書いてるうちに楽しなっちゃって3人が三馬鹿みたいになってきました。
「なぁサーペントさんよ、俺たちの主目的は対空機銃の破壊と陽動だったよな」
「その通りだ。そしてその主目的はどちらも完璧に達成した」
「そうだな。対空機銃は全て破壊し、基地の
「あぁ、素晴らしい戦果だ」
「やり過ぎなんだよボケがぁ! 全部隊てなんだよ、俺達逃げれねぇじゃねぇか!」
「有能だな、俺達」
「やかましいわ! お前いつかぶち殺してやるからな!」
銃声と怒号が飛び交っている。……怒号に関してはタイガーのが主だが。全く騒がしい男だ。
基地内には異常を知らせるサイレンがけたたましく鳴り響いている。俺達が身を隠しているのは、土嚢が積み上げられた監視所の中だ。ゲリラ兵のAK-47から放たれた7.62x39mm弾も、流石にこの土嚢の壁を貫くことはできないらしい。
「サーペント! 3時方向、40メートル先だ!」
タイガーからのマーク先を確認、敵兵2人を捉える。H&K G3のグリップを握り、トリガーに軽く指をかける。時の流れが嫌に遅い。体が良く動く。五感が研ぎ澄まされている。
「────ッ!」
クリアな視界。発砲しながら接近する敵──全てがスローモーションになったかのような、全てを把握しているかのような感覚。
「──排除! タイガー、カバーする! 移動しろ!」
9時方向より、新たな増援を確認した。一段と、敵方の弾幕が激しくなる。これ以上、ここにとどまるのは危険だ。グレネードの安全ピンを抜き、投擲する。蜘蛛の子を散らしたように、敵兵が飛び退いていく。そこへ4、5発撃ち込みながら移動を開始。
倒した敵兵から拝借したAK-47にメインウェポンを切り替える。長距離射撃の精密性はないが、その打撃力は折り紙付きだ。加えてこの基地内部であれば弾薬がそこかしこに転がっているため、継戦能力も期待できる。弾薬数が限られるH&K G3の使用は最小限に抑えておきたい。
マガジンを装填し、安全レバーを解除。接敵した敵兵を3人、撃ち倒す。素晴らしい火力だ。7.62×39mm弾薬の嵐が、その命を引き裂いていく。
「タイガー、まだ生きてるか!?」
「やかましいわ! あんたの背後を守ってる!」
ブチ切れながらもしっかり敵兵を3人、近接格闘で殴り倒している。スペツナズお得意のシステマか──元気そうで何よりだ。
インディオ達の収容所から敵を遠ざけるため、正反対の方向へ暴れながら移動していく。兵員宿舎の角を過ぎたところで出会い頭に4人、接敵した。
「────ッ!」
距離が近すぎる。咄嗟に敵の銃身を蹴り上げ、その懐に潜り込む。顎への打撃、続けて足をかけ、後頭部から地面へ叩きつける。重度の脳震盪、数時間は無力化できるはすだ。
次だ。ナイフを取り出し、振り抜いてくる。腕を押さえ、手首を逆向きに捻りナイフを奪い取る。両足の隙間へ体をねじ込み、すくい上げるように背負投げへ。そのまま、向かってくる3人目へ向けて投げ飛ばす。気の毒だが有効活用させてもらおう。
次だ。ハンドガンを抜き、こちらへ構え始めている────撃たせてたまるか。トリガーを引かれる前に距離を詰め、先ほど奪ったナイフを投げる。手に突き刺さり激痛に呻く敵。十分過ぎる隙だ。
「連続! CQC!!」
「あんたふざけないと死ぬ病気にでもかかってんのか!?」
「『■ボタン』の連打でこんなアクションができるようになるとはなぁ!」
「確かに爽快感は増したけども!(洗脳済)」
どうか許して欲しい。一人称視点で格闘シーンを描こうとすると羞恥心が限界突破してしまうのだ。
「スコーピオン、まだかっ……!?」
彼女達の脱出が完了しない限り、この陽動が終わることはない。……少々やりすぎたが。大人数のインディオ達の脱出は容易ではないだろう。が、我が方の火力も無限に発揮できるわけではない。限界はいずれ訪れる。それまでにここを切り抜けられるかどうか、だ。
対空機銃に設置したTNT爆薬を爆破した直後に、基地の北方からも爆発があったことは確認している。彼女の方も順調に進んで入るはずだが……合図の信号弾打ち上げが待ち遠しい。
「────っ! サーペント見ろっ、信号弾だ!」
タイガーが指し示す方向。基地北方の空に昇る信号弾を確認した。スコーピオンがやってくれたようだ。
「よぅしタイガー、撤退だ!」
「あんたに言われなくてもそうするさ!」
もうこの基地に用はない。さっさとズラかるに限る。タイガーの動きに合わせ、最後のグレネードを投擲。AK-47を撃ち尽くすと、それを廃棄し彼を追うように走り始めた。
突然の爆発と正面からの銃撃────敵方も一瞬怯みはしたが、こちらが逃げの姿勢に入っていることを直ぐに感づいたらしい。銃撃の雨が俺達に襲いかかる。たまらず脇にあるコンテナの陰へと飛び込んだ。
「時間はどうだ!?」
「まだ30分はある!」
基地本隊の攻撃までには脱出しなければならないが、その前にこの火線の中を掻い潜って基地から脱出するなど可能なのか──いや、不可能だ。十中八九被弾する。何か手はないか────周囲を見渡す。資源コンテナ、積み上げられたドラム缶、燃料輸送車──燃料輸送車!?
「都合よく良いもんあるじゃねぇか! おいタイガー、TNTまだあるか!?」
「1個あるが────馬鹿、よせ! ありゃ遠すぎる、死ぬぞ!」
さすがはタイガー、察しが良い。TNT爆薬を受け取るが、しかし彼の言う懸念事項も最もな話。集中砲火に晒されているこの状況で、燃料輸送車まで距離がありすぎる。
何か、隙を作れる手はないか……グレネードはもう無い。タイガーとの一斉射撃で無理矢理行くか? 駄目だ、グレネード程の制圧力は見込めない。やはり、一か八かで突っ込むしか────そんなことを考えていた矢先だ。何やら敵方に慌ただしい動きが見られた。1人、また1人と鮮血をまき散らしながら倒れていく。俺もタイガーも、有効な射撃を行っていないにもかかわらず陣営が崩れていっている。いったい何が起こっている?
「スコーピオンか!」
基地北方の監視塔、マズルフラッシュが確認できる。H&K G3による中距離狙撃。なかなかいい腕だ。あの女、かなり上達したな。
またとないチャンス到来だ。敵方の注意が分散している。咄嗟にタイガーにカバーするよう指示を出し、燃料輸送車へ向けて走り出した。
タイガーがAK-47を乱射している。俺も同じくH&K G3を乱射する。虚を突かれたのか、敵方は更に混乱の渦へ飲み込まれている。
輸送車へ取り付いた。……問題なく動きそうだ。手早くTNT爆薬を設置する。運転席に乗り込み、エンジンをかける。内燃機関特有の爆発音が、銃撃音に麻痺した耳に実に心地良い。さながら気分はF1レーサーだ。
アクセルをふかし、クラッチをつなげる。エンジンが唸り声を上げ、その巨体が速度を増す。
何人かこちらに気づいた敵兵が射撃しているのが見える。またたく間にフロントガラスにヒビが入り、前方の視界はゼロに。だが、問題ない。すでにこの燃料爆弾は直線コースに乗った。速度も十分だ。
最後に目一杯アクセルをふかす。ギアをニュートラルに戻し、運転席から飛び降りる。エンジンブレーキの制動力を失った輸送車は、慣性の法則に従って敵方のど真ん中へ突っ込んでいく。途中、道路の陥没部に引っかかり横転、タンクに満載していた燃料を周囲にまき散らしている。
今だ。
「ふっ飛べ!」
TNT爆薬の爆発。強烈な衝撃波が周囲を吹き飛ばす。周囲に飛散した燃料に引火し、連鎖的に大爆発を巻き起こしていく。
付近にいた敵方はもっと悲惨だ。TNT爆薬の爆発に巻き込まれ、跡形もなく消し飛んだやつらはまだマシな部類だろう。引火した燃料を浴びたやつらは、悲鳴をあげのたうち周りながら死んでいく。
「…………」
ドロドロとした何かが、俺の中を這いずり回る。自己破壊にも似た衝動が鎌首をもたげる。右腕に絡みついた痣が、俺を責める────お前が殺した相手が何者なのか、忘れることは許さない、と。
「──無事か、サーペント!」
タイガーが駆け寄ってくる。
助かった。今にもナイフで自分を切り刻みそうな精神状態に陥っていた。……流石にまた、殺しすぎた。厄介な教えを受け継いでしまったものだ。
「基地の奴らも、あらかた纏めて吹っ飛んじまったようだな……これなら俺も、あんたらの真似をしても大丈夫だろう」
「やったかぁ!?」と、それまでの鬱憤を吐き出すかのようにタイガーが叫んでいる。目がキマっている。怖い、近寄らんとこ。
そして特大の死亡フラグがまた1つ。だが、基地内が嘘のように静まり返っている。……信じがたいことに、どうやら俺達3人でこの基地をほぼ制圧してしまったようだ。
「よっしゃぁぁざまぁねぇなぁ! 故郷で女の2人や3人嫁にしてやるぜぇぇ!」
「仲人は任せろ。よしタイガー、さっさと脱出しよう。そろそろ攻撃が──」
刹那である。
燃え盛る燃料輸送車を吹き飛ばし、装甲車が出現。見たところソ連製BTR-60だ。よくもまぁこんなブツを手に入れてやがったな。上部ハッチを開き、隊長格らしき男が身を乗り出して何事かを口汚く叫んでいる。
こんなバケモノ相手にしていられるか。こちらの装備はほぼ底をつき、敵方に有効打を与えられる武装はない。燃料輸送車なんて都合のいいものが、複数そこらにあるわけでもない。
結論。逃げの一択である。やってられるか。
「タイガー! あんたの知り合いみたいだぞ!」
「やかましいわッ! なぁんで俺のだけしっかり死亡フラグなんだぁぁぁ!?」
PKT 7.62mm機関銃が火を吹く。射撃手が激昂しているおかげか、ずぶの素人のように正確性が低い。おかげでまだ、俺たちは走りながら生きている。
「──ッ!? ヤバイぞ!」
業を煮やしたのか、射撃手が車内からRPG7を取り出したのが見えた。
すかさずタイガーを突き飛ばす。同時、発射されるRPG7の弾頭。たまらず俺も横っ飛びに回避する。走行する車両からの射撃とあってか、着弾点はわずかに俺たちの後方にそれた。それでも爆風と弾頭片、巻き上げられた砂利に吹き飛ばされる。
不味い、被弾した。どこだ────確認する手間が惜しい。全身が痛む。恐らく、弾頭片がいくつか体に食い込んでいる。走破は厳しそうだ。
射撃手が新たにRPG7を構え直そうとしている。次は避けきれない。殺られるか────
やかましいわ。俺の生き意地の汚さをなめるんじゃない。
「────ッ!」
頼むぞ、今だけの
息を吐く。また、あの感覚に入る。もたらされる全能感。視界がクリアになる。
スコープに捉える。RPG7が射出される。射撃手の殺害では間に合わない。外せない──着弾すれば間違いなく死ぬ。
死への恐怖、極限の緊張。完全なゾーンに入る。
トリガーを引き抜き、4発射撃。弾道が目に可視化される────3発がRPG7の弾頭を捕らえるのがわかった。
奇跡だ。弾頭の軌道が逸れ、明後日の方向へ飛んでいく。ひとまず危機は去った。
次だ。機銃に手をかける射撃手を排除する。再度スコープに捉えた。今の俺の状態なら外しはしない。その確信がある。
トリガーを引く。……撃てない。ふざけんな、職務放棄してんじゃねぇ。
最悪だ。マガジンの残弾数管理を怠っていた。ここへきてまさかの弾切れ。装填している暇はない。機銃掃射が始まる────ガバに切り替え、射撃。駄目だ、流石に距離が遠すぎる。ハンドガンの射程じゃない。
囮になるしかない。タイガーだけでも逃がすべきだ。
「タイガー、先にいけ!」
だと言うのに、この男はサインを聞いてくれない。
「ベタなセリフ吐いてんじゃねぇよ! そういう奴は生き残るって相場が決まってる!」
相も変わらずブチ切れながら、俺を引きずりつつAK-47を撃ち返している。
イカスじゃねぇか。お前を仲間に誘って良かった。
「スコーピオン、今だ!」
「待ってました!」
タイガーの怒号。
ちゃっかり合流しているスコーピオン。その手にはどこで入手したのかRPG7がある。機銃掃射の中を、命知らずにもこの女は堂々とその身を晒した。
「────男だけの世界に浸っちゃうのやめてよね!」
「寂しいからぁ"ッ!」と訳の分からないことを叫ぶスコーピオン。射出されるRPG7。何かと喚き立てる射撃手────蠍の毒針が容赦なくBTR-60を貫いた。
「イッちまいなぁ!」
「……マジかよ」
「やったかぁ!?」
「やめろってんだよ!」
調子に乗り始めたタイガーを抑える。
なんてことだ。破壊の限りを尽くし、ついに敵基地機能喪失を確認。まさか俺達3人だけでやってしまうとは思わなかった。インディオ達も全員無事、ジャングル内の安全な場所で、あの少年と待機しているらしい。
「立てる? サーペント……さっさと逃げるわよ」
「あぁ、あちこち破片がぶっ刺さってるが……体は動く」
「あんたとんでもねぇよ。あの状況でよく当てたな」
2人の肩を借り、何とか立ち上がる。体の状態を確認するが、出血さえなんとかすれば基地に帰還してからの治療で問題ないだろう。
「ハッハッハ。タイガーも良くやってくれた。ありがとう、
「……あんたが俺を生かしてくれたおかげだ。こちらこそ礼を言う」
「あの……もう時間が……」
タイガーが右手を差し出してくる。……嬉しいものだ。その右手をしっかりと握り返す。
はて。何か重要なことを忘れている気がする。
「タイパンへようこそ、タイガー」
「パイパ──おっとサーペント、そのナイフは仕舞ってくれ」
「もしも〜し? お二人さ〜ん?」
お互い笑い合っていた時だった。基地の外周から、爆音が近づいてくることに気付く。はて、敵襲か。……いや、この爆音、というかプロペラ音は聞き覚えのあるものだ。基地からの攻撃隊が到着したか。
ヤバイぞ。攻撃ヘリの爆撃が基地を蹂躙し始める。基地建造物、広大なコカ畑が炎の海に呑まれていく。巻き込まれようものならたまったものじゃない。
全力疾走だ。
「走れお前ら!!」
「もうタイムリミットじゃねぇか!」
「さっきからずっと言ってるでしょうが! まぁたよく分からん世界に浸りやがってふざけんじゃないわよ!」
3人仲良く爆発に吹き飛ばされ、ギャーギャー喚きながら基地外周の川へホール・イン。
基地潜入の上破壊工作、民間人の救出という、極めて困難な任務となってしまったが、なんとか成功だ。俺達を発見した者はいないため、ノーアラート、完全ステルス達成と言っても過言じゃないのではなかろうか。
「「過言が過ぎるわ!」」
ダメでした。
次話あたりでMGSPW編本編に突入する予定です。
え、ここに来るまでに10年かかってるって?
HA☆HA☆HA☆冗談がお上手だ。