「ここであれこれ考えてても仕方ねえ!取り敢えず病院だ!」
一護は子猫を抱き抱えると知り合いの動物病院を目指して走り出す。果たしてこの猫が何者なのか?先程までの摩訶不思議現象は本当にこの猫の仕業なのか?そんな事は一先ず後回し、まずはこの衰弱しきっている子猫の安全第一だ。ほんの気持ちだが身体が冷えない様タオルで包んであげる。
「あれ!?一護さん!?どうしてここに!?」
走っていると偶然なのは達と再び顔を合わせた。
「なのは、それにさっきの、えっとぉ月村と……そうだ!アリサ・プリングルス!!
「誰がポテトチップスよ!!私はアリサ・バニングス!!覚えにくいならアリサでいいわよ!」
「それで、どうしてお前達がここにいるんだ?」
「人の話を聞きなさいーっ!!」
「それが……」
喧しく騒ぐチンチクリンを他所に、なのはにここにいる訳を聞く。自分の記憶している彼女の家とは道が外れているからだ。するとなのはは腕に抱えている動物を見せる。それを見た一護は首を傾げる。
「あん?なんだそれ?」
「多分フェレットだと思う」
「フェレット?」
「うん、イタチの仲間なんだけど、そこで倒れてたの。だから今獣医さんに見せようと思ってるんだけど、動物病院どこにあるか知らない?」
「なのはー、こんな動物を愛でる気持ちも知らなそうな人がそんな事知る訳──」
「それなら知ってるぞ。というか俺も今からそこ向かう途中だしな」
「嘘っ!?」
「俺の親父町医者してっから獣医とも繋がりあるんだよ」
「そんな、コイツが医者の息子なんて……そんな馬鹿な」
「てかお前は俺の事どんな偏見で見てやがるんだよ」
アリサはこんな男の父親が医者なんてと現実の恐ろしさに恐怖を覚えているが、そんな大層なもんじゃない。医者と言っても所詮は町医者だし、髭ダルマだし、アホみたいにでかい遺影を飾るバカ親だからな。
「でもなんで動物病院に?何か飼ってるんですか?」
「いや、別に飼ってねーけどよ、俺もさっきそこで偶然コイツを拾ってな」
そう言って冷えない様に子猫を包んでいたタオルを取る。中から出て来た子猫を見た3人は驚く。
「子猫!?可愛い……けど」
「すっごい汚れてるわね」
「それに具合悪そう」
「あぁ、だから今から病院に連れてこうとしたんだよ。一緒に行くか?」
「うんっ!」
「お願いします」
「ふんっ、誰があなたと──」
「なら先行くぞ」
「待って一護さんっ!」
「待ってくださーいっ!」
「なのは!?すずか!?………あーっもう!行けばいいんでしょ行けば!!」
先に走り出す一護を追いかけるなのはとすずか、更にその2人を追いかける様にアリサが走り出した。一護は、なんとなくアリサの扱いが自身のクラスメイトにする扱いと同じ感じで良いと学習した
「取り敢えず2匹とも無事よ。目を覚まして飯食えば良くなるわ」
「あんがとな、突然押しかけたのに1番に対応してくれて」
「いいのよ、私は別に贔屓で先に診たわけじゃないから」
「………」
診察を終えた先生が4人の元に無事を報告する。フェレットが負っていた怪我は思った程深くなく、子猫も外傷という外傷は見当たらなかったらしい。取り敢えず命のききという訳ではないようだ。
一護と先生が話してる中、チビ達は先生の咥えているソレが気になってしょうがない様子だった。それに気付いた先生は咥えているソレの正体を彼女達に見せる。
「安心しな、ただのポップキャンディよ。流石に仕事中にタバコは吸わないって」
「そ、そうですか…」
「あははっ…」
普通はキャンディだって仕事中に舐めないのではと言わないなのは達だった。
「フェレットはまだ目を覚ましていないけど、猫の方はさっき目を覚ましたわ。……見る?凄いわよ」
「「「「???」」」」
「うっわ…」
凄いと言われて子猫の元に連れてこられた一同。凄いとは何の事だと思いつつ案内されるがままに子猫の元に辿り着くと開口一番一護が声を漏らす。その光景は確かに凄いものだった。
バクバクバクバク
余程お腹が空いていたのか、キャットフードが盛られている皿に頭を突っ込んで凄い勢いで食べていた。頭を突っ込んでいるため、そこら中にキャットフードが飛び散っている。
「余程お腹が空いていたんでしょうね。元気出るかと思って試しにキャットフードを出した瞬間飛びかかりましたから」
助手の人が笑顔で子猫を見ている。笑っているけど、その汚れたの片付けるの多分アンタだぞ。
「にしても汚ねぇ食い方だな」
「野生の動物なんてそんなものよ。それにそれほどお腹が空いていたって事でしょうね」
一護達が子猫の食いっぷりに目がいってる中、すずかは違う所に目をつけた。
「あれ?この子の尻尾、水色って事は……」
「そう、水色よこの子猫」
「「「ええ!?」」」
聞いた事のない毛色に声を荒げる3人。3人程じゃないにしろ一護も驚き先生に尋ねる。
「水色の子猫なんているんすか?」
「聞いたことないわね。この子がどこかの研究施設からの脱走したとかじゃなきゃ、まず間違いなく学会発表ものよ。それで行く行くは科学者達の手に渡るわね」
「急に物騒な事ぶっこむなアンタ。獣医なんかがそんな動物を蔑ろにする発言していいのかよ」
「だからよ。新種ってどこまでも未知な存在なの、だからこそしっかり調べて薬の効き目とか調べなきゃいけないのよ、同じ人間でも持っている抗体が違うだけで特効薬が毒薬になるのと同じね」
先生の言い分は残酷なまでに正論だった。一護は勿論、頭の良い彼女達もその言い分は理解出来た。だが納得は出来ていないのも事実。誠に勝手な話だが、医学の為犠牲は付き物だと分かっていても、その犠牲が自分と近しいものだと許容する事は出来ないのが人間である。
このままでは目の前の可愛い子猫が犠牲になってしまうと不安がる彼女達。一護はそんな彼女達の気持ちを汲み取り先生に言い切る。
「コイツを助けてくれた事には感謝する。でもコイツはもうウチの家族だ、学会とやらは諦めてくれ」
この猫を連れて行かれたら先程の摩訶不思議現象の事を確かめる手掛かりを失う事になる。あの事について知りたい一護はキッパリと子猫を渡さない旨を伝える。
一護の言葉に先生は舐め終わったキャンディの棒を捨て、新たなキャンディを咥えて窓の外を眺める。
「安心しな一護。私は貴方の父親と仲良くしてる女よ。そんな面倒くさい事する訳ないじゃないの。それに私の仕事は目の前の動物達を助ける事。この子の幸せが奪われる様な事する訳ないじゃない。そんなのは頭のお堅い連中らで勝手にやってれば良いのよ」
「「「ありがとうございます先生!!!」」」
子猫が可哀想な目に遭わない事を知ったなのは達は、優しいは裁量を図ってくれた先生に頭を下げて感謝の意を伝える。子供達の素直な気持ちが嬉しかったのか、照れ隠しに顔を逸らして彼女達から見えない様にしていたが、一護からの角度ではニヤついているのが丸分かりだった。
(ドヤ発言が決まって嬉しそうだなぁ先生)
『お兄さんもさっきの発言はかなり恥ずかしいと思うけどなぁ!』
「「え?」」
『初めましてお兄さん!私はクラロ・デディカドア!クーちゃんって呼んでね』