機動戦士ガンダムSEED REVERSE   作:meitoken

60 / 65
次は出撃前のそれぞれで、少し長めでしょう。


PHASE-42 怒りの日…後編

イザークは部下達に待機を命じた後、軍本部で母を見つけた。

 

「母上!」

 

「イザーク。」

 

「ずっとこちらに?」

 

「ええ、大事な局面ですから。」

 

大事な局面…確かにそうだ。だが、イザークにはすぐにでも聞きたいことがあった。

 

「間もなくジェネシスの二射目が行われます。そうすれば、この長かった戦争もようやく終わるわ。」

 

またアレを撃つのか!?いや、確かに地球軍だって必死になる。あんな物がもし、地球に向けられでもしたら…イザークが地球軍でもそう考える。

 

「貴方も連戦で疲れているとは思うけれど、あと少しです。」

 

「…はい。」

 

「未来は私達の物よ。」

 

だが、イザークの脳裏にはメンデルでのディアッカと交わした言葉が蘇る。プラントを守る…そこだけは揺るがない。しかし……

 

「あ、あの母上…二射目の照準は……」

 

「エザリア様。」

 

部下に呼ばれ、母はそちらに戻る。

 

「では、無茶はしないで。貴方の部隊は後方に回します。」

 

「母上?」

 

「貴方の仕事は戦後の方が多くなるのよ。」

 

頬にキスをして、母は部下と共に去って行った。

 

結局、聞けなかった。アレを地球に向けるのか……戦争が終わってほしい。それはイザークも同じだ。だが…

 

「俺は、地球を滅ぼしたくて戦っているんじゃない。」

 

だが、ディアッカの言葉がしこりになって残る。パナマのあの殺戮劇……

 

 

 

「また、アレを撃つんですか!?」

 

ニコルもまた、軍本部にいる父と抗議していた。

 

「やむを得ないだろう……地球軍は核を撃ってくるやもしれぬ。」

 

「ですが…一発撃っただけで良いはずです!何故、停戦を申し入れないのですか!?」

 

「奴らはあの威力を見た後では、必死だ!お前が敵の立場ならそうするだろう!?」

 

正論を返され、ニコルは反論を封じられた。

 

「……あ、あの!まさか二射目が…」

 

「お前は連戦で疲れているんだ。二射目が撃てば、いくら地球軍でも停戦を受け入れる。そうすれば、戦争も終わる。音楽に専念できるんだ。」

 

停戦……そう、それを求めて戦ってきた。

 

「無理をするな……」

 

「……は、はい。」

 

戦争が終わって欲しい。だが、アレを地球に向けるなんて…父や上の人間だってそんなこと考えないだろう。だって、地球は一世代目の彼らにとっては故郷だ。少しだけそこに来て、分かる。コーディネイターの頭脳だって、あの星の環境を回復できるわけがない。星の命は人がどうこうできる物ではないのだ。

 

なのに……言い知れぬ不安が。メンデルでミサキと出会って、パナマを見て、メイと出会って………まさか、アレで地球を、全ての命の母であるあの星を滅ぼすなんて、ことは。

 

 

 

〈ジェネシスは連射が効かないのが唯一の救いです。おそらく、一射ごとにこのミラーを交換しなければならないのでしょう。〉

 

エリカが再びジェネシスの分析を続け、弱点を告げる。確かに、そう考えればジェネシスの最大の弱点は交換用ミラーの存在だ。

 

「だが、本体はPS装甲。その前にはヤキン・ドゥーエと何重にも張り巡らされた防衛線だ。」

 

「地球軍もあの威力を見た後なら、必死だ。全く、神頼みするか?」

 

フブキがらしくないことを言うが、実際こちらはジェネシスだけでなくもう一つの問題がある。

 

「二射目は、月基地なのかしら?それとも…」

 

ユリの問いは誰もが恐れている事だ。確証もないが、キラはもう一つの懸念を口にする。

 

「地球軍はまた核を撃ってきますよね?」

 

キラの問いにマリューが頷く。

 

「いっそ、核をジェネシスに撃ってくれればこっちも助かるんだがな。」

 

「ブルーコスモスがそんなことを考えるわけないだろう?」

 

シオンの期待をフブキが切って捨てた。

 

「核もジェネシスも防ぐ、か。でも……やらなかったら人類は。」

 

リュウがその結末を口にするのを躊躇い、レナも同意する。

 

「全て滅びる前に、両方止めないとといけない。分かってたことでしょ?」

 

「ええ。」

 

「とにかく、まずジェネシスって事で良いのかしら?」

 

「それでいいでしょうね。」

 

ユリの問いにマリューが再び頷いた。少なくとも、いつ発射するか分からないジェネシスの方が脅威だ。

 

〈地球軍艦隊、進撃を開始します!〉

 

アークエンジェルのミリアリアから報告が届き、三隻も発進準備を開始する。

 

 

 

「キラ。」

 

ラクスが呼び止め、キラはアスランを見た。アスランが頷き、ユリも笑って返す。

 

「ごゆっくり…」

 

「これを…」

 

ラクスは普段はめている指輪を手渡す。以前、言っていた母親の形見だ。

 

エレベーターに乗り、キラは受け取った。

 

「ありがとう。」

 

「帰ってきてくださいね……私の元へ。」

 

ラクスの表情はいつもより弱気だ。改めて、キラは確信した。彼女だって怖いのだ。死ぬかもしれないし…キラが帰ってこないかもしれないのが。

 

キラはラクスに振り返り、頬にキスをした。

 

「ラクスも気をつけて。」

 

 

 

「なんだ?」

 

「いや……今度は私も出られる。」

 

アスランはカガリの突然の発言に目を丸くした。

 

「パーツのまま持ってきたストライクルージュがどうにか間に合った。」

 

「ちょ、ちょっと待て!カガリ!出るって……ストライクルージュ?」

 

確かにクサナギでデュエルペイルと同じように予備パーツのストライクを組み立てていたのは知っているが、寄りにもよって彼女が!?

 

「何だよ、MSの訓練は受けている!兄様やリュウには勝てなくても、アストレイの連中より腕は上だぞ!」

 

確かに、彼女の才能は高い。それに一機でも戦力が欲しいのも現実だ。

 

「…出来ること、望むこと、すべきこと……みんな同じだろう?アスランも、キラも、ラクスも、ユリも…兄様も、私もさ。」

 

「カガリ…」

 

「そんな顔するな!私よりお前の方が全然危なっかしいぞ!」

 

余りに唐突な言い草にアスランはあっけにとられた。

 

「死なせないから、お前……弟と、姉…かもしれないあいつらも。」

 

「弟?」

 

ユリは年上だから、姉というのは筋が通る。だが、キラが?

 

「兄さん…じゃなくて?」

 

「ありえん!あいつが弟だ!」

 

どうも変なところで強情になるのはキラとユリも同じだ。確かに、この三人はきょうだいだ。この三人がいたから、今の自分がある。アスランはその中でも目の前の少女を愛おしく思い、抱き締めた。

 

「カガリに会えて良かった…」

 

「……アスラン。」

 

「……君は俺が守る。」

 

アスランはそのままカガリの唇に自分の唇を重ねた。カガリが拒もうとするが、すぐにそれを止めて受け入れた。

 

 

 

クサナギに戻ったリュウは通路でフブキを見ていた。

 

「どうした?」

 

「あ…えぇと、これが終わったらフブキはどうするの?」

 

いきなり何を言うんだ?死ぬかもしれないのに。

 

「死ぬかもしれないのに、なんでそんなことを?」

 

それを言われれば、そうかもしれない。だがそれでも……

 

「それでも、ね……私はオーブに帰るわ。父さん達に全部終わったって知らせたいし…それに……」

 

「それに?」

 

リュウはこの数ヶ月で芽生えた気持ちを…今伝えたかった。今フブキが言ったように、死ぬかもしれないから。抱えたまま死ぬのは嫌だった。

 

「貴方の…傍にいたいの。」

 

「…え?」

 

エレベーター前でリュウはフブキに抱きついた。フブキが壁にぶつかる形で止まり、二人は無重力を漂う。

 

「お願い……この前、貴方は私を守ってくれた。だから、今度は私が貴方を守る……」

 

「リュウ……」

 

「…好き。」

 

リュウはフブキの唇を勢い任せに奪った。

 

 

 

シオンはアークエンジェルに戻り、アラートで待機しているミサキを呼びに行った。

 

「どうした、もうレナは行っているぞ?」

 

ミサキは無重力のまま、膝を抱えていた。

 

「また…怖いの。」

 

また……そうだ、オーブ沖でアークエンジェルを待ち伏せていたときもミサキはこんな調子だった。

 

シオンはアラートに入り、ミサキの手を握った。

 

「俺だって怖いさ……お前やレナがって思うと。」

 

「……シオン。」

 

正直、本当に怖い。ようやく、レナと戦わずにすんだというのに……今度は地球そのものの破滅が迫っている。

 

「だから……一緒にいこう。全部終えて、墓参りにも。」

 

血のバレンタインで死んだそれぞれの親族に戦争が終わったことを知らせるために共に生きて帰ろう。それが、今シオンが彼女にかけられる最大の言葉だった。

 

「……はい。」

 

ミサキを抱き寄せ、二人はどちらからともなく唇を重ねた。

 

 

 

イリアは戻ってきたレナを見つけ、ブレイブのコクピットに入ろうとするレナを呼び止めた。

 

「レナ…これ、終わったらどうする?」

 

「え?……どうって、まだ何も。アレを止めることしか頭になくて。」

 

一つのことに集中すると、他を考えられなくなる……確かに、あんな物が二つもあったのではそうだろう。

 

「俺は生きて帰ったらやりたいことがあるね。まず、一つ。」

 

「何?」

 

すると、レナを抱き寄せた。

 

「………え?」

 

「お前とデート………」

 

いつからか分からないが、レナがとても印象に残っていた。コーディネイターなのに地球軍にいる彼女……アラスカで助けてくれた彼女を……そんな彼女の国を守りたいという気持ちがあの時、イリアの中にあった。

 

「あ、えぇと…じゃあ、帰ったら……バルトフェルドさんにちょっとコーヒーのブレンド習ったの…それの試飲、だめ?」

 

バルトフェルドのコーヒー、アレは相当凄まじかった。シオンは気に入っていたが、レナも相当気に入っているのはこの数ヶ月で知っていた。

 

「じゃあ、帰ったら支給品のクッキーで良いから入れてくれ。」

 

「うん。」

 

 

 

レイラは何か話しているイリアとレナを見て、微笑した。ヘリオポリスからアルテミス、ユニウスセブン、先遣隊と酷い状態が続いて、砂漠ではレイラが母か姉の代わりになって彼女を支えた。

 

「もう、大丈夫そうね……」

 

兄と戦う苦しみを乗り越えて、ああして心を通わせる人も出来た。安心は出来るが、少し寂しい気もした。

 

「……こっちはこっちで、やらないと。身内の不始末なんだから…」

 

今頃、この状況を見てほくそ笑んでいる遺伝子上の娘を思い浮かべながら、レイラは改めて戦う決意をした。

 

 

 

「ジェネシスと核と、戦いながらどっちも防げったってさ。」

 

〈じゃあ、止めれば?〉

 

出撃前にぼやくディアッカにミリアリアは通信を切った。

 

「あ、おい!」

 

間もなく、再度通信が入った。

 

〈嘘よ、ごめん………気をつけて。〉

 

顔を背けるミリアリアを見て、少しディアッカは安心した。心配してくれているだけで今は嬉しかった。

 

「さんきゅ。」

 

 

 

マリューはストライクのコクピットが閉じているのを見つけ、飛んでいった。すると、ムウがこちらに気づいたらしくハッチが開いた。

 

「間に合わないかと思った。」

 

「何にだよ、バカ。」

 

何も言わずに見つめるマリューが首から下げているロケットをムウが手に取った。

 

「MA乗り…だった?」

 

「え、ええ……」

 

彼は戻ってこなかった。今目の前にいるこの人は何度も帰ってきてくれているのに。

 

「大丈夫、俺はすぐに戻ってくるさ……勝利と共にね。」

 

そして、二人は自然と唇を重ねた。

 

 

 

シュウはサイが担当するパネルを借りてエターナルで発進準備をするユリに通信を繋いだ。

 

〈シュウ、どうしたの?〉

 

「…いや、その………帰って、来てくれよ。」

 

操舵席のノイマンと横にいるサイ、後ろのミリアリアもその様子を見ていた。

 

〈……ありがとう、帰ってきたらキラやアスランと一緒にパーってやりましょう。〉

 

ヘリオポリスでみんなをまとめたユリらしい言い方にサイとミリアリアも微笑んで、シュウも頷いた。

 

〈バルトフェルド隊長のコーヒー付き?〉

 

〈私の手料理セットよ。〉

 

「それ、楽しみにしてる。」

 

 

 

メイはエターナルのブリッジで戦況を眺めながら、ニコルのことを考えていた。メンデルでニコルが乗っているMSがいた。あの時、確実にエターナルを沈められたのに撃つ様子がなく、メイには躊躇しているように見えた。

 

ニコル……貴方は、あのレーザー砲をどう思ってるの?

 

ナチュラルを皆殺しに出来る最高の兵器だと思ってる?それとも、核と同じように怖い武器だと思う?

 

会いたい……ニコルに会って話したい。

 

「お願い、ニコル………死なないで。」

 

 

 

「目標点入力、月面プトレマイオスクレーター地球軍基地。」

 

ヤキン・ドゥーエでパトリック・ザラは目標点を定めた。

 

「奴らの増援艦隊の位置は?」

 

「グリーンアルファ5、マーク3であります。」

 

我らの勝ちだな、ナチュラル共。

 

都合良く、こちらの照準に都合の良い位置から移動してくれている。パトリックは勝利を確信した。

 

「第二防衛線、突破されます。」

 

「あと僅かだ、持ちこたえさせろ。」

 

「では、私達も出ましょう。」

 

ラウが名乗り出て、退出しようとしたところでパトリックは呼び止める。

 

「クルーゼ、シェイド…これ以上の失態許さぬぞ。エターナルを撃てなかった貴様らの責任においても、奴らにプラントを撃たせるな!」

 

レイスがバイザー越しに問いかける。

 

「元よりそのつもりですが……アスランはどうなるので?」

 

アスランの名前を持ち出され、パトリックは一瞬迷った。だが…

 

「構わん!」

 

 

 

レイスは珍しくパイロットスーツに着替えた。ダークグレーを基調としたパイロットスーツで、格納庫にあるMSに入った。

 

ZGMF-X05Aジャッジメント……核動力を搭載した最新鋭機だ。元々近接戦闘用の機体だったのだが、試作機ドレッドノートで得られたデータに目をつけたレイスが搭載を要請。二ヶ月の間に突貫作業でラウが乗る機体と共に遠隔操作武器…ドラグーンを搭載した。地球軍のメビウス・ゼロに搭載されているガンバレルと原理は同じだが、こちらは量子通信でケーブルを必要としない。その分、機動力も高い最高の武器だ。

 

元々が近接戦闘用なので、背中と肩のスラスターはそのままに小型のドラグーンを腰に搭載するだけになった。が、レイスにとっては十分だ。

 

「親が使っていた玩具で復讐を果たせる……神も粋な計らいをするわね。」

 

最高の舞台に最高の機体で最後の復讐を果たせる、レイスは正にラウと出会えた運命に感謝した。プラントにはラウと共に特別思い入れている相手もいる。だが…もうここまで来たら迷わない。どのみち、全て終えたらいくつもりだ。

 

「レイス・シェイド、ジャッジメント発進する!」

 

最高だわ!この私が乗るに相応しい機体!人間共め、裁きを下してやるわ!!

 

 

 

ラウもいつもの薬を飲んで、格納庫に向かう。そのMSはZGMF-X13Aプロヴィデンス……試作機ドレッドノートのドラグーンシステムをより強化して搭載したラウの機体だ。シミュレーションでラウとレイスのどちらもドラグーンを扱いこなせることは判明しているが、接近戦を重視したジャッジメントをレイスが希望したこともあり、ラウがこちらに乗った。

 

「使ってみせるさ、あの男に出来て私に出来ないはずはない。」

 

子供が使っていた武器なのだ。親の自分が使えないわけがない。

 

「ラウ・ル・クルーゼだ!プロヴィデンス、出るぞ!」

 

ジェネシスの発射と前後し、プロヴィデンスが暗灰色に、ジャッジメントが黒と白のツートンに変化した。

 

パトリック・ザラは知らない。自分達の正当性を謳うMSが、他でもない全ての人類に神意を知らしめて、裁きを下すことを。

 

 




皆が思い思いの相手と生きて帰る誓い、或いは会えない誰かを想っています。ニコルの迷いは原作では死んでますが、例え生きてザフトでもこれに近かったと思います。

そして、遂にラウは神意を知らしめ、レイスは裁きを下すべく最後の出撃をしました。

プロヴィデンスとジャッジメント、正に思い上がった人間共を滅ぼすに相応しいガンダムでしょう。

尚、ジャッジメントは顔や上腕、大腿部は白で他は黒のイメージ。他のガンダムで言えばデスサイズですね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。