怪奇ばかりな日常とゲェム記録   作:何処にでもある

19 / 72


 怪奇に関係しない日常がどんな感じか。




日常-答え

 

 

 天気がいい日は一日がいい日になると思う人は結構いるんじゃ無いかと俺は思う。少なくとも俺はそう思うタイプだ。しかし中には曇りや雨の方が良いと言う人もいる。そういう人達にとって、梅雨や秋時雨(あきしぐれ)の時期は一年の中で2回あるスーパーな日々だと思うんだがどうだろう。

 

「ずぶ濡れの悲しみに包まれて…くしゅん」

「ざまぁないわね…タオルやるから拭きなさい?」

「霧っちハンカチあったから拭いて!」

「心はあったかいね…」

 

 少なくとも俺は、朝は晴れてたのを確認していた。

 

 結果?靴下からパンツまで全身の衣服が全滅になったのを見なさい。非力なのに何故か風邪はひきにくい体質でも風邪引く状況だよ。

 

「天気予報見れば分かったのにどうして見てないのかしら…」

「空が…晴れ渡ってた」

「霧っちってもしかして自分の眼を盲信してるタイプ?」

「少なくとも怪奇で間違えた事は無いかなぁ」

「普通の事も見なさいよ…」

「でも学校に着く直前まで晴れてたし…この様だけど」

 

 タオルやハンカチで眼鏡と顔と手は拭き、服の裾を絞る。自分のハンカチはスカートと一緒に荼毘に伏していた。

 

「…服、なんか透けてない?」

「…あんまり見て欲しくはないかな。肌着は着ててもそこはね」

「着替えは…持ってる訳無いわよね」

 

 俺は前世が男でも普通にスカートや女子もの着れるタイプだからその辺りに羞恥心とか無いけど、それでもちょっと透けてしまうのは多少恥に感じる。この年にしてはちょっとくびれとかあるし、スタイルは良い方だからな。将来チビになるんじゃないか?俺。

 だが多少だ。これで一日過ごす事に問題はない。前世の俺はコレよりヤバい格好をコスプレで着たことがあるからな。男のミクはネタとしてウケがいいと思ってな…あるオフ会の罰ゲームで桜色の方で大通り歩いた経験よりはマシだった。

 

「湿気すごいからなぁ…乾かないだろうけど…今日はコレでいく」

「………私は一向に構わないわ!」

「欲望が見えるね」

 

「…流石に見てられんし、俺の奴使えよ」

「おー、桐根(きりね)君ありがとう」

「別に。お前変なとこで鈍臭いし…」

 

 最終的に隣の男子が持ってた上着を貸してくれてこの話は終わった。

 桐根総(きりねそう)。俺の席窓側の一番後ろなんだけど、その隣の男子だ。コレまで授業の時とか偶に鉛筆貸してもらったりとお世話になっている関係だ。地味に仲がいいぞ。

 

「鈍臭いとは聞き捨てならないわね。具体的に言ってみなさい」

「愚痴なら幾らでも言えるぞ。黒板に何書いてるのか毎回聞いてくる」

「霧晴…?あんた眼鏡掛けてるわよね?」

「ぼやけててちゃんと見れてるか自信無くて…この眼鏡伊達だから…」

 

 お陰でお世話になってます。前世の教育が無かったら成績ダメだったぜ俺。

 

「変えろよ。…よく机の上にある鉛筆を落とす」

「霧っち眼鏡の度数合ってないんじゃない?」

「0よりマシなんだよなぁ」

 

 知ってる授業はさ…眠くなるんだよ。そしたら鉛筆とかよく落としてな?ポケットに入れて固定するのは俺の常套手段になったよ。

 

「よく転んでこっちに倒れて来る」

「椅子と机の間がね…ダメなんだ」

「桐根アンタ私と席交換しなさい。私が受け止めるわ」

「よし、いつでも来い。俺はそれを歓迎する」

「霧っち後ろに居るから知らなかったけどそんなにダメダメなんだ…」

「運動神経無いって悲しい事なのよ橘ちゃん」

 

 何か引っかかって転ぶんだよねあの間。指は思い通りになるし鉛筆回しもほら、こんなに出来るのに…何だかなぁ。

 

「着席ー。朝の会始まるぞー」

 

 話は其処で終わり、みんなが自分の席に向かう。今日も今日とてそんな日常を過ごし、放課後を過ぎ、下校しようとした時の話だ。

 

 ざぁぁぁぁ ざぁぁぁ

 

「…そういや傘無いの忘れてたな」

 

 ざぁざぁ降りの雨の中、みんなが帰る中の呟きである。橘と真倉は家の用事があるからさっさと帰った。

 桐根が貸してくれた上着のお陰であったかく過ごせてたが、それも今を持って終わりを告げていた。トイレでランドセルから濡れた私服を取り出し、桐根の服を仕舞う。

 最初は上から着ていた物の、普通に濡れて寒いから授業の間にトイレで脱いで置いていたのだ。桐根…洗って返すから首を洗って待っててくれ。

 

「3…2…1…!」

「いやダメだろ」

「あぁぁ…」

 

 着替えてる間にみんなが帰って居なくなった雨の中をクラウチングスタートで乗り切ろうとした時、真横から頭を抑えられて出鼻を挫かれる。俺は頭に手を押せられるだけで動けなくなるからな。いい子のみんなはやめようね。

 

「何をしてる桐根くん」

「変な事しようとする委員長の抑制作業」

「何で帰ってないの危ないよ…」

「2時間目には自分の服を持ってぶかぶかのパーカー一丁になってるの見たらイヤな予感するに決まってるだろ」

「勘のいい子は嫌いだよ」

「嫌って良いから風邪引こうとするなよ。折角パーカー貸したんだからさ」

「伊達に委員長じゃないんだこの程度で風邪なんてそんなそんな」

「委員長の姿か?これが?」

 

 以上、頭を抑えられたままでの会話である。あまり撫でて来るなよ?三つ編みが崩れちゃうだろ。触り心地いいのは自慢だから触って来る事は拒否しないけどさ。何事にも限度が存在するだよ。

 そこまで話してから桐根は、俺の頭から手を離し傘を広げてこっちを見て来る。ゲゲゲの◯太郎みたいな髪型だから雨なのもあって妖怪っぽい雰囲気あるんだよなコイツ。恋愛ってより奇譚の空気感なんだよ。

 

「ほら、入れよ。家近いしさ」

「わー男子サイコー。紳士なのは高得点だよ」

「お前に付けられる点数は要らないな」

「点数無いと成績に響くぞぉ?」

「普段のやってる事」

「それは本当に返す言葉も無く…」

 

 傘の中に入り、馬鹿な話をしながら帰ることになった。小1同士だと純度100%の友情からの好意だとハッキリしてるからな。将来的にどうなるか知らないけど、男友達なんて女子にとって稀少に違いないから今の内に楽しまないとな。

 前世と同じ感覚でつるむのがその内出来なくなるのは悲しいが、そう言う物だ。木香証くんの時はその感覚のせいで酷い目に合わせたけど、アレはもう俺の失敗として受け入れた。機会が有ったら何とかすると決めている。

 

「…なぁ、霧晴。お前って将来何したいとかあるか?」

「何だよ藪から棒に」

「ちょっとな…色々あって気になったっていうか…みんなより怪奇とかと会ったんだろ?将来短いかもとか考えないのかなーって…忘れろ、変な事聞いた」

「おっとそれはどっちかの人が死ぬ仕草だよ」

 

 桐根のこれから死ぬタイプのキャラみたいな言葉に、彼の両頬を掴んでこっちを向かせる。急にやったから2人して立ち止まるが、『赤砂』が丁度出現してたし折角だからよく見る事にした。

 暫く、雨の音しかしなかった。片方は行動の意味が解らずに、片方はよく見る為に、そして両方同時に時間が停止している時もあったから。砂時計が落ちる。

 

「そういうのはね、聞いた方は責任を取って最後まで聞くべきなんだよ?」

「…いいよ別に、答えなくて」

「良いから。…確かに私は魂と怪奇がよく見える。今だって『赤砂』に桐根を巻き込んじゃってるし、この眼のせいで長くは生きられないかなって確信してる」

「これは、俺が聞くべきことじゃ」

「確かに真倉ちゃんや橘ちゃん、親とかに言うべきかもね?でも今聞いたのは君だよ桐根くん。普段からお世話になってる君だから誤魔化されず答えるんだ」

 

 確かに怪奇に関して、ゲェムに関して、記憶に残りやすい事はそっちの方だ。だけどね、平和に過ぎ去って行く普段の日常を換算しないのはダメだろう?

 例え本にしようとすれば描写されずに過ぎ去る中にも俺は居る。誰かにとっての突然も、俺からすれば普段のお礼代わりになる。俺クラスの人全員の名前も性格も知ってるからな。怪奇とゲェムに関係ない友達もいっぱい居るんだぜ?

 

「私は別に自分から死ぬつもりはない。でも、それ以上に誰かを死なせるつもりもない。私だって将来親と同じ職に就きたいし、友達に成れる人ともっと出会いたい。恋愛とかは…考えてないけど、誰かが私を好きでいるなら、それに最大限応えてあげたい」

「………」

「でもね、それは他の人も一緒でしょ?もし私と誰かを選ぶんだったら、私は自分を選ばない。私は一度途中までなら経験したから、その分席が限られるなら譲りたいと思ってる」

 

 言葉にすればそれだけ。2ページもいかない程度のうすっぺらな信念が俺の行動原理だ。これは前世から変わってない。俺30代まで生きたし、付き合った事は無いけど好きな人もいた。死ぬ時はめっちゃ後悔ばかりだったけど、それもまぁ今はいい思い出…は無理だなアレは。俺の尊厳が全て切り刻まれて埋まったのは無理だうん。

 

「以上、委員長の話でした。…悩み、少しは助けになった?」

「…解らない。父さんはこんな俺でも見捨てないって言ってたけど、俺にはその理由が解らないから」

「魂欠けてるんだからそうもなるよね」

「!!?」

 

 『赤砂』も居なくなり、雨も弱くなったので傘から出て先を進む。青信号になったばかりだからまだまだ余裕がある中、白い部分だけ踏んで進もうとして、速攻でミスったので諦めて普通に進んだ。

 

「何で知って…!」

「えー?見えるって言ったでしょ?だから見たの。目は悪くても見るのは得意だし、ここからは桐根くんの話だよ」

「…待てよ!」

 

 桐根が俺に着いていき信号を渡る。向こう側に着いたので振り返ると、めっちゃ近くに桐根の顔があった。走って近づきすぎたな?さては。

 

「『幽霊』としての自分が死んで家族との記憶が消えたんだよね?それで数少ない覚えのある私との関係に頼った。繰り上がりの友情だね?」

「ばっ…そんなんじゃ」

「欠けた原因は親の仕事場で隠れんぼして、それに気づかれずに実験して…かな。お父さんは研究員さんで、魂の研究をしていると」

「………」

 

 あ、引かれてる。流石に話が脱線しすぎたな。ゲェムの癖で解説しちゃうのはダメだな。気をつけないと。

 

「結論から言っちゃうね?コレからお父さんがしようとしてる魂の義体による記憶復帰は年月差異で乗っ取りになるからやめた方が良い。鮮度は同じが望ましいから遠慮なくやだって言って良いよ」

「……俺は、俺はそんな事相談してなんか」

「ごめんね?でも欠けてる魂の人ってさ、見えやすいんだ。私も今知ったけど単純な子より情動が見えるし、記憶すら読める。出血してる人の血を見るくらい簡単に」

「…霧晴、お前いつもと違うよ。こんなに知られるなんて知らなかった。そんなに知られるなら頼ろうなんて思わなかった」

 

 桐根は心を土足で踏み荒らされたと感じて不快感を感じているが、そんな事気にして死に向かっている人を見捨てるつもりは無いからな。普段の見ようとしてない時と比べたら違うのは当然だった。人間通常と緊急で性格変わる物だし。車運転すると性格変わる人っているだろ?それだよ。

 

「あはは、でもコレが私が全力で手伝うって事だから。悪い事でも無いからしっかり参考にしてね?」

「…ああ、そうさせて貰う」

「あ、でもこのまま帰るのはちょっと待ってくれない?」

「…今度は何だよ?」

 

「雨が強くなってきたからまた傘に入れて欲しいなって…ダメ?」

 

 ざぁぁぁ ざぁぁぁ

 

 相談も終わったので傘に入れさせて貰えるように交渉する。そろそろ中に入れて貰えないと風邪をひくぜ!…この構文使うと寿司食いたくなってくるな。

 

「…やっぱりお前霧晴だな」

「何を感じて確信した?言えよ」

「いやー気が抜けた。ほら、さっさと帰るぞ」

「…おーい?答えなー?ねーったら」

 

 傘には入れて貰えたのでこの交渉は俺の勝ちだが、何かに負けた気がするな。何か腹が立つがまぁいい、俺は寿司の気分なんだ。ついでにお寿司のパックを3人分自宅まで運ばせる事で手打ちにしてやるからな?覚悟しておけよ。

 

 






霧晴千歌
 お寿司で全てどうでもよくなった。授業は上半身を上着のパーカーのみで受けた。
真倉朝凪
 稽古や習い事をさっさと無くす為に全力で学習中。
橘多々良
 祭事の詩と踊りが難しい。数柱分やるので量もキツい。
桐根総
 話したら昔の魂じゃ無く一歳差の子を原材料にしてやる事になった。

『魂絡みの蟲』
 魂を繭にする虫。家畜化に挑戦されてる。
『霊魂』
 魂という現象を追加する。魂があると死ぬ時に脳にある記憶を取り込み死後も活動する事ができる。平均重量21gの臓器で腐る。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。