機動戦士ガンダムSEED REVERSE 作:meitoken
ジェネシスから放たれた光……それは一瞬で地球軍の艦隊を吹き飛ばした。アークエンジェル、エターナル、クサナギのクルーやパイロット達、地球軍はもちろんのこと撃った側であるザフトでさえその余りの破壊力に戦いさえ忘れてしまった。
ドミニオンは砲撃のすぐ近くにいた。
「取り舵一杯!ロール角左35!全速、中域を離脱!」
その余りの破壊力に核をプラントに撃てば勝利と確信していたアズラエルさえ、言葉を失っていた。
何隻もの艦艇が爆発し、MSやMAが中の人間ごと焼き尽くされる。
光が収まった後……そこには溶け残ったMSと艦艇の残骸…中には破壊に巻き込まれたMSのパイロットの死体さえ漂っていた。
「あ…ぁあ…!」
〈ひ、酷い…〉
レナの泣きそうな声を聞き、シオンは言葉が出なかった。
〈い、一発で?〉
〈な、なんてこと…!〉
イリアとミサキもその惨状に次の言葉が出てこない。
「な、何…これ?」
〈い、一撃で…あれだけの艦隊が…!〉
いつもは冷静なフブキもこれには圧倒されてしまった。たった一発で……地球軍の艦隊が殆どをやられてしまった。
〈こんな…!〉
〈う、嘘…〉
「父上…?」
キラとユリが言葉を失い、アスランは父の所業に我が目を疑っていた。核動力で動くMSを開発しただけでなく、こんなレーザー砲まで作ったのか?
〈ナチュラル共が全て滅びれば戦争は終わる!〉
本気、なのだ……父は本気でこれでナチュラルを根絶やしにするつもりなのだ。
「流石ですな、ザラ議長閣下……ジェネシスの威力、これほどの物とは。」
「…戦争は勝って終わらせねば意味はなかろう。」
ラウの賞賛にパトリックは持論を持って答える。
確かに…戦争は勝ってこそ、よね。これで私とラウの戦争にもチェックがかかったわ。
レイスはそんなパトリックを嘲笑った。本当に、アズラエルもこいつも期待を裏切らない。あの愚かな父といい、やはり人間とはこういう生き物なのだ。自分もこれなのだと思うと、本当に怖気が走る。
余りの破壊力を前に地球軍は完全に混乱しており、MS隊も母艦を見つけることが出来ずに混乱している。
「ナタル、どうするの?」
「浮き足立つな!残存艦の把握急げ!」
ナタルの叱責を受け、レベッカも少し落ち着きを取り戻す。
「旗艦ワシントンはどうなったの?」
「ワシントンの識別コード、消滅しています!」
「クルック、及びグラントも応答ありません。」
最悪だ…旗艦だけでなくそれに随行する艦も今の攻撃でやられてしまった。
「信号弾、撃て!残存の艦艇は現宙域を離脱する!本艦を目標に集結せよ!」
〈我らが勇敢なるザフト軍兵士の諸君!〉
砲撃の後、パトリック・ザラの演説が回線をオープンにして敵味方を問わず、伝わる。
〈傲慢なるナチュラル共の暴挙をこれ以上許しておいてはならない!プラントへ向かって、放たれた核!これはもはや戦争ではない!虐殺だ!〉
戦争ではない。虐殺…そうだ。全てのプラントをユニウスセブンと同じ目に遭わせようとしたのだから、その言い分自体は通る。
じゃあ、今自分がやったのは何なの?
リュウは操縦桿を強く握りしめた。地球軍相手にあんなレーザー砲を撃つのなら、もしウズミが地球軍の要求をのんでいたら……核ミサイルを撃っていたのではないか?
パナマの件を考えれば、避難など認めるとは思えない。
〈そのような行為を平然と行うナチュラル共をもはや、我らは決して許すことは出来ない!〉
その演説に突き動かされるようにジンやゲイツが撤退する地球軍の艦隊へ向かった。
撤退が遅れたダガーがジンの剣で両断され、航行がおぼつかないドレイク級がローラシア級の砲撃で沈んだ。
リュウはそれを見て、イージスを突っ込ませた。
「やめて!撤退する相手を攻撃しないで!」
ビームサーベルでジンの腕を両断し、バルカンでジンが撃ったミサイルを撃ち落とした。こちらを邪魔と判断したシグーがライフルを撃ってきて、機体を翻してシールドの打突で頭を破壊する。
〈クソ!〉
フブキのデュエルペイルもビームライフルでゲイツの頭を撃ち抜いた。
〈止めろ!戦闘する意志のない者を!!〉
別の場所でフリーダムが真っ先にザフトの追撃に飛び込んでいき、ジャスティスとアフェクションも続く。シオンも見ていられなくなり、トゥルースで突っ込んだ。
フリーダムがフルバーストでMS隊の武器を奪い、ジャスティスもミーティアのビーム砲でジンの武器を破壊する。だが、そんなもの止めた内にならない。
フリーダムとジャスティスの砲撃を逃れたシグーがネルソン級に追いつき、機関部に突撃銃を撃って沈める。
〈やめて!〉
レナが叫び、ブレイブが対艦刀で今ネルソン級を沈めたシグーの腕を破壊した。アフェクションもレールガンでローラシア級の火器を破壊して戦闘能力を奪う。トゥルースもビームライフルで追撃するジンの武器を破壊し、バラエーナでミサイルを撃ち落とす。
「こいつらを止めても……すぐに核攻撃が来るのに…!」
キラからラウの経緯は全て聞かされた。これを見ると、シオンは思わずにいられない。
俺達がすべきなのは、隊長達に協力して全て滅ぼすべきじゃないのか?
どうせお互いに人間だと見なす気などないのだ。なら、下等生物と化け物で好きなだけ食い合わせれば良いではないか。
或いは、もうこんな奴ら放っておいて自分達だけ火星にでも移り住んだ方が良いのでは?
エターナルとアークエンジェルから帰還命令が来るまで、シオンはそんな自問を繰り返しながら掃討作戦を止めようと撃ち続けた。
〈新たなる未来!創世の光は我らと共にある!〉
パトリック・ザラの演説はまだ続いている。
〈この光と共に、今日という日を我ら新たなる人類コーディネイターの輝かしき歴史の始まりの日とするのだ!!〉
〈ザフトのために!ザフトのために!〉
ザフト兵が演説に熱狂しているのがシオンにも聞こえた。だが、シオンにはあのミラーが映しているのはナチュラルもコーディネイターも死に絶えた世界としか思えなかった。地球軍の連中も、何故Nジャマーキャンセラーが元々プラントが造った物……いつでも核を撃てると思わなかったのか。
「ああ、そう!ったく、冗談じゃない!これは今までのたくたやってたあんた達トップの怠慢だよ!」
ヤキン・ドゥーエ近くの宙域まで撤退した地球軍は急ピッチで撤退したMSの収容及びパイロットの手当て、艦の修理を行っていた。そしてアズラエルが上の連中と言い争う様子を見ていたレベッカはため息をついた。
元を辿れば、あんた達が核ミサイルを撃とうなんて考えたからでしょう?
少なくとも、核ミサイルを撃たなければザフトとてあれを撃たなかったのではないか?強硬派のパトリック・ザラとてそうだったはずだろう。
「艦長、チャーチルより救援要請です。」
「分かった、すぐに向かうと返信しろ。」
「おい!ふざけたこというな!」
急にアズラエルが割り込んできた。
「救援だぁ?なんでこの艦がそんなことすんだよ!」
まるで救援など不要だと言っている。今この状況では兵士の犠牲は減らすべきだ。なんとか戻れたMSやMAのパイロットだって治療が追いつかずどんどん死んでいるし、戦える状態ではないのに。艦もMSもそれは同じだ。修理が追いつかない。
「無事な艦はすぐにも再度の総攻撃に出るんだ!そんなことより補給と整備を急げよ!」
余りにも無茶な言い分にレベッカはCICから出てきた。
「そんな!無茶です!現在、我が軍がどれだけのダメージを受けているのか、理事にだっておわかりでしょう!」
「艦長の言うとおりです!パイロットも戦える状態じゃないし、MSも艦も修理が追いついていません!自殺行為です!!」
「月本部からすぐに増援も補給も来る!!」
前線の兵士など、いくらでも替えが効くと言わんばかりの…数字しか見ない上の連中の言い分そのものだ。
「君達こそ、何を言ってるんだ!?状況を理解していないのは君達の方だろうが!」
何ですって…状況を理解していない!?
「あそこに、あんな物残しておく訳にはいかないんだよ!!何がナチュラルの野蛮な核だ!!」
アズラエルはモニターに映った兵器……ジェネシスを指さして席に戻るとパネルを操作してレーザーのシミュレーションを映す。
「あそこからでも地球を撃てる奴らのこのとんでもない兵器の方が遙かに野蛮じゃないか!」
地球を撃てる……その言葉にレベッカもナタルも黙ってしまった。
「そして、もういつその照準が地球に向けられるか分からないんだぞ!撃たれてからじゃ遅い!」
前後して、救援を得られずにチャーチルが沈んだ。が、アズラエルは意に介さない。
「奴らにあんな物作る時間与えたのはお前達軍なんだからな!」
それを言われれば、何も言い返せない。どう考えても、かなり以前から造っていたのは明白だ。もしかしたら、Nジャマーキャンセラーもアレを使うために開発されたのでは?と思ってしまう。
「無茶でも自殺行為でも…絶対に破壊してもらう!アレとプラントを……地球が撃たれる前に!!」
退避した三隻でもMSと艦の整備が急ピッチで行われていた。そして、エターナルにはマリューとカガリがやってきていた。シオンとレナ、フブキとリュウも外に曳航させる形で一端整備を預けてブリッジに来ている。そして、こちらも同じくあのレーザー砲ジェネシスの解析をエリカ・シモンズが伝えた。
〈発射されたのはガンマ線です。線源には核爆発を用い、発生したエネルギーを直接コヒーレント化した物で……つまりアレは、巨大なガンマ線レーザー砲なんです。地球へ向けられれば、強烈なエネルギー輻射は地表全土を焼き払いあらゆる生物を一掃してしまうでしょう。〉
それを聞き、ブリッジにいた者のみならず聞いていた人間全員が血が凍るような気分がした。
「撃ってくると思いますか?……地球を。」
「…強力な遠距離大量破壊兵器保持の本来の目的は抑止だろう。」
バルトフェルドの言葉は、兵器のもう一つの用途を刺していた。実際、西暦の時代の戦争で核爆弾が投下されて以来…核兵器は抑止力としての見方が強かった。アレも基本は同じはず。
要はアレで地球を撃てる。それ自体を外交のカードに使う……それが本来の用途だったはずだ。
「だが、もう…撃たれちまったからな。核も、アレも…どちらももうためらわんだろうよ。」
一回撃ってしまった以上、もうどちらも相手を滅ぼすまで撃ち続ける。自分達だけは大丈夫、等という根拠のない自信を持ってか?
ブリッジに上がったキラ、アスラン、ユリもそれを聞いて顔を伏せた。
「…戦場に出て、初めて人を撃った時…俺は震えたよ。」
何のことか、と思ったとき…次の言葉にユリは言葉を失う。
「だが、すぐ慣れると言われて…確かにすぐ慣れた。」
慣れた…そうだ、あの先遣隊を救援するときにユリは初めて人を殺した。キラはそれより先に人を殺した。いつの間にか、沢山殺していった。慣れてしまったから。
「……バルトフェルド隊長は、アレも核もそうだと?」
シオンの問いにバルトフェルドは軽く睨んで問いかえす。
「違うか?」
「……私、前にメンデルで何人か殺した。今日も何人か……でも、もう慣れてる。」
リュウの言葉にフブキが気遣うような目を向ける。そう、ユリ達三人よりもMSに乗るのが遅く、まだルーキーと言えるリュウでさえもう慣れているのだ。
「人は慣れるんだ…戦い、殺し合いにも。」
その言葉にレナがうつむいた。
「砂漠に順応するのと、同じなんですね………」
「人間の方が怖い…か。物語でよく聞くが、正にその通りかもな。」
フブキも人間の悪性を吐き捨てた。
慣れる……殺し合いにも。ここにいる人間の違いは相手が同じ人間だと思っている。だが、あちらは違う。どちらも相手を人間だと思っていない……だから余計に恐ろしい。
「兵器が…争いを生むのでしょうか?それとも、人の心が?」
「……分からない。私にも……でも、どっちも機械でしょ?だったら、悪いのは使った人間じゃない?」
ユリの言葉にキラが頷いた。
「うん、核にもあの光にも絶対に互いを撃たせちゃダメだ……そうなってからじゃ、もう全てが遅い。」
「……ああ。」
アスランが頷き、シオンとレナが、フブキとリュウが互いを見て頷いた。
ブリッジのメンバーを増やしました。
人間は環境に慣れて進化した……結局、怖いのは慣れてしまうことなんですよね。何せMSならば操縦桿のボタンを押せばビームを撃って人を殺せる。