星雲からの使者   作:完全にわかのバカ野郎

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 エルフの体であるが故にエルフへの『優しさ』からくるエルヤー・ウズルスへの不快感と嫌悪感。多分ヤベー事になる。


四十二話

「先手は譲ってあげるよ、ゴミ」

「いちいち癪に障る下等生物が、その選択後悔するぞ。能力向上、縮地改」

 

 武技を使いスライドするように移動し、武技『斬撃』を使う。

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「フン。口程にもない」

 

 武技が完全に決まり目を閉じ、既に勝負は決まったと言わんばかりに剣を納めようとするが、剣は微動だにしなかった。

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「!?」

 

 目を見開き前を見る。するとソコには剣を摘まんだオルトがいた。

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「遅いね、遅すぎて欠伸が出ちゃうよ」

 

 剣を離し「他には何か無いの? 武技を使ってよ」と本気で問い掛ける。

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「クッ、貴様……何をした」

「何をって……摘まんだだけだよ、余りにも遅かったからね。ほら、早くきなよ()を退屈させないように」

「チッ! おい! お前達! 早く補助系(バフ)を使え!!」

 

 後ろに居る森妖精(エルフ)達に怒声と共にバフ魔法を使うように命令する。

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下位(レッサー・)敏捷力増大(デクスタリティ)下位(レッサー・)筋力増大(ストレングス)

 下位(レッサー・)硬化(ハードニング)加速(ヘイスト)

 

 怯えながらも命令通りバフ魔法をエルヤーに使う。

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「これでもまだ余裕でいられるか!」

 

 武技『縮地改』を使いさっきと同じように動き更に『能力超向上』を重ねて使い、より強力な『斬撃』を砂煙が出る程地面に近い場所から胴を断つ一撃を放つ。

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「ふ、ふははは! 余裕をこいているからそうなるんだ! だが困ったな、折角新しい奴隷が増えるとこだったが……殺してしまっては意味がーー!?」

「ん? 何かした?」

 

 砂煙が晴れたそこには目を疑う光景があった。それは……エルヤー・ウズルスの剣がオルトの横腹に当たり止まっていたからだ。

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「バフを使ってもその程度? 本当に弱いねお前」

 

 すぐさま『縮地改』を使い距離を取り剣を構える。

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「(あり得ない、あり得て良い筈がない!! そうだ、武技を使ったに違いない)空斬!!」

 

 剣を振り抜き斬撃を飛ばす。しかしその攻撃は指で弾かれてしまった。

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「は? ……な、何をした! 今何をした!!」

「したとしても言う訳無いでしょ、馬鹿かい(ゴミ)

「クッ! お前達! 魔法だ! 魔法アイツに使え!!」

 

 怯え、迷うが逆らう気力が無い彼女達は言われるがままに様々な攻撃魔法を使う。

 だが、魔法も彼には届かなかった。

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「見るに堪えない酷さだ。もういい飽きた、だから終わらせよう、そしてただ死ね。雷の(フルグル・)大槍(マグナハスタム)

 

 魔法(奇跡)を唱えると天空から一筋の雷がオルトの手に落ち、大きな槍へと変わる。この時3人のエルフに「しゃがみなさい」と言い、しゃがんだのを見て雷の大槍を放つ。

 エルヤー・ウズルスはオルトの言葉が聞こえていたにも関わらず意地からか剣を構え、オルト目掛け走りだそうとしたその時、腹部に薄皮一枚残して風穴が空く。

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「あ?」

 

 呟きと共に大量の血を吐き出し、膝から崩れ落ちる。

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「その程度で意気がっていたとはね、本当に井の中の蛙だ。

 でも、ゴミには相応しい最後……イヤ、ゴミはゴミ箱へ。これだけでは足りないな。

 死者の活性(アクティヴェイション・モルトォルム)

 

 突如、エルヤー・ウズルスの死体が膨れ上がり爆発する。

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「んー、少しは気が晴れたかな。君達、こっちにおいでその耳、治してあげるから」

 

 自分達を道具のように扱ってきたエルヤーが塵1つ無くなり喜びで舞い上がり、オルトの声に立ち上がり、引き寄せられるように走って向かう。

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「何とも残酷な事をするものだ。

 治癒の涙(サナティオニス・ラクリマエ)

 

 それはまさしく奇跡だった。3人の切り落とされていた耳が瞬く間に治ったのだ。

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「うん、これでよし。それでどうする? ()にーー」

 

 異口同音に3人のエルフ達は「一生付いていきます!!」と告げる。

 その発言に少々面食らったが「ああうん、まあ君達がそう言うならそうしなよ」と優しく返した。

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「変わったな。本当に嬉しい変化だ」

「? 主殿は主殿です」

 

 牛若丸をじっと見て「君は相変わらずだな」とタメ息を吐きながら肩を竦める。

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 少し時間は遡り、闘技場で冒険者と請負人(ワーカー)戦闘(殺し合い)が有ると聞き駆けつけ、皇帝専用の観覧席で見ていた『帝国皇帝:ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス』とその後ろで同じように見ていた、『主席宮廷魔術師:フールーダ・パラダイン』。

 ジルクニフはほんの一瞬で終わった事に驚き、フールーダは自身のタレントで舞台に居る冒険者が持つ圧倒的な魔力を目の当たりにし興奮で震えていた。

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「爺、アレは何だ。おい爺。何をしている、何か言……え」

「お、おおお!! あの御方は神の! 否否否! あの御方こそが神そのもの!! こうしては居られん。

 すぐに神のお側へ行かなくては!」

「待て! 爺!! どう言う事だ! 説明をしてくれ!!」

「あの御方の魔力は私以上!! 即ち!! 私以上の魔法詠唱者(マジック・キャスター)!! ジル! 何としてでもあの御方をこの国に留めるのです!」

「(爺以上の魔法詠唱者(マジック・キャスター)? そんな事があり得るのか……爺は第6位階魔法を使えるんだぞ。

 だが爺のタレントが間違う筈がない、となるとやはり……)良し、行くぞ。何をしてでも接触する」

「その意気です! さあ! 行きましょうぞ」

 

 

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「お待ちくだされ! 神よ!!」

「ん? 何あれ、神って何」

 

 試合(ゴミ掃除)が終わり闘技場から出ようとするオルトの元に、まるで『逃がさない』とでも言わんばかりに歳に見合わぬ速度で駆け寄ってくる。

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「!? ………フールーダ……先生です」

「アレが君が言ってた奴か」

「おお! やはり貴方様は!」

 

 オルトを見て膝をつき手を掲げ崇める。

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「コレが?」

「えぇと、はい。フールーダ先生も私と同じタレントなのでトールさんの魔力量を見たんだと思います。それで……」

「この反応かね、既視感のある反応だな」

「え~。スッゴい嫌なんだけど」

 

 知っている対応のされ方に心底嫌そうな顔をし、思いっきり顔を顰める。

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「あ、あなた様のお名前をお聞かせーー」

「トール。()は冒険者のトールだよ。じゃあね」

 

 会いたかった相手ではあるが、ここまでの反応をされて嫌気がさし、足早にこの場から去ろうとするもオルトの前にとある人物が立ちはだかる。

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「今度は誰」

 

 言葉短く端的に見知らぬ人物に問い掛ける。その問い掛けに答えたのはフォーサイトの1人で元貴族のアルシェだった。

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「鮮血帝……ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス……様です」

「へー、王様がこんな処に来るんだ」

「フールーダ先生は帝国魔法学院の講師をしていますが、同時に主席宮廷魔術師でもあるんです」

「ふーん。だから王様が居てもおかしく無いと、何か嫌な予感がするんだけど。シェロ逃げていい?」

「諦めたまえ、自分が撒いた種だ」

 

 その言葉にムスっとした顔をする。

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「ヤダ。何もしない。

 ねぇアルシェ、こんな奴なら先に教えてよ」

「私もこんな先生は初めて見たので。いつもはもっと落ち着いてて素晴らしい方なんです。なのでその……私も驚いてます」

 

 自分が知っている姿とはかけ離れているフールーダに、驚きで顔を若干ひきつらせている。

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 こんな顔をしてるんなら事実みたいだね。えー余計に嫌なんだけど。しかも王様まで居るとか、絶対厄ネタじゃん、コレ。

 

「トール様。私めはフールーダ・パラダインと申します。魔法の極致に立つあなた様にーー」

「嫌だよ、何もしないよ」

 

 隠す事なく嫌悪感を出し、早く話を終わらせて立ち去ろうとするも、皇帝ジルクニフが待ったをかける。

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「俺はジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス。

 確かトールと言ったな、お前、俺の処に来ないか? それ相応の役職を用意しよう。どうだ、悪くない提ーー」

「ヤダよそんなの、面倒くさい。冒険者やってる時点で分かるでしょそれくらい」

「……一国の王に随分な物言いじゃないか」

「だって()君の臣下でも無ければ住民でもないし」

 

 オルトの物言いにフォーサイト達は驚きで何も言えず、茫然としていた。

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「は、ははははは!! 良いじゃないか! 気に入ったぞトール。何をしてでもお前を手に入れる」

「皇帝様よ、力ずくでやるのはオススメしない」

「ほぅ。それは何故だ」

「我々……イヤ、彼だけでこの国が滅ぶ。これは嘘ではない、純然たる事実だ」

 

 エミヤからの忠告に僅かに目尻をピクリと動かし、事実かどうかを聞こうと信頼する親代わりのフールーダに目を移す。

 しかし、目に映ったのは今も尚トールの前で跪くフールーダを見て「駄目だな、今の爺は役に立ちそうにない」と判断する。

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「(だがどうする、これ程の実力者を逃がしたくは無い………)トールよ、君が帝国に所属……イヤ、そこまでいかずとも良好な関係を築いてくれるのなら、エルフの奴隷制度を無くそう。

 君はエルフが大事なのだろう? でなければこの様な事はしない筈だ」

「………気に食わないけど、この子達(エルフ)が大切なのは事実だ。中々どうして政治が上手いね」

「この程度が出来なければ皇帝にはなれんさ」

 

 ピリピリとした場の空気、お互いが腹を探り合い落とし所を見極め合う。

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「じゃあ今すぐにこの国で奴隷にされている全てのエルフ達を解放してよ。そうすれば………そうだね、外部協力者……的な事をしてあげるよ王様」

「(良し!! 勝ち取ったぞ! ここからはじっくりと、ゆっくりと事を動かせば良い)では城に行こうじゃないか、トール」

「まあ良いか、行ってあげる。それで? 何て呼べば良いんだい? 皇帝陛下? ジルクニフ様?」

「イヤ、ジルで良い。これから長い付き合いになりそうだからな。(出来ればそのまま友人になってくれれば嬉しいが……高望みか)」

「じゃあそう呼ばせてもらうよ。長い付き合いになるかは、ジル次第かな」

 

 ある意味で勝ち取ったオルトという超ド級の存在に帝国の明るい未来、そして僅かに思った友達になって欲しいという欲求は誰にも気づかれなかった。

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「ふーん。まあそれなりかな」

 

 フォーサイトを含めたオルト一行は豪華絢爛な皇城に入り、フォーサイトはその豪華さに気圧される中、オルトは『それなり』と評価した。

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「うんまぁやっぱりそれなりだね」

 

 皇城の応接室を見てやはり辛口な評価をする。

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「〔なぁ、これがそれなりなのか?〕」

「〔そんな訳無いでしょ彼がおかしいのよ〕」

「〔もしかしたらトールさんは何処かの国に仕えていたのかもしれませんね〕」

「〔成る程、それなら頷けるな〕」

「〔あり得るかもしれません、じゃないとトールさんの強さの説明が出来ません。

 きっとフールーダ先生の様な立場にいたんじゃないかと思います〕」

 

 フォーサイト達は周りに聞こえない様に小声で話し合っていたが、オルトには全て筒抜けだった。

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 んー、宮仕えか……悪く無い設定だね。そうすれば王国で似たような事になったモモンガくんと会った時に色々と楽が出来るし……その誤解、いただこうかな。

 

 

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「済まないな、王としてそれなりな格好をせねばならなくてね」

「何、気にしないとも。それに、立場に見合った格好をするのは当たり前の事だ、非難はしないさ」

「(これ程までに気さくに話してくる人物は初めてだ、国に重用するしないの前に本当に友人になって欲しいくらいだ)さて、話し合いを始めよう。

 トール、君の要求は帝国内に居る全ての奴隷エルフの解放。これで良いな?」

「そうだね。それが目下の要求かな」

「(目下……か。だろうな、此方は国に重用したんいだ、この程度では釣り合ってない。

 他に何がある……取引材料になるもの………)ではもう1つ。何故奴隷エルフが居るのか、そしてそれの解決法も入れよう」

「へぇ、それは興味があるね」

 

 帝国皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスはオルトを得るため法国を切り捨てる。

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 エルヤー・ウズルス。腹に穴が空き更に爆発で塵1つ残らず言葉通りゴミはゴミ箱へ。世界から完全に消えた。

 自分以上のオルトくんを見て興奮しっぱなしのフールーダと、何をしてでも手に入れたいジルクニフ。
 しかしそれ以上に皇帝と知ってもオルトの対応(気さくさ)が嬉しくて友達になりたそうに此方を見ている皇帝。
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