機動戦士ガンダムSEED REVERSE   作:meitoken

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今度は遂に彼女が登場です。正直、この頃のフレイには良い印象が未だないので書くのはちょっと億劫です


PHASE-6 敵軍の歌姫…前編

プラント本国へ帰国したアスランとシオンはラウと共に査問会に出席するべく最高評議会へ向かっていた。その途中で、『血のバレンタイン』一周年の追悼慰霊団代表のニュースがあった。最高評議会議長シーゲル・クラインの隣にピンクの髪の美しい少女が立っていた。

 

「ラクス・クライン……追悼慰霊団の代表なのか。」

 

「そういえば、彼女は君の婚約者だったな。」

 

ラウもニュースを見て、アスランに確認を取る。

 

「婚姻統制、か。オーブ生まれの俺にはやはり馴染みがないが……国防委員長の息子のお前と、クライン議長の娘である彼女。この上ないサラブレットが生まれるのだろうな。」

 

シオンの分析にラウも頷く。

 

「ああ、君らの結びつきは次の世代にとってはまたとない希望だ。シオンもプラントに籍を置いているのならば…いずれ君に相応しい相手が紹介されるだろう。」

 

「地球生まれの私を受け入れる物好きがいるとは思えませんね。」

 

シオンはラウの分析を半ば自嘲するように否定した。あの後、シオンは地球生まれという理由で酷い迫害を受けた。しばらくは友人の家に厄介になったが、そこにも矛先が向けられかねない状況だった。生活だけでなく叔父と叔母のような犠牲を出さないために……もしもオーブにいる家族が巻き込まれるようなことになったらという思いでアカデミーに入学した。

 

もっとも、そのアカデミーでも一部の教官やアスラン達今のクルーゼ隊のメンバーを除いてシオンは地球生まれという理由で狙い撃ちにされた。アスランは勿論、意外にも肩を持ってくれたイザーク達がいなければシオンはオーブへ戻っていたかもしれない。

 

「シオン……戦果を挙げれば、お前を見る目も変わる。」

 

「どうだか……ヘリオポリスの件もある。俺をスパイ扱いする手合いが出てきそうで怖いよ。」

 

何せ、成績上位の赤を着ることさえ認めない手合いがいる始末だ。今は少々マシだが、それでも不快であることに変わりはなかった。

 

 

 

アルテミスを脱出したアークエンジェルであったが、結局補給を受けることが出来なかった。武器、燃料、食料、そして何より水……

 

水の使用制限を設けているが、それもいつまで保つか分からない。子供達も食堂でそれを話していた。

 

「こう言っちゃあなんだけど、いっそのことザフトに見つかったらみんなで投降しちゃう?」

 

ユリの提案に全員がぎょっとした。

 

「縁起でもないこと言わないでくれよ……」

 

「でも、このまま行けば全員干上がるのよ?」

 

サイの反論はもっともだ。確かにザフトに投降すれば、目先の水や食料は解決する。とはいえ、それはここにいる顔ぶれではフレイを除く全員が地球軍の兵士として捕虜になることを意味していた。まして、キラ、ユリ、レナはコーディネイターだ。裏切り者として、即処刑になりかねない。

 

レナはその話を聞いて、それも良いと思った。

 

兄さんと、戦わずにすむならいっそのこと本当に投降してしまえば良いのかしら?でも…

 

それをサイ達の命と天秤にかけられるか、と聞かれれば首を縦に振れなかった。

 

「ああ、ちょうど良い具合にみんな集まっているわね。」

 

「ウォン中尉、何かあったんですか?」

 

ミリアリアの問いにレイラが頷く。

 

「艦長がブリッジに上がってきてだって。そっちの貴女も良いわよ。」

 

 

 

子供達がブリッジに上がると、マリュー達から事情の説明があり、アークエンジェルの進路はデブリベルトに向かっているとのことだった。

 

「デブリベルト……ちょっと、待ってください!まさか…」

 

「君は勘が良いね。」

 

サイの確認をムウがからかうように肯定する。

 

「デブリベルトには様々な漂流物があります。戦闘で破壊された戦艦なども……」

 

「まさか、そこから補給を?」

 

トールの問いにレイラも頷く。

 

「ええ、そのまさか。そうでもしなきゃ、みんな飢え死にしかねないもの。この艦そのものが、全員の棺桶になるのよ?」

 

レイラが念入りに説明し、流石のナタルもこれには不愉快になっていた。

 

「気乗りしないのは私達も同じだ。」

 

「死者の眠りを妨げようというわけではないの。私達が生き残るために必要なものをわけてもらうだけ…」

 

マリューのそれが彼女自身に対する言い訳なのは、全員が察していた。流石にこれは子供達の中で際立って我が儘なフレイでさえ気が滅入る様子だった。事実上の墓荒らしをするようなものだ。

 

 

 

レナは部屋に戻り、膝を抱えた。シオンから聞いた、『血のバレンタイン』で死んだ叔父夫婦……ユニウスセブンが地球の重力に引き寄せられ、デブリベルトの中にあるのは聞いたことがある。つまり、レナは叔父夫婦の墓荒らしをするようなものなのだ。

 

「ごめんなさい…叔父さん、叔母さん。」

 

生き残るために、叔父と叔母の眠りを妨げる。最低な姪だ………

 

 

 

最高評議会ではヘリオポリス崩壊の件でオーブから政治的抗議が来ており、それと併せてクルーゼ隊が奪取したMSについて議論していた。オーブがヘリオポリスで地球軍のMSを開発したのは事実だが、現代表ウズミ・ナラ・アスハは自身が関与していないと否定している。

 

ラウの推挙でアスランが自身のイージスを含むイザーク、ディアッカ、ニコルの搭乗する四機とストライク、そしてシオンが自身のシューターとフレイム、ウインドについての分析を報告した。

 

評議会の議員達は高性能のMSを前に憤る他、オーブの関与を疑う。すると…

 

「シオン・クールズ、君は本当にこの件を知らなかったのかね?」

 

「…どういうことでしょうか?」

 

なんと評議会議員の一人がシオンに疑いの目を向けてきた。要するに、シオンがスパイだと疑っているのだ。

 

ここに来て…最高評議会までが俺をスパイ扱いか!今まで何度こんな嫌がらせを受けてきたことか!

 

「議員方…今ここで議論するべきはそういうことではない。」

 

シーゲル・クラインが議員達を窘め、国防委員長を務めるアスランの父、パトリック・ザラが口を開く。

 

「戦いたがる者などおらん…我らの誰が好んで戦場へ出たがる?」

 

その言葉に議員達は先ほどの喧噪が嘘のように静まる。

 

「平和に、穏やかに、幸せに暮らしたい。我々の願いはそれだけだったのです。」

 

誰だって、それは同じだ。

 

「だが、その願いを無残にも打ち砕いたのは誰です?自分達の都合と欲望のためだけに我々コーディネイターを縛り、利用し続けてきたのは?」

 

パトリック・ザラが口にするのは、まさにファーストコーディネイター…ジョージ・グレンの誕生とその告白を皮切りに発生し、彼に続こうとして親達が生み出したコーディネイター達が味わってきた負の歴史だ。

 

シオンの両親もコーディネイターであることをごく一部の友人達にだけ明かして暮らしてきた。叔父と叔母はその環境の息苦しさに耐えられず、プラントへ移った。

 

「我らは忘れない。あの『血のバレンタイン』、ユニウスセブンの悲劇を。」

 

そう、一年前のあの日……地球とプラントの外交摩擦は武力衝突の兆しが現実味を帯びてきており、地球側が先制攻撃として核ミサイルを撃った。その結果、農業プラントユニウス市の七番目のプラント…ユニウスセブンが破壊され、そこの住民は全滅した。二十万を超える死者を出したのだ。

 

その犠牲者の中にはシオンの叔父夫婦だけではない。アスランの母、先天的な遺伝子欠陥で捨てられたイリアが世話になった施設の女性、ミサキの両親もいたのだ。

 

パトリックは演説を続ける。その言葉に強硬路線の議員達は同調し、シーゲルと同じ穏健派議員達さえ何も言えないどころか肯定する様子さえある。

 

「我々は我々を守るために戦う。戦わねば守れないならば、戦うしかないのです!」

 

結果、この演説で議会は解散となった。

 

 

 

アークエンジェルはデブリベルトに入り、子供達は作業ポッドのミストラルで船外作業を。キラ達三人もMSでその警護に来ていた。

 

実際に話には聞いていたが、『血のバレンタイン』で破壊されたユニウスセブンがデブリベルトの中に漂っている光景を見て、全員が言葉を失ってしまう。恐る恐る…プラントの地表に降りて、ユリも降りて捜索に参加する。

 

何かにぶつかった、と思って振り返るとそこには十歳前後の子供の遺体があった。

 

「きゃあああああああ!!!」

 

「見るな!」

 

一緒に参加していたシュウがユリを遮り、チャンドラがそっと子供の遺体を遠ざけさせる。

 

そして、今度はレナの悲鳴が通信越しに聞こえた。

 

「今度はなんだ!」

 

ナタルがレナのいる場所に来ると…

 

「お、叔父さん…叔母さん…あ、ぁぁぁ……いやああああああああああ!!!!」

 

「彼女をアークエンジェルに連れ戻せ!」

 

「は、はい!」

 

ナタルに促されてサイがレナをミストラルに乗せ、アークエンジェルに戻っていく。

 

「そ、そんな…レナの、叔父さんと叔母さん……」

 

ユリも見つけた、レナが見ていた手を握ったまま凍り付いた男女の遺体……確かに、男性の方がどことなくレナに雰囲気が似ていた。

 

 

 

ユニウスセブンの捜索を終えた後……ナタルはユニウスセブンの氷を回収する旨を伝えた。

 

「あそこの水を!?本気なんですか!」

 

「あそこには一億トン近い水が凍り付いている…」

 

「で、でも…ナタルさんだって見たでしょう!あのプラントでは何十万人もの人が…レナの叔父さんと叔母さんだだって!!」

 

あの後、トールとミリアリアからレナが叔父と叔母の遺体を見つけてしまったことを聞き、それでよりにもよってそこの水を使うなど、キラには理解できなかった。

 

「水はあそこしか見つかっていないの…」

 

「誰も喜んでいる訳じゃないさ。水が見つかった!って…俺だってできればあそこには踏み込みたくないさ。けど、生きている以上俺達は生きなきゃいけないんだ!」

 

結局、自分達が生き残るために彼らはユニウスセブンを…寄りにもよって戦争が激化するきっかけとなったあの地の水を回収することになった。

 

ユニウスセブンから水を回収し、戦艦やコロニーの残骸から弾薬を初めとした他の物資を収容し、またユニウスセブンで死亡した人々への手向けとして子供達が折り紙の花を作り、それを放った。心理的抵抗を配慮されたレナ以外の子供達もポッドで作業に出ていたが、キラはある物を見つけた。民間船だ。エンジン部を撃ち抜かれているあたり、戦闘に巻き込まれたか、海賊の類にやられたのだろう。その時、今度は別の反応を見つけた。

 

「強行偵察型……副座のジン。なんでこんな所に?」

 

何故ここにいるのかは判らない……しかし、もしもアークエンジェルが見つかったら応援を呼ばれてしまう。撃ち抜くかそのまま通り過ぎるのを望んだ時…一機のミストラルがジンに見つかった。

 

「馬鹿野郎!なんで気付くんだよ!」

 

〈早く何とかしないと!〉

 

ユリのフレイムが一番先にビームライフルでジンの足を撃ち抜き、続けてキラがジンのコクピットを撃ち抜いた。ジンは火の玉となり、文字通り宇宙の塵となった。

 

〈あ、ありがとうキラ…〉

 

〈マジ、死ぬかと思った…!〉

 

聞こえてきたのはカズイとチャンドラの声だ。しかし、その感謝にも耳を貸さずにキラは通信を切り、自分の手を見つめる。

 

僕は…僕は……人を殺した…!

 

ヘリオポリスの時から夢中で気付く余裕がなかったが、今初めて…自分がMSのパイロットであり、人を殺したということを実感した。

 

〈キラ…私も……同じだから。〉

 

「姉さんとレナは…まだ、一機もMSを撃ってないでしょう?」

 

〈ぁ…〉

 

ユリが慰めの言葉をかけるが、それすらキラには届かない。その時、センサーが反応した。まだいたのかとライフルを構えようとするが、モニターに映った物はまるで違った。

 

〈救命ポッド?〉

 

ユリも呆然とつぶやいた。

 

 

 

キラが持ち帰った救命ポッドは格納庫に置かれ、現在マードックが開放操作をしていた。

 

「つくづく、君は落とし物を拾うのが好きなようだな。」

 

ナタルの嫌みや皮肉としか取れない発言に申し訳なさを感じた時、マードックが「開けますぜ。」と宣告する。

 

〈ハロ。ハロ。ハロ~、ラクス。〉

 

ハッチが開くと、中から丸い形のペットロボが飛び出してきた。余りに奇妙な展開に一同は呆気にとられた。

 

「ありがとう。ご苦労様です。」

 

柔らかな声が聞こえ、再びポッドの方へ目をやると、中からピンクの髪の少女が現れた。キラと同い年ぐらいの少女であり、その顔はとても美しかった。

 

「あら、あらあら。」

 

完成でバランスを崩した少女を見ると、キラは慌てて手を掴んで止めた。

 

「ありがとう。」

 

間近で見るその美貌にキラは顔を赤くしたが、次の言葉に一同は再び呆気にとられた。

 

「まあ、ここはザフトの船ではありませんのね?」

 

「……は?」

 

シュウとマリューの反応はそれだけであった。

 

 

 




シオンの境遇は、同じコーディネイターでも地球出身では場合によっては起こりえたというのが私の見解です。

後のシン・アスカとは決定的に条件が違いますから。
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