機動戦士ガンダムSEED REVERSE 作:meitoken
夜が明けて間もない頃、地球軍のMSと航空機部隊が再びオノゴロへ向けて侵攻してきた。
交代で休息を取っていたMSのパイロット、アークエンジェルのクルー達もすぐに迎撃に出る。
「再度の会談要請への答えもないまま…くそ!」
国防本部でカガリは地球軍の暴挙に怒りをあらわにした。
「おのれ、これが回答か地球軍!敵と見なせば、もはやその言葉すら聞かぬか!」
ウズミもまた、地球軍の無言の回答に怒りを抱いた。
「この警報って……敵?」
リュウ・アスカの問いに朝食を持ってきたフブキ・クラ・アスハが頷いた。
「ああ、そうだ……地球軍め!会談要請への返答もしないで!」
「会談要請への答えもないって…そんな!」
会談要請、ということはオーブ政府から大西洋連邦への話し合いの申し入れなのは分かる。それを無視するなんて、いくら何でもおかしいではないか。仮にも相手は一国家なのに。
「無茶苦茶じゃない!」
「その無茶苦茶をやりたがるのが地球軍とブルーコスモスなんだよ!」
フブキは立ち上がった。
「良いか、医務室にいろ!」
キラ達が迎撃に出る中、アスランはキラを呼び止めた。
「この状況ではどのみちオーブに勝ち目はない。分かってるんだろう?」
一日持ちこたえただけでも充分なんだ。せめて、キラ達だけでもどこかへ逃げた方が良いのでは?
その言葉を聞き、キラは微笑した。
「うん、多分みんなもね。」
ユリとレナもそれを肯定した。
「でも、勝ち目がないからって言いなりになるのって貴方はできる?」
「大事なのは、何のために戦うかである。少なくとも、私達はそう思うし、だから戦うの。」
そして、ユリが軽く息を置く。
「プラントだって、自治を認めさせるために戦争をしていた…それと同じじゃない?」
アスランはその言葉に聞き入った。確かに…プラントは自らを守るため、自治を認めさせるために戦った。アスランも同じ……彼らもまた?
キラはまた少し俯く。
「本当は戦いたくなんて無いけど……戦わなきゃ、守れない物もあるから。」
「……そうか。」
シオンは何かを察したかのようにキラ達の言葉を肯定した。そして、三人はそれぞれのMSに乗り、出撃する。それを見送るアスランの耳に聞き覚えのある声が飛び込んでくる。
「まいったね…」
後ろから皮肉な声をかけられて、振り向く。そこにはパイロットスーツを着たディアッカが立っていた。更に後ろにはイリアとミサキもいた。
「どうするの?アスラン…」
「え?」
ミサキの問いにアスランは戸惑った。イリアが確認するかのように問いかけてくる。
「命令を守るかどうか聞いているんだ。ちなみに俺はもう決めてるぜ。」
シオンが「俺もだ。」と言い、イリアはいつもと変わらない態度でアスランに試す様な目を向ける。
「やっぱ、まずいんだろうな…俺達ザフトが介入しちゃよ。」
ディアッカがだるそうに言いながらもアスランを見る。
「だが、俺は…俺はあいつ……あいつらを死なせたくない!」
ディアッカが笑い出した。いつものようにバカにされるのかと思ったが、彼の反応は思いもしない物だった。
「珍しく…ってか、初めて意見が合うじゃんか。」
ミサキも吹き出したように笑い出した。
「明日は雪かしら?」
「俺とも意見があうんだ。俺は台風に賭けるね。」
イリアまで笑っていた。アスランは自分だけ何か取り残されたような気分になったが、シオンに肩を叩かれてようやく意味を悟った。
「行くぞ、俺だって妹と自分の国を見捨てられないんだ。」
アークエンジェルが海の艦隊に攻撃を仕掛けるが、焼け石に水だ。そんな中でオーブ軍で辛うじて名前が分かった六機の新型が猛攻を仕掛けていた。
黒い飛行型、レイダーが青い砲撃型カラミティを乗せて艦隊を攻撃し、緑の大鎌を持ったフォビドゥンが海から護衛艦を沈めた。
白と紺の接近戦型グリードが対艦刀で一足先に上陸してM1を一機真っ二つにし、更にビームライフルで装甲車を撃破する。ダークレッドの機体ディザスターは右腕のトリケロスに内蔵された機関銃で迎撃のミサイルを撃ち落として、更にクローアンカーでM1のコクピットを潰した。グリードを乗せた飛行型プランダーはMS隊を援護しようとする航空機部隊をMA形態のまま次々と撃墜していく。
だが、六人のパイロット達の関心は昨日の強い五機のMSにしかなかった。
フリーダムがフルバーストモードでダガー隊の武器と足を破壊し、一足先に地上に降りたアフェクションが対艦刀とビームライフルでダガー隊を攻撃する。ブレイブも同様に地上に降りてビームサーベルと対艦刀でダガーの腕や足を破壊していく。だが、それでも後続が次々とやってくる。
そこへ昨日の新型機が現れた。あの後、オーブの調査で分かったのは名前と型式番号程度だがヘリオポリスの八機の後継機種なのは明らかだ。
フォビドゥンが曲がるビーム砲フレスベルグでフリーダムを撃ち、こちらに標的を変えたグリードが対艦刀で斬りかかった。剣を躱したところでレイダーがクローで体当たりを仕掛け、吹き飛ばされたフリーダムをカラミティとディザスターがビーム砲で狙ったところをブレイブとアフェクションが接近戦ではじく。しかし、プランダーも飛行形態でビーム砲を撃ってきた。六機は昨日と同じように連携などまるで縁がないような競争じみた攻撃を仕掛けてくるが、キラ達は押されていた。そこへ、ビームブーメランがフォビドゥンへ向かって飛んできた。同時にフライトユニットが自律飛行でカラミティを攻撃し、ミサイルがプランダーとグリードを牽制し、高出力のビームがトリケロスを構えたディザスターを吹き飛ばした。
〈キラ!〉
〈レナ、遅くなった!〉
「アスラン、どうして!?」
〈兄さん!?〉
アスランとシオンだ……どうして!シオンはレナの兄でオーブ出身でも今はザフトの軍人。なのに、どうして?
〈俺達にだって分かってるさ!戦ってでも、守らなきゃ行けないものがあることくらい!〉
〈それが同じものだと感じたから、俺達もディアッカ達もここに来ている!!〉
ジャスティスがビームサーベルを連結させたハルバードでレイダーに接近戦を仕掛けて、トゥルースが火力でグリードを寄せ付けない。
キラは思わず、泣きそうになった。敵として戦い、あれほど憎み合った二人が…クルーゼ隊のパイロット達が今友に戦っている。
沖合でアークエンジェルを攻撃する航空部隊をバスターが超高インパルス砲で撃墜し、シューターが廃墟を影にしてダガーをレールガンとライフルで撃破する。ウインドもまたM1隊に混じって対艦刀でダガー隊を切りさく。ストライクも対艦刀でダガー隊に切り込んでフレイムがガトリング砲で援護する。
当たり前のように地球軍とザフトのパイロット達が戦っている光景にある種の希望が見えた気がした。
本部の司令室で戦況を聞いていたカガリが飛び出そうとした時、キサカが腕を掴む。
「離せ!私も出る!」
「馬鹿をいうな!」
「自分だけこんな所にいられるか!」
しかし、カガリはその制止を振り払って飛び出そうとする。だが、それより早くドアが開きカガリはぶつかって尻餅をついた。
「カガリ……リュウ!?」
フブキが駆け寄った時、保護した民間人の少女が司令室に来ていて驚いた。
「何故、ここに!医務室にいろと言っただろう!」
フブキが問い詰めるが、リュウはそんな事など耳に入らないようにモニターを見る。
「戦争………これが。」
「……そうだ。今、オーブは戦争をしているんだ。」
フブキはリュウの言葉に問い詰めるのをやめた。恐らく、彼女は見ようとしているのだろう。自分が他人事と思っていた物を。それを理解すると同時にこの国の現状に憤りを感じて血がにじみ出るように拳を握りしめ、その間にカガリはキサカに連れ戻された。
オーブ領海を離れた海底でクルーゼ隊の潜水母艦が戦況を見守っていた。だが…
「面白く無さそうだな、イザーク。自分もあの中に飛んでいって戦いたいかね?」
「いえ…」
イザークは不機嫌そうに答えたが、ラウはそれを気にとめないように再び歩き出す。
「オーブはザフトからの支援も拒否しているからな。仕方あるまい……」
「自分は別に!」
「ある程度見届けたらカーペンタリアへ帰投する。パナマからずっと狭い艦内暮らしでもううんざりだろうが、あと少し我慢してくれたまえ。」
ラウの言葉を聞きつつ、イザークはアラスカ戦の後から抱いていた疑念を口にした。
「隊長、何なんですかあの女は?捕虜であるならそのように扱うべきかと。」
あの女とはラウがアラスカから連れてきた地球軍の少女のことだ。一体どういう意図があってラウは彼女を連れてきて、部屋に置いているのか。イザークはそこが引っかかっていた。その問いにラウは笑って答える。
「イザーク、銃を撃つばかりが戦争ではないのだよ。」
「は?」
「私は鍵を探していた。そして拾ったのだよ…おそらくは。」
鍵を探してそれを拾った?どういう意味だ?あの女にそういう価値があるのか?
イザークはただはぐらかされたようにしか思えなかった。また、何かラウやレイスにしか分からないことなのだろうか?
ニコルは机を叩いて、レイスに詰め寄った。
「どういうことですか!報告が届いていないって!」
ニコルは先日のパナマの虐殺を報告した。識別コードでどの隊のパイロットだったかも分かっている。だが…
「そのような事実はない、ということだそうよ。」
「そんな…!」
つまり、もみ消されたのだ。いくら何でもおかしいではないか。アラスカの報復にしたって、限度がある。
「只でさえ、アラスカで危ういからね。これ以上、余計自分の椅子を危うくする種を増やしたくないのでしょう。」
つまり、評議会の保身のためにあの一件をなかったことにするというのか!?
「これじゃあ、調子に乗って同じようなことをする手合いが増える一方です。」
「…ニコル、人間というのはとても愚かな生き物なのよ。」
愚かな、生き物?
「そんな愚か者をいちいち構っていたら、貴方が持たないわよ。」
オーブ軍は残存部隊をまとめ、マスドライバーがあるカグヤに集結させる命令が来た。その頃、フリーダム、ジャスティス、ブレイブ、トゥルース、アフェクションは連合の新型と交戦を続けていた。
〈ちぃっ、こいつらいい加減!〉
クロトが相手の粘り強さに苛立ち、オルガもまた赤い機体のフライトユニットを攻撃するが追い切れない。
「しぶとい…!」
背中のビーム砲シュラークと盾のビーム砲ケーファーツヴァイを何度も撃っているのにフライトユニット一つまともに当たらない。その時、オルガはモニターに気づいた。
「くそっ、このバカMS!もうパワーがやばい!」
〈お前はドカドカ撃ちすぎなんだよ、ばーか!〉
「んだとぉ!?」
〈帰んなら一人で帰ってよね!僕は知らないよ!〉
だが、クロトの注意がそれて赤いMSがハルバードでレイダーの鉄球ミョルニルを両断し、そのダメージが左腕にも来た。
「けっ、バカはお前の方じゃねえか!」
〈なんだと!?〉
だが、オルガはそれを無視してカラミティをレイダーに乗せた。
〈勝手に乗んなよ、この野郎!〉
「うるせえ!とっとと補給に戻れよ!お前もそれじゃしょうがねえだろうが!」
一方、リョウのグリードは緑の砲撃型と交戦していた。火力で負けても、接近戦なら勝てると思ったのに相手はたかがビームサーベル二本でこちらを相手にしている。
「ちくしょー!とっとと、輪切りになれ!」
だが、相手は対艦刀を躱し続けており、近づいたところをビーム砲で海を撃たれた。波で視界が遮られて、そのまま近づいてきて、ビームサーベルでこちらの対艦刀を切りさいた。
〈下手くそ…〉
「んだと、デジレ!?」
〈うるさい…?〉
そう言っている間にディザスターの前に出た青い機体がシールドのビームアンカーを発射し、左腕のクローを破壊した。
「下手くそはお前じゃねえか!!」
アルドは緑の翼の機体と交戦していたが、相手はこちら以上の機動力でまるで捉えられない。
「くそっ、速い…!あぁ、何やってるんだ、あいつら!?」
カラミティが既にレイダーに乗っており、ディザスターも武器をやられて後退している。グリードも海上をホバー移動しながら後を追う。
「ちっ!パワーがやばい!!」
ライフルで狙っている相手が肉薄し、ビームサーベルでライフルを破壊した。アルドはそれ以上戦闘を続けず、撤退した。
シャニは青い翼の奴のビーム砲を防ごうとしたが、失敗した。
「終わり?」
よくみると、他の連中は既に戻ろうとしている。
シャニは大鎌ニーズヘグで相手を牽制し、そのまま母艦へ戻っていった。
パウエルに戻った六機を見て、アズラエルはため息をついた。
「やれやれ、まだまだですね。」
「ふん、あの六機はともかくダガー部隊など後でいくらでも調達すれば良いものを。」
ハーベストの言い方はまるであの六機のパイロットの方が貴重で一般のパイロット達はいくらでも代わりがいる消耗品程度にしか見ていない言葉で、またもブリッジの人間はハーベストに怒りを抱いた。
シオンはどのみち、オーブが故郷であるから戦うにはそれで充分でしょう。まだ自分にとっての真実を探しています。
そして、リュウもまたニュースでしか見なかった戦争の本物を見ることとなりました。
次回で、アニメでも屈指の名場面であろうあそこです