星雲からの使者   作:完全にわかのバカ野郎

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 ゲヘナが終わって一休み、されども休めないオルトくん。


七十一話

「僕(私)忙しいんだけど」

「君がいきなりあんな事を言うからだ」

「そりゃああんなモノ見せられたら調べに行くのが道理ってモンでしょ」

「祖国を滅ぼした悪魔崇拝者、そして根城にしているであろう場所に行くと」

「そう思うのは変かい? 至極全うな感情で、行為だと思うけど」

「ローブル聖王国か…………俺としてはできれば竜王国に行ってほしい」

「確か竜(ドラゴン)と人間の子供が女王してる国だっけ」

「そうだ」

「理由は?」

「彼処と国交ができればこの国にとっても有益だからだ」

「つまり侯爵として行けと」

「そうなるな」

「めんどくさ、貴族の仕事しなくていいって言ったじゃん」

「だから無理強いはせんよ、勿論爵位を剥奪もしない。これは俺からの、私情での頼みだ」

「そー言うのが一番めんどくさいんだけど」

「だが行って欲しい理由はそれだけじゃない」

「ふーん」

 

 興味が無いのか手の中で種を発芽させ生長させて遊んでいた。

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「竜王国はビーストマンと呼ばれる亜人種との戦争が起きている」

「それが?」

「その戦争を援助しているのがスレイン法国だ」

 

 その言葉に生長させていた植物を握り潰す。

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「へぇ、つまりは、だ。そこに行って僕(私)がスレイン法国が要らない程に手伝えば……」

「アイツらの影響力が減る」

「そうだ」

「でもさ、その分アイツらの武力が集まって面倒な事にならない?」

「だろうな」

「それは良いの?」

「トールがエイヴァーシャー大森林で一網打尽にすれば良いだけだ」

「じゃあまあ良いか。良いよ、やってあげる。

 森妖精(エルフ)を食い物にするゴミどもは潰さないとね」

 

 その凄まじい気迫にジルクニフは冷や汗を流し「心底味方にして良かった」と、内心思っていた。

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「何? 帝国からの親書だと?」

「はい」

「読め」

「では僭越ながら」

 

 コホンと一つ咳払いをし「此度貴国の情勢を看過できないと判断し、帝国貴族ギットゼン侯爵を遣わせる事を決定した事をお伝えいたします。

 つきましては貴国からの返答を頂きたく存じ上げます」と、親書を読み上げ「との事です陛下」の言葉で締める。

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「ギットゼン侯爵……確か最近貴族に成った帝国のアダマンタイト級冒険者だったな」

「恐らくその人物かと」

「アダマンタイト級を遣わせるか……理由はなんなんだ」

「現段階ではなんとも」

「その冒険者は森妖精(エルフ)だったな」

「はい。それもあり、帝国では森妖精(エルフ)の奴隷制度を撤廃したそうですな」

「法国との関係を断ち切った、か」

「恐らくソレが目的かと」

「この国も法国との関係を断ち切らせる為にか? だが、アダマンタイト級冒険者と言えど一人では何もできまい」

「それなる冒険者は竜(ドラゴン)の頭を持ってきたらしいですな、それをもって銅(カッパー)級からアダマンタイト級へと異例の飛び級したと報告がきております」

「なんだと!? 竜(ドラゴン)の頭を………。今すぐ親書を書くぞ! なんとしてもギットゼン侯爵を呼ぶんだ!!」

「畏まりました。ああそれと」

「まだ何かあるのか?」

「親書にはギットゼン領の戦士を連れてくるとも書いてあります」

「それは森妖精(エルフ)か?」

「恐らくは」

 

 顎に手をやり指で頬を叩き「よし、書くぞ。用意せよ」と指示し「畏まりました」と返ってくる。

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「トール」

「返ってきた?」

「あぁ、すぐにでも来て欲しいとの事だ」

「じゃあ行こうか。んー、転移魔法で行っても良いけど………ここは時間を掛けて行こうか。そうだね凡そ十四日……イヤ二十日にしよう、その方が如何(いか)にもソレらしいからね」

「分かった、その様に返しておこう。トール」

「うん? 何」

「盛大に暴れてこい」

「良いのかい? そんな事を言っても」

「構わんさ、それだけ竜王国は逼迫しているからな」

「そう、じゃあそうしようか」

 

 

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「陛下、親書が届きました」

 

 玉座から勢いよく身を乗り出し「早く読め!!」と急かす。

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「では『返答の親書に応じ、ギットゼン侯爵を遣わせて頂きます。つきましては二十日程お待ちくださればギットゼン侯爵が到着いたします』と書かれております」

「二十日、か………帝国からであれば早い方か」

「そうですな、長ければ数ヶ月は掛かりますので」

「アダマンタイト級と聞いて転移魔法ができるのでは……と、思ったが、そもそも転移魔法がどんなものかすら分からん」

「ですな」

「……持ちこたえられるか?」

「ギリギリ、と言ったところかと」

「ぬぅ……」

 

 

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 親書に書かれていた二十日より三日早くギットゼン侯爵:トール・インシュリフト・ギットゼンが到着し、竜王国女王であり幼女の姿をしたドラウディロン・オーリウクルスを前に片膝をつき頭を下げて恭しく挨拶をする。それを見たドラウディロン・オーリウクルスは玉座で面を喰らい「あ……う、ウム。ギットゼン侯爵よ、よくぞ参られた」と、威厳を損なわない様に返す。

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「皇帝陛下より親書を預かっております」

 

 懐から取り出し頭の上に持ち上げる、それを見た宰相が近づき受け取り読み上げた。

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「そうか、であれば期待して良いんだな? (冒険者と聞いていたからてっきりこういった礼はできんと思っていたが、中々に様になっている。どこかの王にでも仕えていたのか? それに戦士だけではなくパーティーのメンバーも連れて来ているのか)」

「お任せを、法国の者らより成果を挙げましょう」

「ウム、いつから取り掛かれる」

「今すぐにでも」

「休まずとも良いのか?」

「余裕をもって訪れましたのでご安心を」

「(予定より早くついたと言うのに余裕をもって、か。世辞か長めに書かれていたのか……。来たのだしどちらでもいいか)では最前線まで最高司令官に案内をさせよう。セラブレイトを呼んでこい」

「畏まりました」

 

 

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「お呼びに従い参上いたしました。(あぁ、やはりお美しい(・・・・)お姿。もう少しお側に……匂い嗅ぎたいペロペロしたい)」

 

 汚物を見る様な表情をしながら「お前を呼んだのは他でもない。帝国からの使者であるギットゼン侯爵を最前線まで案内せよ」と命じる。

 しかし、命じられたセラブレイトは値踏みするかの様にトール達を見て「陛下。不躾ながら進言の許可をいただきたく存じます」と奏上する。

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「なんだ」

「真にこの様な者らが役に立つので?」

「ならば竜(ドラゴン)の頭を持ってこい」

「は?」

「ギットゼン侯爵は竜(ドラゴン)の頭を皇帝陛下に献上したそうだ。であればお前もわたしに竜(ドラゴン)の頭を献上せよ」

「竜(ドラゴン)の……頭? 陛下! そ、その様な事が事実であるなど!」

「失礼ながら申し上げます。ギットゼン侯爵就任パレードにて竜(ドラゴン)の頭が先頭に飾られていたと報告がございます」

「との事だ。故に文句があるのであれば竜(ドラゴン)の頭を献上せよ」

「そん、な事……。(竜(ドラゴン)の頭? あり得ない、竜(ドラゴン)を倒せる人間がいるなぞあり得ない。そ、そうだ! 竜(ドラゴン)ではなくワイバーン……イヤ待て、帝国にはワイバーンを駆る航空獣身隊(こうくうじゅうしんたい)がある。なら間違える訳がない………本当に、竜(ドラゴン)なのか…………)」

「どうした、できんのか? ならば黙ってギットゼン侯爵を案内せよ。だが、そうだな……不服であるのなら戦えば良い、武を競うか?」

「え……あ、はい! 是非ともお願い致します。このセラブレイト=アルサリオンがこの者ら真に戦えるのかを見定めましょう!!」

 

 唐突に提案された武の競いに即座に返事をする。

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「ギットゼン侯爵、勝手に決めてすまないが良いだろうか?」

「それで納得されるのでしたら」

「ウム! すぐに用意せよ!」

 

 

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「大丈夫、殺しはしない」

「それはこちらのセリフだ」

 

 立会人として竜王国女王ドラウディロン・オーリウクルスが取り仕切り、「両者共に良いか!」の声を掛けるとオルトは「はい」と短く返答しセラブレイトは「万事抜かりなく」と声を張って答える。

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「では、始め!!」

 

 戦闘は一瞬で終わった。何故なら魔法遅延化(ディレイマジック)されていた魔法五重化(クインティプレット)魔法の矢(マジック・アロー)が解放(リリース)され五十個の魔法の矢(マジック・アロー)がセラブレイト=アルサリオンの周囲を破壊したからだった。

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「わ、私(わたくし)の敗けだ。もう、いい……」

 

 目の前の人物との彼我の差を目の当たりにし、セラブレイトは心の中で「このバケモノに喧嘩を売れば確実に死ぬ」と刷り込まれ、ドラウディロンは「敵にしてはいけない」と心に決めた瞬間でもあった。

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「(竜(ドラゴン)を斃したなぞ眉唾だと思っていたが、これ程の魔法が使えるのなら斃せるな。この者が善き使者である事こそがこの国の命運を分ける、この者らであればビーストマンの進撃を遅らせる……否!! ビーストマンを根絶やしにできるやもしれん!! 可能な限り留まってもらおう)」

 

 その一方でオルトは事も無げに「お気に召しましたか?」と優雅に声を掛けた。

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「ウム! 文句無し、文句無しだ!! 貴公を我が国に……と、言いたいところだがやめておこう。帝国と事を構える気は更々ない、そして新書にも書いてあった通り法国からの支援は今日を以て白紙にする事も約束しよう。

 だがそれ相応の働きはしてもらうつもりだ、良いな?」

「お任せを根絶やしに致しましょう」

「ウム、任せたぞ」

 

 

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「此処が最前線ですギットゼン卿」

「成る程、中々に凄惨な場所ですね。そして兵士達の士気が低い……イヤ、無いにも等しい。

 ビーストマンとはそれ程までに脅威なので?」

「ビーストマンの難度は三十、私(わたくし)達クリスタル・ティアが前線に出てギリギリ押し留めている状態です」

「成る程。ん? アレがビーストマンですか?」

 

 苦虫を噛み潰したような表情で「はい、アイツらが竜王国を滅ぼさんとするビーストマンです。すぐに兵を集め迎撃の用意をさせます」と言うが「いえ、このままで構いません。兵士達を下げさせてください、私が薙ぎ払いましょう」と返す。

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「いったいどうやって……」

「……超位魔法」

 

 杖……ただの木の枝にしか見えないモノがどこからともなく現れて地面を叩いた途端にオルトの頭上に巨大な『エメラルドグリーンの光の魔法陣」』が三重に展開される。

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 この距離から見えるか分からないけど、プレイヤーならこの時点で必ず何かしらしてくる。でもそんな感じは無し、となるとビーストマン側にはプレイヤーは居ない、と。確認はすんだ、もういいか。

 

 手に持っていたクリスタルと砂時計を砕き「太古の大樹の怒り(レイジ・オブ・プライミーバル・シルヴァ)」と唱える。するとその瞬間ーーオルトの足元から爆音と共に大地が割れ、数百年、数千年の時を生き経たような禍々しくも神聖な巨木やツルが出現した。

 その光景は神聖なモノに見えた。初めに大地から噴出する巨根が波打ちビーストマンを呑み込み、次に樹木から一斉に放出される超高濃度太源(マナ)の『魔力衝撃波』が、時間差でビーストマンに放たれビーストマンの大軍を一瞬にして言葉通り薙ぎ払い、最前線は光すら届かないほど鬱蒼とした『太古の原生林』へと変貌した。

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「終わりました」

「(今……私(わたくし)は何を見た…………これは、なんだ。なんなんだ、私(わたくし)は知らない。こんな魔法は知らない。まさか、神話に出てくる魔法。神の御業…………ならこの御仁は、神……なのか?)」

「前線基地の一部が樹海に呑み込まれてしまいましたが害はありませんし、樹海は私の庭も同然。何者かが侵入すればすぐに分かりますのでご安心を。

 念のために私は暫くの間逗留します、その間に倒せる限りのビーストマンを倒しましょう」

 月落としでもよかったけど月の王(ムーンロード)として動きづらくなるし、この超位魔法なら使っても問題無いでしょ。それに僕(私)専用の超位魔法だし、それに派手にやらないと面白くないもんね。

 

 

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「私が出ましょう、皆は後ろに」

 

 今回は前線に立ち、オルトが竜王国兵士を下げさせ攻めいるビーストマンに「魔法五重化(クインティプレット)大自然の怒り(ラース・オブ・ネイチャー)」』の魔法を唱えると夥しい落雷と、大地を揺るがす幾つもの地震が同時に発生しビーストマンは雷に撃たれ、そして大地へと呑み込まれていく。

 その光景は誰もが目を奪われる程壮観で、そして凄惨極める光景だった。

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「これが、竜(ドラゴン)を倒した級冒険者……」

「次元が違う」

「あの方が、あの御方が居れば我々は勝てる」

 

 ポツポツと声が沸き上がり、次第に大きくなり勝鬨の声となった。

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「トール・インシュリフト・ギットゼン」

「はい」

「貴公の働きのお陰で此処数年の戦果を遥かに凌ぐ働きをした、女王として礼を言おう」

 

 言葉を区切り絞り出す様に「真に、真にありがとう」と、気丈に振る舞いながらも若干嗚咽の混じった声色で感謝を伝えた。

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「私は皇帝陛下の指示に従い行ったまでにございます。そのお言葉は皇帝陛下にお伝え致します」

「ウム、ウム。そうだな。だが貴公にも言おうありがとう、我々は少なくとも数年間はビーストマンの侵攻に怯えずとも良くなった。故の礼だ」

「ではありがたくお言葉を頂戴致します」

「それで、だ。ギットゼン侯爵よ」

「なんでございましょう」

「我が国にはこの働きに対する褒美は持ち合わせていない。だが……だが! 一つだけある」

 嫌な予感がする。

 

「トール・インシュリフト・ギットゼンよ、わたしの伴侶に成らんか? そうすれば帝国と竜王国の関係はより強固なモノと成る、法国が入れん程のだ。どうだろうか? (なんとしてでも婚姻を結ぶ、いい加減セラブレイトの下賎な視線も鬱陶しくなってきたしな)」

「へ、陛下!!」

「黙れセラブレイト。して、どうだろうか、悪くない提案だと思うが」

「………皇帝陛下に奏上した上でお返事をさせて頂きたく」

「色好い返事を期待しているぞ。ギットゼン侯爵よ、もう帰るのか?」

「一通り警邏をした後に戻ろうかと」

「そうか、ところでギットゼン侯爵。竜王国と帝国では些か遠い、早く見積もっても数週間は掛かる。国交を結ぶとしても問題があると思うんだが……どうにかできるだろうか」

 どうする、あのアイテムを使うか? 確かに数週間も掛かるのは面倒だしな。かと言ってあのアイテムを渡して問題は無いか? 悪用されればこっちが困るが、あそこまでの力量差を見せた。なら攻めてくる問題は無いと考えてもいいか、それに僕(私)の領地に置いておけば何があってもすぐに対処できるだろうし……ま、いっか。

 

「では私個人が所有するマジックアイテムを陛下のお許しを頂き次第お持ち致します」

「そんなアイテムがあるのか!?」

「ある程度の制約はありますが長距離移動を可能とするアイテムを所有しております。ですが私の一存でお渡しするのも、設置するもの問題がございましょう。ですので皇帝陛下にお伺いを立ててからの事になります」

「よい、構わん。期待しているぞ」

 

 

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「気紛れ程度でついて来たが女王の伴侶か」

「茶化すなよエミヤ、僕(私)は絶ッ対に嫌」

「いいえ! 主殿は一国一城の主に成るべきです!!」

「はい! 僕もそう思います!」

「嫌だよ王様とかさー、やれる事減るじゃん」

「仕事量は増えるがね」

「だから嫌なの。でもなー、ジルなら膝を叩いて喜んでるのが目に浮かぶよ。どうしたものか」

 

 

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「随分と遅かったな」

「色々あったからね。で、はい預かった親書」

 

 渡された親書を読み呵呵大笑と肩を揺らして笑う。

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「ク、クク……ハハハハハハ!! そうか! 伴侶か! あのクソババアが伴侶したいと言うか! よい、構わん成れ。その方がオレにとってもプラスになるからな」

「まあ君ならそう言うよね」

「帝国貴族で、侯爵のトールが竜王国の女王と国婚(こっこん)をすれば帝国と竜王国の関係性はより強固なモノとなる。故にトールよ国婚(こっこん)の儀を執り行え、これは勅令だ。何、盛大に祝ってやる」

「へいへい。それでさジル実はーー」

 

 

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「構わん、やれ」

「だと思った。でも設置するのは僕(私)の領地にするよ、その方が良いからね」

「そうだな、帝都に置いて何かあってからでは遅いからな」

「その点僕(私)の領地ならいくらでも対処できる」

「許す、配置せよ」

「りょーかい」

 

 

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「まさか、こんなモノが…………」

 

 ギットゼン領領都『トルオン』領主邸執務室の隣室に鏡が置いてあった、そしてそこから竜王国女王ドラウディロン・オーリウクルスがトールと共に現れた。

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「ここは私の執務室の隣の部屋で、執務室からしか入る事のできない部屋です」

 

 話していると執務室からの扉が開き一人の森妖精(エルフ)の女性が現れ、「お初お目にかかります竜王国女王陛下。私はトール・インシュリフト・ギットゼンの名代(みょうだい)として領地を取り仕切るディラシグと申します」と華麗なカーテシーをしながら挨拶をする。

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「え、あ、ウム、わたしは此度ギットゼン侯爵との国婚(こっこん)と相成った竜王国女王ドラウディロン・オーリウクルスだ。名代(みょうだい)殿、長い付き合いになるだろう。して、二人はどの様な関係性だ?」

「私(僕)はトール・インシュリフト・ギットゼンの外戚のディラシグ・インシュリフトと申します」

「(トールの外戚? まあ森妖精(エルフ)ならあり得るか? あり得そうだな)つまりは貴公とは親戚になるなだな、であれば砕けた口調でいい。よろしく頼む」

「はいではその様に。まさかトールが結婚を……しかも一国の女王とするなんて思ってもいなかったわ」

「僕(私)もだよ。今更だけど正直に言えばしたくなかった」

「でも貴方は腐っても帝国貴族、陛下のご意向には逆らえないわよ」

「分かってるよ」

「本人を目の前にしてソレを言うかトール」

「でも本心だし。大丈夫ちゃんと王配らしい事はするよ………できる範囲で、だけど」

「トールは冒険者だからな、それの邪魔はしないさ。だが王配としての仕事はキッチリとしてもらう、特にビーストマン対策だがな」

「あら、まだ根絶やしにしてないの?」

「結構数が多くてね、それに根城も複数あって面倒なんだ」

「全部潰せばいいじゃない、貴方ならできるでしょ?」

「あー、うんまあできなくもない」

「ならなんでしないのかしら」

「それなりに理由があるんだよ」

「労働力?」

「大正解、ビーストマンは強いし賢い。あれ程までの力量差を見せつければ会談の場を設けてくるのも時間の問題だ、その時にこちらからの要求を飲めばそれでいい」

「飲まなければ?」

「滅ぼすだけだよ」

「(国婚(こっこん)は正直賭けだった上に、下心ありきだったがオレの判断は間違っていなかった。この判断力は凄まじい、迎え入れられたのがオレの最大の幸福だな)」

 

 ビーストマンについて色々と話し合っているのを見て、心の中で「情報共有も万全、トールの力量を完全に把握。その上での二人の判断力、トールが王配になればディラシグも必然的に仲間になる。二人が居れば竜王国は安泰だ」と考えていた。

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「それで? 次は何をするのかしら」

「使者は送ったけど現段階でのビーストマンは沈黙をしてる」

「使者が首だけで戻ってきたら?」

「潰す」

「そう、まあ頑張りなさいな。じゃあ次、悪魔崇拝者集団はどうするつもり?」

「そっちはこれからかな、ラディには悪いけど良い立場を手に入れた。

 ローブル聖王国には冒険者兼竜王国王配(おうはい)殿下として出向く。王配(おうはい)ともなれば無下にもできないだろうさ」

「使えるモノはなんでも使えばいい」

「そうさせてもらうよ」

 

 二人を……正確にはドラウディロンを見て「そう言えば私(僕)は竜王国の女王陛下は幼女と聞いていたのだけれど、妙齢の美しい女性じゃない」と切り込む。

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「子供と大人、どちらが守りたい?」

「あぁ成る程、策士ね」

「戦略と言ってほしいな」

「僕(私)としては幼女じゃなくて安心したよ、変な噂が立つ」

「もう立ってるわよ」

「だよねー。……ねえラディ」

「今からでも姿を戻せか?」

「できれば」

「フム。一考の余地はあるが、考えておこう。オレとしてはどちらでも面白いからな」

「それだと僕(私)が変態なままで終わるから勘弁してほしい」

「ハハハ、良いじゃないか」

「何一つ良くないよ、変態扱いとか嫌だなー本当に嫌」

 

 そう言っているとフワッと光り幼女の姿へと変わった。

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「これはこれで良いだろう?」

「もっかい言うけど何一つ良くない」

「諦めなさいな」

「嫌だ、諦めない」

 

 何度も繰り返される『嫌』と『ヤダ』のやり取りにディラシグが笑い「お似合いじゃない」の言葉を掛けると「お似合いかどうかは別問題」と言い返し。しかし、「貴方も見た目は幼いわよ?」と言われ「ぐうの音も出ない」と答える。

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 ドラウディロンを応接室に連れていくとソコにはバハルス帝国皇帝、ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスが膝を組み座っており「来たかクソババア」の言葉を投げつける。

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「他国の王に掛ける言葉ではないな」

「だが事実だろう?」

「国家的戦略と言え。時に皇帝陛下よ、皇帝陛下であらせられる貴公が何故此処に?」

「オレとトールは友人だ、居ても可笑しくなかろう?」

「(友人……だから国婚(こっこん)がスムーズに行われたのか、そして我が夫(トール)を贄にでも差し出した……それは無いか。

 純粋に国家間の関係を天秤に乗せた上での判断での国婚(こっこん)か)貴公のお陰でわたしは良い伴侶を迎え入れられた、礼を言う」

「王配になったが元は帝国貴族、それも侯爵だ。どちらが上なのかは言うまでも無いな?」

「属国にでもなれと?」

「違うな、既に属国だ。だが安心するといい、何かを差し出せとは言わん。現段階での要求はただ一つ、『法国との関係を断ち切る』それだけだ」

「親書にも書いてあったな、だがそんな事は今更だ。法国の兵士(義勇兵)ではなく森妖精(エルフ)であるトールを迎え入れ前線に出した時点で切っている。そも先に切ったのは奴らの方だ」

「ほぅ、それは何故だ」

「トールの前で言うのは憚られるが森妖精(エルフ)の国との戦争が激化したからだそうだ、だからスレイン法国のクソ野郎ども私達のところへの資金援助を完全に止めた」

「それは、喜ばしくない情報だ」

「どうする?」

「先にそっちを潰すか」

 

 言葉を発したと共に魔力が荒れ狂う様に吹き出し周囲の調度品が燃える。

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「トール。腹が立つのは分かるけど抑えなさい」

「この状況を抑えろと?」

「抑えるのよ、でも必ず森妖精(エルフ)を襲い殺し尊厳を破壊する連中を潰しなさい。貴方にはそれができる立場に就いた、徹底的にやれるじゃない」

「そうだな、大義名分は僕(私)らにある」

「そうなのか?」

「竜王国王配(おうはい)殿下は森妖精(エルフ)だ、その同胞を殺している事は僕(私)に対する宣戦布告だ」

「確かに大義名分足り得るな、いつやる?」

「今すぐに……と、言いたいけど他にも気になる事があるから暫くはできない。そっちが終わり次第法国も終わらせる」

「悪魔崇拝者達か」

「うん。そっちも無視はできないからね、だからなんだっけ……ああそうそう謎の遺跡(・・・・)とやらの探索には協力はできない。君達で好きにやっといてよ」

「そうしよう」

「なんだ謎の遺跡とやらは」

「ビーストマンとの戦争で忙しかったお前は知らんか、リ・エスティーゼ王国の辺境、かつて誰も立ち入らなかったトブの大森林の南の平原で見つかった遺跡だ。が、詳細は分かっていない。

 だから近々請負人(ワーカー)達を向かわせるつもりだ、お前さんは国の事をしておけ、余裕は無いだろう?」

「腹立たしいがその通りだ、他の事をしている暇は無い。そんな事はお前達で勝手にやっていろ。時に皇帝陛下よ」

「なんだ」

「この街は何故これ程までに木々に囲まれている」

「トールに聞け」

「僕(私)の領地(領域)だからね、僕(私)にとって都合のいい場所にするのは当たり前でしょ」

「との事だ」

「確かに、森妖精(エルフ)には住みやすそうだな」

 

 謎の遺跡とやらの話が出たがドラウディロンには関わる暇が無いため手を出さない事にしたが、結果的に命拾いする事となった。

 ━




 どうしてこうなった。

━━
 名前を間違えると言う大失態、にわかが現れる。
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