機動戦士ガンダムSEED REVERSE 作:meitoken
ちょっと、pixivでも少数あるであろう原作キャラの勝手なお相手キャラも出てきます。どうかお許しを
キラは唖然としていた。昨日まで、これからも変わることがないと思っていた日常があんなにあっさりと壊れてしまった。なんで、こんな……いつも通りにカトウ教授の仕事の手伝いをさせられながら、サイ達と平凡に暮らしていたのに。
あの残骸の中に、ヘリオポリス内の住居やゼミの校舎も入っている………そして、今日登校する前に別れた両親の顔がよぎった。
「父さん、母さん…無事だよね?」
レナもまた、呆然としていた。ついさっきまで外からよく見れば分かる自動回転型のコロニー。それが今は外側が剥がれたボトルみたいに無残な姿。
「こ、これを…私が…兄さんが?」
どうして、兄さんがこんなことを……私だけじゃない。父さんと母さんもいるのに。
「キラ!レナ!どこにいるの!?」
ユリはフレイムを飛ばして闇雲に探すが、コロニーの小さな残骸に当たって思うように勧めない。
〈フレイム!ユリ・ヤマト!落ち着け、残骸にぶつかれば命はないぞ!!〉
副長のナタルが呼びかけるが、ユリには聞こえない。
「キラ!キラ、返事をして!レナ!どこなの!?」
シオンは残骸化したヘリオポリスを唖然と眺めた。
俺が……俺達が、ヘリオポリスが!レナがいるということは……父さん達も…!
あの事件以来、連絡を取っていなかった妹があのコロニーにいた。ならば、両親も。両親はモルゲンレーテの技術者だ。
大なり小なり、開発に関わっているのではと思っていたが………
〈シオン!シオン、無事か!?〉
通信が聞こえた。アスランからだ。
イージスがこちらにやってきた。
「アスラン、オロールとマシューも…」
〈ああ、キールはさっき帰投が確認できた。〉
そうか、しかしあの機体に乗っていたのはレナだ。もし、レナがキールを…逆だったらと思うと。
〈一度、ヴェサリウスに帰投しよう。この状況では敵艦の位置もつかめない。〉
アスランの言うことは正しい。コロニーの残骸がこうも多くては探せない。まさに砂漠の上の砂粒みたいなものだ。
「ヴェサリウスとガモフの位置は……つかめた。このまま…?」
シオンはモニターが別の反応を捕らえたのに気づいた。コロニーの残骸、にしては動き方が妙だ。
ナタルとユリの呼びかけでヘリオポリス崩壊による自失から目覚めたキラとレナはアークエンジェルに帰投する際、推進部の破損した一つの救命艇を発見し、持ち帰ろうとしたがナタルが許可をせずにいた。
〈推進部が壊れて漂流してたんですよ!放り出せとでも言うんですか!?〉
〈貴女達の都合でこうなったんだから、こういう責任ぐらい取ってくださいよ!〉
「そういう問題では…!」
ナタルが言いかけたところでマリューが許可を出した。
「今は時間を無駄にしている暇はないのよ。急いで。」
救命艇の中から現れた赤髪の少女にキラは胸が高鳴った。
フレイ・アルスターだ。完全にパニックになった彼女を落ち着かせるが、ユリは面白くない顔をしていた。どうも、彼女が絡むと姉が不機嫌になるのがキラには理解できなかった。
「三人とも、大丈夫か?」
シュウだ。既に地球軍の整備服に着替えている。
「う、うん…」
「あの子、知り合いか?」
フレイを首で指し、キラは「友達の…サイの、ガールフレンド」と答える。
「そうか…食堂にいるそうだから、連れていってあげると良いだろう。ユリも…少し、休んで。」
「あ、はい…ありがとう、ございます。」
相手が改めて軍人だと思い知ったのか、急に敬語になった。
「敬語はやめてくれ……大して年は変わらないから。」
「そ、そう…ありがとう。」
シュウは頷いて、レナの方も見る。
「しばらく、ザフトもこっちを見つけられないから休んでて良いよ。」
「ええ…そうする。」
フレイを食堂に案内したところで彼女はサイに思いっきり抱きついた。やはりお似合いなのか、とキラは思うが同時に少々むなしく感じた。
同じ頃、ヴェサリウスでもアデスとシオンが口論をしていた。シオンが救命艇を発見し、持ち帰ろうとしたところで止められたのだ。
「ならぬ!本艦は戦闘中だ!そのような状況ではない!」
〈しかし、空気が漏れています!このまま放っておけば、中の人達は数時間足らずで全滅です!!〉
「……許可しよう。」
ラウの判断にアデスは抗議の目を向けた。
「この状況では向こうも我々も下手に動けまい。それに、『血のバレンタイン』のような悲劇を繰り返してはならん……シオン、その救命艇をガモフに運べ。避難民の部屋などはこちらで手配するように伝える。」
〈ありがとうございます。〉
「全く、隊長もシオンも何を考えているんだ!ナチュラルを乗せるなど!」
不機嫌そうな声を上げているイザークをニコルが宥めていた。
「相手は民間人ですよ?それに空気が漏れているのなら、見殺しにするわけにもいかないでしょう。」
ミサキもニコルの言葉に頷く。
「そうなった原因はこっちにもあるんだしね…」
「そうそう。案外掘り出しモンが見つかるかもよ。」
「おう、その通りだ。」
ディアッカの言葉にイリアも同意するが、シオンが咎める。
「お前らの場合は下心が見え見えだ。それより、少し手伝え。」
シオンはディアッカとイリアを咎めながら救命艇を開けた。しかし、中からは人が出てくる気配は一向にない。無理もないだろう。自分達のコロニーを破壊した船に助けられたのだ。出てこられないのが普通だ。
ニコルが向かっていき、顔を入れて呼びかけた。
「ご心配なく。我々は貴方達に危害を加えたりはしません。」
数分後、ニコルの外見と温和な声に警戒心が解けたのか、避難民達が恐る恐る出てきた。人数はシェルターの定員丁度であった。
避難民の中にいた子供が慣れない無重力でバランスを崩してしまったが、ミサキがうまく支え、何とか姿勢を戻す事ができた。
「大丈夫?」
「うん、お姉ちゃんありがとう!」
子供は元気そうに礼を言い、両親の元へ向かっていった。
「私で最後です。」
どうやら救命艇にいるのはこれで最後のようだ。出てきたのは自分達とほぼ同年代の長いダークブラウンの髪に青い瞳の少女であったが、ニコルは目を見開いた。よく整った顔立ちをしており、身体の発育もいい。
「こりゃ本当に掘り出し物だぞ…」
「ああ、どっかの誰かよりずっと色っぽいぜ。」
「それは誰のこと……?」
「貴様ら、何をやっている……」
ディアッカとイリアにミサキが怒り、イザークも三人へ苛立ちの入った声を向けた。
「あ、あれ?」
慣性で少女がバランスを崩し、回転が止まらなくなってしまった。近くにいたニコルが受け止め、少女は姿勢を立て直した。
「あ、すいません。」
「いえ、これくらいは……?」
何か妙に柔らかい感触が……
ニコルは嫌な予感がした。よく見たら彼女の胸がほぼ自分の身体に押しつけられる形となっていた。そう認識した途端ニコルは混乱状態に陥ってしまった。
「あの、どうかしました?」
どうやら少女は気づいていないらしく、顔を寄せてくるので胸が余計に押しつけられる形となってしまった。
「あ、あの……その!」
ニコルは完全に混乱し、言葉が出てこない。一同がそんな光景を見ている中、茶髪のオールバックの青年が声をかけた。キールだ。
「皆さん、部屋へご案内します。着いて来てください。」
彼の言葉に従い、避難民達は彼と案内の兵士について行った。先程の少女もニコルに不思議そうに目を向けた後、後に続いた。
ニコルは身体に残った感触に戸惑っていたが、ディアッカが後ろから組み付いてきた。
「おいおい、ニコル!お前やるじゃないか!」
ディアッカが茶化し、脇からイリアも肘で突いてくる。
「あんな可愛い女の子を抱きとめてよ!お前よりは年上っぽいし、ああいう清楚なのが好みなのか?」
「な!?し、下心なんてありません!確かに、可愛いとは思いますけど……」
彼の言葉など気にも留めずにイリアが更に食いつく。
「なんだよ!やっぱりいいんじゃないか!で、どうだったよ?あの子の胸。結構あったけど?」
「だから何もありませんって!!」
「いつまで遊んでいる。」
シオンの言葉でディアッカとイリアはこっそり舌打ちをし、ニコルを放してブリッジへ向かった。
「ふう、助かりましたよ。」
「どういたしまして…」
シオンに促され、ニコルとミサキも部屋へ戻った。
しばらくして、シオンはラウに呼び出された。先ほどアスランも呼び出された要件なのは分かっている。そこにはレイスもいた。
「呼び出された理由は分かるわね?」
「先の戦闘での…無断出撃、でありましょう。」
「そうだ……君とアスランにしてはらしくなかったものでね。」
シオンは口ごもってしまう。ここで本当のことを言えば、間違いなく………
「いえ、ジンを遙かに上回る機体を手に入れてしまって…子供染みた高揚で出撃してしまいました。」
レイスは「ふぅん。」と訝る。
「まあ、そういうことにしてあげる。良いですよね、隊長?」
「ああ……私も交戦した身では分からなくもないが。二度目は軍法会議を覚悟しておけ?」
「は!」
退室して、シオンはため息をつく。とてもではないが、誤魔化しが二度や三度も効く相手ではない。だが、何故アスランまで?アスランはアカデミーの総合成績ではトップ、優等生中の優等生だ。シオンが今口にした方便のような理由で出るとは思えないが……
その後、クルーゼ隊は新造艦アークエンジェルへの攻撃を敢行するが、ストライク、フレイム、ウインドの抵抗により失敗。ユーラシアの軍事要塞アルテミスへ逃げ込まれてしまった。また、プラント本国からヘリオポリス崩壊に付いての真偽を問うためにラウに帰国命令が下り、彼はアスランとシオンを伴い帰国する事となった。その際に避難民の今後も決めるため、彼らは避難民共々ヴェサリウスへ移乗する事となった。
ニコルはアスランとシオンの見送りと同時に避難民の見送りにも来ていたが、先程の少女が自分の方へ向かってくるのに気付いた。
「さっきはどうも。」
「いえ、お構いなく。そういえば、自己紹介がまだでしたね。ニコル・アマルフィです。」
「あ、私はメイ・ハーベストです。」
少女も名乗ったが、名字に気になる点があった。
「あの、ハーベストってもしかして…地球軍のグラン・ハーベスト少将の……」
心当たりのある名前を口にした途端、少女は顔を歪ませた。
「ええ…あの男は私の父です。」
やはり。ニコルの中に確信が生まれた。大西洋連邦の主戦論者でコーディネイター排斥を掲げるブルーコスモスとのパイプもあるタカ派の中でも大物だ。父の名が出た時の彼女の態度に疑問が残るが、それより気になるのは彼女の立場だ。地球軍の重要人物の親族ともなれば色々と利用されるだろう。自分とさほど歳の変わらない少女がそのような目に遭わされるとなると、少々気が重い。何かしたいと思ったニコルはメモを取り出し、それをメイに渡した。
「僕の携帯のアドレスです。気休め程度かも知れませんが、気が向いたらメールをください。」
「え?あ、ありがとう……」
「おい、早くしろ。何時までたっても出られないだろう!」
兵士の急かす声が聞こえ、メイはランチへと乗っていった。
アルテミスへ向かうアークエンジェルはクルーゼ隊の追撃を辛うじて切り抜けることが出来たが、キラ達三人の学生が出てこなかった。ムウとレイラに諭されて、三人はMSに乗ることを決め、更にサイ達がブリッジ要員として戦うのはアークエンジェルにとっても助けになった。そうして、彼らは本格的な実戦を初体験したが、三人とも出てこない。
ムウ達がコクピットを開けると、三人とも震えていた。これを見て、ムウ達は気づいた。忘れていた…この子達はコーディネイターといっても、つい数時間前まで素人の学生だったんだ。ヘリオポリスでは無我夢中だったが、先ほどの戦闘でキラは危うくストライクごとイージスに鹵獲されかけた上に撃墜寸前だった。ユリとレナも一歩間違えればあの時死んでいたのだ。怖いのが普通だ。
「終わったよ…お疲れさん。」
ムウがそっとキラの手を操縦桿から手放し、レイラもレナの手を手放してそっと抱き寄せる。
「私も初陣はこんなだったから……気にすることないわ。」
それを言われて、レナはしがみついてすすり泣いていた。何も言わず、レイラも優しく背中をたたいた。
そして、シュウがユリのヘルメットを脱がした。
「もうすぐアルテミスにつく……戦闘は終わったよ。」
「ぁ…私達、助かったの?」
「ああ。」
これを見ていたコジロー・マードックらメカニック達もパイロット達は只の子供だったということを思い知り、機体の整備に取りかかった。
シュウはムウとレイラがキラ達三人を連れていくのを見て、つぶやいた。
「コーディネイターでも、学生だったし………初陣は怖いものなんだな。」
メカニックとして志願したシュウは訓練でしか戦闘機もMAも動かしたものはない。彼らが感じた恐怖は、どれほどのものだったのだろう?
あの『エイプリルフール・クライシス』の混乱で両親は市民同士の諍いで命を落とした。シュウの胸に去来したのは理不尽への怒り。その理不尽を招いたコーディネイターへの敵意だった。しかし……現実にそのコーディネイターがいなければ自分達は今頃死んでおり、コーディネイターでも同年代の学生達はああして初陣の恐怖で震えていた。
そして、ユリ・ヤマトと会った時……あんな状況だったのに。
アルテミスへの入港許可が下りて、臨検の小型艇が到着する前後にムウは三人に忠告した。MSのOSをロックしろと……
重要なはずのフェイズシフトダウンを省いたのはちょっと残念ですが、大まかな流れとしては本編通り。修理が終わっていないキールは待機していました。
代わりにアルテミスはちゃんと書きます。
因みにオリジナルキャラのメイですが、ニコルにもほしいということで掲示板時代から。多分、他のところでも探せば出てきそうな気もしますが……こっちなりに。
シュウは元々志願兵ですが、これに合わせて設定上多数の凍死者や餓死者を出した「エイプリルフール・クライシス」もつけました。
あの規模なら暴動だって起きても不思議じゃないでしょう。つまり、シュウの両親を殺したのは…ある意味両方の被害者ですが、やはり比重はコーディネイターです。キラ達との出会い、特にユリが……