない中、周りを見渡した。何処かの医務室のようだ。
「私……たしか…」
確かあの時、避難船に行く途中、妹が落とした携帯電話を落としたのとほぼ同じタイミングで枝に足を取られた拍子に首から下げていたロケットを落とした。弟と妹が誕生日に小遣いを出し合ってプレゼントしてくれた二枚重ねのロケット、一枚目に三人で移った写真を…二枚目に両親が写った写真が入ったロケット……弟が携帯を取りに行くのと同じタイミングで両親と妹に先に向かうように促し、ロケットを取りに向かった直後に爆発が起こって……
そうだ!あの時、吹き飛ばされて!!
「気がついたか……」
声のした方向に目をやると、銀髪の少年が立っていた。美しく整った顔に一瞬見とれてしまったが、すぐに思考は家族の事に戻った。
「あの…あなたは?」
「フブキ・クラ・アスハ…アスハ家の長兄だ。お前は?」
アスハ家?それじゃあこの人はウズミ様の息子…!
「リュウ、リュウ・アスカ……あの、私の家族…弟と妹は!?9歳くらいの女の子と14歳の男の子…!」
リュウはとにかく知りたかった。家族が無事なのか。それとも。
「………我々は戦闘の後、オノゴロを見回っていた。その中で、避難船の停泊していた場所が焼かれていて…そこでお前を見つけた。」
フブキは口にするのを戸惑っていながらも状況を述べた。
「そ…そこに!私の他に誰かいました!?」
「そこには…夫婦らしき男女と、10歳前後の少女の遺体があった…」
リュウはその言葉の意味が分からなかった。いや、理解したくなかった。あの時あそこにいたのは自分達だけだ。という事はその遺体は!
「そ、そんな…そこにもう一人いませんでした?」
お願い…生きているって言って!
「わからない……そこには三人の遺体しかなかった。おそらく、状況的に……」
リュウの願いは打ち砕かれた。それでは弟も?
絶望をリュウが叩きのめした。
「遺体は回収してある。確認して欲しい……」
よろよろと立ち上がり、簡易的な遺体安置所でそれを確認する。そこには、爆風で打ち付けられて身体がズタズタになった母と…あの林に生い茂る木に潰されたのか下半身が原形を留めていない父…そして、右腕がちぎれて焼け焦げた妹の姿があった。
「あ……あぁ…!!」
なんで、なんでこんな!?私の家族がこんな死に方を!?弟なんて跡形もなく吹き飛んだ!
リュウは後ろにいたフブキをゆっくりと見る。
「なんで……なんで、こんな!ねえ!なんで、父さんが!母さんが!妹がこんな目に遭わなきゃいけないの!?妹なんてまだ9歳なのよ!?」
フブキの腕を掴んで詰め寄った。つい二日前まで平和に暮らしていたのに、なんで!?
「私達が何をしたって言うの!?中立国なら平和に暮らせると思っていたのに!なんで!?」
フブキは何も答えない。
「地球軍の要求をのんでいれば、こんなことにならなかったんじゃないの!?なんで、大西洋連邦の要求をのまなかったの!?」
「……お前は、コーディネイターとナチュラル…どっちだ?」
フブキの問いに、リュウは弱々しく叩いていた拳を止めた。
「コーディネイターよ…ウチの家族は、みんな。」
「……なら、尚のことだ。ブルーコスモスが要求に手を加えていた。コーディネイターを公開処刑しろと言ってきたんだ。」
リュウは息をのんだ。国民を、公開処刑?地球の国だから、コーディネイターを公開処刑?そんな!
「そ、それなら…ザフトに助けてもらえばよかったんじゃないの!?」
「……そうなれば、すぐにでも地球軍が攻めてきた。大西洋連邦の要求をのめば、ザフトが攻めてくる。この意味が、分かるか?」
地球軍に従えばザフトが、ザフトに着けば地球軍が攻めてくる。どちらにしても、オーブが攻撃される?
「例え、コーディネイターの処刑を回避できてもプラントに送るしかない。そうなれば、オーブ軍はプラントに渡った国民を殺すことになる。今の地球軍はブルーコスモスの私兵集団だ、核ミサイルが撃てるなら大喜びでプラントに撃つだろう。」
核ミサイルをプラントに、あの『血のバレンタイン』をまた?
「……パナマが落とされたとき、降伏しようとした地球軍の将兵は皆殺しにされた。アラスカの報復で…連合に着けばザフトが、ザフトにつけば連合が国民にそれをやったかもしれない。」
「そ…そんな……!それじゃあ、どう転んでも戦争になるって事じゃない!」
いくら何でも、おかしい!中立国であることを貫けばザフト支援国なんて!しかも、それで地球軍に着けば国民の処刑、それが回避できても只の先延ばしじゃないか!しかし……
「だけど……だけど!!」
「……分かっている。だが、あえて厳しい言い方をする。」
フブキがリュウの肩に手を添えた。
「父達は国民がそうならないように踏みとどまった。国民全てを守るためには、あれしかなかった。」
理屈では、理解できる……それを聞かされれば。
「でも……でも…!」
「………これがオーブの外で起きていたことだ。」
オーブの、外?
「ヘリオポリスの人達にとっても、月での戦闘だってよその出来事だっただろう。だが違う。戦争は、俺達の世界で起きているんだ。関係ない、なんてことはない。そこは分かって欲しい…」
「戦争が…私達の、世界の、出来事…」
今まで、ニュースでしか戦争のことを聞かなかった。高雄も、ビクトリアも…アラスカやパナマのことも。
「……とにかく、今はゆっくり休んでくれ。まだ避難の手はあるから。」
「違うな…」
シオンが突然口を開いた。
「何が?」
「あいつらだよ…一見同じように見えるけど、戦っている物が戦争そのものなんだって思ってさ…」
シオンの言うとおりだ。彼らにはサイクロプスや核ミサイルを使って何の戸惑いもなく、敵を殺させる非人間性はない。『戦争』というシステムそのものが彼らの敵だ。そして自分達は『戦争』の一部だ。
アスランは父からの命令を思い出した。命令に従うならば、キラやカガリ、ユリを殺す。アークエンジェルのクルーに混じっていたディアッカ達も脱走兵として。いや、オーブそのものを滅ぼすという事になる。
ラクスの言った『ザフトのアスラン・ザラ』ならば遂行するが、ただのアスラン・ザラとしてはその命令が正しいとは思えない。
オーブの領海近くで地球軍は攻撃再開の準備を進めていた。
「後どのくらいですか?諸々の準備が整うのは?」
アズラエルの問いに司令官が振り向く。
「オーブからは再三にわたって会談の要請が来ているが?」
「そんなの無視しましょう、司令。コーディネイター共に肩入れする国など、国民諸共消すのが地球のためです。」
「な!?」
ハーベストの言葉に司令官のダーレスだけでなくブリッジにいた兵全員が凍り付いた。
「オーブを脱出した避難船、どこへ向かうかは知らぬが見つけ出して全て沈めましょう。我らナチュラルを裏切ったゴミ共に相応しい最後だ。」
「ハーベスト少将、そんな物は放っておきましょう。今はこっちを何とかしないと。」
アズラエルがたたみかけ、ハーベストは「そうでした。」と下品な笑みを浮かべる。
彼の姉です。狙ったつもりではなかったけど、名前がファーストでも有名なあの人と同じ。そして、この四年後の物語に出る敵と同じです。
ただ、綴りなどが違うのでどうかそれで。あっちは中国系、こっちは国故に日本系です。アルファベットでも綴りはあっちはL、こっちはRで始まります。
まさか、公式でこっちと被るのが出てくるとは思いませんでしたが。時間が経った後の公式ストーリーというのもなんか怖い気がします。
変えようかとも思ったけど、今更変えることも出来ないので彼の姉の名前はこのままです。
誰かと逆で男みたいな名前だけど、お許しを。