「何故だ」
「うん? 何がだい、気になる事があるなら言って欲しい僕も何かを思い出せるかもしれない。だから言って欲しい」
この世界で約300年この子は生きてきた、つまりそれだけこの世界の事を知っている事になる。できれば敵対はしたくないのが実情。
可能なら吸い上げられる情報は吸い上げたいし、十三英雄の中には翼を持った人物が居たとさっきの子が言っいてた。
イヤまあ十三英雄が何年前の連中なのかは分からないけど……ま、いずれ分かるでしょ。僕らしい奴が居るんだし、同期されるのを待つしかないかな。
「……お前とは、私が吸血鬼に成ってから少し経った時に会った」
「吸血鬼に成った、か。君からは独特な血の匂いがした、やっぱり君は元人間なんだね」
「はは、同じ事を言うんだな。
それと人間種だが少し違う、虹瞳人と言う種族だ」
「虹瞳人か。
……すまない、何も覚えていない、まだ君の事を思い出せない」
虹瞳人? ユグドラシルでは聞いた事が無い、この世界特有の種族か?
「……そうか。ならば名を名乗る必要があるな、私はキーノ……キーノ・ファスリス・インベルン。吸血鬼にさせられた」
「誰に、どうやってそんな事を?」
「竜だ、恐らくだが竜王……私はその竜王の手によって吸血鬼に成った」
「人間を吸血鬼に変える魔法……か、聞いた事が無い魔法だな」
竜王の手によって吸血鬼にされた……か。僕が知る限りではあの時の戦闘で生き残ったのは白金の竜王とか言う奴だけ、つまりあの場に居なかったって事になるけど………あの場にいた竜は竜王と呼ばれるに相応しい強さだった。
ソイツも同等の強さの筈、なのに居なかった………臆病者か、或いは彼我の差に気付き逃走を選んだか……どちらもあり得るな。
「恐らく竜王の始原の魔法だ、こんな魔法を使えるのは竜王以外に考えられない」
「始原の魔法?」
「古の魔法、魂の魔法、原始の魔法……様々な呼ばれ方をしているが、唯一分かっているのは竜王にしか使えない魔法との事だ」
「竜王だけが使える、魔法……」
んー……ああそういえば八欲王との戦いで見た事が無い魔法を使ってたな、それが始原の魔法か?
うーん、やっぱり聖天の竜王に会いに行って始原の魔法の事聞くか、同期された記録には聞いた形跡無かったし。
それにしても、古・魂・原始の魔法……ねぇ。フロムシリーズにの魔法に似てるな。
僕の職業の源流の魔術師とどこが違うのかね、気になるな………やっぱり聖天の竜王に聞いてみた方が良いな、今度にでも行こうかな。
「……君だけが被害に?」
「イヤ、私の国全体が始原の魔法の範囲内に有った、そして私だけが吸血鬼に成った、成れてしまった」
「吸血鬼に成った理由は?」
「生まれながらの異能だ」
「タレント……確か『生まれながらの異能』、だったね。君さえ良ければ君のーー」
「私の生まれながらの異能は『如何なる魔法を一つストックし、自分の魔法として発動』できる生まれながらの異能だ。
それを……正確には違うが、この生まれながらの異能を発動させ続ける事で自我有る吸血鬼でいられている。
この生まれながらの異能をもう一度使えば私は知性の無いゾンビへと成り果てるだろう、だから生まれながらの異能を使う事は二度と無い」
如何なる魔法を一つストックできる……言葉尻からしてストックした魔法は自分の意思、判断で使えると見ていいだろう。厄介な生まれながらの異能だが、現状この子は生まれながらの異能は使えない。
それなら危険度はソコまで高くないな、にしても如何なる魔法でも………か、じゃあ超位魔法もストックできるのか? フールーダに使った魔法を使えば吸血鬼から戻せる可能性も………ああイヤ待て、話を聞く限り始原の魔法とやらは超位魔法と同等か以上の魔法と考えた方がいい。
だとすると普通の魔法じゃ意味がなさそうだな、ならあのWIを使えばどうなる………種族を変えられるかもしれないけど、現段階で僕がする必要性は無いな。
………ん? 待てよ……確か天使の僕はあのWIを持ってレイシフトしたよな、どうしてアレを使わなかったんだ? 僕とは違い思い入れがある筈だ、なのに使わなかった………理由は? この時代まで生かせる為? 何故そうさせた、僕に会わせる為に使わなかった? どうして僕に会わせたかったんだ……僕なら何かするとでも思っていたのか? 記録の同期待ちだな。
「凄い生まれながらの異能だね、でもそれのせいで吸血鬼に?」
「そうだ。私は奴の『始原の魔法』を無意識の内にコピーしたんだと思う。
……そして、コピーした始原の魔法を私が無意識に使い、お母様もお父様も………そして、インベリアの民達の魂を吸収し私は吸血鬼に成り、私が他の皆をゾンビにしてしまった」
「君のせいじゃない。君は意図せず使ってしまっただけだ、君は悪くない」
オルトの『君は悪くない』の言葉を聞き「ふふ」と、どこか嬉しそうに笑っている。
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「本当に……本当に同じ事をいうのだな。
私が初めてお前と会った時に同じ様に話した、その時にお前が言った言葉は『君は悪くない』だった」
「そうか同じと言ってくれるのは嬉しいね、千態万様の僕が姿を変えると記憶が混濁する。
だからどの記憶がどの時代のなのか、どの僕なのかが分からなくなるんだ。姿を変えて遊ぶクセに混濁するもんだから困ったものだよ」
「そう、だったのか。なら何故私はお前の事を忘れていた、理由は分かるのか?」
「多分だけどその時の僕が君の記憶を少し弄ったんだろうね」
「なんでそんな事を……」
「それは分からない。分からないけど、忘れてしまえば辛く無い、寂しく無い」
この光景をナザリックの孔明『ぷにっと萌え』が見ていれば「うっわ、エッグい事するなオルトさん」と、ドン引きする程のそれらしい嘘と巧みな話術でイビルアイから情報を吸い上げていく光景があった。
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「寂しく、無い……か。無責任な奴だ、あの時……お前は私の傍からいなくならないと言ったのだぞ、なのにお前はいなくなった。
あの時だ、十三英雄と共に居た時で蟲の魔神を斃してから胸にポッカリと穴が空いた気がしていた。
でもそう感じていたのは私だけだった、皆に聞いても誰も、何も感じていなかった。それどころか私達は元からこの数だと皆に言われた。私だけだったんだ……何かが可笑しいと思っていたのは、今までその理由は分からなかった。
お前なんだな、私の胸に空いた穴は……お前という存在だったんだな、私はその事を忘れて約150年もの間一人で生きてきた。
お前は本当に………無責任な奴だ、その癖こうやって思い出させた、どあして今になって私はお前を思い出したんだ?」
俯き弱々しい声色で口をついて出る。
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「恐らく、何かしらのトリガーが決められていたんだろうね。
僕が、或いは君が何かしらのトリガーを引く事で思い出せる様にしたじゃないかな、なんとも僕らしい事をするものだ」
「すまない事をしたね」
「イヤ、お前らしいと言えばお前らしい。
それにまたお前と会えた、トリガーを付けていたのはこの為だろう。お前はもう一度会えると確信していたからこそのトリガーだ」
「多分そうなんだろうね、なんとも身勝手だね顔を見てみたい」
「水晶の鏡で良ければ出してやろう。見るか?」
「あはは、ナイスな返しだ、僕が気に入る訳が分かったよ」
「昔に比べれば刺々しくなった、やさぐれただけだ。一人になって、胸に穴が空いたまま旅をして……こうなった。
……ああそうだ、私の事も覚えていないならリグリットの事も忘れたのか」
「そうだね、初耳だ」
「もしリグリットにもトリガーが有って、お前の事を思い出したらリグリットにブン殴られるぞ」
「それは嫌だな、痛そうだ」
「何せリグリットはフォウを可愛がっていたからな」
「は? 今なんて?」
「ん? どうした」
「今フォウって言った?」
「ああ言ったが、それがどうかしたのか? 初めて会った時からお前の肩に乗っていたぞ。
私にはリスにしか見えなかったが、リグリットは猫と言っていたな。お前は一応犬だと言っていたけどな」
あんのクソ獣ついて行ってやがるのか、帰ってきたらマーリンに投げ付けてやろうか、それともあの王様に折檻してもらうか……王様の方が効きそうだな。
「そ、そうかそうなんだ。犬が居たんだ。
………なんか変わった所とか無かった?」
「いや、基本お前の肩に乗って騒ぐぐらいだな。後は疲れた私達を癒してもくれたな」
えぇ……イヤまあ、おとなしくしてくれてたなら良いか。良いのか? ………成らなかったって事は十三英雄とやらは善い奴らの集まりなのは確実だな、王都に放ったら一日と持たずに成るだろうし……まあ良いか。
まるで、いなかった期間を埋めるかの様に沢山の事を、時にはジョークも交ぜ話し合い、時間は矢の様に過ぎていった。
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「成る程、今は本来の姿である森妖精……ああ太古の森妖精? だったか、その姿で冒険者をしていると」
「そうなるね。それにしても、わざわざ天使の姿に変わってまで十三英雄の一員として活動していたとはね、随分と活動的な僕だね」
「肉体が違うと記憶領域も違うんだったな」
偽り八割、真実二割。このやり方はユグドラシル時代に良くしていた情報戦。
真実が一割だとたまに見破る者が居た為、真実を二割に増やし更に真実だと思える嘘を二割入れた偽情報で盤外の情報を掻き乱し、人の流れ、物の流れを操りオルトが多用するやり方だった。
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「うん、性格とか言動も変わるね」
「面倒くさいな、お前は」
「あっはっはっ、そうだね面倒くさいよね。
僕もそう思うけどコレばかりはね、僕でもどうしようもないんだよね」
「そんなお前が今や帝国で貴族にも成った、もう隠れる事はできなくなったな。ハッ、いい気味だ」
「本当にどうしたものかな。
ああそうだ、話は変わるけど君は……キーノは水晶の魔法を使っていたけど、アレは?」
自分に使われた水晶魔法をふと思い出し、何故使えるのか気がついたら聞いていた。
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「いきなりお前が魔術書を渡してきて、お前に教わりながら習得した輝石の魔術。
その中の魔法に結晶散弾があるだろう? それを簡易化した魔法の一つ、名は『結晶散弾』だ」
「じゃあ輝石の魔術は覚えたのか?」
「ああ基礎魔法だから全部覚えろと言われたからな、数が多くて時間は掛かったが後ろの頁にある魔法以外は習得した。長く生きるのも悪くないかもな」
「それは凄いね、確か輝石の魔術は二十前後は有ったと思うけど、良く頑張ったね」
「基礎だ基礎だと言ってお前が五月蝿かったからな、必死に覚えたさ。だが、全部と言えないのは少し悔しいものだな」
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輝石の魔術とはコラボイベント『エルデンリング』にて習得できる魔術で、ある意味では基礎的な魔術でもある。
またコラボイベントのフロムシリーズで習得できる魔法は少々特殊な方法でしか習得できず、そしてユグドラシルもその方法を踏襲した為、上手くやれば通常より多くの魔術を低レベルで大量に習得できると言う神コラボイベント………なのだが如何せん古すぎてオルトしかコラボ元を知らず、このコラボイベントをしていたのはオルトが先導して連れて行ったギルド:アインズ・ウール・ゴウンの魔法詠唱者達くらいしかしていなかった。
また、イベント自体がややこしく面倒な事が多かったのも参加者が少なかった一つの要員でもあった。
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「へぇ……魔法を研究して簡易化させて違う魔法を習得したのか、本当にキーノは凄いね」
研究して簡易化した魔法を作れる? ここ世界はそんな事もできるのか、研究……もしかして。
「その魔術書を見せて」
「これだ」
「………キーノ、もしかして……だけど、輝石の彗星やほうき星を使えるかい?」
「ん? ああ使えるぞ、さっきも言ったがお前から渡された魔術書に載っている魔法は三つを除いて覚えたぞ」
イビルアイの言葉に驚き立ち上がり、気がついたら叫んでいた。
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「何故叫ぶ、お前が覚えろと言ったんだぞ」
「それは……そうだね、僕は記憶に無いけど」
頭を抑えタメ息を吐いて「本当にお前という奴は」と呟く。
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まさかとは思ったが、天体の魔術を習得したのか!
恐らく天使の僕がコレを渡したのは魔法を習得できるのかを確認する為だろう。
フロムシリーズの魔術と奇跡の習得方法は原作同様ユグドラシルでも買う、拾う、交換する事で習得できる。だから天使の僕は僕自身が編纂した魔術書を渡した。
確かに僕が編纂したアイテムには入手方法は載っている。でも、あぁ……記録の同期が待ち遠しい、天使の僕はどうやって習得させたんだ……愉しみだな。
ん? この魔術も載っているのか……書いた記憶は無いけど、輝石の魔術と運営が同系統にしたから当然か。
しかし天体の魔術を習得したと言う事は、だ。この子のレベルは………。
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エルデンリングの職業の最大レベルと職業分けは独特な方法にされている。
理由は一つ、同系統で習得できる魔術の数が少ないからだ。
運営は悩んだ末『同系統の魔法である』と、判断を下した職業は『先に取得した職業に統合され、職業名はより位階の高い魔法のモノに変える』と公式発表している。
そしてそれに伴い魔法の数がレベルに足りなければ切り上げ計算してレベルは『5』になり、レベル『5』を超える数があるが『10』には至らない場合は、切り捨て計算され『5』なる。
その為、ユグドラシルでのフロムシリーズの職業レベルは基本的に『5』とし、同系統の魔法を習得する事で『10』へと変わる仕様に調整した。しかし例外としてレベル『10』に近い数の魔法を習得していれば、レベル表記は『10』になる。
勿論、ユグドラシル由来の魔法も習得できるが、最大レベルは『10』で固定されている。
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現段階でこの子の職業レベルは切り捨て計算されレベルは『5』……なのだが、この子が習得した輝石の彗星を含め天体の魔術の魔法は第八位階と第九位階魔法。
つまりこの世界においてこの子以上の魔法詠唱者はいない、ますます欲しい。ナザリックに……イヤ、水晶樹鉱山渓谷の小世界に連れて行き、強くさせたい。
どうなるんだ……あの世界の、フロムシリーズの世界にーー
「どうした? 何かあったのか?」
「ああイヤ、キーノが凄いと思ってね。
正直に言えば輝石の彗星を含めたを天体の魔術を習得できるとは思っていなかった、あの魔法はそれ程までの高みにある魔法だからね」
位階を伝えるべきか否か………アレの時にぶつかる可能性がある……今は黙っていた方が良いかな。
そう言えばさっき簡易化して造った水晶魔法を覚えたって言っていたな、だとするとエレメンタリスト系統を習得していても可笑しくないな。
職業は天体の魔術まで習得してはいるけど魔法の数はレベル『10』まで至らない且つ、ユグドラシル由来の魔法も習得していないと仮定してレベルは『5』で、それと輝石の魔術を参考にして別種の魔法を造ったらしいから、エレメンタリスト系統持っていると仮定して、尚且つ低く見積もってレベルを『10』として計算すれば………待て、僕の事だ、まだ何か教えている筈。
「この魔法……この魔術書以外に何か渡したり、教えたりしたか?」
「……それなら私に夜の魔術と言う魔術書を渡されたな、こっちは数が少なかったから比較的早く習得できた」
「夜の魔術を? フム、意外……でもないのか?」
闇視を持ってる吸血鬼に夜の魔術は鬼に金棒だな、でも残念なのは吸血鬼は前衛種族な事なんだよな。
なんで僕は近接戦を教えなかったんだ? 魔法以外にも何か……僕であれば前衛種族である吸血鬼に前衛職業を教えている筈。
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「ねぇ、キーノ」
「何だ?」
「近接戦とかさ、鍛えられなかった?」
ガチビルド派と言う訳ではないが、ユグドラシルプレイヤーとしてのサガなのか、どうしても前衛種族である吸血鬼のイビルアイの職業構成が気になり、そして自分であれば必ず前衛職を教えるだろうという思い確かめた。
━
「鍛えられたな、近接戦も少しできた方が良いからと言われて教練書を渡されて覚えた」
イビルアイの返事に「やっぱりな」と思い、「じゃあ何を覚えさせたのか」が気になり自分なりの答えを持ちながらも聞き返す。
━