星雲からの使者   作:完全にわかのバカ野郎

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 700年前にレイシフト。オバロ年表によると、カルサナス都市国家連合出来た頃?なのかな。


五十八話

「戻ったら意識の紐付けしてジルに会わせるか」

「会わせるのは早ければ早い程その後の手間が減る、可能な限り早めに済ませるといい」

「簡単に言ってくれるね、アレ疲れるんだよ?」

「どの程度疲れるのかね」

「んー、んー……囲碁打ちながら将棋を指す感じ?」

「…………なんとも分かりづらい表現だな」

「うんまあそうかもしんないけど、兎に角疲れるんだよ」

「だが、『やらない』と言う選択肢は君には無い。頑張りたまえ、(マスター)

「へーい」

 

 エミヤと軽口を叩き合いながら、外での地位、及び活動拠点の獲得の成功はした。したのだが、活動拠点となる領地を運営する為には拠点(領地)にオルトが居なければならない。

 しかし、オルトが領地に居座り続けると外での活動に支障をきたす。であればどうするか………普通のプレイヤーであれば不可能な荒業、複数のPCボディの同時運用(・・・・・・・・・・・・・)。オルトにしか出来ない芸当がこの場で活躍した。

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 ユリは後で言えばいいか。さて、と。取り敢えずジルに会いに行くか。

 

 

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「やあジル、来たよ」

「トールか、待っていたぞ。早速だが明日の事を話そうか」

 

 

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「と、言った具合いだな」

「はぁ……()としては参加したくないけど、そうはいかないから仕方ないもんね。嫌だなー」

「まあそう言うな、主役が居ない祭典なぞあり得ん」

「分かってるさ、だから参加するって言ってるじゃん」

「来ないんじゃないかと思ってたからな、ヒヤヒヤしていたよ」

「明日かー…………ああそうだジル」

「ん? まだ何か有ったか?」

「領地くれるんでしょ?」

「ああ当然だ、君は侯爵になる。ならばそれ相応のモノを手にするのは当たり前だ」

「正直要らないけどちゃんと貰うよ。で、受け取ったら領地運営しなきゃでしょ?」

「ああ、じゃないと私が困る」

「でも()は冒険者だ、領地に常に居る事も出来ないし、するつもりもない」

「ならどうするつもりでいるんだ?」

名代(みょうだい)を連れてくる、んで、ソイツに運営してもらう」

 実際は()の『体』だけど、言うとメンドクサイ事になるし、そもそも言う必要ないでしょ。

 

「名代? 居るのかそんな人物が、君は冒険者だろう?」

()にだってそれくらいの伝手(ツテ)は有るって」

「誰だ? 私としては素性が知れない者を帝国に入れるつもりは無いぞ」

「大丈夫、()の兄弟みたいな奴だよ」

「みたい? 血の繋がりは」

「直接的には無いね」

「では誰だ」

()の後継、つまるところ次世代の王様だった奴。ソイツを呼ぶんだよ」

「だった? 今は違うのか?」

()森妖精(エルフ)は長命だからね、やろうと思えば何千、何万年もの間統治出来る。

 でもね、それだと国は成長しない。だから一定期間過ぎたら王位から退くんだよ」

「……何年で変わるんだ」

「大体二千年くらいかな」

「…………充分長いと思うが、人間と森妖精(エルフ)では時間の感覚が違うのだろうな」

 

 長命種の森妖精(エルフ)と人間種では時間の受け取り方、時間の感じ方が大きく解離しているのは当然と言えば当然だ。百年も生きれば長生きの人間種と数千年生きる森妖精(エルフ)、それもオルトの森妖精(エルフ)は通常の森妖精(エルフ)とは違い、一般的に知られている森妖精(エルフ)の寿命の数十倍にも至る。

 最も、この事は森妖精(エルフ)の『体』を使い実感したオルトしか知らず、モモンガにも言っていなかった。

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「じゃあ名代は明日のパレードに連れてくるから」

「私としては今日の内に会っておきたいんだが、可能か?」

「あー、そうだねぇ……夕餉(夕食)まで待ってくれるかな。連れてくるにも時間が掛かるからね」

「夕食、か…………分かった。お互い(・・・)会わせよう」

「? お互い?」

「私にも君に会わせたい人が居てね」

「ふーん。んじゃあ夜にまた」

「あぁ、また会おう」

 会わせたい、か。後継者か? それとも王妃か………どちらにせよ、だ。

 彼は……ジルクニフは()の事を相当信頼している。でなければ子か妻を会わせるなんてしないだろうし、良いね! 順調に事が進んでる。この国を取り込むつもりはないけどそれ相応の立ち位置が有るのは喜ばしい、それも王族に近ければ近い方が尚良し、だ。

 うんうん順調順調…………順調過ぎて返って不安だな、足をすくわれないよう警戒しておくか、後は出来れば地固めもだね。ジェームズに敵になりうる貴族を調べさせるか、その後は………適当に懐柔するのもいいかな。出来なければ何故か不慮の事故が起きちゃうかもしれないけど、ああなんという不幸な事だ。

 

 

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「初めまして、()はディラシグ。彼、トールの後継者で元女王よ」

「………こ、これはこれはお初お目にかかる。私はジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス。トール同様ジルと呼んでくれて構わない。

 そしてーー」

「私はロクシーと申します」

 

 ロクシー。見た目は顔立ちはそれほどでもなく、気品にあふれているわけではないが、彼女はジルクニフの愛妾(あいしょう)で、ジルクニフ曰く『理想とする完璧な母親で、自身や実家の栄達・利益を考えず、次代の皇帝を立派に育て上げる』という無欲な願いだけ持っている稀有で傍に置くに足る人物である判断している。

 ロクシー自身も『皇帝になれなかった子に対しても母親としての愛情を与え育てる。

 その理由は自身の子は容姿が劣る可能性があるから美女との間に美しい子供を作れ。自分が立派に育ててやる』と本気で思っている。

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「…………君、妻……王妃じゃないね。誰?」

「(! 一瞥しただけで見抜いたのか!?)……彼女は私の愛妾(あいしょう)だ」

「ふーん、妾か。………君、凄いね。自分の役割りを良く理解している賢い人間()だ。

 えーと……ロクシー? だっけ? うん良いね、気に入った。そう思わないかいディラシグ」

「ええ、そうね。短命の人間にしては賢いわ。私も気に入った。

 これから(・・・・)もよろしくお願いするわ、ロクシー」

「……よろしく、お願いします。(恐ろしい。まるで心の中を見透かされているかのように感じてしまう程)」

「さてジル。どうかな、君のお眼鏡にかなったかな?」

「ああ恐ろしい程にな」

「そうか、期待を超えられて良かったよ」

「(本当に恐ろしい程にな。トールも化物だが、この女の森妖精(エルフ)も同等の化物だ)」

「…………ねぇ、ジルクニフ」

「……察しはつくが聞こう」

「この方の子を産むのはどうかしら、絶対に聡い子が産まれると思うわ」

「だ、そうだ。どう思うトール」

「別に良いんじゃない? ディラシグ、君はどうかな」

「んー、そうねぇ……面白そうね」

「ははは、冗談はよしてくれ」

「だってさ」

「あら残念」

「(ロクシーが言う通り聡い子供が産まれるだろう。だが、それ以上に恐ろしい子供が産まれるだろうな)さて、挨拶はこれで終いとして、パレードの話をしよう。打ち合わせはじゅうようだからな」

「面倒だなー」

「諦めなさいな、貴方の代わりに()が統治するのだから。

 貴方は手を振るだけで終わりでしょう?」

「へーい。仕方ないか、ちょっと頑張りますかね」

 

 

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「あ"ー、疲れたー」

「貴方何もしていないじゃない」

「ちゃんと手を振ったじゃん。やる事やったでしょ。それでさジル」

「ん? どうした」

「領地って何処に有るのさ、此処から遠いと困るんだけど」

「ああその事か、そこは安心していい。

 帝都からすぐ近くの場所に有る、領土も広いぞ」

「別に多く要らないんだけど」

「そうはいかない。君は侯爵だ、それ相応の領土を持ってもらう」

 

 侯爵の爵位は王族を除き上から二番目で、上から順に『公・侯・伯・子・男』の五段階(五爵)に分けられ、公爵に次ぐ、国境防衛などの重要な役割を担う。のだが、ジルクニフはそこまで望んではいない。

 ジルクニフにとってオルトの立ち位置は法国への牽制で、尚且つ森妖精(エルフ)を帝国の貴族にし、それも侯爵位を与えている。

 これは対外的に『帝国は森妖精(エルフ)を奴隷として扱わない』と宣言するためであり、その行為は法国との関係を完全に切るものだった。

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「うぇえ」

「貴方何もしないんだからいいじゃない」

「まあ確かに。じゃあ頑張ってディラシグ」

「はいはい」

「それで? 場所は何処」

「今から行こう、すぐにつく」

 

 

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「此処だ」

「おーでっかいね」

「此処が都、ギットゼン。帝国の最終防衛都市だ」

「つまり、何か有ったら国を守れと?」

「強制はしない。君は居るだけでいい」

「へぇ、その理由は」

「君は法国への牽制だ、これ以上森妖精(エルフ)を狩り、奴隷とするのなら我々帝国は戦争も辞さない。と言う牽制だ」

「ふーん。でもまぁ、君が『してくれ』と言えば()は喜んでするとも。何せ君は、対等な友人(・・・・・)だからね」

「…………そうか。なら、遠慮せず頼ませてもらおう。(友人……か。嬉しい事を言ってくれる。ボクに対等な友人はいない、そんな事当然だ。

 ボクは皇族の人間、友人など作ることも、作る時間も無かった。ボクは十代前半の時に即位した。

 父がクソ女(皇后)に毒殺された事が発端に即位し、そのすぐ後にクソ女(皇后)の貴族家を皇帝暗殺の容疑で潰し、兄弟たちを次々に殺した。

 クソ女(皇后)も、反対勢力の有力貴族たちを皇太子の頃に掌握した騎士団の武力を使い全員殺した。そんなボクに友人など出来る余地は……無かった。

 そんなボクに友人が、しかも対等な友人が出来た。世の中何が起きるか分からんな、だが、悪くない)」

 

「それで? 領土って何処から何処までが領土なのさ」

「そうだな、端から端まで行けば五日掛かるくらいだな」

「広すぎない?」

「妥当な広さだ。何度も言うが君は侯爵だ、その立場(爵位)に見合ったモノを持つのは当たり前だ」

「ふーん。ディラシグ、頑張ってね、たまには()も手伝うよ」

「期待しないで待っておくわ」

「まあでもリファを貸すからさ、許してるよ」

「ああメイド長の話ね、ありがたく借りるわ」

「(リファ? 確か……格闘家(グラップラー)……だったか? よく分からんが拳を使う近接戦闘員なのは確かだ。バジウッドが言うには『トール程ではないが充分化物。王国のガゼフ・ストロノーフ以上』だったな。

 そんな人物をメイド長に? なんとも贅沢な話だな)」

 

 オルト率いるパーティーの一人リファ。

 本名はユリ・アルファ。レベルは51レベル。この世界(異世界)において超人と言われているクレマンティーヌでさえ、凡そ(およそ)30レベル。

 そのクレマンティーヌを遥かに超えるユリ・アルファはこの世界基準で見れば『化物』と評されるのも頷ける。

 また、バジウッド・ペシュメルがオルトのパーティーの評価も言っていた。

 先ずはリーダーの『オルト』にたいしては『化物なんて言葉すら生ぬるい程の化物。勝負云々どころの話じゃない。敵に回せば国が滅ぶ』と評し、フールーダ・パラダインは『神の領域ではなく神そのもの』とも言っている。

 エミヤの評価は『トールに並ぶ化物。しかもコイツは桁外れの弓兵(アーチャー)、超長距離狙撃で殺される』。

 牛若丸には『シェロ同様化物。同じ剣士(セイバー)だが、勝てる訳がない』と評している。これらを総合してバジウッドは『何がなんでも、何をしてでも帝国に留めるべき。絶対に敵に回してはいけない』だった。

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 はてさてこれからどうしたものか。領地は弓兵(アーチャー)()に任せて冒険者を続ける。が、これからの事まだ考えていないんだよねー。

 取り敢えずは王国のアダマンタイト級冒険者の、確か……蒼の薔薇? だっけか。

 ソイツらに会って可能であれば友好関係を築きたい。なら目下の目標は王国に行く事か、上手くいけば楽なんだけどねぇ……どうなるかは神のみぞ知る、ってヤツかな。

 

「ねぇ、ジル」

「なんだ」

「王国に行ってくるよ」

「王国に? ……あぁ、王国のアダマンタイト級に会いに行くのか」

「うん、どんな子達なのかなーって思ってさ。

 それにアダマンタイト級になったのもその子達に会いに行くのが目的な訳だし、魔法で飛んで行けばすぐに着くしね」

「構わんさ、領地の方は彼女がするのだろう?」

「基本的にはね。確かに()はぐうたらな性格だ、だからと言って全くしない……なんて事はないよ。

 ()とて領地運営に興味あるし」

「それは良かった」

「あら、嬉しい事言ってくれるわね」

「そりゃあ、ねぇ。

 一応は一国一城の主(会社の社長)だったんだ、どんな感じなのか気になるじゃん?」

「そうね、国家運営は初めてだものね」

「(一国一城の主か。滅んだとはいえ国を治めた国王だ、領地運営め容易く出来るだろう。

 これからこの都市がどう発展するのか楽しみだな)」

「まあそう言う事で………今は頼むよディラシグ。

 ()達は王国に行ってくるね、ああそうそうリファは置いてくから後はよろしく」

「あの子には()の方から説明しておくわ」

「よろしく。じゃあ先ずは帝都に戻ろうか。念のため()に近づいて、転移魔法使うから」

「転移魔法!! トール様は転移魔法を使えるのですか!?」

 

 今まで沈黙していたフールーダ・パラダインが興奮してまた叫んでしまった。

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「だから叫ばないでよ五月蝿いな。そんな事どうでもいいからさっさと近づいて」

「ちゃんとたまには此処に来なさいよ」

「大丈夫だって三割くらい手伝うから」

「せめて四割にしなさい」

「そこまでやると冒険者家業に差し障るから駄目」

「はぁ、まあいいわ。手伝うだけマシなのかしらね」

依頼(クエスト)が無い時はそれくらいはしようかな」

「ねぇ皇帝様」

「ん? なんだ」

「アダマンタイト級の依頼(クエスト)はどれぐらい有るのかしら」

「あまり詳しくはないが……そこまで多くは無い筈だ、当然と言えば当然だな。

 アダマンタイト級の依頼(クエスト)が出るとしたら都市が滅ぶレベルの筈だ、モノによっては国が滅ぶレベル……それこそドレイクが群れをなして攻めてくるとかだな」

「ドレイク程度で都市や国が滅ぶとか弱すぎない?」

 

 ドレイクはドラゴンの下位種で、その下にワイバーンがおり、オルト達にとってドレイクもワイバーンも低レベル帯のモンスターにすぎず、カンスト(100レベル)プレイヤーからすれば脅威ですらないモンスターてしかなかった。

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「トール。()達基準で考えちゃ駄目よ」

「あー、そうだったね。どうしても癖が抜けなくてね、だってドレイクとか雑魚だし」

「ドレイクが雑魚なのは否定しないわ。でも、ドラゴンもピンキリでしょ、ピンのドラゴンなら()達でも危ないじゃない」

「それはそう。でもピンのドラゴンって居るのかな」

「さぁ、()が知る訳無いじゃない」

「そりゃそっか。てな訳で、ジル。

 ()達が脅威に感じるドラゴンって居る?」

「そう、だな。伝承で聞く八欲王とドラゴンロード(竜王)の戦闘だな。八欲王は国々を滅ぼし、最後にはドラゴン達は狩り尽くされ、滅んだ……と言われている」

「伝承? ふーん伝承ねぇ……。

 ああそうだ、この前さ、()ドラゴンの頭持った行ったじゃん? あれはどのレベル」

「それはこのフールーダがお答えいたします。

 先日のドラゴンの頭ですが、国が滅ぶレベルのモンスターにございます」

「へぇ、あれがねぇ」

「トールかまら見たらあのドラゴンはどのていどだ?」

「キリ側のドラゴン」

「あれがキリ側か。(相変わらず化物だな。もし仮に、あの頭のドラゴンが攻めてきたら帝国は滅ぶ。ギリ滅ばないのは、そうだな……若作り婆の国か? イヤ、無理そうだな。何せ今あの国はビーストマンに攻め立てられ今にも滅びそうだからな。

 ……まてよ、竜王国にトールの名代であるディラシグを……イヤ、この場合トールを俺の特使として行かせるか? それはそれで面白そうだな、考えておこう)」

 

 自分で聞いておきながら話半分でしか聞いておらず、いきなり「ま、それは帰ってから話そうか。もういいやるよ? ディラシグ、後はよろしく。

 じゃあねー」と言うや否や魔法……上位・(グレーター・)転移(テレポーテーション)発動させ、帝都に転移する。

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 老成したオルトくんの直感がロクシーを見抜く。

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 弓兵(アーチャー)森妖精(エルフ)は女性。

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 人たらしな人外オルトくんにジルクニフが落ちる。
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