星雲からの使者   作:完全にわかのバカ野郎

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 原作とは違い生き残った?イグヴァルジ達はたして彼らは素直に評価するのだろうか。


四十話

「逃げられた、か」

 

 戦闘があった場所に残っていたのは先の金髪の吸血鬼(ヴァンパイア)、アルクェイド・アルトルージュが使っていた大剣のみ。

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「魔剣シラード……凄まじい武器だ。アルクェイド・アルトルージュ、次は私が勝つ」

 

 残していった剣を握り締め次の戦う事があれば必ず勝つことを胸に刻む。

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「モモ……ンさん。ご無事ですか」

「吸血鬼は逃げたか」

「ああ、彼方は時間稼ぎ。我々とは前提条件が違う。だが、恐ろしい程に強かった」

 少しは手加減して欲しかったけど、でも楽しかったな。

 

 今回の吸血鬼騒動はモモンガとオルトが企てたマッチポンプで、初めから吸血鬼であるオルトは適当な処で逃げる事が決まったいた、しかし予定より長く戦っていた。

 それはユグドラシル時代も含めてこの2人が戦う事は1度も無かったから、お互いが楽しくて長引いたのだ。

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「逃げられたじゃねぇか!」

下等生物(ナメクジ)風情が!」

「まあ待て、であればお前さんが相手をすれば良かったではないか。ああ済まんのぅ、お前さんでは相手になっておらんだな。

 それどころか、ただの吸血鬼にさえ手間取っておったな」

 

 イグヴァルジに呵呵大笑と煽る。

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「てめぇ!!」

 

 2人の間に白い大剣が現れ遮る。

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「ルヴァン。そこまでにしておけ」

「じゃがのう、儂らがおらねばコヤツら全員死んでおったろうて」

「かもしれんが、イタズラに煽る必要はない」

「カカカ! それもそうじゃ。所詮コヤツらは数合わせ、元より戦力として数えておらんだからのう」

 

 宥めているのいないのか分からない忠告をクヴァールに言うが、それが反ってイグヴァルジの琴線に触れた。

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「てめぇ…………巫山戯てんじゃねぇぞ! あ"あ"!!」

 

 腰の剣を抜こうと手をやった瞬間、手元に魔法が通る。

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「!?」

下等生物(ガガンボ)風情が! 死にたいのか」

「イカンイカン。殺してしまえば儂らが悪くなる」

 

 まるで、自分達を簡単に殺せると会話をする2人に青筋を立て、砂を蹴り上げ視界を遮り剣を抜こうとしたがーー

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「は? あ? う……で? …………ああああああ!! 俺の腕がぁあぁあ!!」

「やかましい下等生物(ウジムシ)ごときが、頭じゃないだけありがたいと思え」

「お前さんと言う奴は」

 

 頭に手をやりタメ息を吐き、ただのザックに偽装させている無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァザック)からスクロールを取り出し、イグヴァルジに使う。

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「あ? は? 腕が……生えた?」

 

 肘から先が完全に無くなっていた筈なのに目の前の男が、スクロールを使ったら生えた事に驚きを隠せなかった。

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「のうナーベよ、無闇矢鱈に攻撃するでない。お前さんの軽率な行動でモモンにどれだけの迷惑がかかると思っておる」

 

 その言葉にハッとした表情をしモモンガに目をやる。ナーベラルが見たヘルムの隙間から見える目は、どこか呆れているような、或いは諦めているように感じた。

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「モモ…ンさん、こ、これは……その」

 

 必死に弁明の言葉を言おうとしたが何も思い浮かばずモモンガに「もうよい」と言われてしまった。

 ナザリック地下大墳墓に属する者にとってモモンガとオルトは偉大なる存在であり、神そのもの。

 故に偉大なる至高の御方々の失望の眼差しは死と同義であった。

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「〔なあクヴァール、ナーベラルのアレは何とかならないか?〕」

「〔儂に聞かれてものう〕」

「〔何とかして矯正出来れば……うぅむ〕」

 

 顎に手をやりウンウンと悩み考える。

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「〔長い時間をかけてこの活動の理由と意味をこんこんと言い聞かせるしかないか〕」

「〔それくらいしか出来る事はないが、正しく理解出来るかは別問題じゃな〕」

「〔はぁ………連れてくる子を間違えたか〕」

「〔やもしれんが他のも大概じゃろうて〕」

「〔うっ、むう。やっぱりナーベラルが最善だよな〕」

「〔ユリ・アルファとやらでも良かったかもしれんが、アヤツに付いていかせたからのう。あの者以外におらんの〕」

「〔だよなぁ……はぁ。逆だったらどうなっていたんだろうな〕」

「〔フム、アヤツの事だ、早々に無理だと判断し何もさせずにしていた(切り捨てた)やもしれんな〕」

「〔看板か〕」

「〔あくまでその可能性が高いというだけじゃ、重く考えんでも良かろうて〕」

「〔まだ俺の方で良かったのか〕」

「〔多分の〕」

 

 2人の密談を見て自分は今までどれ程の迷惑をかけていたのかを思い返し、自分は用済みと言われるのではないか。と、思考が巡りどうすれば良いのか、これ以上迷惑をかけない方法は有るのかを逡巡し、辿り着いた答えは……死、ここで死んだ事にする事だった。

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「〔あ、アインズ様。私はここで死んだ事にしていただきたくございます。これ以上アインズ様にご迷惑をおかけしたくございません。

 もし駄目でしたら自らこの命を以て償わせていただきたく存じ上げます〕」

 だから何故そうなるんだ。

 

 イグヴァルジ達に聞こえない様に小声でモモンガに吸血鬼との戦闘で死んだ事にして欲しいと告げた。

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「〔……何故そう思い至った〕」

「〔私はこれまで数多くの失態を致しました。あの薬師の下等生物(ミジンコ)の時もそうでした。

 私がアルベド様の名前を言わなければ気づかれずに済んでいました〕」

 まあそれは確かに。ナーベラルがアルベドの名前を出さなければモモン=アインズであると気づかれずに済んだだろう。

 だが失敗は誰にでも有ること、たった一度の失敗で切り捨てるのは避けたい。

 

「〔私はアインズ様の荷物でしかありません、オルト様がお造りになられたクヴァール様とお2人の方が事を上手く運べると思い至りました」

 うっ……確かにナーベラルの言う通り俺とクヴァールだけの方が上手くいくだろう。だからと言ってここでナーベラルを死んだ事にはーー

 

「〔それも、良いかもしれんのう〕」

「〔クヴァール!?〕」

「〔儂とモモンガ殿の2人であればこれ以上周囲に気づかれずに済むやもしれん。それに〕」

「〔それに。何だ〕」

 

 僅かに怒気を孕んだ声色でクヴァールに詰め寄る。

 ━

「〔そう怒るでない。その方が都合が良いかもしれんのだ〕」

「〔何だと?〕」

「〔強力な吸血鬼との戦闘で誰一人犠牲者が出ない。と言うのもおかしな話だ、誰か1人、欲を言えばもう2人程欲しいところじゃな〕」

 ……確かにクヴァールの言う通りだ、第3位階魔法を使える吸血鬼。冒険者組合は吸血鬼(シャルティア)の事をかなり高く見繕っていた。

 しかも現れたのは兄と名乗る情報より強い吸血鬼。なのに誰一人として死者が出なかった、と言う事があり得んのも分かる……どうする………犠牲者ならアイツら(クラルグラ)の誰かを殺す、それでも良い。

 だが……このままナーベラルを連れ歩き、また不用意な事を言われるのも避けたい。

 どうする鈴木悟……考えろ、考えて最善の答えを導き出せ。

 ……こんな時、オルトさんならどうする、先にクヴァールが言った通りの事をするのか……それとも時間をかけて矯正するのか、分からない。

 分からないがナーベラルが言う通りナーベラルを含めた数人を死んだ事の方が比較的良い答えだろう。

 オルトさん……

「モモンガくん。確かに最善(ベスト)な結果を得られるのであれば当然ソレが望ましい。

 でもね常に最善(ベスト)な状況で、最善(ベスト)な結果を得られる訳じゃない。

 時には最善(ベスト)な選択ではなく、比較的良い(ベターな)選択の方が後々良い結果を齎す時も有る。

 モモンガくん、これは老人のくだらない老婆心だ、記憶の片隅にでも覚えてくれればそれで良い」だったか。ベストより、ベター……か

 

「〔悩んでおるようじゃな〕」

「〔当たり前だろ! こんな事を軽々しく決められる訳がない〕」

「〔ならばどうする、このまま帰るか? これではアヤツが考えたオヌシをより高いランクの冒険者にする……と言う企てが上手く運ばんかもしれん。

 のうモモンガ殿よ、上に立つ者は時には酷な決断を強いられるのが宿命だ〕」

「〔……だが、記憶はどうする〕」

「〔書き換えれば良かろうて、儂にはアヤツから渡されたワールドアイテム(WI)がある。アレを使えば多少の無理は出来ようて〕」

「〔使用限度無しで連続使用可能なMP回復のWIか〕」

 本当にデタラメだな。

 

「〔アインズ様。どうかご決断を〕」

「〔………そう、だな。その方が冒険者組合に話した時に、戦った吸血鬼がどれ程強かったのかを示せる〕」

「〔答えは出たか?〕」

「〔ベストよりベターだ〕」

「〔そうか〕」

「〔クヴァール、頼めるか〕」

「〔任せよ〕」

「〔ご英断にござます。アインズ様〕」

 ……これが……今出来る1番いい(次善の)選択だ。

 

 モモンガ達が内密に話し合い、モモンガ出した答えを遂行するためにクヴァールが動く。

 ━

ゾルトラーク(人を殺す魔法)

 

 魔光一閃。クラルグラの1人の腹部が消し飛び死ぬ。

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「な! てめぇ何しやがる!!」

「済まんのう、此方の事情で悪いんじゃが、もう1人程死んで貰う」

「とうとう正体を現しーー」

「お前さんが良いのう。何せリーダーじゃからな」

 

 そしてもう一閃、魔光が煌めくと今度はイグヴァルジの頭が吹き飛んだ。

 ━

「え、あ。ひ、あああ!」

「逃がさんよ。じゃが安心せい、お前さんは殺さんからな。ソルガニール(見た者を拘束する魔法)

 

 その言葉と共に逃げた1人の体の周りに円上の光が2つクロスするように現れ、逃げようとした男の行動を封じる。

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「や、やめてくれ! だ、誰にも言わない。だから殺さないでくれ」

「先にも言ったが殺さんよ、お前さんは証人じゃからな。記憶操作(コントロール・アムネジア)

 

 生き残した1人の頭に手を当て魔法を唱え、記憶を弄る。

 ━

「むぅ、魔力の消費が激しいのぅ。割に合わんぞ」

 

 記憶を弄りながら愚痴を溢す。

 ━

「ナーベラルよ」

「はい」

「今、この時を以て供の任を解く。お前は急ぎナザリックに戻り通常業務をせよ」

「畏まりました」

 ……ふぅ、最善策ではないが次善策だ。

 

「アインズ様。この数日間。まさしく夢のような日々でした、そして私の至らない行動により多大なご迷惑をおかけし、申し訳ございません」

「良い赦す。業務に励め」

「ハッ!!」

 

 モモンガが完璧なる戦士(パーフェクト・ウォリアー)を解き、転移門(ゲート)を使う。

 ━

「アインズ様。では、失礼致します」

 

 ナーベラルは転移門(ゲート)を通りナザリックに帰還する。

 ━

「此方は終わったぞ。して、あの者は帰ったか」

「ああ」

「良く決断した」

「これで……良かったんだよなクヴァール」

「最善策ではないかもしれんが、儂らにとって良い結果になるやもしれんぞ」

「そう、だな。これは次善策だ、最善策ではない。

 ではないが、今回の仕事(依頼)において死者が出ないのはおかしい。これで良い」

「そうじゃな」

 

 辛い選択を強いられ決断をしなければならないこの状況。ギルド:アインズ・ウール・ゴウンの長として、そして冒険者モモンとしてこれから先の事を考え行動しなければならないという責任。

 これを背負い、呑み込まなければ活動は出来ない。

 ━

「アレらの死体はナザリックに持っていく。何かに使えるかもしれんからな」

「それが良かろう。ハサンよ誰か居るかのう」

「静寂のティルネ。此処に」

「彼処に有る死体2つをナザリックに持っていってくれるかの」

「お任せを」

 

 そう言いイグヴァルジとクラルグラの1人を抱え、まだ開いていた転移門(ゲート)を使いナザリックに行く。

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「クヴァール……」

「なんじゃ」

「……凱旋と行こう」

「そうじゃな。ああそうじゃ折角じゃ」

「何か思い付いたのか」

「ウム、此処の景色を少しばかり変えようと思うてな」

 

 唐突な発言だったが、すぐに意味を理解し行動に出る。

 ━

「それは良いな。ではこうしよう」

超位魔法!! 

失墜する天空(フォールンダウン)!! 

 

 発動準備時間が終わり、驚異的な、そして超強力な魔法が発動すると、目の前の景色が一瞬にして変貌する。

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「おぉう、何とも盛大じゃのう」

「でなければ超位魔法と呼ばれんさ」

「儂らも大概じゃが、オヌシらプレイヤーは輪をかけて大概じゃな」

「俺よりオルトさんの方がもっとだろ」

「そうじゃったな、アヤツは全部が全部デタラメじゃからな」

 

 2人して取り止めのない話をしながら変わり果てた大地を背にし、生かしたクラルグラの1人を担ぎ上げエ・ランテルへと帰る。

 モモンガにとって、今回の出来事で払った代償は途轍もなく大きかった。

 ━




 ああ、やっぱり今回(二次で)駄目だった(死んでしまった)よ。イグヴァルジ、運命とは残酷だな。

━━
 まさかまさかのナーベラル・ガンマの離脱。優秀な(気楽な)クヴァールが居るから仕方ないのかもしれない。
 ナザリックに戻ったナーベラル・ガンマはどうなるのか、アルベドやデミウルゴスが騒ぎそうですね。
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