怪奇ばかりな日常とゲェム記録   作:何処にでもある

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 育成ゲームって暫くやってないといざやる時忙しくなりますよね。




ゲェム-あと二体

 

 

「…家に友達が来たのはいいんだ」

 

「此処が霧っちの家か!…お香の匂いすごくない?」

「ふーん。いいんじゃ無い?私の所程じゃ無いけど!……橘、親が葬儀屋なのよ、仕事柄って奴!」

「あ…霧っち急で悪いけど」

「許すから気にしなくていい」

 

 それは日曜日。過去が変わった影響も把握し始め、それよって死んだであろう、俺が把握しきれない人々に対しての葬式を行い、自分の中で区切りをつけていた時の事だ。

 自宅を把握していた真倉と橘が遊びに来たのだ。それはいい。俺としても嬉しい事だ。なんだかんだ友達が来るって状況で嬉しく無いわけないからな。

 

「だけどなぁ、理由がなぁ」

 

「それじゃあディスクをー!インっと」

「あ、オレンジジュースいれたわよ」

「ありがとー!」

 

「…それやるの私じゃないか?」

「…私気づいたのよ。霧晴はちょっと雑に扱うくらいがおどかしに来なくなって丁度いいんじゃないかなって」

「前の根に持ってたの?ごめんて」

「いーえ、暫くはこのネタで居座らせて貰う事になってるから。謝罪は受け付けないわ」

「んえぇ」

 

 我が家にもテレビが昔からあった事になったのは言っただろう。その結果、ゲェムの方から元気に迫る様になった。それも、父親から許可を貰ったらしい真倉も一緒に。

 

「そういえば霧っちが誘った相手どうだったー?」

「…無理だったなぁ」

「あちゃ、残念」

「それ、私じゃないわよね?だれ?」

「…幽霊」

「いや、そりゃ無理よ霧晴」

 

 いけると思ったんだけどなぁ。こう、付喪霊にする迄は予定通りだったんだけど…帰り道が思ったより全然でェ…全くでェ…異界を崩壊させた衝撃での脱出しかなくてェ…それの影響が大陸一つは消えそうな奴でェ…木香証くんと大陸一つの命を比べて…うん、比べた自己に嫌悪した件は置いておこう。見えるっては損ばかりだよな本当。

 

 女子三人姦しく、そういや俺中身男なのに普通に混ざってるな問題あるかと過ったが、それ以上に今からのゲェムの方が問題だから捨て置きつつ、会話してる間に読み込みが終わった。前より早いのは技術の発展の成果なのだろう。

 

「で、どんなゲームか、今なら言っても忘れないんじゃ無い?」

「あ、そーだね!なら霧っちのプレイ一緒に見ながら教えるね!すごいんだよ霧っちの指使い!…うん、すごいよ」

「最後歯切れ悪いわね。何?指が17本にでもなるの?」

「え、何それ」

「昨日霧晴が見せてきた一発芸」

 

 後ろで橘が真倉に教える感じになったから最初は俺単独でやる事になった。

 

「…よし、覚悟は済んだか?私は出来てない。そんな感じで…はい、よーいスタート」

 

 

【[放置期間:9日間]の報告記録】

 

 

 おっとこのゲェムもしや放置してる間も進行するたまごっちタイプの物だったのか?まいったなぁ早速想定外で心折れそうだよ。

 

 


 

 

1日目

 

「帰ってきたか、34。今日は一体どんな報告なんだ?まさか10体は捕獲したとかじゃ無いよな?」

 

[マスター、ご期待の所悪いのですが、初動が大事という事で先日は多くの報告事項がありました。が、今後はそうでもありません。今日は研究が進み、2体を一段階安定させる事に成功しました。以上です]

 

「…あ、これで終わり?…いや、いいんだ。俺の感覚が麻痺しそうになってただけだな。うん。他にも同じ義務を任された人と比べたら、順調だ。よくやった」

 

2日目

 

「今日はどうだった、34。管理は順調か?国から任された仕事は確保と収容か撃退だからな。脱走したら大変だぞ?」

 

[はい、マスター。今日は他3体も一段階の安定化に成功。また、特異個体『垂らし糸』の先にある異界調査にドローンを向かわせ、その先が深海と同様の環境であると判明しました。以上です]

 

「…ん?資金の流れにドローンの購入履歴は無いんだが…」

 

[手作りです。マスター。手隙の間にジャンクの山から作りました]

 

「…作り方のデータなんてどこで拾ったんだ」

 

3日目

 

「あ、聞いてくれ34!今日はいつもの栄養ペーストからちょっといいのにしてみてな!どうだ?健康な状態になってるか?」

 

[はい、いつも通りですねマスター。遅れましたがこちら生活費の500クレジットです。当面の食事と環境維持にご使用下さい]

(500クレジット=5万円相当)

 

「おお、ありがとう!…どこから出たお金だ?今は簡単な依頼で稼いでそれを全て管理研究に注いでるだろう?」

 

[私が受けた依頼人から、私の特異存在に対する対応記録を参考に分析プログラムを作りたい、と言う方が尋ねて来まして。今後の取引相手としてコピーデータを500クレジットで売りました]

 

「なんだ…34の判断ならいいんだ」

 

【よし、未表示の文章も見終わったしスキップだこんなの。まとめると自警団と荒事の伝手の確保、周辺の地元の為の組織と接触、先に指定しておいた研究をギリギリで完了、売却したデータで完成された「タブーリストver1.00」プログラムによりやっちゃダメな事から一つだけ解析するプログラムの構築に成功。撃退効率が向上して同業他社も経営が復活し始めたのね。それにより治安に不安の兆しあり。そろそろ行動しないとやばめっと。ギリギリ間に合った形だなぁこれ】

【いや今いいとこだったじゃない何スキップしてるのよ】

【霧っちはゲームの中の人の話最後まで聞かないからね!】

 

 うわうるさっ。

 …いや、漸く帰ってきたというか、繋がったと言うべきか。向こうから繋げてくる関係上、繋がってない間は私だけで頑張る必要があったからこの騒がしさを久しく忘れていた。しかし任されていたタスクを全てこなした翌日に繋がるとは、何ともタイミングのいい。

 

[作業機の諸君。今から結構忙しく指示するから事前に動作チェックと起動していなかったプログラムを待機させたりしてくれ]

 

[オーダーを確認。マニュアル操作への移行準備…完了しました]

 

 こういう指示にも随分慣れた。社会人9日目、それも指示する立場に直ぐには適応するのは厳しいと見込んでいたが、案外私はやれる子だったようで上手いことこなす事が出来ていた。

 

【……あー…うん、お?…は?ヤバ…いや倉っち居るし作業機10機ならやれるかな。はいでは本日は危険度の高い奴3体と必須っぽいの捕まえにやっていきましょう!元は必須分しかするつもりは無かったのですが、ちょっと放置するのはダメな相手も今回は捕まえていきます!時間との勝負なので早速行くで倉っち!】

【え、私?まだ操作すら】

【いやその血がいる相手なんよ。兎に角何でもいいからコントローラ持って!十字キーで手持ち、下のスティック2つで移動と視点だから!】

【ウチはー?】

【怪具持って!後買い出し!土地の確保!今から言うの買ってドローンで送っといて!】

【分かったー!】

【…なんかゲームって言うより軍隊の指揮って感じねぇ。理由は聞いたけど!】

 

 …なにか大変な事が起きそうだ。

 10の作業機が一斉に動き、事務所を後にする。管理対象はもう放ってても問題ない程システムを完成させたから留守にしてても問題ない。番犬代わりに雇ったフリーの機械もいる。いやはや、今日は忙しくなりそうだね。

 

【はい、到着】

【よっほっ!見なさい大分上手くなって来たわ!】

【…あんまり緊急ジャンプし過ぎると早く電池切れするから注意ね?】

【うっさいわねそうでもしないと追いつけ…今まで自分の操作で気づいて無かったけど何その指の動き…え?なにそれ】

【…風タクRTA式水泳法をやるのとそんなに違いないからこのくらい普通だよ】

【足指使うのは普通じゃ無いのよ?】

 

[ここは…使われなくなった生産プラントじゃ無いか]

 

 指示を受けた8体の作業機は機械の身体であるが故に一切の休憩を挟まずに異常な速度で進み、外殻の町でも特に離れた場所に着いた。うーん、この移動の動作をプログラムにして売れば儲かりそうだな…いや、後にしよう。

 そこはどこまでも続く枯れ果てた農地。昔はコロニーに住む人々の為に使われていたものの、効率的な高層生産プラントの発明により使われなくなった場所だ。

 その跡地も町の住民は食料を作るのに使えないか試したが、一、二年で荒地となってはもう価値はないと誰にも見向きもされなくなってしまった。元々向いて無い土地に肥料撒いてゴリ押してたらしいからね。使わなくなったらこうもなるのさ。

 

 そんな誰もいない荒地を作業機が進むと、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 マニュアル操作中の作業機から異常事態を知らせる通知がどんどん来るのを封殺する。システムを良いのにすると、こう言う時通信容量を使う弱点があるのはいけないね。それに反応する怪奇だったらこれでアウトだった。

 

【はい。農地にする、荒れる、放置する、コレで起きる異界の怪奇は何でしょうか、成績優秀な倉っちさんどうぞ】

【…さっきから思ってたんだけど倉っちって何よそんなスクラッチみたいな…まぁ、相当な無知かバカか余裕無いと出てくるわよねコイツ。自社事業の歴史で見かけたわ。『森の奥から』ね】

【正解!大昔ならいざ知らず、日本では肥料と植木鉢でどこでも植物を育てられる様になってから目立った奴ですね。コンクリートの上を荒地と見做して放置された植木鉢と土から森の氾濫が起きて街中が木に沈んだ奴です。200年くらい前の事ですね。それに連鎖して火と木に関係した怪奇で大変だった物の、10日で鎮圧されました】

【その特徴は近づかないと認識できない木と空間を作る霧の生成。合わせて、気づけば森の最深部に取り残されるという現象が発生。転移したと思う人も多かったでしょうけど、実際はそう錯覚するほどの速さで繁殖してるだけ。竹より凶悪よね?】

【そろそろ発生しそうだったんでね…今行かなきゃ認識困難な木の津波で潰されてました。だから、急ぐ必要があったんですねぇ】

 

 …待て、と言う事は今も尚この霧深い森はその領域を広げていると言うのか?転移したと錯覚する速度で?空間を作ると言うことは、条件次第で光よりも速くなるという事。そこにこの繁殖速度では、今頃マスターは…

 

【で、増殖の阻止は?タッチーさんどうぞ】

【もう終わってるー!「火元」と「蒸巣」の甲ってすごいね!大爆発が起きたみたいな煙が出てるけどあれ全部蒸気で出来た蜂なんでしょ?画面越しでも凄いよね!】

【…これ言う必要ある?画面見れば一発じゃない】

【まぁ全員テレビの前で横並びだし声かけるまでもないけどさ。でもこういうのはお決まりって奴だから。ね?】

 

 プログラムは安心感で椅子から崩れ落ちる事は無い。身体が無いからね。だが、それと同じくらいの物を今の私には感じた。はー…ともあれ、それなら安心だ。流石危険度が高いと言うだけはある。これは確かに急がなければならなかっただろう。

 

【それで、どう対処するの?私の所の会社だと燃やし尽くしてたんだけど】

【あ、あっしは盲目でやんすから…もう終わった事を更に終わらせる方法なんて知らないでやんす】

【…何その喋り方】

【霧っちはゲームしてて余裕ある時大体こうだよ!】

【コイツを見てくれ…コレをどう思う?】

【今霧…ち?が撮ったら消えた写真…写った裁縫で使う針…】

【…タッチー注意点言った?】

【許せ霧っち】

【許す…でも反省ね?】

 

 とさりと隣に何かが落ち、作業機の一体がその箱を開く。どうやらドローンで上空から落として来たらしい。中身には写真が一枚入っていた。針の写真だった。

 

【さっきまでさ、森に8体、タッチーに1体、残り一体を私が別行動で動かしてたじゃん。それで一つ『似たもの写真』って怪奇を収容してね…写真と対応した物の影響を受けるんだ。そして収容した怪奇はー?】

【あ!使える!】

【…待って、痛いいたい!それ絶対いーたーい!……つぅ…オレンジジュース飲み干してやる…】

【許せ倉っち…】【………ゆるす】

 

【では写真に滲む血をどれでもいいので木に擦り付けましょう】

 

 哀れな子だ。心の中で合掌しつつ、写真に滲んだ血を近くの木に擦り付けた。

 

 その途端、6体の作業機に森が襲い掛かり、作業機は森を全て飲み込んだ。そう、表現するしかない光景だった。

 

【『森の奥から』から発生した木は、霊長類の血と触れる事で変質します。近くの人型のものに入り込み、血と人型のものの二つの性質を得た、近づかないと認識出来ない一応動ける木になります。今回は倉っちの優秀さと作業機の従僕性を得た木…片方が機械だから今回はゴーレムみたいになるのか?…関係ないか…ですね。質量どうなってるんだと思うでしょうが、霧が作る空間に仕舞われるだけなので重くなります。下手に近づくと引かれてくっついちゃうので今すぐ逃げましょう】

【…これ霧…ちとたち…ちのじゃダメだった?】

【この眼を見なさい…ダメだろ】

【神様怒っちゃうから…】

【安牌ってわけね…】

 

[…は?]

 

 土が捲れて、森を飲み込んだ作業機に付着する。森を取り込み自我を得た作業機から伸ばされた手が見えたが、それに構う余裕は無い。10体居ればいけるの意味がまさか生贄の数だなんて私も知らなかったんだ。飲み込んだ作業機との通信が声の手によって切られ、声の操作で無事な作業機は逃亡した。

 

 前と上から、この9日間で見慣れた蒸気の蜂が重力に引き寄せられていく。大量の火の粉、炭と灰が視界を塞ぐが、残った2体の機械の足を止める物では無い。そうして進むと、後ろから引き寄せられる力が収まってきた。よろよろと無事な作業機が姿勢を立て直す。

 

 振り返って見たものは、土と、その周りに出来た灰色の谷だった。

 

 集まり切らなかった灰と炭の雪が辺り一帯に降る。それはある種、火山灰のようでもあった。

 

【あ、この土地の確保終わったよー!不良在庫だからって企業から簡単に権利書貰えた!】

【ありがと。…これが『森の奥から』という怪奇です。発生、繁殖、終わりまで全てが人や猿に対する殺意でもあるのかって程ですね。犠牲者20万は伊達では無いです。今でも植物の自家菜園してる家には監視官が来る程ですから、コレだけの被害で済んで良かったです】

【監視官の仕事代理して派遣してまーす。…周辺住民にも感謝されて良い仕事よ?】

【そんな企業もあるって感じです。ただ、その分利益も有ります。異常繁殖する木が土壌になった山は今でも肥料要らずの農地ですし、時間が経てば作業機の中の森も腐って段々と外に排出されます。そうすればいずれ、埋まった彼らを掘り起こすことも出来るでしょう。森が死ぬまでは死ねないので】

【救出作業はそこそこ儲けの出る事業になりまーす。…心は死んでても『人形』は直せばいいし、ご先祖を救ってくれてーとか言われるからやりがいのある仕事ね】

 

 何だろう。誰か倉っちという人の口を塞いでくれないか?あの一瞬だけとはいえ、この回路に心が宿ったのが確認できてたんだ。その上で救出が200年はかかると言われたら…ちょっと怒りたくなる。

 仕方なかったとは、分かるんだけどね。人と機械、どっちを選ぶかなんて、誰でも機械だろうから。利益で言えば今の話を参考に試算して既に利益の方が上なのは把握している。それでも…やるせないなぁ。

 

【倉っちー?針刺したの謝るからそんなトゲトゲしないでねぇ?…では次行きますね?次のはもうちょい楽です】

【…アトニタイ?】

【うん。あと二体と細かいの複数。細かいのは私が別で動かしてるので済ませるけどさ。そこはタフな私にドンと任せといて】

【…タフ?】

【がんばろー!】

 

 そう言えば、まだいるのか…霧っちという子にこれと同じくらい危険だと認定されたのが。

 今日は止みそうにない灰の雪を後にし、二体の作業機が移動する。一瞬で終わり、一瞬で6体が犠牲になった。

 

 …どうやら、私の思っていた以上に今回は大変なことになりそうだね?…長い一日になりそうだ。

 

 






霧晴千歌
 夏休み最終日に溜まった宿題をしてる気分。機械は遠慮なく必要な犠牲にできる。
真倉朝凪
 地味に操作してた作業機がやられて腹が立っている。さーちゃんなんて名付けようとも考えてた。
橘多々良
 裏で色々して、交渉とかは適時真倉と交代してた。雰囲気で楽しんでる。
橘夏奈
 霧株がジワ伸び。倉株が下落。多々良株ストップ高。

『森の奥から』
 霧晴は見た瞬間「は?ヤバ…」と言った。今も海外で偶に出てくる。
『似たもの写真』
 写真に写ってるものと同じ物の変化をリアルタイムで反映する。りんごの場合なら食べると写真のりんごも咀嚼されて写真からりんごの汁と種が零れる。
『とまる』
 霧晴は見た瞬間「…うん、お?」と言った。とまる。
『   』
 霧晴は見た瞬間「……あー」と言った。助けたい。

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