機動戦士ガンダムSEED REVERSE 作:meitoken
「フリーダムとアフェクションのパイロット、あいつらが前のストライクとフレイムのパイロットだ。…あいつらもコーディネイターだ。」
ディアッカからイザークは信じられないことを聞かされた。アラスカで敵味方を問わず助けようとしたあの二機のパイロットが、コーディネイター?しかも、俺に傷をつけたストライクのパイロットだと!?
「……二人共、アスランとはガキの頃からの友達だってよ。」
「………なんだと?」
出任せ、等とは思えない。普段、飄々としているディアッカだがそういう出任せを言うタイプではないことはイザークがよく知っている。だが……アスランと、友達?
「フリーダムのパイロット…キラがヘリオポリスで偶然会ったのよ。アフェクションの、ユリも後で知った。」
「そ、そんな…!!」
ニコルはミサキから聞かされた秘密に言葉が見つからない。思い起こせば、ヘリオポリス直後にアスランが独断でストライクを鹵獲しようとした。もし、あの時から知っていたのであれば説明もつく。
「オーブでも、偶然見かけたの……それが、あの時網を張っていた根拠。」
「まさか……あの鳥ロボットか?」
「ああ……月で別れる前にアスランが送ったんだってよ。」
そんな、馬鹿な!?初めから知っていて殺し合っていたのか!?いくら敵同士とはいえ!
まして、ミゲルやキールを殺したのがアスランの友達!アスランの苦しみは一体どれほどなのだ!?
「それだけじゃないわ…ブレイブのパイロットもね。前のウインドのパイロットだけど……シオンの妹なの。」
「………え?」
ニコルはミサキの言葉が理解できなかった。今、なんて言った?ウインドのパイロットが、シオンの…妹?
「ま、まさか…アスランと同じ?」
「ええ……あの作戦中に出くわしちゃったの。ヘリオポリスの友達と一緒に来いって、何度も説得した。」
「ヘリオポリスの、友達って……」
「酷いでしょ?戦争だから、兄妹でも敵だから討たなきゃいけないなんて。」
そう、戦争である異常、軍人であるならばそれが正しいのだ。だが、そんなことを成し遂げたら、シオンの心は?
「俺には奴らほどの業も覚悟もねえけど、見ちまったからな。」
ディアッカは今でも思い出す。あの少女、ミリアリアの叫びを。自分が、ゲーム感覚で敵を撃っていたその結果を……彼女もキラも、トールも……ヘリオポリスがあんなことになりさえしなければ、今でもあのコロニーで平和に暮らしていたはずなのだ。
「あいつら見て、アラスカやパナマやオーブ見て…それでも、軍の命令に黙って従うなんて俺には出来ねえよ。」
「ディアッカ!」
「で、でも…!ヘリオポリスに限れば…」
「オーブの一部の首長家が悪い。それが通じると思う?」
ニコルが押し黙った。そう、そんな言い訳通じないのだ。
「それにね…イザークが撃ち落としたシャトル。アレに乗っていたのは、ヘリオポリスから避難した人だったの。」
それだけではない。シオンの妹…レナはそのシャトルで死んだ人達にコーディネイターという理由だけで罵倒された。それが原因で彼らの死を喜んだ…それどころか、デュエルのパイロットにお礼のキスをしたいとまで思った時期があったという。
只の学生が、戦争で怖い思いをして…コーディネイターという理由だけで同じ国の人に迫害され、その迫害した側の死を喜んだのだ。
「あの子がそんな風になったのも、私達のせい…それを、どうやって止めれば良いのか分からない。でも…只、命令に従い続けたら、それを考えるということさえ、思わなかった。」
ドミニオンは再びアークエンジェルの攻撃を開始した。
「今度失敗したらまた怒られる?」
準備をするシャニが後の展開を予想する。
「ったく…良いように使ってくれるよね、あのオッサン。」
クロトが愚痴をこぼす。
「しょうがねえ……殺されるよりは殺す方がマシってね。」
オルガが出撃準備を終え、カラミティが出撃する。続いてシャニとクロトが発進した。
「一機だけでも良いんだよな?」
リョウが問うと、アルドが問い返す。
「全部落としたらダメなのか?」
「ああ、せっかく面白そうなんだから一機くらい落としても良いだろう。」
デジレがぼやいてグリード、ディザスター、プランダーも後に続く。そして、ドミニオンと僚艦のクルーを収容したハーベストのアガメムノン級がメンデルへ向かう。
「親父のクローンだと!?そんなおとぎ話、誰が信じるか!」
ムウが困惑しながら否定するが、ラウはなおも笑う。
「私も信じたくはないがな…だが、残念なことに事実でね!!」
そして、ラウは再びムウを殺す為に歩を進める。
「間もなく最後の扉が開く。私が開く!そしてこの世界は終わる!この果てしなき欲望の世界は!」
ラウはゆっくりとムウへ近付いていく。キラは今になって自分が銃を持っていないことに気付いた。何か武器になる物を探して周囲を見回している間にもラウは続ける。
「そこで足掻く思い上がった者達…!その望みのままにな!!」
「ムウさん!」
キラは落ちていた機材の破片を見つけた。それを目指して走り、破片を拾った。
「そんなこと!」
ラウがキラに標的を変える。
「キラ!!」
ムウが腹を押さえて飛び出す。
「させるものかぁ!!」
ラウの弾はキラの右肩を掠め、ムウの弾はラウを掠め、キラの投げた破片はラウの仮面を吹っ飛ばした。
そこから覗いた顔に二人は言葉を失った。どう見ても二十代のはずの彼の素顔はムウとよく似た……いや、ムウが後数十年生きていたらなっていたかも知れないと言うほどの老人の顔であった。出来損ないのクローンと関係があるのか?
「ふっ!貴様らだけで何が出来る!もう誰にも止められはしないさ!この宇宙を覆う憎しみの渦はな!」
ラウは踵を返す。
「待てっ…!」
ムウが追おうとするが、よろめいて倒れた。キラが駆け寄ると、腹部からの出血が酷くなっており、顔も青ざめていた。
「行きましょう……立てますか?」
「私が母さんのクローン?そんなの信じると思っているの!?」
「誰だってそんなの信じたくないわよ……でもね、私は父の日記を見たのよ。それで知ったのさ………その証拠に。」
レイスがバイザーを取った。その素顔は正にレイラと瓜二つの整った顔立ちの女性だ。しかし、レイラと違いレイスの瞳は憎悪の炎が宿っていた。
「レイラさんと……似ている。」
ユリが呆然と呟く。
「そうね…まあ、この場合はその女が私に似ているというべきね。」
レイスが通信機を取った。
〈レイス、潮時だ…〉
恐らく、ラウ・ル・クルーゼだ。レイスは通信を切り、椅子を立つ。
「どうやらここまでの様ね……もうすぐラウは最後の扉を開く。そしてその先で全てが消えるわ。貴方達も、私も……浅ましい人類も。ああ、それと…その資料はあげるわ……じゃあね、お母さん。」
彼女はそう言い遺して去っていった。
ユリは茫然としていた。自身の出生と彼女の途方もない憎悪。僅かに思い出した瞬間、吐き気がした。
「ユリ、大丈夫?……アークエンジェルが心配だわ。戻りましょう。」
同じく、動揺が顔に出ているレイラに促されてユリはよろよろと歩き出した。
コロニーの外では戦闘が再開されていた。ドミニオンから再び例のGが向かってくる。今度はアークエンジェルとクサナギに加え、最終調整が終わったエターナルもいる。
「君達は艦の守りを!」
〈了解!〉
アスランの指示にリュウが答え、ジャスティス、トゥルース、ブレイブは敵に向かった。
〈ナスカ級の動き、気を付けて!…ゴットフリート照準!コリントス装填!〉
〈主砲準備!アンチビーム爆雷発射!母艦を潰すぞ!〉
アークエンジェルとエターナルもそれぞれの艦長が指示を出していた。
コロニーを大きな震動が襲い、その直後にラウから通信が入った。
〈イザーク、ニコル…聞こえるか?退くぞ!〉
それは面会時間の終わりを意味していた。イザークは同じく状況を理解し、バスターに戻ろうとしたディアッカに銃口を向ける。
「ザフトじゃなきゃ敵だって言うんなら撃てよ!」
ディアッカの言葉にイザークは引き金に賭けた指を振るわせながら叫ぶ。
「…騙されてるんだ、お前達は!」
「さぁて、どっちかね。そりゃ。」
何!騙されているのは世迷い言をいうお前達ではなく俺達だというのか!?
「わからねえけど、俺は行く。」
ディアッカは以前の彼になかった決意を感じさせ、ラダーで上がっていく。
「できりゃ、お前やニコルとは戦いたくないけどな。」
イザークはバスターが飛び立つまで、その場に立ちつくすことしかできなかった。
コロニーを襲った振動とバスターが上空を通り過ぎたのを見たミサキは状況を理解し、シューターに戻ろうとしたが、あることを思い出して後ろを振り向いた。
「ニコル、私はもう行くわ。その前に一つ、言っておきたいことがあるの?」
「…なんですか?」」
「メイは今、エターナルにいるわ。ブリッジに入ってる。」
かつての同僚の少年の顔が強張った。彼らがここにいるのは脱走したエターナルを討つ為だろう。その目標に彼が知る少女が乗っている。できれば彼が彼女を殺すということにはなってほしくない。
以前ニコルは地球で「次メイに会ったらまたピアノを聞いて貰いたい」と言っていた。もしかしたら、ニコルは彼女が好きなのかも知れない。根拠のない話だが、そうであるなら尚のこと彼にメイを討たせたくない故についた嘘だ。
「貴方やイザークと…戦うのかしら?」
ジャスティスはカラミティ、フォビドゥン、レイダーの三機を相手に一機で粘っていた。対してブレイブとトゥルースはグリード、ディザスター、プランダーを翻弄していた。
このまま押し切ってアスランの援護に回りたいが、相手も中々それをさせない。
アークエンジェル、エターナル、クサナギの三隻が援護をしている時、ミリアリアがマリューに報告をする。
「艦長、フリーダムとアフェクションです!」
〈ムウさんが負傷しています。〉
キラの報告を聞き、マリューは思わず戦闘を忘れてしまった。
〈大丈夫です。それと、着艦したらすぐに右腕の交換を。戦えれば良いわ。〉
レイラの報告も聞き、バスターがストライクをアークエンジェルへ運んだ。
フレイは部屋の扉が開いたのに気付き、見やるとそこにはいつもの態度とはまるで違う獣の様に唸るラウがいた。ラウはデスクの引き出しを漁ると、そこからいつも飲んでいる薬を取り出し、ほおばった。
ラウはその直後も呻き、引き出しから予備のマスクを取り出し、付けた後ブリッジに通信を入れた。
「アデス!!」
〈隊長!どうなさ…〉
ラウのいつもと違う態度に困惑したアデスが問おうとするが、ラウは無視して命令を出した。
「ヴェサリウス発進する!MS隊出撃用意!!……ホイジンガーとヘルダーリンにも打電しろ!!」
〈しかし…〉
「このまま見物している訳にもいかんだろう!!あの機体…地球軍の手に渡す訳にはいかんのだからな!」
通信機からアデスの〈ですが…〉という声が聞こえたが、ラウはたたみかける様に押した。
「私も出る!シグーを用意させろ!すぐブリッジへ上がる!」
ラウは通信を切った後もしばし荒い息づかいをしていたが、突然元の彼に戻った。
「さて…君にも手伝って貰おうか。最後の賭けだ…扉が開くかどうかのね…」
余りの変わり様にフレイは恐怖を覚えたが、ラウの扉という言葉に興味を示した。
ジャスティスの投げたビームブーメランをフォビドゥンが鎌で弾き、レイダーが鉄球を放つ。それを躱してリフターとライフルで反撃するがカラミティが背後からバズーカを撃った。体勢を崩されたジャスティスに追い打ちをかけようとするカラミティが突然動いた。
〈アスラン!〉
「キラ!」
フリーダムはサーベルでカラミティのビームを受け流す。その間もレイダーとフォビドゥンがジャスティスを狙い続けるが、バスターがライフルで援護する。そして、ブレイブとトゥルースにアフェクションも合流した。
〈遅いぞ!!〉
〈ごめん!〉
シオンの叱責にユリが謝る。
〈来たんだから良いわ!ユリ、援護をお願い!!〉
レナが突進し、トゥルースが援護に背中のビーム砲を撃つ。ディザスターがシールドで受け止め、アフェクションがレールガンでその体勢を崩し、ブレイブは対艦刀でプランダーに斬りかかる。グリードが同じく対艦刀で斬りかかるが、シューターがレールガンで体勢を崩す。アフェクションがその際にディザスターを抑え、トゥルースがライフルで更に牽制する。
キラはアスラン達と共に戦いながらエターナルへ飛んでくるミサイルを撃ち落とす。しかし、先程ラウの言葉が蘇る。
『もう誰に求められはしないさ!この宇宙を覆う憎しみの渦はな!!』
アークエンジェルでサイが遂に恐れていた事態を告げる。
「ナスカ級です!距離80、ブルーデルタ!」
ただでさえ今は目の前にいるドミニオンに苦戦しているというのに、この上後ろにいる三隻のナスカ級まで相手にしては撃沈されてしまう。
フレイは一人乗りの救命ポッドに乗り込んだ。
『私も疲れた…だから届けて送れ、最後の鍵を。』
最後の鍵……扉という言葉と合わせてラウが度々口にしていた、彼から持たされたディスク。
『それが地球軍の手に渡れば戦争は終わる。』
あの時、ラウは本当に疲れているように見えた。コーディネイターなのに、何か病気でも抱えているのだろうか?あのピルケースがその薬だとフレイでも分かる。
そんな状態で軍人など、疲れてしまう。それを聞かされ、フレイは思った。
きっと、このディスクには地球軍とプラントの偉い人達が戦争を終わらせる話し合いをするのに必要なデータが入っているんだ。父のような外務次官ならきっと終わらせるために使ってくれるだろう。
そう思い、フレイはその頼みを引き受けた。それが、こんな形とは思わなかったが………
〈地球連合軍艦アークエンジェル級に告げる。戦闘を開始するに当たり、本艦で拘束中の捕虜を返還したい。〉
ザフトからの通告にナタルとアズラエルは思わず、互いの顔を見た。
この時、最後の扉の鍵が放り投げられた。
後半はイザークとディアッカ、ニコルとミサキでした。イリアだと一対一にならないので、外した代わりにイリアはウインドに乗っていることだけがニコルとイザークに伝えられました。
次で最後の鍵です。