星雲からの使者 作:完全にわかのバカ野郎
「…………道満」
この場に居ない道満の名を呼ぶと、セバスの肩から人の形をした一枚の紙がふわりと浮かび上がり、人形の紙はオルトが創ったNPCの蘆谷道満へと変わる。ソレに驚き「いつの間に……」と小声が漏れでる。
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「【お呼びですかな、
「そっちの様子はどうだ」
「【何やら騒いでおりますな、使えるだのなんだのと】」
「具体的に話せ」
「【ではその様に】」
胡乱な笑みをしながら滔々と話し出す。
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「【アレらは今、繋がりのある貴族の下を訪れ法律を盾に脅し、皆様……恐らくはセバス殿の事でしょうな。
貴殿から金を取れる。と、話しております】」
「思った通りだが、お前が言うとなんでも胡散臭く聞こえてくるな。で? いつ此処に来るか分かるか」
「【酷い謂われようですな
して、いつ頃か……でしたな。それでしたら近々、其方に行くかと】」
「全く……こういう時だけは行動が早いな」
「【アレらは犯罪組織ですからな、金の話となれば素早いのは当然かと】」
オルトの予想通り、ツアレを棄てた者達は貴族に会い、セバスから金を奪う計画を企てていた。
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「私の身勝手な行動によりナザリックに……オルト様のお手を煩わせる様な大事を起こしてしまい申し訳ございません」
オルト達の会話を聞き腰を頭を深々と下げる。
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「気にするな……と、言ったところで無理だろうが、そう思うのなら徹底的に立ち向かえ。奴らの思惑に乗りながら逆に食い潰せ」
「【よろしいので?】」
「この機会にソイツらをナザリックの下部組織……都合よく動かせる手足にすればいい。
使い物ならなければ
「【
「……イヤ、今は何もするな」
「【ではその様に。ですが、どうなさるので?】」
目を閉じ幾何かの間思考を巡らし、口を開く。
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「道満、近い内に来るんだったな」
「【恐らくは】」
「セバス、『話をした』と言ったな。その時に金銭の類いを渡したか?」
「少しではありますが、渡しました」
「そうか。となると奴らはーー」
「【『人身売買』。あぁ、正確には『奴隷売買』ですな。
アレらは『奴隷売買』を前面に出し、セバス殿を脅すかと】」
「道満、どこまで法律を知っている」
「【最低限の事は、ある程度】」
「ならこの国で奴隷売買はどうなっている」
「【無論、禁じられておりますな。
なんでも
「王女様、ねぇ……。まあ今はいいや、今考えるのはこれから来る人間共だ。先ずはソイツらの目的を明確化しようか」
道満が人間の名前を覚えたのか? あの道満が? 道満のフレーバーテキストには身内か、余程の事がない限り人間の名前を覚えないと書いたんだが……つまりはそう言う事か。
ラナー……だったか? その内会ってみるのもいいが、今はセバスの事が優先だ。
手を横に振ると空中に水晶で出来たプレートが出現する。
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「考えられるのは3つ。
1つ『脅し、金を取る』
2つ『金が無理なら貸しを作る』
3つ『奴隷売買を黙っていてやるから悪事に協力・加担しろ』……こんなところか」
「誠に……申し訳………………ございません、オルト様。この失態、命を以てーー」
この言葉に呆れたように短くため息を吐き「……いい加減止めてくれ、その手の類いの言葉は聞き飽きた。気に病むのならば今の君に出来る最大限の事をしなさい」と返す。
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「……畏まりました。私は何をすればよろしいのですか」
「そうだな……ソイツらが来た時に迎え入れてやれ、そしてこう言うんだ『主人が待っております』とな」
「それだけでよろしいのですか?」
「ソイツらにとっての誤算は
「オルト様がいらっしゃる事が誤算……なのですか?」
「奴らはセバスの主人の話をする筈だ、そして奴らは主人が居ないと高を括って強気な態度でくるはずだ。
でも、その時に
こんな屋敷に住む主人であれば法律を知っている、知っているのにそんな事はさせないはずだ。とね。
だから勇んでやって来る、そこに主人である
あー……道満。今更だが念のため聞いておこうかな」
「【なんなりと】」
「お前はどこからどこまで知っている」
「【来た時から、今まで全て】」
「まあそりゃそうだよね。だから
「それはいったいどう言う……」
「【失礼ながらセバス殿、並びにソリュシャン嬢には拙僧の符を付けておりました】」
「あぁ、監視目的で付けさせた訳じゃないから勘違いしなくていいよ、本来の目的は何かあった時の緊急離脱用に付けさせたものだからね。本来は……だけど」
その言葉を聞き、歯を噛みしめ手を強く握り込み、皮膚を裂き血が隙間から床へと落ちる。
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「……ハァ……行き過ぎた忠誠心も考えものだな。
自責の念に苛まれるのも程々しておけ、
本当に困る。何故誰も報告をしないんだ、意味が分からん。これ程の忠誠心があれば報告してもおかしく無いのに。
考えられる理由は……『お手を煩わせる』『この程度の事を報告する必要は無い』……か? そう言った細かい事こそ報告して欲しいんだが……はぁ。
此方に来て、彼らが自由意思を得たのは
上に連絡し相談すればそれ以降は上が責任を取ると言うのに………イヤ、違う……のか? 彼らはNPCだ、ソレは変わらない。
だが、此方に来て彼らは
今まで彼らは何も出来ない事が歯がゆかったのだろう、なにせユグドラシル時代の事を覚えている、それはユグドラシル時代でも彼らに自我が有った事の証だ。
自我はあるのに自分達には何も出来ないでいた、神と崇める
だからこそこの世界に来て、自由に動けるが故に暴挙……あぁ、いや暴挙とまではいかんか? まあそこは今はどうでもいいや。今重要なのは
少なくともデミウルゴスは良かれと思って
自分で考え、より良くなると思ったから動いた。
……セバスのした事も考え方、これからのやり方によってはナザリックの益になるかもしれんのか。
……そうか、彼らは……彼らは自ら何かを起こせる事が嬉しい……のか? 考え悩み、指示とは違う事をする事が。ナザリックのために自ら……自分の意思で、自分の判断で
……だとしたら頭ごなしに叱れんな、それでも事後報告は止めて欲しい事には代わり無いが。
となると『
仏頂面で何かを考え黙っていたオルトの顔はいつしか微笑みを浮かべていた。
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「で。だ、道満、コレに君が見たものを写して欲しい」
「【コレなるアイテムは如何様な物で?】」
「
それで、このアイテムは録音・録画に見たものをダビングが出来る物でね、所持者の見たものをこのアイテムにダビング出来るのさ。デメリットは数時間以内のモノしかダビング出来ない事かな。
でも、君であればソレさえ回避出来る。やれるね?」
「【あぁ、成る程。お任せを、
「(未だ断片的で情報が無い状況でこれ程の策を思い付きになられるとは……昔、私の装備を見繕っていただいていた時、一人たっち・みー様が仰っていらしたお言葉……『どれ程か細い道筋でも、どれ程限られた情報しかない状況だろうと必ず目的を果たす。だからオルト
「【おや? フム……
「どうした?」
渡されたアイテムを手の中で転がしながら「【今しがた拙僧の下にその者らが来まして、どうやら明日の
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「火点し頃……今の季節的に大体19時過ぎか。丁度いいね、夜の
道満。明日まで……イヤ、日付が変わるまでに終わらせておけよ」
「【承知致しました】」
「さて、一通りのシナリオはこれで良し、後はその場のアドリブでやろうか」
「【ああ
「そうだな、向こうで教えてくれるかい」
「【向こう?】」
「帝国だよ。一旦戻らないとね、あの擬体を置いてるとはいえ長い間離れてるからね」
「【あぁ、成る程。ではその様に致しましょう】」
「それに、複数体同時に動かすのって疲れるんだよね」
オルトは運営から様々な理由で本体、及び亜種体での行動制限を受ける代わりに、本体のフレーバーテキストに書かれている『体に見えるのは糸に繋がれ自立行動する角質・老廃物でしかなく、それは一つとは限らず、状況に応じて変わる』を持ち出し、運営に直談判し最初は一つの『体』を手に入れた。
その後、色々な屁理屈とWI『
最も、運営としても本体……
そして、この世界に来てフレーバーテキストが意味を……現実のモノとなった。それが意味するのは今のオルトは
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「【相も変わらず
「ははは、君がソレを言うのかい?」
「【拙僧のは所詮式神……
「それが主に言う言葉かい? 道満」
「【拙僧は事実を述べたまでの事、
「お言葉ですが道満様。至高の御方であらせられるオルト様にたいして怪物等とお呼びするのは無礼かと」
仰ぎ見る偉大なる神であるオルトに、そして自身の創造主にたいしてあろうことか怪物と呼ぶ道満に鋭い視線を向ける。
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「【ん? あぁ、
「いったい何を仰っているのですか」
「今はそんな事どうでもいいよ、明日の事考えてて」
「畏まりました」
「んじゃ、
「お気をつけて行ってらっしゃいませ」
その言葉と共にオルトの姿が消える。
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「【では拙僧もお暇させて頂きましょうか。あぁ、セバス殿、そしてソリュシャン嬢】」
道満から名を呼ばれ少しの沈黙の後絞り出すように「……なんでございましょう」とセバスは返答し、ソリュシャンは短く「はい」と答える。
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「【
「それは何故?」
「【あの御方が如何なる存在なのか……その理由が知れましょうぞ】」
「……道満様がそう仰るのでしたら、留意しておきます」
「【ンンンン。えぇえぇ、それがよろしいかと。(はてさて、あの御方の真なる姿を見て、如何な反応をするのか……見物ですな。あぁ、出来るのなら是非その場を、表情を肴に酒を呑みたいですな)さて、拙僧は
道満の言葉を聞き二人は敬礼し、「行ってらっしゃいませ」と言葉を掛ける。
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王国と帝国に行かせるNPC間違えたかもしない。いや、道満でも問題ないんだけど、どちらかと言えばモリアーティの方が良かった気がする。まあ内情知らないし仕方ないよネ。