怪奇ばかりな日常とゲェム記録   作:何処にでもある

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 すてぇたす


木香証
男  6歳
職:探索者/通常
出:地縛霊/幽霊

 

戦闘 1  1D6+2
探索 2  2D6+3
精神 1  1D6+2
判断 1  1D6
霊感 6  6D6+3

    スキル   
「怪具/過去時計/丙」
「怪具/騎手型/乙」 
          
          
          
          
          
          
          






霧晴千歌
女  6歳
職:小学生/1年
出:転生者/人間

 

戦闘 0  0D6+2
探索 1  1D6+5
精神 2  2D6+1
判断 2  2D6
霊感 8  8D6+15

    スキル   
「怪具/晴眼/甲」  
「専門/葬儀/丙」  
「怪奇探査」    
「怪具/騎手型/乙」 
          
          
          
          
特典【ゲェムガチャ】







ゲェム-考えない

 

 

『ソナーの調子はどうだ』

『岩礁しか無いな。至って普通、問題ない』

 

 気づけば、僕は立ち尽くしていた。

 と言うより、動けない…と言うのが正しいだろう。

 

 さっきまで死体だった人達が生きて会話している。奇妙だが、何故そうなったのかは声の説明で理解していた。不思議と外国語が理解できたから、彼らの会話も問題無く聞き取れた。

 

 筋肉質な人が運転している人に話しかけながら、ベッドに座りながら靴を結んでいた。靴紐が解けていたらしい。

 

『あっとそうだ。ケリー。悪魔の調子はどうだ?取り憑いて今日で30が過ぎたし、何か変化は?』

『問題なし。肉が食われるって聞いたけど、何も変化は無い』

『そうか。ならいいんだがな』

『マイク、心配なのは分かるが、今日だけで何回も聞かれてうんざりなんだ。これ以上はよしてくれ』

 

 筋肉な人…マイクが細身の男…ケリーにも声をかける。どうやら心配性な人柄みたいだ。

 ケリーはそれにうんざりして、文句を言いながら立つ。その拍子に靴と何かが当たって転がっていた。見れば、それは戦車の模型だ。木製で、誰かの手作りなのが見てとれた。

 

『はは、だがマイクの心配も尤もだ。俺達は陸よりマシな扱いとはいえ、上にとっては使い捨ての兵士。武器がいつ暴発するか気が気じゃ無いんだろう?』

『そうだけど…でも45回も聞くのはお門違いって奴じゃ無いか?』

『よし、じゃあケリー、腕相撲で決めよう。マイクが勝てば今日はひたすら答えて、ケリーが勝てば今日は質問しない。それでいいだろ』

『よし、来い!』

『筋肉野郎が3回勝負だ!』

 

 マイクとケリーが腕相撲をし始める。ベッドの上でお互い伏せての腕相撲だ。

 

『…ふむ、コーヒーでも飲むか』

 

『俺の勝ちだな!』

『くそ!』

 

 1回目、マイクが勝つ。

 暫く何も無いと見たのか、運転の人が手に持った腕時計を置いて立ち上がる。運転席とベッドの間の食料置きから、コーヒー豆と飲料水を取り出した。一緒に覗くと、中には携帯食や拳銃が置かれている。

 

 その間に、ソナーの方で一瞬、何かが映り、運転の人が戻った頃には消えていた。

 

『ふっふふーん』

 

『しっ!俺の勝ち』

『ああもう!腕相撲でお前に勝てるかよ!』

 

 2回目、マイクの勝ち。3回勝負なのでこの時点で勝敗は決まった。

 

 暫く平和な時間が過ぎると、突然潜水艦のライトが消える。

 

『うわ!』

『なんだぁ!?』

『怪奇だ!総員衝撃に備えろ!』

 

 運転の人が言うと同時に、静まり返る。怪奇が襲うのを待っているのでは無い。

 

 もう、死んでいたから静かになったのだ。

 

【…ふう、やっと神社に着いた…足りないピース、連れてきてやんよ…はい、ここからできる事を解説していきましょう!】

 

『…全部終わったよ?』

 

 真っ暗な艦内には僕が最初に訪れた時と同じ位置に死体があり、死ぬまでの数分を見ているのが伺える。死んだ後も変わらずに映される過去の風景に、僕ができる事は何も無かった。

 

【その腕時計の針を突けば最初から見れます。そして今見たのは過去の景色で物理的に干渉の出来ない映像です。ですが世の中には色んな怪奇がいるのでね。映像越しでも過去に干渉するなんて簡単に行えます】

 

『でも、どうやって…』

 

【先ずは分針を突きましょう】

 

『…分かったよ。やればいいんだろ?』

 

 声に急かされてると気づき、分針を突こうとして、改めて見て気づく。

 この腕時計は錆びついてはいるものの、運転をしていた人の物とデザインが同じだった。どうやら、運転席で呻いてる間に腕に着いたらしい。突く前に少し弄ると、時計の裏側に名前が掘ってある事に気づいた。

 

 ジョン・コフニス

 

 それが運転していた人の名前だった。暫く黙祷をして、それから分針を突くと、時計が半回転する。最初からだ。

 

『ソナーの調子はどうだ』

【要は警戒させればいいから最初は…『人形』さん助けて……こうよ】

『岩礁…待て、ソナーの表示が可笑しい!』

 

『え、うわ』

 

 初手、真っ赤。

 

 失礼、取り乱した。声が喋ると同時に、視界全てが真っ赤に染まった。どうやらソナーの画面が異常な程赤く光っていて、そのせいの様だった。

 

『全員装備を着けろ!休憩は終わりだ!』

『『Да-с‼︎』』

(イエッサー!!)

 

 怪奇の攻撃を受けたと判断した3人は暑さからか脱いでいた装備を着込み始め、ソナーから距離を取った。何だろう、僕が考えていたちょっとずつ変化させるタイプじゃないな。思ったより大雑把な対応だ。

 

【…そんなチマチマやってたら日が暮れちまうよってね…はい、『赤テレビ』は見る回数が一定以上で異界に連れ去る怪奇ですが、その特性として電子機器を伝って自身を増やして行きます。その性質を利用してお届けしました。…ゲームボーイ画面が真っ赤になっちゃったな】

 

『ええ…』

 

『よし、真っ赤な光を出す以外に効果は見受けられな…』

 

 暫く警戒していたジョンが近づくと、光点が一つ近づいてくる。どうやら怪奇に侵食されたソナーは怪奇の影を逃さないらしい。

 

『敵軍の襲撃だ!全員「呪い避け」を使え!』

 

『備えろ!』

 

 全員が藁で出来た人形を千切ると同時に悲鳴が響き渡る。それが何なのかは分からないが、その手にあった藁人形が表面の藁だけ残して崩れ落ちた事を考えると、確実に何か防いだのは確かだった。

 

『大金叩いて買ったのがこうも簡単に無くなるとは、悲しいもんだな』

『だがマイク、お前のものを見る目は確かだったな。高いが、これで何も抵抗せずに死ぬ事は無くなった』

『よし、ならとっとと此処から離れる…ちッ!くそっプロペラが破損しているのか!?前に進まない!』

 

 ジョンが運転しようとするも、思う様に進まない。その間にも、光点はこちらに向けて進んでいた。

 

【画面が見えないなら此処からは声だけで…信じるしか無いか…では、真っ赤なソナーに向けて瞬きしまくって過去の船に取り憑きましょう。地縛霊なのに憑いていないでいると簡単に消えちゃうのでね。海のもずくになりたく無いなら…ね…分かるね?】

 

『あ、確かにそれなら行けるかも知れないけど…どうやって?』

 

 言いたい事は分かる。僕が運転していた時、潜水艦は逆さまでも問題無く進めていた。それは確かに僕がこの潜水艦に取り憑いていたからと納得できる。だけど、僕はあくまでも過去の景色を見れているだけで、この身は今もエメラルドの岩礁を漂っているだけに過ぎない。確かに『赤テレビ』というのは過去に行けていたが、僕が同じ事を出来るとは思えなかった。

 

【リザルトになって無いな…ほーん…それなら一つずつ言ってやろうじゃん?一つ、『赤テレビ』は見た回数が一定以上で異界に連れて行く。此処で言う異界とは、消えた黒海である。つまり、異界の中でなら同じ異界に動くだけの転移装置でしか無い訳で】

 

【一つ、『赤テレビ』は電子機器を伝って増えます。元からテレビっていう映像を映す物を媒体にしているだけあって、映像越しからでも感染して増えます。だからテレビが全然広まらないんですが、今回はその厄介さが利点となった】

 

 此処まで聞いて、僕も理解できた。急いで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

【一つ、現在の『赤テレビ』の感染経路は、私の奴→現在の潜水艦のソナー→腕時計が見せる景色から感染した過去の潜水艦。まだ2点しか経路が無いなら、行き先は固定っと…よく短時間で思いつけたなこの攻略法…】

 

「くそ、まともに動きやがれってんだこの棺桶が!」

 

【…あ、そうだ。一つ言い忘れてる事あったわ。幽霊って土地に憑けば『地縛霊』なんですけど、物に取り憑くとなるとなると『地縛霊』の中の別種に変わるんですよ。】

 

 浮遊感と同時に、今までよりもずっとハッキリと声が聞こえた。誰も僕が見えてないから、突然現れても変化はない。急いでこの潜水艦の地に取り憑く。『地縛霊』は土地と建物に取り憑く霊だ。それなら、乗り物だって建物の一つに数えてもいいだろう。ほら、車が家なんて人がいるって千歌に聞いたことあるし。何より意識せずに一回やれたんだし、もう一回やれるはずだ。

 正直流れに乗せられてる感じはあるが…この人達が生き残るなら僕は騙されていい。どうせ成仏する予定だったんだし、人助けの一つや二つ、ついでにやったっていいだろう。

 

【その名前を『付喪霊』。建物より小さい物…道具に取り憑き、その在り方を変質させた人達の事を指します。変わり方は取り憑いた道具側に精神が寄っていく事。そして見た目と性格が周囲のイメージに引っ張られる事です。記憶は消えないのでその点は安心ですね】

 

「…これは、いや…今はいい!動ける様になったんならこっちのもんだ!お前ら手伝え!全力で撤退するぞ!」

 

 3人の見事な連携で潜水艦が動き出す。光点の動きは遅いから僕の足の遅さでも何とか撒く事ができた。ベッドに腰掛けて一息吐く。

 

【そして船は大抵女神とか女性として見られがちですから…あー、つまりは…】

 

『…??』

 

 変化は分かりやすい物だった。身体に熱が宿って、足が骨折したみたいに痛くなり、背丈が小さくなって視点が変わったのだから。ベッドに座って一息吐いたのもあって、彼らからは丁度見えない位置での変化だった。

 

「…何とか撒けたか…暫く警戒を続けろ。他に居る可能性がある」

「はい。ですが…何故この艦は動き出したのでしょうか?」

「ああ、それなんだが…霊が憑いた…と思われる」

「上官、それは冗談で…本当、何ですね?」

「…いいか?俺たちに見えるかは兎も角、せーので振り返るんだ。俺たちを救っただろう女神様だ。警戒するのと同じくらい、気を払わないといけない」

 

【女 体 化 禁 断 の 二 度 打 ち】

 

 …奇縁は、どうやらまだ巡り続けているらしい。僕はもう少し続く人生を、僕なりに謳歌する事にした。

 

 


 

 

「それではまた次回。…影響は…幸い外国の事だから親子関係とかの変化はないと見たが…どうだ?」

 

 ゲェムが中断できる様になったので中断し、リザルトに進みつつ周囲を確認する。日はまだ暮れておらず、今日帰る分には問題無いだろう。結果から言おう。俺は幽霊の彼をゲェムに参加させる事は出来そうにない。

 

 元々のプランでは沙五間村と同じくらいの復帰難易度を想定していたのだが、見た感じだとステージをクリアして一回その拍子に抜け出せるかどうかだった。

 なので俺は次善のプラン、出来るだけ影響のない様に事を済ませる事にした。向こうから中断を提示されないで止めると酷い目に遭うのは知ってたから、中断が出てくるまで進めた。

 

 俺は元から頭のいい方ではない。知らない怪奇はまだまだ居るから生活のテストはギリギリだし、優秀に見えるのはこの眼と前世の知識があるからだ。それを言い訳にするつもりは無いが、考え足らずでこうなってしまったのは俺の失敗で間違いない。今回は、運が良かった方かもしれないが。

 

[いやー、それはないやろ!]

 

「あっははは!あ、おかえり!」

「うん。戻ってきたよ」

 

 変わった後で俺が居たのは橘の家の廊下。そこから居間の所に行く。

 人形が端っこに置かれ、お菓子と一緒にアナログテレビが置かれていた。

 

 『赤テレビ』が出てきたのはほんの数年前。まだまだただの現象としてそこにある筈の物。つまり、テレビを見るには避けて通れない相手だった。

 そこに、70年分の研究時間の猶予が追加されて、人がもっと早く対応できる様になり普及度が根本から変わった…といった所か。

 

「でもごめんね。そろそろ帰らなくちゃ」

「あ!そっかもうこんな時間か。ならゲームをするのはまた今度ね!」

「うん、また今度」

 

 家に帰り、テレビを付けてみる。生きた人の為の番組が大半を占めて、幽霊用のは夜に回されていた。ここにテレビがあるのはアンテナが窓外にあったから察してはいた。

 世界地図の教科書を確認する。一年から配っておくのはどうかと思うが、それで地図の確認が出来るのだから文句は言えなかった。変わらず、真っ黒な塗りつぶしと『黒谷』の2文字。変化はなかった。

 

「…変化なし。変わったのはテレビの広まりが上がり、ガソリンが安くなってたくらい。生き死にに対する変化は確認されず…怪奇の大きな変化も見られず…精々が『赤テレビ』対策がアンテナに付け加えられて、心配する事は無くなった…ゲームボーイの感染も直せそうだな、やっておこう」

 

 真っ赤な画面のゲーム機をアンテナに触れさせる。画面は正常になった。変わった後では、随分と大人しい怪奇になったと思う。

 

「だけど、その分『赤テレビ』確保は困難になり、見かけるのも困難…か」

 

 変化の内容に頭が痛くなってきた。今回は俺から見ていい方には転がせたが、このゲェムをやってての変化には脈略がないし、その把握だって苦労する。

 

「誰も消えてないなら…いいんだ」

 

 俺がゲェムを始めて、最初から帰る方法が無いと知って周りを見て、使う怪奇の影響を考え、幽霊の彼を見殺しにしない程度に海に沈む。

 

「はは…起きなかった事考えての憂鬱ヤバ…ダメダメ、この世界でそういうのは死に近づくから考えない…考えない…」

 

 ノートを取り出す。裏世界探索ゲェムをやるのをやめようと考えながら。

 

 どうせやめるなんて出来もしない癖にな?

 

 


 

 

ゲェム記録

 

2020年4月21日

 裏世界探索ゲェムをして大抵の予想が裏目になった。俺の記憶とこのノート以外…は違うな。ゲェムをした結果、怪奇が一つ無力化され、テレビが普及していた。

 良いことではあるが、これがもし悪い方にいってたらと思うとぞっとする。このままやらなければ彼がどういう死に方をしたのか知らないで済む。知らないなら、耐えられる。

 

 それで良いのか?

 

 裏世界探索ゲェムは封印したい。それこそ、前の災害みたいな詰みにならない限りは。

 

 






霧晴千歌
 変わった内容に安堵して、それでもいざという時は頼りにしないといけないのが嫌。
木香証
 『付喪霊』になった。戦争で消えた。

『赤い画面』
 70年前に発見された怪奇。知ってる人は殆どいない。
『海沈め』
 悪霊とその住処を海にはなち、近くを通った艦を沈める。

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