魔族の玉座は空いている~魔王(予定)のわたしは、最強の勇者を倒すために彼女と同盟を結びます~   作:ふく神漬

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ご覧いただきありがとうございます。臨間学校(迷宮攻略編)です。そこまで長くないですが初めての長編ということで、ここの結果次第で評価して頂けると幸いです。


第9話 臨間学校①(始)

 

 パーティーでSランクの迷宮を踏破すると、『勇者パーティー』として認定される。

 これとは別に単独でSランクの迷宮を踏破すると、『勇者』として認定される。

 この二つには大きな隔たりがあり、フラン・リワールは『勇者』である。

 

 現在、多くの名のある『魔王』が引退し、Sランクの『魔王』の水準は下がり。

 また複数の『魔王』がコラボという名目で徒党を組み、Sランクとして扱われることも増えた。

 

 結果、『勇者パーティー』はその数を増やした。

 が、それでも『勇者』は依然として少なく、ただの五人しか存在しない。

 

 セイン・ヴィグリッドに否があったわけではない。

 むしろ彼女が革命を起こす前から、迷宮攻略は商売として、娯楽としての側面が強くなりつつあった。

 強いだけではなく、様々な冒険者の在り方が肯定されるようになりつつあったのだ。

 

 だがその潮流の中では、彼女は異端とされた。

 

 彼女は骨の髄まで炎で出来ていた。

 消せども消えない、連綿なる炎。

 とどまることの知らないその勢いは、近づくものに飛び火し、燃やし尽くしてしまった。

 

 彼女は生まれる時代を間違えた。

 一騎当千が"善"とされた時代なら。

 命を懸けた戦いをしていた時代なら。

 

 けれど彼女が生まれた時代で、尖っていることは"悪"であり、彼女は弱くなることを望まれた。

 弱くなれない彼女に、世間は出来損ないの烙印を押した。

 

 そんな彼女を、たった一人の少女が認めた。

 たった一人で、完結した存在。

 それを受け入れられた存在が、唯一彼女を認めた。

 

 ――故に、今の彼女は"獄炎"と呼ばれる『勇者』となり、至上を求める。

 そして他に縋ることは、彼女にとって敗北となったのだ。

 

 

 四人でパーティーを組む必要があったわたしたちは、あと二人のメンバーが必要。

 しかしそれは案外簡単に解決した。

                           

 『勇者』というブランドは、やはり強いと実感する。

 

 だた相手が、そのねえ?

 

「ねえダーリン、あーしこわいっ!」

「大丈夫、君は僕が、命に変えても守ってみせる……!」

「きゃー! ダーリンすてきっ!」

 

 

 アンナ・リリエットさんに、イース・レンシアくんのペア。

 こういうのを、バカップルというのだろう。

 

 正直苦手、というか接したことがないタイプだが、仕方ないというやつだ。

 

 いや、よく考えてみればこれはチャンスかもしれない。

 もちろん、フランさんと仲良くなれればそれに越したことはない。

 が、正直彼女は相当に心の壁があるように感じる。

 

 ボスクラスにいきなり挑む必要はないのだ。

 そういうわけで、わたしは勇気を出して話題を振る。

 

「あの、二人とも冒険者志望なの?」

「は? 話しかけないでくれる? セインさんの傍付き風情の癖して」

「いや、別にわたしは……」

「それ以外に何があんのよ。ねっ! ダーリン!」

「え? あ、ああそうだね。正直僕も、君の印象としてはアンナに近い。互いのためにも、無理に仲良くする必要はないんじゃないかな」

 

 せっかく勇気を出したのに、酷い言われようだ。

 なんでこんなわたしに当たり強いの?

 慰めて欲しいという意味も込めて、今度はフランさんに声を掛ける。

  

「フランさん! えと――」

「貴方には何も期待してないから」

「いや、わたしもできることが」

「何も期待してないから」

「……」

 

 あの、この人たち味方だよね?

 なんで四方八方敵しかいないの?

 

 いや、厳密に言えばフランさんも周りと接しようとしていない訳だが、他二人はフランさんに対しては顔色を伺うような態度だ。

 まあ、それ目当てでパーティーを組んでくれたわけだしそりゃそうか。

 

 クラス内カーストってやつをひしひしと感じながら、わたしたちは木々の中を進む。

 

 今回わたしたちが挑むのはA級ダンジョン――『獣王』ウイガルさん率いる獣人の迷宮。通称『獣群の狩猟域(ウイガルハット)』。

 獣人は見た目からして獣の特徴が色濃く出たタイプと、人に近い見た目に獣の特徴が付随したタイプの二種類が存在する。

 

 優れた五感と、それを活かした身体能力。

 竜人は個として優れていたのに対し、獣人は群れとして優れた種族。

 

 油断してると、一気に足元が崩される恐怖が付きまとう。

 

「せめて、戦略くらい……」

「わたしが散らすから、貴方は何もしないでいいわ。死なないでくれたら結構だから」

「協力してこそ、攻略じゃないの?」

「最も効率のいい方法こそが攻略でしょ」

 

 存外に、戦力外通告をされたのだ。

 いや、わたしに限った話ではないのだろう。

 彼女にとっては、他人に戦力としての期待をすることが間違いであると。

 自分だけの力にこそ意味があると、そう本気で思っているのは伝わってきた。

 

 でもこれじゃあ、埒が明かない。

 下手に出てばかりでは駄目だ。

 無理にでも、話をしてもらう。

 

「フランさんはその……強いのかもしれないけど、最強の『勇者』じゃない。セインとは……違うよね」

「は?」

 

 彼女の目つきが、威圧的なものに変わる。

 

「わたしの魔術は繊細な動かし方も出来る。フランさんで足りないところを――」

「うっさい!! 黙って私に従ってればいいの!!」

 

 もう、いいよ。

 わたしの付け入る隙なんて無い。

 勝手にすればいい。

 

 そんな不和の最中、木々がざわめくのを感じた。

 

「え!?」

 

 声を上げたのはアンナさん。

 既に獣人の群れが、わたしたちを取り囲んでいたのだ。

 

 だいぶ多いな。

 いつの間にここまで近くに……!

 

 気配はなんとなく察知していたが、これほどの数とは読めなかった。

 さすがにA級を冠するだけあって、一筋縄ではいかない。

 

「アンナ、僕の後ろに隠れていろ! 僕が」

 

 いや、遅すぎる。

 イースくんが剣に手を掛ける時には、獣人は既に動き出している。

 

「殺れ」

 

 狼の獣人が命ずる。

 

 わたしも、正体がバレない範囲で応戦を――

 

 そんな両陣営の思惑を、ただ一人が消し飛ばした。

 次の瞬間、襲いかかる獣族が一気に炎に呑まれたのだ。

 

「す、すご……」

 

 周囲の木々が燃え尽き、視界が開ける。

 

 これをほぼノーモーションで、やってのけた。

 わたしを含め、三人が呆然とその光景を前に自失する。

 

「さすがは『勇者』といったところか」

 

 対して狼男は、後退し回避していたようだ。

 それだけで、実力者だということは理解できる。

 

「どうでもいい。それで、まだ何かあるの? あるなら早くしてよね」

 

 狼の獣人はその問いに、ふっと笑みをこぼす。

 

「気づかないか? やはり評価は取り下げだな」

「なにを……くっ!!!」

 

 何かが、フランさんにぶつかった。

 それは全員の認識の外、一瞬の出来事だった。

 

 その犯人は、猫耳を生やした獣人。

 彼女は口角を上げて、フランさんを挑発する。

 

「せいぜい楽しませてくれよ、ユウシャさんよお!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

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