魔族の玉座は空いている   作:ふく神漬

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迷宮視察②

 

「ここは?」

 

 気づけば、知らない部屋に飛ばされていた。

 

 ボス部屋にあんなギミックがあるとはね……。

 とにかく、早くセインと合流しないと。

 

 そう思っていた時、矢継ぎ早に新たなギミックが作動する。

 今度は、周辺が暗転する。

 

「いや、これは……」

 

 ギミック、ではない?

 

霊体(アバター)が……解除された?」

 

 衣装が解除される。

 残ったのは動きにくいフレアスカートと、それに似合わない無骨な剣だけ。

 何より感覚で、ありのままの自身の身体そのままだと理解できる。

 

 装置の不具合?

 だとしても、タイミングがおかしい。

 

「……ッ」

 

 嫌な予感が増していく。

 とにかく、早くセインと合流を……。

 

「またかよ……!」

 

 足が動かない。

 足元を注視すると、その原因が発覚する。

 

「……糸?」

 

 それも、蜘蛛の糸といった類の。

 粘土の高い細い糸が幾重も重なり、網を張ってわたしの足元に絡みついている。

 

「まさか……」

 

 この事象を起こした犯人。

 その張本人は、次第にその暗闇から這々と黒い影を伸ばしてくる。

 

「ふふふ……」

 

 不気味に、暗闇に鈍重に響く声の主。それは……

 

「マナ……さん?」

「はい。正解ですお姉さま」

 

 堂々と素性を明らかにしたその人物は、次の瞬間に天高く嗤う。

 

「ああ、やっと!! やっとここまできました!!」

 

 思考が追いつかない。

 いや、違う。

 認めたくないだけだ。

 犯人はずっと、この為に動いていた。

 

 セインの疑念は、直感は間違ってなかった。

 セインに、申し訳なく思う。

 

 

 ただ、それ以上に……!

 わたしと同じハーフで、辛い境遇だったのだと。

 

 信じたかったのに、信じてあげたかったのに……!

 

「マナ、お前……おまえええッ!!」

「そう怒らないでくださいな、お姉様? (わたくし)に共感したのでしょう? 同情したのでしょう? それなら……仲良くしましょっ?」

 

 ブチりと、瞬間的にスイッチが入る。

 瞬時に、血の塊を生成する、

 

 ――血晶《アスタリズム》。

 

「…………あ」

 

 は、不発に終わる。

 全身が固まって、動けない。

 

「…………こ、れは……」

「ムダですよ〜〜」

 

 身体が、動かない。

 この感覚には、覚えがある。

 

 まさか、まさかまさかまさか……!

 

「改めてご挨拶を」

 

 彼女の――マナの右目に。

 琥珀色の眼が光る。

 

「母方の姓はフィーラ。そして、父方の姓を取るなら――」

 

 犯人は、その素性を明らかにする。

 

「マナ・()()()()()と申します」

 

 は?

 こいつは、何を……

 

「よろしくお願いしますね?」

 

 そう絶句するわたしの前で、彼女は踊るようにくるりと回りながら謳った。

 

「お・ね・え・さ・ま?」

 

 わたしは突きつけられた真実に、驚きの声をあげることすらできなかった。

 

 ◇

 

 人間の頂点は、目を閉じその居場所を突き止める。

 

「ミラはそこか。さて、うまく調整しないとな」

 

 冷静に、戦場にいることを認識して彼女は剣を構える。

 

「一線を越えた者は、相応の罰を受けてもらう」

 

 否、彼女は平静を装っているだけ。

 ――その目に映るのは間違いなく、殺意である。

 

 ◇

 

『もう、おねえさんのうそつき』

 

 紅き竜はその翼を羽ばたかせながら、空を飛んでいた。

 約束の日に出かけている主を前に、ぷんすかと怒りを顕にする。

 

『もうすぐつくから、かくごしといてね』

 

 居場所は割れている。

 自身との約束を忘れ、呑気に遊んでいることががまんならなかった。

 

『リリー、おこってるから』

 

 そう告げる少女の無垢な怒りは、着々と戦場へと近づいていた。

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