裸の毒蛇   作:eohane

12 / 13
???「あなたに、お話があります。あなたはずっと……失踪状態だった。ええ、わかっています……どのくらいの長さか?」

eohane「ハァ……ハァ……」

???「あなたが失踪したのは……3年です」

eohane「ヒイイイイヤアァァァ」

いやマジで昏睡状態だったんじゃ……?と現実逃避したくなるくらいには時間経つのが早すぎます。



敵基地潜入

 

 

「これはなんとまぁ……ご立派なモンを創り上げたな」

 

 H&K G3のスコープを覗き込みながら、そう独り言を呟く。

 仲間となったタイガー、インディオの少年の情報から、あっさりと敵前線基地の場所は割り出された。早速南側のポイントへ移動し、俺たちは基地内部の偵察を開始している。

 

「タイガーの言う通りね。前線基地っていうか、要塞化したコカ畑じゃない」

 

 同じようにスコープを覗きながら、スコーピオンが呟いている。FARCと手を結ぶ麻薬カルテルがポツポツ現れてきている、といった情報は耳にしていたが、その走りといったところか。コカを栽培する場所を提供し、精製、密輸まで手厚く保護することで多額の利益を得る────見事に面倒な繋がりを持ったものだ。豊富な軍資金を手にしたFARCに対して、現政府軍が手を焼くのは目に見えている。内戦状態のさらなる泥沼化は避けられないだろう。

 

「メインはコカの栽培──聞いた話じゃ、ゆくゆくは精製工場も建てるとかぬかしてたが──その搬出、および人員・物資の集積中継地点ってところだな」

 

 タイガーの解説を受けながら、簡易的に基地内をマッピングしていく。歩哨の配置、兵員テント、幹部宿舎、複数の見張り台、対空機銃4基────対空機銃!?

 

「おいおい、最近の麻薬ビジネスはかなり儲かるらしいな。麻薬栽培所の防衛用にそんなものまで備えてあるのか」

「わが祖国が誇る技術の結晶、防空性能は折り紙付きの代物だ。懐が潤沢過ぎてウハウハなんだろうな」

 

 この手の反政府組織を支援してるのは何も麻薬カルテルだけじゃない。裏で大国──ソ連が支援した物資がたんまりとあるのだろう。

 

「あそこにトラックが見えるか?」

 

 タイガーに指示されたポイントを確認する。無数の大型トラックが立ち並んでいるその向こうに、簡易的に舗装された道路があり、その行く先は北方──ジャングルの中へと消えていく。

 

「今言った人、ブツ、その他諸々をあそこから運び出している」

 

 そして、とタイガーがその手前を指し示す。

 

「このエリア、インディオ達の収容所だ。日中はコカの栽培にこき使われ、夜になると仮設テントの中に放り込まれる。鎖につながれてな」

 

 よろしい。だいたいの作戦目標が見えてきた。

 1つ目、対空機銃の破壊。これは急務だ。ジャングルの中という関係上、大がかりな地上部隊の展開が難しい故に、作戦の主幹は航空戦力が担うことになるだろう。攻撃ヘリによる敵基地機能の破壊、敵基地内部へ輸送ヘリによる兵員の投入・制圧。友軍への被害を最小限に抑えるためにも、敵基地の対空能力はできうる限り奪っておきたい。

 2つ目、収容されたインディオ達の救出。情報を提供してくれたインディオの少年との約束でもある。非戦闘員である彼らを戦闘に巻き込まないためにも、我が方の本隊急襲前には救出しておきたいところだ。

 ただし、ネックとなるのが彼らを拘束している鎖だ。拘束を解くための鍵が必要になるが、その在り処はタイガーも知らないと言う。日中はある意味自由の身だが監視の目が厳しく、インディオ全員を救出するのは不可能なため、やはり鎖につながれた夜に、闇に紛れてどうにかするしかない。基地内の幹部あたりを締め上げて聞き出すしかないだろう。

 

「ようしスコーピオン、基地に連絡だ。襲撃は早朝5時にするよう伝えろ。タイムリミットはそこだ。……その時間までにインディオ達を救出する。今夜仕掛けるぞ」

「はぁ~い」

 

 スコーピオンが端末で通信を開始する。今のうちに、俺は装備を切り替えておくとしよう。

 

「……突然追い剥ぎにでもなったのかと驚いたが、このためだったんだな」

「追い剥ぎやってたのはゲリラも同じだ。俺達も仲間がやられたからな」

 

 ユニフォームをゲリラ仕様の野戦服へ。スコーピオンと共に排除したゲリラ達のものを拝借した。まぁ返しはしないが。血痕は泥を眩してただの汚れに見えるよう誤魔化してある。メインウェポンも合わせてAK-47にしておくか迷ったが、潜入時は夜であることを考えると、そこまでカムフラ率の低下はないだろう。初期装備のH&K G3でいく。

 

「これで俺も紛うことなきゲリラ兵だ。見ろ、画面左上に紫色のカメレオンマークが出ただろう?」

「ちょっと何言ってるのか分からんが、締まらねぇなぁ……俺も傍から見ればこんな感じなのか」

「胸がキツイわよ、これ。基地でもっと丁度いいサイズ探してみようかしら」

「あんたに関しちゃもう舐めてんのか。なんでちょっとセクシャルに着崩してるんだよ、侵入者がセックスアピールせんでいい仕舞え仕舞えその乳を! ……おいサーペント、なぁんであんたまでポージングし始めるんだ!」

 

 ……いい、これはいいぞ。こいつ(タイガー)がいるとツッコミを任せることができる。俺もやりたかったのだ、ボケをな。ボケてる時が1番楽しいのだ、本人だけな。

 

「さぁ、付いてこい新米。やつら全員血祭りに上げてやるぜ」

「潜入するんだよな!? 祭り上げちゃいけないヤツだよなそれぁ!?」

潜入の基本(サーチアンドデストロイ)よ。見つけた敵は片っ端からブチのめせば探し物も楽じゃない?」

「それができりゃ苦労しねぇんだよ! やべぇなコイツら性格からして潜入に向いてねぇ!」

「……サーペント、私この人好きだわ。この面倒くさいノリに律儀に付き合ってくれるわ」

「同感だ、スコーピオン。我ながら素晴らしい人材を発掘したかもしれん。見込みがあるぞコイツ」

 

 「ふざけんじゃねぇ!」とタイガーの叫びは受け流す。

 

「さて、インディオ少年。早速案内してもらおうか」

 

 横で腹を抱えてゲラゲラ笑っている彼に声を掛ける。俺たちが話している言語なんてほとんどわからないだろうに、雰囲気でこれだけ笑えるのは最早才能なのではなかろうか。そんな彼から提供された情報によれば、基地の西側に備品管理棟があるそうだ。基地内にいくつかある中でもかなり警備の薄いところらしく、基地への潜入口としても申し分ない。何度かそこに物を運ばされたことがあるというインディオ少年の話から察するに、ほぼゴミ捨て場として使用されている場所のようだ。まともな物資はないだろうが、何か使えるものもあるはずだ。本格的に基地に潜入する前に、できる限りアイテムを揃えておきたい。

 そんなこんなで夜を待ち、基地の西側に回り込む。有刺鉄線を掻い潜り、備品管理棟の壁面に取り付く。情報通り、警備はかなり薄い。出入り口に歩哨が1人いるだけで、他には見当たらない。他施設からは距離があるため、少々暴れても問題なさそうだ。

 

「よし、行くぞ。足音を立てるなよ……『▲ボタン』を長押ししたまま『アナログスティック』を倒せ」

「……おい、スコーピオンさんよ。こいつはいったい何の話をしてるんだ?」

「? 操作方法の説明じゃないの?」

「……まともなのは俺だけか……? おかしいのは俺なのか……?」

 

 ガバとナイフを抜き放ち、気配を殺す。物音一つ立てず、歩哨の背後にヌルリと潜り込む。

 

「──近づいたら『■ボタン』を押してこうっ!」

「あんたマジで何を言って──すげぇな! 言動はキモいけどマジで拘束しやがった」

「ライフルごと手がプルプル震えちゃってるの、可愛くて萌えるわ」

 

 さぁ、これでこいつの生死は俺が握っている。ナイフを喉元にあてがい、敵の配置、警備ルート等を聞き出す。また、インディオ達を繋いでいる鎖の鍵は幹部宿舎にあるらしい。詳しい位置は宿舎内にいる奴に教えてもらうとしよう。子鹿のように震える男は、小便を漏らしながら命だけはお助けを、と言わんばかりにぺらぺらと情報を吐き出してくれた。しからばこいつに用は無いので、眠っておいてもらうことにする。

 男の首元に回した右腕の筋肉が、荒縄を絞ったかのように脈打つ(『■ボタン』の連打)。歩哨の男はうめき声を上げながらもがくが、こうもガッチリと背後から極められると逃れられる術はほぼないと言っていいだろう。早々に意識を失い、ダラン、と力の抜けた体が崩れ落ちていく。このままにしていくわけにもいかないので、両足を掴んでズリズリと管理棟の中に引きずり込む。

 

「……ちょうどいいな。サーペント、予備の弾倉やら装備品を頂いておこう」

「よし来た、ちょっと待ってろ」

「……いや、なんでまた両足掴んで離して──ってうーわ、なんでそれで弾薬が出てくんだよ」

「……もう一回いけるか……?」

「もう普通に取ってくんねぇかな!? そんなガサゴソ動かしてたらこいつ起きちまうだろうが!」

「んっ……ぐ、ぅ……」

「そら言わんこっちゃねぇ!」

 

 むにゃむにゃと立ち上がった男を改めて処理し、管理棟内部を探索する。予想通り、ほぼごみ置き場のような使われ方をしており、この任務に使えそうなものは特に見つけられなかった。……と思っていたのだが。

 

「……段ボール! 段ボールがあるじゃないか!」

 

 それはまさに、潜入任務における必須アイテムとでも言うべきガラクタであった。

 

 

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

 なんともマヌケな格好だ。敵基地のど真ん中で私はゴm──段ボールを被って移動している。

 管理棟内部でサーペントが発見し、私たちに嬉々として配ってきたものだ。こんなゴミが何の役に立つ、と口から声が出そうになったが、それよりも早くタイガーがサーペントに同様の疑問を呈した。直後にサーペントから投げ飛ばされていたので私は何も聞かないことにした。宙を舞っているタイガーの表情たるや、この世の理不尽とは何かを悟ったかのようだった。

 そんなこんなで、基本的にサーペントが主体となって基地内を進み、段ボールを被った私とタイガーがそれに追従していく。途中、武器庫を発見し、ゲリラ達のTNT爆薬を拝借した。返しはしないけど。対空機銃の破壊に利用できそうだ。

 敵をやり過ごす時は段ボールの中に潜って息を潜める──何故かポツンとそこにある不自然な段ボールを敵は見逃していく。案外、人間の心理って適当なものだったりするのかもしれない。

 サーペントから手が出しにくい位置にいる敵や障害物を、私とタイガーで排除する。何故か連携が様になっているのが笑える。私とサーペントだけならまだしも、タイガーを含む3人でここまでやれるとは……あれ、意外と段ボールって有効なのかしら……?

 驚くほどすんなりと、幹部宿舎前に到達してしまった。

 

「……俺だけで行く。2人はここで見張りつつ逐一状況を連絡してくれ」

 

 とのことなので、タイガーと2人でお留守番をすることになった。道中尋問した歩哨から、宿舎内1階の奥の部屋に資料保管室があり、鍵もそこにあるという情報を入手している。宿舎内は歩哨の様な警備はほとんどいないようなので、難なく回収し戻ってこれるだろう。

 

「あいつの段ボールに対する執念はいったい何なんだ……?」

「使命感のようなものを感じるんですって。誰かさんの見様見真似でやってみたらハマっちゃったらしいわよ」

 

 タイガーが忌々しそうに段ボールを脱ぎ捨てる。私も同様に──一応段ボールは畳んでおく。

 ガバを構え、身をかがめて影になっている壁面に張り付く。闇の中に身を潜め、周囲を警戒する……が、こういう気を張り詰めているときに限って敵はこない。

 場違いにのんびりとした時間が過ぎていく。ジャングルから聞こえてくる鳴き虫や吠え猿の鳴き声が妙に心地良い。気を抜くと、今私たちがいる場所が敵地のど真ん中であることを忘れてしまいそうだ。

 

「……今さらだが、サーペントとは長い付き合いなのか?」

 

 タイガーも同じく暇を持て余していたのだろう。当たり障りのない話題を振ってきた。

 

「長くは無いわね。1年前に仕事を依頼したのがきっかけだったわ」

「それなら……奴の噂について聞いたことは?」

「……もちろん知ってるわよ」

 

 ……と、思ったのだが、どうも違ったらしい。

 タイガーの言う、「噂」。

 サーペントの悪名の代名詞とも言える。嘘か誠か、彼を浅く知る者が口を揃えて宣う怖い怖い「おはなし」だ。

 

「なぁに? 実際に面と向かって話して感じた人となりよりも、よく知りもしない奴らの噂話の方があなたの中では信憑性が高いの?」

「そんなわけじゃないが……やはり事前に話を聞いてしまっているとな。……色眼鏡なしに人と話せるほど俺は器用じゃない」

 

 まぁ、それはごもっともだと思う。先入観、というのは恐ろしく人の思考を凝り固まらせるものだ。……その先入観に被害を受ける側はたまったものではないが。

 

「噂話にしろ、ある種この世界のタブーを犯したって話がここまで広まってるんだ。……子どもを──」

「なになに、面白そうな話をしてるじゃないか。ハミらんといて」

 

 タイガーがギョッとする。いつの間にかサーペントが戻ってきていた。

 相変わらずこの男の、気配を消す技術には舌を巻く。……いや、気配を消す、というよりは、意識の隙間に潜り込んでくる、とでも言おうか。こちらも決して無警戒という訳では無いにも関わらず、その挙動に対して反応が一歩遅れてしまう。

 

「まぁ、タイガーよ。あんたが聞いている噂ってのは、おおむね事実だ。この仕事が終わったとき、まだ詳しく聞きたい気があるなら教えてやる」

 

 ……この男のこういった性格、というか気質、というか……どっちも同じか。だい〜ぶ損していると思う。さっさと真実を話してやればいいものを、何をもったいぶっているのか。周りのよく知りもしない連中にサーペントをボロクソに言われると、私もイライラしてくるのだ。

 

「……あぁ、そうしよう。だが1つ、1つだけ今聞かせてくれ」

「なんだ?」

 

 目当ての鍵であろうものを、サーペントはジャラジャラと右手でもて遊んでいる。そんな彼を見つめるタイガーの表情は、どうだろう。……あら、これは意外だった。

 

「後悔はあるか?」

 

 タイガーの顔に浮かんでいるのは、何か願っているかのような、縋っているかのような表情だ。ちょっと可愛かった。

 

「そりゃあるさ。……もっと他に手はなかったのかって、後悔しない日は無い。今でも夢に見る……多分この先、一生見続けるだろうよ」

 

 そこで言い切り、「はぁ……」と息を吐いたサーペントは力なく笑った。また、あの表情だ。彼が時折見せる、全てが抜け落ちていくような、そんな嘆息だった。

 

「だが今さら俺の生き方を変えようとは思わん────敵は殺す。仲間は守る。……それだけだ」

「……そうか。あんたの敵にだけはならないよう気をつけるよ」

 

 そうしてくれ、とサーペントが笑う。そのままヒョイッと、右手の鍵を私に投げてよこした。

 ……なによなによ、男だけで妙な世界にひたっちゃってまぁ。女の出る幕は無しですかそうですか。なぁにが「それだけだ、キリッ」よ、やかましいわ◯玉握りつぶすぞ。

 さみしいじゃないハミらんといて。

 

「ここからは別れて動くぞ、スコーピオンはインディオ達を頼む。合図するから、それまでは脱出経路の確保を優先し、見つからないよう隠れておけ」

 

 さらっと流しやがったサーペントの処遇は任務後のご褒美時に決めるとして、本隊の攻撃開始時刻まで3時間と少し。残り1時間のタイミングで私たちは動く。それまでにインディオ救出の準備を済ませておかなければならない。のんびりしている時間はなさそうだ。

 

「了解、あの少年とも合流しないとね」

「そろそろポイントについてる頃だろう、彼の護衛も頼む。インディオ達の誘導は彼の助力が不可欠だ」

 

 何故かインディオと話せているサーペントはまだしも、私は通訳がいなければインディオとの意思疎通は無理だ。助け出そうにも統率できなければ全滅は目に見えている。

 

「俺とタイガーは対空機銃の破壊と陽動だ。奴らの目を俺たちに向けるぞ」

「了解だ。ごm──段ボールのせいで体が凝り固まってたとこだ、いい運動になるだろう。……こっちにガバ向けてくるのやめてくれないか?」

「あ、待って2人とも。私のTNTもいくらか預けるわ。派手にブチかましてちょうだい」

「よぅし、任された。……十分に気をつけろよ、スコーピオン。無事を祈る」

「あなたもね。……任務が終わったらあなたをおもちゃにする約束、ちゃ~んと果たしてもらわないとイヤよ」

 

 いよいよ覚悟が決まったのか、「望むところだ」とサーペントが笑っている。

 私としても、いい感じだ。体はほどよく緊張し、そしてよく動く。十二分の働きを成せるという確信がある。やはりご褒美は大事だ。モチベーションを維持するだけで体のコンディションがまるで違う。

 

「まぁた、あんたらはそうやってフラグを建てる……」

「バァカ、ある種の願掛けだよ。こういうのは建てまくった方がむしろ安全だと相場が決まってる。どうだ? タイガー、念には念を入れて故郷の女と結婚する予定でも作っとかないか?」

「イヤだよ……もっと然るべき時と場所で言わせろよ……命がいくつあってもたりねぇよ……」

「あ、じゃあ私、インディオ少年の様子を見てくるわね!」

「呪いの詠唱やめろってんだよ!」

 

 なんだか楽しくなってきた。ひとしきり遊んで満足した私は、2人と別れて別行動に移る。

 建物の影を進んでいく。途中、歩哨2人と出くわしたが上手く切り抜けた。盗み聞いた会話からは、この基地に異変が起きていることに気付いている様子はない。やれこの間抱いた女がどうとか、ギャンブルでいくら儲けた、とかだ。

 そのままコンテナ群の中に侵入する。ここを抜ければ、インディオ達が収容されている仮設テントが待っている。あと少し、と少々浮き足立っていた時だった。

 

「うげっ」

「……あぁん? なんだぁ?」

 

 コンテナの陰に佇んでいた歩哨と出くわしてしまった。思わずガバのトリガーを引きかける。潜入任務故に余り発砲したくはなかったが、致し方ない────そう思っていたのだけども。

 

「チッ、お前もサボりかよ……よそに行ってくれ、ここは俺が使ってんだよ」

 

 そう言って、ぷかぷかタバコをふかし続けている。一瞬ポカン、と間の抜けた顔になってしまったが、これは幸い。ユニフォームをゲリラ仕様の野戦服に変えていたことが功を奏したようだ。この歩哨、私を味方だと思っていやがる。

 

「カメレオンマークもバカにできないわねぇ」

「あぁ? 何わけわかんねぇことを……え、女──」

 

 見事に油断しきっている歩哨の背後を取る。その

首元を、巻き付けた右腕で絞り上げる。実にあっけないものだ。サーペントもこれくらい容易く背後が取れればもっと襲いやすいんだけども……

 

「は、なせこの……く、くびが、……ぁ……」

「イキそうな脳みそに……気持ちいいでしょう? ニコチンの風味が」

「い"やわかんね"ぇ"……背中に何か当たってるしぃ"……」

「あててんのよ。イクまで堪能してってね♡」

「イィクイクイクい、イキがぁ────」

 

 「ケヘッ」と情けない声を出して歩哨の意識は落ちた。情けないやりとりではあったが、なかなかいい声をした男だわね、こやつ。弾薬等々いただけるものをいただき、後ろ手に縛って物陰に隠す。最初はどうなることかと思ったが、カメレオンマーク様々だ。意外とバレないものなのか。

 そのままコンテナ群を抜け、インディオ達の収容所に到着。歩哨は入り口に2人と、収容所裏側に2人の、計4人。装備は標準的なゲリラ兵のものだ。しばらく観察し、警備ルート等を確認する。

 

「……よし。それじゃインディオ少年を探さないとね」

 

 今のうちに歩哨を排除するかとも考えたが、サーペント達の動きを待つことにした。陽動が上手くハマるのを祈るとしよう。

 先に脱出経路の確保に入る。基地の外周は簡易的な鉄条網で覆われている。捕虜の脱走、害獣や私たちのような輩の侵入を防ぐためだろう、有刺鉄線が張り巡らされている。インディオ達の脱出には、これらを突破させる必要があるが、あいにくと切断用のカッターなんて持ち歩いていない。この基地内で拝借する必要がある。が、そんな面倒なことをやっている時間はないので、TNT爆薬でぶっ飛ばすことにした。面倒事は爆薬でぶっ飛ばすに限る。

 

「……お、いたいた」

 

 鉄条網から100メートル程離れた茂みに、インディオ少年がいるのを発見した。危険だがライトを点滅させ、合図を送る。少年もすぐに気付いたようだ。周囲を警戒しながら、ヒョコッと姿を現した。

 手頃な位置の鉄条網にTNT爆薬を設置しながら、身振り手振りでここを爆破することを伝える。頷いた彼は、先ほど潜んでいた茂みよりも更に距離を取って身を潜めた。

 

「いい子いい子」

 

 起爆装置の動作を確認し、バックパックにしまう。すぐさま収容所に引き返し、配置につく。後はサーペント達の狼煙を待つだけだ。

 その時はすぐ訪れた────基地の内部のあちこちで、月夜を赤々と照らす炎と共に、静寂を引き裂く爆音が轟く。

 さあ、行動開始だ。

 

 

 

 

 

 

 

 




MGSΔ発売おめでとうございます!プレイできてないけど!(血涙)
CQCアクションかっこよすぎるんじゃ!

初めて読んでいただいた方には関係のない話ですが、いくつか削除した話があります。
いやもう、過去の自分がその場のノリで無理やりねじ込んだキャラ達の話が今読み返してみるとあまりにもノイズ過ぎた……
彼らのお話はMGSPW本編の方で上手いことねじ込もうかと思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。