星雲からの使者   作:完全にわかのバカ野郎

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 想定していた構成から少しズレてしまった、何故こうなった。キャラが勝手に走り出したのが悪い。


六十話

「さて貴方、貴方の名前……は別に良いですね。

 貴方は()執事(バトラー)であるセバスから金銭の授受……お金を受け取りましたか?」

「は、はい。『逃げろ』と仰有り、お金を渡してくださいました。そして、受け取りました」

「幾ら貰ったのか、覚えておりますか」

「交易共通白金貨です」

「スタッファン様、サキュロント様。

 お聞きしましたか? 今、彼は『受け取った』……と、言いましたが……この場合どうなるのか教えてくださいますか。

 あぁ、勿論。逃亡費用(・・・・)として渡した。と、言う事を念頭に置いた上での答えを教えていただきたく」

 

 サキュロントはあからさまに焦り男を睨み付け、スタッファンは生唾をゴクリと聞こえてきそうな程に呑んで声を絞りだそうとしているがモゴモゴと口を動かすだけで言葉らしい言葉は出てかなかった。

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「あら、何故黙るのですか? 今、貴方方にとって何か不都合な事が起きたのでしょうか。

 まさか、とは思いますが、そこな男性をご存じなのですか? もしやお二人は八本指なる犯罪者集団の事をご存じ………いいえ、まさかとは思いますが繋がり(・・・)……が有るのですか?」

「い、いや! 私は! 私は八本指などと言う連中と繋がりが有る訳ありませんとも!! そこの男も私は知らん! 見た事もない!!」

「ではお答えくださいスタッファン様。()執事(バトラー)に如何なる罪があるのかを」

 

 沈黙が場を支配する。スタッファン・ヘーウィッシュは金の事など既に頭にはなく何を言えば、どう答えれば此処から帰る事が出来るのかを必死に考え、選んだ答えはーー

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「わ、私が此処に居るのは奴隷売買があった可能性が有ると言われ来ただけなのです!! は、八本指など……犯罪者集団が絡んでいる事は知らなかったのだ!!」

「分かりました。スタッファン様の言葉を信じましょう。

 ではスタッファン様。()執事(バトラー)は罪に問われるのですか?」

「あ……う、ウム……犯罪者集団に殺されてしまう人物に金銭を渡し、逃がすように指示したとなると……犯罪から足を洗わせようとした事なりますな。

 ともすればアース様の執事(バトラー)であるそちらの方は何一つ(・・・)罪を犯してない。と、言ったところですな」

「あぁ、それは良かった。スタッファン殿、教えていただき感謝します。

 して、サキュロント様は……おや? どうされました? まさか……その男性の事、知っておられるので?」

「まさか!! 俺はそんな男なんて知らない!!」

「そうでしたか。では此度の事件……まあ()達からすれば事件ですらありませんが、お二人が言う奴隷売買は無かった……と、思っていいのですね?」

「う、ウム。アース様の執事(バトラー)である彼には奴隷売買ではありません。

 怪我をした少女を神殿まで運び、アース様の御邸宅で経過観察と共に保護していただけだすからな。

 罪などある訳がございませんとも」

「ではこのまま保護し続けてもよろしいですか?」

「こ、これからも……ですか……」

「ええだって、あの幼気(いたいけ)な少女をあの様に怪我だらけにする場所に御返しするのはちょっと……気が咎めますから。

 どれ程危険で、どれ程過酷なのかは()には分かりません。

 ()は分からないからこそ怖いのです、ですので帰してはならないと思いまして、よろしいですか? スタッファン様」

「あ、……ええそうですな、アース様の下なら安全でしょうし、その方がよろしいかと。

 店の方には私から忠告し、お伝えいたしましょう」

「感謝いたします。スタッファン様」

 

 スタッファンは呵呵大笑と言わんばかりに大声を出し、隣に座るサキュロントの背中を叩く。

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「で、では我々はこれで失礼させていただこうか」

「あら、もうお帰りで?」

「ええこれ以上お邪魔する理由がありませんので」

「そうですか、おもてなしの料理が出来た頃合いなのですが……巡回使であらせられるスタッファン様の仕事の邪魔をしては差し障りますものね。

 それではこの辺にしておきましょうか、セバス。お客様のお帰りです、玄関まで案内しなさい」

「畏まりました、奥様」

「ソリュシャン、貴女は手土産をお渡ししなさい」

「畏まりました、お母様」

「あぁ、そうそう」

「ど、どうかされましたか。(まだ何か有るのか!)」

「いえ少しばかり不穏な噂………なんでも婦人だけを狙う正体不明の連続殺人犯が居るとか……なんと恐ろしい、想像しただけで身震いがいたしますわ。

 世の中も物騒になりましたね」

「あ、ええ今衛兵と巡回使で見廻りをしているのですがこれがさっぱりで、なんとも恥ずかしい限りですな。(なんでそんな事まで知っているんだ!? この者達はここ最近王都に来たばかりだと聞いたぞ、何故知っている、どこまでの事を知っている! どうやって知れるんだこの女は!)ははは、アース様もお気をつけください」

「それと貴方、貴方にはもう用はありません。お帰りなさいな」

「わ、分かりました。失礼します」

「セバス。一応はお客人です。案内してあげなさい」

「畏まりました」

 

 セバスは三人を玄関まで送り、ソリュシャンは一度厨房まで行きナザリック料理長に作らせた手土産(料理)を渡す。

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「なんだ、折角用意したというのに、結局使わなかったな」

 

 そう呟きながら道満にやらせた取り引き現場をダビングした映像記録アイテムを手の中で転がす。

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「さて、セバス」

「はい」

「取り敢えず、(くだん)の少女を連れてきなさい」

「……畏まりました」

「別に取って食べたりしないよ。ただどんな人間()なのか見たいだけだから」

「少々お待ちください。すぐに連れて参ります」

 

 部屋を出ていくのを確認して「ソリュシャン、君から見てどんな子か教えてくれるかな」と聞き「特段変哲のない人間でした」と返答する。

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「変哲のない……ね」

 道満も同じ事言ってたな、かえって気になるな。それにしても、やっぱりセバスはたっちくんの子だね、やる事が同じだ。『誰かが困っていたら 助けるのは当たり前! 正義降臨!』だったっけ、嬉しい限りだ。………嬉しいのは嬉しいんだけど、報告くらいはして欲しかったかな。

 報告しなかった理由……あり得そうなのは『この程度の事でお手を煩わせる訳には』って感じかな? なーんでそーなるのかなー、あれだけ言ったのにさぁ、細かい事でも報告しなさいって言ったよね()。はぁ、取り敢えず明日に……イヤ、今するか、来るのは明日かもしれないけど。

 

「〖モモンガくん、今いいかな〗」

「〖オルトさん? どうかしました〗」

「〖あぁ、前に言ったヤツ。ほらコキュートスの時に後で話すって言ったヤツ〗」

「〖あー、そう言えばそんな事言ってましたね。それで何かあったんですか?〗」

「〖うん、初めから話そうか。先ずはーー〗」

 

 

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「〖と、言う事があってね〗」

「〖あー……なんと言うか、たっちさんの子らしいと言うか、やってる事は問題ないんですよね。問題なのは俺達に報告しないってところですよね〗」

「〖そうなんだよね、やった事は別にいいんだ。それどころか『あぁ、たっちくんの子だな』で終わるんだよね〗」

「〖そうなんですよね、たっちさんの子なら誰かを助けても可笑しくないんですよね〗」

「〖なんで報告しないんだろうね〗」

「〖……お手を煩わせる……的な感じですかね〗」

「〖だよね、ソレくらいしか理由ないよね〗」

「〖取り敢えずそっち行きます〗」

「〖今から?〗」

「〖時間は余裕があるので大丈夫です〗」

「〖じゃあ待ってるね〗」

 これでヨシって事で、後は拾った人間の処遇なんだけど……どうしようかね、悩みどころだ。

 

 

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「お連れしましたオル……ト様」

 

 部屋に入り目に写ったのは応接室の椅子に座るナザリック地下大墳墓ギルド長、アンデッド状態のモモンガとその隣に立つオルトが立ち、その周りには階層守護者達が取り囲んでいる。

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「アインズ……様、何故……此処に」

()か呼んだんだよ、一通りの事は終わったからね」

「セバスよ。何故我々に報告しなかった」

「そ、それは……」

「また()達のお手を煩わせる(くだらない理由)から……かい」

「も、申し訳ございませんアインズ様、オルト様。これ程までに事が大きくなるとは思っておらず、私の不徳の致すところにございます」

「セバスよ、我々は少女を拾った事を責めているのではない。我々が聞きたいのは何故『報告しなかったのか』だ。

 我々が外に出る時、オルトさんが言った筈だ『報告・連絡・相談』。これら三つを守れ、と。お前はオルトさんに気づかれるまで我々に黙っていた、それが問題なのだ。だが、これはセバスだけの問題ではない。此処に居るお前達……階層守護者全員に言える事だ、お前達は『報告・連絡・相談』の重要さを理解していない。

 故にこそ、この様な事が起きたのだ」

 

 モモンガからの問題提起を受け、頭を下げたまま「誠に申し訳ございませんでした。オルト様から言われた意味を正確に理解しておりませんでした。私は此度の事を『些末事(さまつじ)』だと自己判断し御報告を怠りました」と謝罪する。

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「ソコなのだよセバス。

 お前達は自分達が成した事の重大さ、重要さを自己判断で『報告するまでもない』。と、勝手に決めつける。

 よいかお前達、『自己判断で何か』をするなと言わん。だが、『何か』を起こした、しようとした時に我々に必ず報告しなさい。どれ程小さな、どれ程細かな事でもだ。『報告する』事こそが大事なのだ。肝に銘じよ」

 

 階層守護者全員の声が重なり返事が戻ってくるが、一部の階層守護者の声は震えていた。

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「さて、説教はここで終いだ。

 シホウツが作った料理が有る、皆で食べようか。勿論、ソコに居る少女もだ」

「わ、私……も、ですか?」

「当然だとも、君はセバスの庇護下に入った。それは即ち我々ナザリックの庇護下に入る事と同義だ、だよねモモンガくん」

「ええ、オルトさんが言う通りその少女はナザリックの庇護下に有る、であればそれ相応の処遇をするのは必然だ、先ずは食事といこう」

 

 そう言うと、外していた種族変更指輪:人間(リング・チェンジスピーシーズ:パーソン)を嵌めて人の姿になるのを見て、少女……ツアレニーニャ・ベイロンは驚愕して体が止まる。

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「ん? ああそうか、さっきまで私はアンデッドだったな。どちらが本来の姿なのか……は、また後日にでもセバスに聞くといい。それより、君な名前はなんと言う」

「あ、え、その……」

 

 モゴモゴとどもるツアレに痺れを切らしたのか、アルベドが声を出そうとするとオルトが手で制す。

 ━

「焦らなくていい、ゆっくり話していいよ」

「あ、う……つ、ツアレニーニャ・ベイロンで、す」

「ツアレニーニャ・ベイロンか、良い名前だね」

 

 良い名前、名前を誉められる経験はこれまでの半生で言われた事は無かった。

 昔、妹と暮らしていた小さな時に言われた事を思い出しポロポロと涙を溢す。

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 まあ奴隷人生の方が長かったんだろうね、有るべき筈の人間性が欠如している。常に頭を下げ事を荒立てずなされるがままに生きてきた、だから人間味のある言葉が嬉しいのだろうね。

 

「〖だ、大丈夫なんですか? 泣き始めましたよ〗」

「〖人間扱いされたのが嬉しいのだろうね〗」

「〖ああ今までは多分、奴隷扱いですもんね。そこからいきなり人間扱いされたから……オルトさん、この国大丈夫なんですかね〗」

「〖国の良し悪しは王で決まる。この国の王は底無しの愚王なんだろうね、やっぱり……間引く必要があるかもね〗」

「〖どこまで広げましょう〗」

「〖王都全域、八本指と繋がりのある連中は全排除、或いは使える者だけを残すって感じかな。まぁ、現段階では……だけどね〗」

「〖これからの調査次第、ですね〗」

「〖その辺りは道満とデミウルゴスに任せよう。今回の事で考えも改まったでしょ………多分〗」

「〖だと良いですよね、本当に〗」

「〖本当にねぇ、後は……食卓を囲んで話し合わせるのもいいかな〗」

「〖話してくれますかね、それどころか一緒にご飯食べますかね〗」

「〖…………まぁ、無理だったら命令って事で〗」

 

 

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「デミウルゴスが言うには貴族の殆どがその八本指と繋がってるみたいですね」

「で、道満。君はどこまで知ってるのか、教えてくれるかい」

「本体をお呼びになさるから何事かと思いましたが、よもや食事とは思いませんでしたな。

 してアレらの事でしたな、拙僧が把握しておりますのは貴族は勿論、司法・行政・商業その他様々な業界に息のかかった者が多数存在いたします。なんとも腐った国ですな」

「王はどこまで知っている」

「アレらが貴族らと繋がりがある事は存じ上げているようで、『良い人物ではあるが、良い王ではない』、と言ったところですかな」

「賢王ではないが、同時に愚王と言う程ではない……か」

「なんとも言えませんな、愚王なのか……と、聞かれればそれは違うと拙僧は言いましょうとも。

 ですが………と、まあ言葉に困る王ですな」

「一番面倒なタイプだな」

「あの王を評するのなら『優しさが過ぎて甘さに繋がってしまう王』と言う評価が妥当かと」

「本当に面倒な王様ですね」

()が思うに『戦乱の時代ではなく平和な時代の王なら『名君』になれる』王様だね。

 しかし残念ながら今は平和な時代ではない、だから名君……賢王にはなれない」

「本当に面倒ですね、あの計画の時に消しますか?」

「んー……まだ早いかな、ヤるならもう少し後かな。愚王……とも言えないからなんて呼ぼうか……愚でいいか、愚にはまだして欲しい事があるからね」

「分かりました。でも何か出来るんですか?」

「無いなら作ればいい。愚は愚だけどそれなりには使えるとは思うからね、無かったら……まあその時に考えようか」

「では、今は何もせずとも良い。で、宜しいのですね?」

「うん、今は監視を続けてね」

「ではその様に」

 

 少し考え「あの王女……ラナーだったっけ、上手くいってる?」と聞き「ええ万事抜かりなく、拙僧の思惑通り動いております」の言葉が返ってくる。

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「なんでしたっけ……。

 えっと……あぁ、そうだ『能力的には使える人物』ですよね」

「そうだね、能力的には使える。使えるけどアレは全てが破綻してる。

 見た目は人間でも中身は異形種だよ、見てて気持ちが悪い」

「そうですな、あの者の在り方は人間のソレではありませぬ。故にこそ、拙僧からすれば操りやすく楽ですからな。

 拙僧がしたのはアレが心から望むエサを少し、チラつかせただけで拙僧の思い通りに動いたのですから」

 

 オルト、道満共にラナー王女にたいする評価は高く、使い道はあるが積極的に関わるのなら徹底的に堕とす必要がある。と、考えており、殺すのなら確実に殺す。引き込むのなら何かしらの手段で縛る。

 オルトが考えた縛る方法としては幾つかあり、最も有効で、簡単な方法は常に傍に置いている人物をナザリックに染める事だった。

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「ま、今は夢を見ててもらおう、その後の事はその時に考えればいいしね」

「オルトさんから見て気持ち悪いですか、俺は近づかない様にします」

「ああその方がいいよ、()はアレを人類(人間)と思いたくもない」

「ははは、そこまで言われると怖いもの見たさがありますね」

「本当にやめといた方がいいよ、見てて反吐が出るモノだから」

「そんなになんですか?」

「そうですな、お優しいモモンガ殿が見れば怖気が走るでしょうな」

「(そんなにか、オルトさんもやめた方がいいって言ってるし……それに俺はそういった事(暗躍)出来ないだろうし、オルトさんと道満。後はデミウルゴスに任せるか)じゃあこの国の事はお任せします。

 俺は……アレですよね、あの計画で……上手く出来るかな、ちょっと不安です」

「大丈夫、君なら出来るよ。難しく考える必要ないからさ、気楽に気楽に。アレだよあれ、ユグドラシル時代にしてたラスボスムーブの逆の事をすればいいだけなんだから。モモンガくんなら出来るさ」

「頑張ります」

 

 あの計画。最初の発案はデミウルゴスによるもので、そこにオルトが+で追加した漆黒のモモンの更なる英雄化計画。近々、王国は地獄を見る事になる。

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 当作品だとモモンガくんはニニャとツアレの関係性をすぐには気づきません。今のモモンガくんはどこかで聞いた事があるような?程度です。
 まあ後々気づくんですが、主にクヴァールのお陰で。

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 山吹色のお菓子も渡そうかなって思ったけどやめた、なんか同じレベルまで落ちそうだし。

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 今更な説明ですがカルデアス含めその他諸々は当然ですがWIです。イベントでは原作同様に特異点やその他諸々を解決するために使われてました。そして、あれやこれやしてオルトくんが手に入れました。
ですが、イベント以外で『特異点解決』なんてモノはありませんのでぶっちゃけただの置物です。何に使ってたんですかね。
ただ、フレーバーテキストに『時間遡行で過去へと行き、歴史に介入する』と書かれているため、異世界に来た事で天使オルトのレイシフトによる過去介入が出来ました。
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