裏では結構ダイス振ってたりしてます。買えた物もダイスで決めました。目標値3、2D6の優しい奴です。ファンブルとクリティカルもあります。
ずるずる
「ねぇ母さんやっぱりやめようよ」
「だーめ」
ずるずるずる
「そうだぞ千歌。お医者さんに診てもらうのと同じだからさ?」
「あの人怖いからやだ」
このずるずると街中をグレイ星人みたいに引っ張られて引きずられてる三つ編みメガネの少女は誰でしょう?
俺だよ。
左手を失ってか半月くらい過ぎた土日の事。俺は怪具売りの下に連行されていた。
「怖いって…百葉、何でこんなに対抗してるんだ?普段は遠慮し過ぎて俺と壁が出来てるくらい遠慮してる千歌がどうして?」
「それはねぇ…うーん、直接会った方が早い」
「えぇ…」
「やーだ!あの人との会話怖いからやーだ!」
俺は幼児退行で抗ったが、そんなので止まる親でもない。折角東京に来たのに観光もせずにあの人に会うのは機嫌が悪くなる物だった。
そう、東京。この世界の絶賛工事が絶えず行われ、上も下も横も何かしらが動き潜み蠢く東京である。日本人なら誰でも知ってる丸の内のあのお方が住む地なだけ有り、あらゆる怪奇が表沙汰にならない様に活動する程度には怪対員がいる地だ。
普通の眼なら戦争の後から復活を遂げた、人が作った人の為の怪奇の居ない大都市なんだが…
「よ!新しい車の調子はどうだ?」「ああ最高さ!煙も出さないし地獄にも行こうとしないからな!」
「ごめーんお待たせ!」「おせーなおーい!じゃあそこの新作食べに行こうぜ!」「いいねぇ!」
「そっちは?」「入り口が一つですね。2課の人達呼んできますか?」「…いや、4と5の連中だな、これは」
『にいちゃん、ブツは?』『ああちゃーんとあるぜ』
『付喪神の研究は進んだか』『ダメだ、研究目的で怪奇が触れると壊れる機構が突破出来ない』
『戦争空襲消失騒乱革命神風怨嗟絶叫』『殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す』
俺からすれば、人の様に社会を構築したタイプの怪奇達の大都市でもあるんだよなぁ…。これ、俺と似たような奴も同じ意見なんじゃないか?人と怪奇が重なり合って見えるし、異界にいるっぽいんだよな。雪女にした父さんを帰すための妖怪の道は此処で知った物に似たのを探しただけだしな。
空を見れば鯨か何かがいるし、地下を見れば遠目に口の怪物がいる。月間死亡数一位の都市は伊達ではないのだ。
ずる ぺた
「あーう…うー…覚悟決めろぉ…」
引き摺りが止まる。どうやら目的の土地に着いたらしい。建物の間、散髪屋の赤青白のクルクル回る奴が捨てられた裏路地だった。手が離されたのでズレた眼鏡を直して抑えておく。
「それじゃ、チケットを千切るよ」
母さんが真っ黒なチケットを千切ると同時に、酷い船酔いに似た感覚に襲われる。
「おえぇ…」
「え、千歌、大丈夫か?」
「大丈夫だ。アイツの下に行く時はいつもこうなるからね」
世界が歪み、位相か何かがズレていくならこんな感覚だと思える物。虹色の靄が広がり、極彩色の手が俺たちを運ぶ。実際には動いてない。ただそういうふうに見え、聞こえ、触れて、臭うだけ。
そしてそっちの方が真実だ。ピンク色の動植物の世界も、深い赤色の菌界の渦も、そういうものがそこにあるだけで、そこには行かない。異界を運んでくれている怪奇の手の上にいれば其処には行かない。不安を覚えれば飲み込まれる世界があるから不安は覚えない様にする。
「当店へようこそ」
「………あ"う"」
硬い床。木の床。違う、金属の木の皮を剥いで作った床。目を上げれば、指した方向に1キロ進む方向磁石、被る事で性別を変える仮面、ひっくり返せば影を纏えるコイン、6体の霊が蠢く写真、ストレスも同時に切って食う爪切り、膨大な数の忠実なミミズみたいな怪奇を取り出せる触手服。
他、623種の怪奇の成れ果て。人に捕まり道具として加工された怪奇の声、その使用方法と注意事項、動く仕組みに作成方法が一気に襲いかかって来た。この時ばかりは自動で分析する様に癖をつけた脳が憎い…!
つまるところ
「き゛も゛ち゛わ゛る゛…お"え…」
「はい袋」
「わぁぁ…千歌ー?落ち着いてー、深呼吸、深呼吸」
「吐いてるその子、大丈夫ですか?」
「いやぁ、怪具見すぎると吐いちゃう体質でね…」
「うぅ…商品減らせ…」
「お店を開くなと?」
背中をさする父さんの手が冷た気持ちいい…コレで俺がこの人を嫌う理由の一端が分かるだろう。
俺の眼鏡を母さんに売り、全国からたくさんの怪対員や怪具使いが売り買いする店。怪具売り界の売り上げNo.1の人気店。
「では気を取り直して…ようこそ、「荒木の裏猫店」へ。此処で手に入らない怪具はありませんので、ぜひごゆるりとお楽しみくださいませ…ね?」
この荒木◯魔女みたいなジブリっぽい店名の主が、俺の手を診てもらう相手である。…こんな一人一人に丁寧に対応してて売り上げが出るのかって?…真横に別の客と荒木が居るし、奥にも後ろにも同じ景色だから、自分を増やしてるだけだ。そう言う異界に店を構えて商売をしてる胆力は凄いけど、そのせいで623の怪具の情報に曝されるんだからこっちとしては溜まったものではない。
「それで、当店にはどの様なご用件で?」
「この子の左手と眼の調子を診て欲しい。アンタならこれ、どう見る?」
「ほう、医者の真似事ですか。其方の眼鏡の調子を確かめるなら兎も角、手なら其方の分野では?」
「さてね、幽霊とか魂の管轄じゃないから尋ねてんだ。因みに神様でも無い。だから幅広い知識のあるアンタを尋ねたんだ」
「そう言う事でしたか。では失礼ながらお嬢様、お手を拝借しても?」
胡散臭い顔が近づいて膝をつく。手を出せば座れる場所に案内されるだろうな。
薄めの半笑いの色白は不気味なんだよ。身体の中に何個も怪具仕込んでるからそれも嫌いだ。近づくって事はその影響範囲に入るって事だし。銃を頭に向けられた気分だわ。
問題は、その銃口を自分自身に向けてる事だな。
「…ところで何回目ですか?」
「…おやおや、初めての行動だ。…53回目ですよ、お嬢様」
「初めてと言いながら52回目は誤魔化しましたね」
「…本当に鋭い」
この異界時間の巻き戻しも出来るからコイツ52回今回の対応失敗してるな。
最高の対応と本当に死なない為とはいえよくもまぁ顔に出さないな。でも真横の空間に荒木の死体の山があるのは嫌なんだよ。自分の死体入れ用の小屋を作るな馬鹿野郎。
本当嫌い。こっちは繰り返しで荒木が死ぬのを無かった事にした痕跡を見れるんだよ。もっと自分大切にしろ?客の評判と安全と満足度以外も見るべき所あるだろ?
頭をコツコツ叩き、次の言葉を言う。来店7回目の、繰り返した動きだから円滑な動きだ。
「最高のパターンでない限り死ぬ怪具、脳にある奴外しません?この異界と相性よくても私の気分がよく無い」
「…こんな事言われたのは」
「言ったのコレで7回目。巻き戻しで少しずつ記憶飛ぶんだから毎回言ってるけど、いい加減やめなよ」
「…要注意リストの霧晴千歌さんはあなたでしたか。…これは思ったよりもお若い方だ」
「…なぁ百葉」
「毎回これさ。荒木も千歌も、拘るとこだと頑固だからね」
「…あの人接客で自殺して巻き戻しとか?」
「千歌が言うにはね。下手に渡す怪具間違えてもしょうがないからだと」
「…そりゃあ、嫌いだよ。千歌そういうの大嫌いじゃん」
両親の囁き声がお互いに沈黙している間に聞こえた。しょうがないだろ横で死体が増えていくの見ながらとか本当嫌なんだもん。
…うわ、横の死体増えた。それも10人分。
「分かり…ました」
「うむ」
此処に来た時はいつも向こうが折れて終わる。お互い相性は悪いが、妥協の先は死体の山だから妥協する訳にはいかないんだよな。1回目なんて如何に死なない様にしながら会話してたから胃が本当に痛んだ。
本当、大量の怪具と合わさって嫌な所で、嫌な奴だ。見てて腹が立つ。
荒木店長が頭にある鈴を取る。鈴と頭の間に血が糸を垂らしているが、別に重症では無い。肩にある怪具で傷は塞がるからな。
「では…ふむ」
店長は手を震わせながら俺の左手を診ていく。失敗が許されない一度限りなんて、店長にとっては凄まじい緊張と動揺をする案件だからな。まぁ死ぬよりマシだろ?俺相手の時だけは俺より自分優先しろよ。幾ら時間かけてもいいからさ。
特典の影響で出来た半透明な手だから構造見破られても困るけどな。子供が転生者なんて知るだけ損だろ?母さんもそうだけど父さんにとっては尚更な。
「すみません、もう少し…」
「いいよぉ」
「すみません、この怪具使いますね」
「いいけど「漣眼/乙」で見える波長の読み取り方は知ってるか?」
「…念のためにこれも」
「おー、巻き戻させない中での使い切りの怪具は大丈夫か?」
「…自費でやります!」
「舐めんな使用全額払えるさ私は」
「父さんの仕事の給料舐めんなよ?」
「…よし、あの辞典は確かあっちに」
「そこの棚の上から三段目、右から数えて4番目。1600年代の怪奇図鑑は其処に保管されてる」
「…お客様、もしや常客で?」
「いや、文字と鍵が怪奇になってるから見えた」
「…本当だ」
「対処にはそこの「闇雨落とし/乙」と「赫赫記/甲」が一番ローコストですぐに済むから。よろしく」
「…うちの子凄くない?後聞いてた以上に千歌の眼凄くない?」
「良いだろ?私らの子だぜ?眼は知らんなんか最初からそうだったしな」
以上、本来なら巻き戻して長時間念を入れて対応する怪具売りの、巻き戻し禁止状態での風景である。この数時間を巻き戻しで一瞬にする為に自分を毎回100以上殺すの正気じゃないんだよなぁ…。
「はい、診察終わりました」
「うん、それで結果は?」
「ええ、魂ではないですね。どちらかと言えば異界にある生身の手、別世界の手がこの世界に合わないまま生えてると言った感じです」
「…つまり?」
母さんと父さんがまとめる様に言う。…思ったより見破られたな。手を貸したのがまずったか。
「異世界の成人の手がこの世界に適応とかせずにくっ付いてます。奥様の言う通り魂では無く、旦那様の言う通り神格でも無い。正真正銘の只人の手です。…ただし、別世界の…が付きますが」
「…つまり、危険は無いと?」
「いえ、そう結論付けるのは早計ですね。別世界ですから、その世界に関係した事であれば何が起きるか不明、仮にその手が本来ある世界に触れれば異常な事が起こるでしょう。そうでなければ奥様の診た通り筋力のない手として扱えるかと」
加えて言っておくと、その世界は俺の前世だな。この手、前世の俺のだもん。何回も見て漸く見える程度に加工されてるけどな。この身体の手として見た目や遺伝を弄られてるが元の素材は前世の男だった時の手だ。つまり、死者の手である。…いや、ゾンビか?なんて言えばいいんだろ。
「なら、今まで通り手袋をして隠してれば問題は無い…か」
「はい、これなら筋力の増す手袋を着用すれば不便が無くなるかと」
「…別に今まで通りでいいと思うけど」
「千歌、仕事用の手袋そろそろ返しな」
「いいよー」
大人しく返しておく。元は母さんのを借りただけだからな。
「…ありゃ手袋が無くなっちまったな?こりゃ買うしか無いぞー?」
「…あ、あー!ずるいそれはずるっこだよ母さん!」
「千歌…父さんいつか騙されて酷い目に遭わないか不安になってきたよ」
「今のは母さんがズルかっただけじゃん!」
「ははは、ではご購入で宜しいですね?」
そんな訳で、新しい手袋をしっかり両手分買われましたとさ。…これ以上お金で両親に負担かけたく無いんだけどな。ただでさえこの世界での子育てはお金がかかるのに…。
「…おー、プルプルしてるけど辞書が持てる!」
「…「騎手型/乙」は常人なら岩を握って砕けるんですが…普段どれだけ筋力が無いんですか?」
「そこらの蝶に集られて負ける程度だよ」
「…そっちの方が怪奇では?」
「残念ながらただ弱いだけだね」
まあ手だけで腕や全身の筋力が上がる訳でも無いし、そんな物だろう。普段の生活に支障が出ないのはすごい有り難い事なのに違いなかった。この左右で白黒で色違いな手袋があれば髪が食べ物に付く心配をしながら食べる日々も終わりだ!
そんな訳でついでに母さんと父さんが仕事で使う怪具を選んで買いつつ、買い物は終わった。
「世話になった。今度は私らのこと覚えてろよ」
「そうそう、忘れられるって結構悲しい事ですから」
「今度はもう少し自分を大切にする人になっててね。ばいばい!」
「ではまたのご来店をお待ちしております」
そして俺は極彩色の移動でまた吐いた。
俺が巻き戻し禁止にするから長時間かかって観光出来ないし、これ不快だし、やっぱアイツ嫌いだわ。
霧晴千歌
買い物判定のダイスでファンブル出した。
霧晴百葉
買い物判定は成功だった。
霧晴健太
買い物判定はギリギリ成功だった。
荒木店長
必ずクリティカルな買い物をさせられるが拒否された。
『虹の先にある』
1970年代の怪奇。異界を渡る極彩色。
『鉄木犀』
1970年代の怪奇。鉄の皮を持つ木。
『放心みかい』
1980年代の怪奇。触れると赤く光る先に転移させられる。
『あやふや』
1000〜2000年代の怪奇。全てがあやふやになる異界の可能性が高く、特定の絵柄のコインを弾くと入れたと推定される。
『影無し』
影取りに変質する前の怪奇。影をじっと見てから空を見ると影が消える怪奇。
『録音みさき』
2017年の怪奇。破れば解放されるが、近くで喋ると取り込まれる写真。六人が上限。
『負担軽減催眠術』
1990年代に流行った怪奇。爪切りしながらある歌を歌えば気分が良くなった。
『揺らしミミズ』
ミミズの妖怪。通った後の地盤が柔らかくなって建物が倒れる。
『
大きくなったり飛んだりするチェスのコマ。勝負に負けた奴に厳しい。