星雲からの使者   作:完全にわかのバカ野郎

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 ナーベラルがいなくなった事でどう変わるのか。


四十一話

「見ろ、漆黒の2人だ。漆黒の英雄と賢老ルヴァンだ」

「アレだろ、今回の吸血鬼(ヴァンパイア)事件で美姫を亡くしたんだろ? 心穏やかじゃないだろうな」

「話では前情報と違う銀髪の吸血鬼じゃなくて、金髪の吸血鬼だったみたいだぞ、しかもクラルグラの奴が言うには銀髪の吸血鬼の兄だって言ったらいぜ」

「その金髪の吸血鬼がそれだけ強ぇ吸血鬼だったんだな。何せ美姫ナーベは第3位階魔法を使えるんだぜ? そんな魔法詠唱者(マジック・キャスター)が殺されるって……どんな奴なんだよ」

「クラルグラの奴らもアイツを残して死んだみたいだし、イグヴァルジは……まぁ、あんな性格だけどいい奴ではあったしな」

「本当に惜しい人達を亡くしたよな。言動はアレだけど実力は確かだったからな」

 

 ザワザワと組合に居る冒険者達が思い思い喋っている中、モモンガとクヴァールは受付に向かい「今は喪に服したい。我々への依頼が有っても断らせて欲しい」と告げる。

 その言葉を聞き受付嬢は「分かりました。暫くの間、お2人への依頼は此方で処理致します」と返す。

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「ああ頼んだ」

「済まんの我が儘を言って。流石に今は休みたいんじゃ」

「はい。分かっております。謹んでご冥福をお祈りします」

「ではの」

 

 受付嬢と話し合いが終わると2人は組合を出て行こうとした時、1つの冒険者パーティーが声をかけてきた。

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「あ、その……モモンさん……」

「ん? あぁ君達か」

「その……えっと……」

「済まないが、今は話したくないんだ」

「あ……」

 

 それだけ言うとモモンガは組合を出ていき、残ったクヴァールが「済まんのう、今回の事は流石に儂らも堪えてのう。暫くの間そっとしておいてはくれんかの。

 何、すぐに戻ってくるでな儂らは冒険者じゃからな」と漆黒の剣達に言ってモモンガの後を追う。

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「モモンさん……」

「今はそっとしておいてやろうぜ、仲間が死んだんだ。俺達に出来る事は待っているだけだ」

「そうであるな、我々は戻ってくるのを待つのである」

「ナーベちゃんとはもっと依頼をしたかったなぁ」

「それはモモンさんの方が強く思ってるさ」

「そうだな、冒険者稼業してりゃ仲間を喪うのはよくあることだ。でも……堪えるよな」

 

 彼らはモモン達が戻ってくるのを祈る事しか出来ない事に歯痒さと悔しさが混ざった感情を拭う事が出来なかった。

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「なぁ今の、見えたか」

「鎧のキズだろ? 見た見た。スゲぇなあのキズ」

「あのキズ、直さないらしいな」

「自分の弱さを忘れないように戒めのために残したって話らしいぜ」

「美姫の事か……仲間を喪ったんだもんな。その事を忘れねぇように残すんだよな」

「義理堅い人だぜ全くよ」

 

 時折混ざる事実からどんどん尾びれが付き、膨れ上がった各冒険者達の想像(妄想)からくる話は漆黒の英雄モモンの英雄譚として語り継がれる。

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「それにしてもよ、どんな武器使ったらあんなキズが出来るんだよ」

「クラルグラのアイツが言うには吸血鬼が使っていた白い大剣(グレートソード)らしいぜ」

「あの大剣、魔術師組合のテオ・ラケシルが調べたら、ぶっ倒れる程とんでもねぇ代物だって話らしいな」

「ああソレ俺も聞いたよ。そんだけスゲぇ武器を漆黒の英雄の強さを認めて、しかも再戦のためにあのグレートソードを渡して、どこかに行ったって聞いたが……まだ近くに出てくるかもしれねぇのか」

「怖ぇ事言うなよ。でもアレだろ? 吸血鬼の方も死に際で命からがらって聞いたがどうなんだ?」

「さぁな。1つ分かるのは生き延びたクラルグラのアイツが冒険者を辞めるくらいには凄絶で、辞めたくなる程の化け物だって事だな」

 

 冒険者達が語る彼らの英雄譚は止まることを知らず、彼らがいなくなっても暫くの間話され続けた。

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「ふぅ、此処なら誰にも聞かれんよな」

「安心せい、結界を張っておる。外には漏れんよ」

「相変わらず手が早いな」

 

 少しの沈黙の後モモンガが「アダマンタイト級になったのは良いが、どうしたものか」とぼやく。

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「そうじゃのう。暫くはおとなしくしておく方が良かろうな」

「だよな」

 ……確かにクヴァールの方が気楽で良い。こういうのでいいんだよ、こういうので。……ソレを考えればナーベラルを戻したのはある意味正解か、それに周りの奴らも予想通りの反応だった。

 それに、冒険者の活動を少しの間やらなくてもいい都合が出来た、ナザリックに戻って守護者達と情報共有でもするか。

 

「それでモモンガ殿よ、これからどうするんじゃ」

「一先ずナザリックに戻る。そこで情報共有でもするさ」

「そうか、その間儂は此処に残っておこうかの」

「そうだな、幾ら依頼を止めておくように言っても組合から誰かくるかもしれんしな」

 

 宿に泊まっているのに誰も居なかったら当然『何故居ないのか』と疑問に思われる。モモンガがナザリックに戻るならクヴァールが宿に居り、対応すれば猜疑心も無くなるためこの判断は正しいモノだ。

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「後は頼んだぞクヴァール」

「任せておけ、儂は儂で、のらりくらりさせてもらうでな」

「はは、そうか」

 

 端的に返し転移門(ゲート)を使いナザリックへ帰る。

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「さて、何をしようかのう」

「【おや、お1人のようですなクヴァール殿】」

「なんじゃ、お前さんか。何か用でもあるのか」

「【活動資金がいるのかを、お聞きにきた次第にございますれば】」

「ああそうじゃのう……少し、融通してくれんか。無くはないが些か少ないのでな」

「【では、その様に】」

「相も変わらず胡乱な男よな」

 

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「いやー愉しかった。ああいった事もたまにするには良いね。晴れやかな気分だ」

「それはそれは、何よりだよ主殿(マスター)

 

 今回のマッチポンプはモモンガとオルト(吸血鬼)の思い通り、モモンガ達の階級をアダマンタイト級にする事に成功した。

 しかしその引き換えにナーベラル・ガンマをナザリックに帰した事もクヴァールから聞き及んでいたため「まぁ聞くか限りじゃ仕方ないか」と感じていた。

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「やぁエミヤ何か変わった事は有るかな」

「特段変わった事は無いが、強いて言うならあの少女……確かアルシェ? だったか彼女の計らいで帝都に行く事になったな」

「それは重畳。で? いつ行くの」

「明日だ、今日でも良かったが君が帰ってくるのが遅かったからね、明日にしてもらったのさ」

「あはは、モモンガくんとの戦いが愉しくってね、長引いちゃった。ごめんよ」

「君の自由気ままは今に始まった事じゃない、構わんさ」

 

 アルシェを通じて帝都に行き観光がてらフールーダなるものに会うことを楽しみでワクワクが止まらなかった。

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「ほー。ほほー。中々に凄いね。やっぱり帝都って言うだけはあるね」

「此処が帝都『アーウィンタール』です。

 帝都には帝国魔法学院を初めとした様々な施設・機関が有ります」

「ふーん」

 

 さして興味がないのか、話し半分で聞き流し馬車の中からポツリと言葉を漏らす。

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「……臭いな、肉が腐った臭いだ。見た目からして綺麗そうだけど実際はそう言った場所もあるんじゃない?」

「!?」

 

 その発言に反応したのは半森妖精(ハーフエルフ)のイミーナだった。

 理由は言わずもがなそれはーー

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「此処には……帝都には奴隷市場があるの」

「確かに、見た目にはそぐわない場所だな。だが何故君がそんな顔をする」

「………奴隷の大半が森妖精(エルフ)半森妖精(ハーフエルフ)だからよ」

 

 奴隷、森妖精(エルフ)。ソレを聞きピクリとオルトが反応し、不快感を露にする。

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「へぇ……それはちょっと、いただけないなぁ……うん、気にくわない」

 

 ソレを見て優しい表情をしながら「やはり変わったな。最も、好ましい変化だな」とエミヤシロウは聞こえ無いようにボソリと呟いた。

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「んー、ソコ潰そうか。ああ折角だ、森妖精(エルフ)の奴隷全員解放させようか、うんそうしよう」

「良いのかね? そんな事をして国に目を付けられるかめしれんぞ」

「その時はその時さ、一緒に潰せばいい。この広さ程度なら、そうだな……2日もあれば更地に出来る」

「そうならないよう何処かの神にでも祈っておくよ」

 

 物騒な事を淡々と事も無げに話し合う2人を見て怖気に襲われ、本気でやるんだと思うフォーサイト達が居た。

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「ふーん、綺麗だね。それに警備も万全だ」

 

 清掃の行き届いた中央道路とソコに居る多くの騎士たちが警邏している光景を見て、それなりの評価をする。

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「アレが何か教えて欲しいんだが、構わないかな」

「ん? あぁ、あれは闘技場だな。庶民の最大の娯楽の1つで、人気の高い観光スポットだな」

「ほぅ、闘技場か」

「成る程! つまりどれだけでも首を斬っても良い場所なのですね!」

「……シャナは出禁ね」

「なんとぉお。な、何故ですか主殿!!」

「なんか面倒くさくなりそうだし、()首とか要らないし。あぁでも、()が良いよって言ったらやってもいいかな」

「分かりました!!」

 

 元気な声でハキハキと物騒な事を言ってのける牛若丸と、さっきソレ以上物騒な事を言ったオルトが宥める光景は、何とも奇妙なモノだった。

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「……アレ、何」

 

 誰よりも早くあるものを見つけイミーナに聞く。

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「! ……アイツはエルヤー・ウズルス、天武って言う請負人(ワーカー)チームよ。

 チームを名乗ってるけど見ての通り、3人の森妖精(エルフ)を奴隷として引き連れて使っているのよ」

「聞いた話だが、エルフ達に補助系(バフ)を使わせてるらしいな」

「エルフの助けがないと戦えないくせに威張っているのよ」

「ふぅん………気に入らないなぁ、アレ。あぁ反吐が出る」

 

 話していると渦中の人物、エルヤー・ウズルスが近づいてきた。

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「おや? フォーサイトの方々じゃないか、元気そうで何よりだ。ソレで? その森妖精(エルフ)は友達かな」

「あぁ、友達で仕事仲間兼アルシェの師匠(・・)だ」

 

 アルシェの師匠と聞き目尻をピクリとさせるがその人物を見て嘲笑を浮かべながら「エルフが師匠か、それは面白い事もあるものだな」と蔑むように言う。

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「………うん、気にくわないねお前。殺そうか」

「待った待った待った。此処で騒ぎを起こさねぇでくれよ。警邏中の騎士がすっ飛んでくる」

「分かってるよそれくらい。………ねぇアルシェ」

「何でしょうか」

「彼処って、誰でも使えるの?」

 

 指をさした先に有ったのは闘技場だった。

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「え、えぇと……どうなんでしょう。私は行った事が無いので詳しく知らないんです」

「じゃあ詳しい奴連れてきてよ。ちょっと……我慢出来ないかな」

 

 その言葉を裏付けるようにオルトからは凄まじい怒気と殺意が溢れていた。しかし、ソレに気づかない馬鹿が1人居た、それはエルヤー・ウズルスその人だった。

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「あ、イイヤ。そんなまどろっこしい事せずに直接彼処に行って聞けばいいだけか、そのゴミ連れてきてよ」

 

 そう言い残し闘技場に向かうが……。

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「ゴミ? それは私の事を言っているのか?」

「君しかいないじゃんゴミ」

「この私に対してゴミ等と……エルフ風情がほざくなよ」

 

 怒りを露にし下に見ているエルフであるオルトに食って掛かる。

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「へぇ、その割にはエルフが居ないと戦えないんだろ? ならゴミじゃないか」

「貴様ぁ! 殺されたいのか」

「イイヤ……()が殺したいのさ、君みたいなゴミをね。だから彼処に行きたいのさ、ゴミを合法的に捨てられる(殺せる)ならね」

 

 一触即発の気配……否、そう思っているのはエルヤー・ウズルスただ1人。フォーサイト達はオルトの強さを身をもって知っている、故にエルヤーに対して「実力差も分からねぇとか莫迦だな」としか思っておらず、エルヤー・ウズルスの後ろに居る耳を切られたエルフ達はオルトが持つ在るもの(・・・・)を見て期待していた。

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「トール」

「うん? 何」

 

 闘技場の方から出てきたイミーナがオルトに声をかける。

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「確認をとってきたわ」

「仕事が早いね、それで?」

「出来るらしいわ」

「それは良いね。ゴミ、付いてきなよ丁寧に遊んで(殺して)あげるよ」

「此方の台詞だ」

 

 2人を先頭に全員が闘技場に向かう時イミーナが「アレどうするの?」とヘッケランに聞き「なるようにしかならねぇんじゃね?」とあっけらかんと答え「まぁそうよね。私としてはあのクズが死んでも困らないけど」と吐き捨てた。

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「それと感謝したいね、この場を設けてくれた人に」

「甚だ不愉快だがその意見には同意だ、貴様のような下等生物を合法的に殺せるのだからな」

「下等生物ねぇ、その下等生物に助けられないと戦えないのに良く言えたモノだ」

「それは違うな、アレらはただの道具だ。道具は正しく使ってこそ道具として意味がある」

「道具……ねぇ。本当、反吐が出るね君」

「貴様も身の程知らずだ、私相手に1人で戦うとはな」

「ハンデだよ、ハンデ。君、弱いし」

「私が弱いだと! 巫山戯た事を。その選択、後悔させてやろう」

 

 お互いが嫌悪感を隠さず露にし蔑む言葉を言い合う。

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「んー……そうだね、先ずは()の要求を言おう。何、難しい事じゃない。

 その子達を解放しろ、それが()の要求……イヤ、()が勝った時の報酬だ。

 そして、万が一にでも()が負けたら……君の奴隷になってあげよう。奴隷が1人増えるんだ、君としても悪くない提案だろう?」

 

 それを聞いたエルフの奴隷達は驚愕し、オルトにだけ見えるように首を横に振り続ける。

 彼女達はエルヤーの強さを知っているが、例えアレが有ってもオルトの強さを知らないが故の行動、懇願だった。

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「それは良い提案だ。丁度もう1人奴隷が欲しいとこだったからね。

 その提案、ありがたく受け取ろう。お前をこれから躾られると思うと喜びで身震いする」

「はは。ゴミ風情がもう勝った気でいるとはね、とんだお花畑だな、井の中の蛙」

 

 会話が終わり審判役が舞台の中央に立ち2人に確認して試合の火蓋が切られる。

 ━




 ナーベを喪い傷心中だと思われているモモンガくん達、そのお陰で自由になったこの状況を利用し、1度ナザリックに帰る模様。
 モモンガくんは多分原作通りの事をしてる。そしてオルトくんは百貌を通じて知ってるけど何もしない、多分。
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