機動戦士ガンダムSEED REVERSE   作:meitoken

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今度は彼女がアレに乗ってきます。


PHASE-37 黒い天使…前編

地球軍の月面プトレマイオス基地…その警戒エリア内で一隻の艦が航行していた。アークエンジェル級の二番艦ドミニオン。その艦長席に座るのはナタル・バジルールだ。

 

「センサーに感!距離500、オレンジ14、マーク233アルファ、大型の熱量接近しつつあり、戦艦クラスと思われます!」

 

「対艦、対MS戦闘用意!面舵10,艦首下げピッチ角15。イーゲルシュテルン機動、バリアント照準敵戦艦。ミサイル発射管一番から四番コリントス装填…バリアント、てぇー!」

 

だが、クルー達はもたついており、まともに対応できない。そのままドミニオンは撃沈され、シミュレーションは終了した。

 

「何をやっているか、貴様ら!対応が遅すぎる!これでは初陣で沈められるぞ!分かっているのか!?」

 

ふと、ナタルは全く同じタイプの艦に乗っていた者達を思い出した。彼らも経験は浅く、いくら工業カレッジとはいえ、あの学生達ですら碌な訓練も積めない状況であの厳しい戦いを生き延びた。今いるクルー達はその学生未満だ。

 

「ちょっと、ナタル。それくらいにしなさい…言いたいことは分かるけど。」

 

同期のレベッカ・アルバネーゼ中尉がCICから出てきた。本人の希望でナタルの副長になり、中尉に昇進していた。ナタルもまたドミニオンの艦長就任に合わせて少佐になっている。

 

「あと、艦隊司令部からお客さんよ。」

 

 

 

クルーゼ隊は評議会の命令で脱走したエターナルの追撃任務に当たっていた。地球から戻っていきなりの出撃だ。ヤキン・ドゥーエの追跡データを分析すると、L4コロニー群へ向かうとの推測が出た。妙な連中の根城にされたり、今回のようなケースに使われたりと…

 

「クライン派がさほどの規模とは思えんが、厭戦気分という奴からかな?軍内部も大分切り崩されていたようだ。何が出るやら、だな。」

 

「アデス、貴方はバルトフェルド隊長に会ったそうだけど?」

 

「ええ、よもや彼だとは。」

 

「口の上手い陽気な男さ。ザラ議長もまんまとそれに一杯食わされたのだろう。奇跡の生還のヒーローだしな?」

 

ラウの言ったとおり、砂漠でストライクに敗れ、戦死したと思われていた男をパトリック・ザラは英雄に祭り上げ、最新鋭の戦艦の艦長に任命した。まさかそれが裏切るとは誰も思わないだろう。

 

「で、そのとばっちりを受けた私達はたまりませんわね。戻ってきた途端にエターナルを追え、だものね。」

 

ラウはレイスの愚痴を「仕方なかろう。」と咎める。

 

「物事はそうそう頭の中で引いた図面通りには行かぬ物さ。ましてや人が胸の内に秘めた思惑など、容易に判る物でもない。」

 

イザークは既にアスランが最新鋭機を奪って逃走、更に状況からシオンも共犯者として扱われていることは聞いている。ニコルも動揺していた。無理もない……同期の中でもニコルは特にアスランを慕っていた。シオンまでもが裏切るなど……到底信じられるものではなかった。

 

「イザーク、ニコル……今度出会えばアスランとシオンは敵だぞ。」

 

ラウの言葉でイザークは我に返った。

 

「撃てるかな?」

 

ラウの試すような言葉に反応してアデスや新しく配属されたシホ・ハーネンフースらも二人に不安混じりの視線を向けていた。

 

「無論です!裏切り者など…!」

 

イザークが宣言した後、一同はニコルに目を向けた。

 

「私の手で絶対に引導を渡します…!例え隊長達でも譲りません!!」

 

ニコルは悠然と答えたが、その声は震えているように聞こえた。自分達の中では彼がアスランとは一番親しかったニコルがアスランを殺す。イザークは彼らの裏切りに対する怒り以上に空しい物を感じた。

 

 

 

アークエンジェルのブリッジに主だった面々が集まって話し合いをしていた。

 

「当面の問題はやはり月でしょうか?現在地球軍は奪還したビクトリアから次々と部隊を送ってきていると聞いています。」

 

ラクス達が持ってきた情報にはビクトリアが奪い返されたという貴重な情報があり、彼女の言う通りビクトリアから送られる兵力は無視できない。そして、それが意味するという事は…

 

「プラント総攻撃と言うつもりなのかしらね?」

 

マリューの挙げた可能性にバルトフェルドが戯けて答える。

 

「元々それがやりたくて仕方ない連中が一杯いるようだからね。青き清浄なる世界のために?」

 

ブルーコスモスのスローガンにマリューが顔を俯かせ、フブキが唇をかみしめて、メイを睨み付ける。それを気遣うようにリュウがフブキを見る。

 

「よせよ。」

 

ムウがとがめ、バルトフェルドは肩をすくませる。

 

「僕が言ってるんじゃないよ。」

 

「でも、事実よね。」

 

レイラの言う通り、彼らは知らずの内にブルーコスモスが掲げる『青き清浄なる世界のために』戦っていたのだ。

 

「何で、コーディネイターを撃つのが青き清浄なる世界のためなんだか?」

 

バルトフェルドの疑念にフブキが答える。

 

「コーディネイターじゃないよ…奴らは自分達が世界だと、神だと思い上がっているんだよ。だから自分達に同意しない者全てが敵なんだよ!」

 

「…ごめんなさい、父が。」

 

「…お前が悪いわけじゃない。」

 

メイが謝罪するが、フブキはそれを詫びる。

 

「あいつの事は、良いわ。」

 

「メイさん?」

 

ラクスが目を見開き、キラも寒気がした。

 

「ラクス…お父様を殺された貴女には悪いけど、あいつは私のことを自分の面汚しと言って勝手に絶縁したの……あんな男、父親でも何でもないわ。」

 

それは、彼女の個人的な恨みでしかないだろう。しかし、ある意味彼らの同志である意志の表れであるのかもしれない。

 

「話は逸れちゃったけど、その『青き清浄なる世界』ってのが何なんだか知らんが、プラントとしちゃ、そんな訳のわからん理由で撃たれるのはたまらんさ。」

 

バルトフェルドが話を続けるが、アスランがいないのに気付いたカガリがエレベーターへ向かった。

 

「しかし、プラントもナチュラルなんか既に邪魔者だって風潮だしな、トップは。当然防戦し、反撃に出る。二度とそんな事のないないようにってね。…それがどこまで続くんだか?」

 

バルトフェルドの話が終わり、イリアが大きなため息をついた。

 

「嫌な時代に生まれちまったもんだぜ。俺ら……」

 

「そうだな…」

 

シオンが同意の言葉を口にする。そして、キラは改めて知った。彼らもまた、アスランのように血のバレンタインで大切な人を奪われた者だ。

 

「でも、そうしてしまうのも…また止めるのも、私たち人なのです。」

 

キラに寄り添っているラクスの言葉にブリッジに集まっていた全員が注目する。

 

「何時の時代も…私たちと同じ想いの人もたくさんいるのです。」

 

そうだ……こうして、ナチュラルとコーディネイターを、かつての敵同士であった者達が、同じ目的のために戦っているのだ。アスランが、シオンとバルトフェルドも……

 

「作りたいと思いますわね……そうでない時代を。」

 

「………うん。」

 

ラクスの言葉に、キラは決意を新たに頷く。

 

 

 

 

ドミニオンのブリッジでナタルは先ほどアズラエルに言われた言葉を思い出した。

 

『貴女は確かにこの艦を指揮する艦長さんなのかもしれない。けどね、その上にはもっとこの戦争全体を見ながら考えたり指揮したりする人間がいるんですよ?』

 

アズラエルがかけてきた圧力……それはアラスカでナタルがマリューに言った言葉だ。司令部からもアズラエルの要望に従うように言われている。オブザーバー、等と言っていても実態はアズラエルの言いなりだ。

 

レベッカはアズラエルにかなり反感を抱いている。その理由はアラスカ以外にもある…いくら連合上層部に影響力を持つと言っても、結局アズラエルは部外者だ。軍隊に口を挟めるような立場ではない。

 

なのに、この男は我が物顔で軍を動かしている。

 

オマケにこの艦に配属された六機の新型機……あの学生達とさほど変わらないようにも見えるが、彼らは個人データを全て削除されており、搭乗するMSの生体CPUとして扱われていた。

 

生体CPU……パイロットではなく消耗パーツ扱い。

 

戦争に勝つために、という意味ではあるのかもしれないがそれでもナタルは上層部のやり方にアラスカの時と同様の疑念を禁じ得なかった。どこの誰かも分からない子供を薬漬けにして、身体や脳を改造するなど。遺伝子操作をしなければ肉体は良いなどと…余りにも身勝手な言い草だ。

 

 

 

「本気なのか、リュウ?」

 

「ええ、志願兵という形で。お願い。」

 

リュウは突然、自分もMSパイロットとして戦うと言い出した。理由を聞くと、オーブでの戦いとキラ達との出会いを経て、戦争が自分とは無関係ではない事だと言うことを思い知った。そして、このまま本当に地球とプラントが際限なく争うことになればオーブもまたどうなるか分からない。

 

「………わかった。キサカやラミアス艦長には俺から話を通す。その代わり、無理はするなよ?」

 

「ええ…」

 

 




今回はやや短めですが、後半はたっぷりと行きます。
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