ゲェムのしらせ
休息を選択した事により【DDRPG】がver.0.54からver.0.60にアップデェトされました。
コレからもゲェムをお楽しみいただけるように調整します。お楽しみください。
「霧っちー気になったんだけどさー」
「んー?」
「霧っちって人を味わえるってホントー?」
「夏奈ちゃんから聞いたねさては?」
「いえーす!」
それは火曜の晴れた日の事だった。突拍子も無く橘の多々良の方が俺の恥部を突き刺し始めたのだ。それ以上はやめろよ?俺は恥で簡単に死ぬぞ?
「それでさー、お姉ちゃんとウチの味ってどんなのかなって」
「んーーー…そもそも私の味を見るってその人の全てを本のイメージと食べ物のイメージと共に感じる物だからなぁ。知らない作者の作品なんて言っても伝わらないと思うけど?」
「それでもって奴だよ!」
「人を舐めたりしゃぶったりとか変態さんや恋人がやる事したくは無いかなぁ」
「えー?」
ぐだぐだ昼休みの光景だった。外で遊ぶのと俺と話すので俺を選んでくれたのは嬉しみがあるが、それはそれとしてあんまりやりたく無い行為なのは確かだ、
だから髪の毛を差し出されても俺はやらないぞ多々良。
「試し!お試しに!ウチの好奇心を満たすだけでいーからさ!」
「髪の毛が傷つくよ」
「じゃあ指」
「さてはお姉ちゃんと同じ事したいだけだな?」
「おそろっち!」
「私はあかちゃんでは無いんだよ?」
「けちー…………チョキだすよ」
「………じゃあグーだすから」
「じゃんけんしましょ!」
「負けたらやってやるよで!」
「「じゃんけん」」
負けた。
グー出して負けた。
『鎌蛇様』取り憑いてないなら嘘つけるに決まってたわ。
「勝ちー!いえーい!」
「やるねぇ。それじゃあ私はお手洗いに行くから」
「逃亡禁止だよ霧っち」
「それやられたら逃げられないんだよね」
肩に手を置かれたら立ち上がれないんだよ橘ぁ。どけて貰おうかぁ。
真面目に言うとまぁまぁ人がいるお昼にそんな事したく無いんだよね。無様でしょう。
「でも霧っちー、霧っち見えたからって言って怪奇を避けるでしょ?疑うわけじゃ無いけどさ、どう見えてるのかピンと来ないんだよねー」
「…それで?」
「どんな感じか知っとくと仲良くなれそうだなって!」
あー、『鎌蛇様』のあれが消えたから私の見え方に信憑性が無くなってるのね。夏奈が生きてるから出会いとかはそっちが修正したにしても、俺に対する理解度が上がるあれこれが消えてよく分かんなくなってるのか。
「…とか言ってみるテスト的な?」
「まぁ…しょうがない。少しだけね?」
「やたー!…じゃあ、はい!」
「…かぷ」
そんな訳で差し出された指を軽くカプリとしたが…ファッション雑誌の「nicola」…4月から8月辺りの奴。春から夏にかけた爽やかさと新鮮さをイメージした、おませな女の子なら興味がそそられる大衆紙みたいな、ちょっと贅沢したい時のイタリアンコース。4月から順にサイゼのエビサラダとズッパとコーンスープとプリン、ドリンク付きだ。お手頃で美味しいぞ。
普通の才覚ではあるが、明るく色んな人に取っ付きやすい性格で将来には困らない。ガチな道を行きたいなら持ち前の汎用的な才能で複数の手札を用意しておかないと無理。一つに特化できるタイプでは無い。
恋愛は上手くいくだろうな。身の丈…橘多々良自身を見てくれる相手なら誰が相手でも幸せになれる。逆に家柄とか人脈目当てで近づいた相手とは相性悪いか。
後長生きできるぞ、良かったな。ただ肉はちゃんと食べろ。華奢だと何かと苦労する。現に俺は今苦労してる。
それから、何であれ雑誌は1年分しっかり買え。そういう穴抜けな買い方をする移り気な性分が、上を目指せない平たい人生になる原因だから。要するに俺に一年分しっかり読ませろ。趣味じゃ無くても女子の服装として参考になるからもっと読ませろ。
赤ペンで自己流にアレンジする組み合わせの部分とか多々良が熱中しているものにはよく考えて真面目に向き合ってるって分かるし参考になるならもっと読ませろ。
「以上……ご馳走様でした。偶に食べたくなる味付けの本だったよ」
「…思ったより恥ずい!でも本を食べるってなに?」
多々良はちょっと頬を赤らめて言っているが、昼休みに周りが見てない間にカプリついた俺の方が恥ずいんだわ。ハンカチで口元隠してやってなきゃ今頃俺は即死だったよ。味を言うのも出来ればしたく無いし。
「味を見ると本が読める。で、その本を食べると味も分かるみたいな?…実際の味は普通に人の皮膚だけどね、脳にはそんな感じで情報が送られてるよ」
「…うぅ、納得行かない!その雑誌見た事無いし!ウチが勝ったのになんか負けた気分!悔しいから倉っちも巻き込む!」
「横暴な意見だね」
とは言え、それで読んでも文字は読めてないんだよな。文字化けした本の文脈から大体雰囲気だけ察してる感じだし。味も見ないとまともにどんな作品かも察しが付かないんだよな。
「…で、早めに戻ってきた私もって訳?」
「いえーす!」
「真倉ちゃんおかえりぃ。何してた?」
「みんなとタイヤ飛びしてたわ。それで?今だけ霧晴に指を咥えさせられるってのは本当?」
「偏った情報だけど合ってるね。一人も二人も変わらないし、別にやってもいいよ」
「はい、手はもう洗ってるから感謝して咥えなさい」
「はいはいかんしゃぁっと…あむ」
………うん、難しいの来…にっが!飲み物お酒かよ!子供舌にはキツいって。
本は…俺設計なんて全然知らないんだけど…「建築とデザインの解剖」…違うもっと規模がでかい。「都市」「設計」「教科書」の3ワードを含んだ本なんて五万とあるから特定は無理だわ。でも味は完璧に計算された高級日本料亭の味なのは確かだな。酒は俺飲めないけど。
もてなす心意気はあるんだけどね…素朴で穏やかな味だし、どれも味がしっかり染みてて薄味でもしっかり味わえる。まさに人口すら計算されて作られた都市って味なんだけど…なんか一定以下は切り捨てるきっぱりさがある。酒の事だけどさ。
土建屋向いてると思います。でも暗記と数学は得意だし、他のことも十分以上に熟せる。無理に目指す必要は無い。もう既に知識以外は完成してる感じがするし、やろうと思えば今すぐお父さんの手伝い出来ると思うよ。
恋愛?年上がいいんじゃ無い?リードしてくれる相手だとなおヨシ。少なくとも同じ立場や下の立場の人と関わったら碌な方向行かないよ。真倉は案外相手に合わせるタイプだわ。
長生き?…47…45歳までは大丈夫。それ以降はストレス次第?気が晴れる趣味持っとくといいよ。この世界そういうのに出来る遊び少ないけど。
本としては俺には合わないな。入門も取り揃えて有能以外は切り捨てるやり方を改善してくれ。いきなり職人芸や素材による耐久とか見せられても専門外だ。でも図解は見てて楽しめたぞ。
「以上…ご馳走様でした。一度食べたら二度目はいいかな。事情がなければ通い続けない感じだね」
「失礼千万ね?でも新人教育か…視界にすら入れてなかったかも。ありがと、視野が広がったわ」
「初めから出来てる人しか見てない弊害だね。でも学校に通ってる時点で見えてて欲しかった物じゃ無い?」
「いやね、身近な程見えなくなるのよ。そういうの、誰にだって一つや二つあるわ。私はこれがそうだった。それだけよ」
「むずかしー話だねー。でも霧っちのその見えるって奴分かってきたかも!普通のに加えてもう一つ目や舌がある感じなんだ!」
「イメージとしてはその通り。それで感じて見たのを私が解釈して、やっと使い物になるの」
「大変だねー」
そこで昼休みは終わり、二人とも戻っていく。眼の方は普段から便利に使ってても、舌に関しては普段から役立つ事は無いからな。こういう時のちょっとした話題として役立っただけ良かったと思おう。
「…なぁ、横から少しいいか?」
「どうしたの桐根くん」
「それ、自分はどういう味か確かめた事はあるのか」
「あるよぉ?というか最初は自分と母さんで比べて情報を理解したし」
主に赤子の時だな。エッチな気分になるより全然飲み方分からない事による空腹で苦労して、ミルクで何とかしようとして、そっちも飲み方分からなくて餓死しかけたんだよな。あの空腹感はヤバかった。
最終的に母乳チャレンジしつつスプーンで口に入れる感じになったし、眼鏡デカすぎてよく落ちたし、目から血がドボドボ出て死にかけたし、結局吸えなかったの口周りの筋肉が無かったからだし。
赤子の頃から死にかけ過ぎだろ俺。お陰で普通なら憑依しようとする霊が俺にだけ群がらなかったしな。まぁ、それ以上にメンタルヤバかった記憶あるけど。
「へー。ちなみにどんな味だったの?」
「…言いたく無いかな」
「いいじゃんかちょっとくらいなら」
は?コイツ無敵か?いや人の感性半分消えてるんだった。ならしょうがないな。…いややっぱり変態の質問だわ。
「………エッチ」
「え?いや、そんなつもりは…というかそれならさっきの食べた感想をいうのも同じ事に」
「それはそれ、コレはコレなの!じゃんけんに負けた対価だし…女子の友達同士だからギリギリのギリ許せたライン!男の子は…よっぽどじゃなきゃムリ!」
「ごめん。お前の感性が分からない。例えるか説明してくれないか?」
「……えぇ?やらなきゃだめぇ?」
何だろう。公開処刑やめてもらっていいすか?性的な意味で教室で言うのは恥な行為なんだよこれ。でもなぁ…俺の感覚の話なのはそうだしな…仕方ない。
「…味を見るって事はその人の全てを見る。つまり全身にカプリ付くって事。つまり、何処から味わっても全身を味わったと同じ感覚なの」
「なるほど、つまり霧晴にとってはキスも指も同じなのか…つまり尻とかも…ごめん、俺が悪かった。本当にすまない」
つまりはそう言う事である。そういう前世の普通の感覚があるのにこんな感性になっちゃった自分にも問題はあるが、それはそれとして脳に打ち込まれる感覚がそんな感じ何だよ。
ムードとか無いから良かったが、コレをあまり親しく無い人と2人きりで求められたら思わずゾッとしちゃう自分がいるんだよな。
「…理解があって助かるね」
「あー、帰りに飲み物奢るか?」
「………タイトルだけなら教えてあげる」
「…そこはセーフなんだな」
「返事したら許さないから」
「…………」
机の上に腕を組んで、そこに顔を沈めて口元だけ隠す。空は相変わらずの青色だった。
まぁ、自分の味の感想を言うとか、教室で裸になるのと同じ感覚の自分が悪いんだろうな。橘と真倉?この感覚俺だけだし俺が後ろめたいだけで済むからいいかなって。
…俺の味?…ここだけだぞ。
「アルジャーノンに花束を」
素晴らしい脳と、その代償の話。たんぽぽコーヒーの味がするのが俺だ。
ネズミにしろ人にしろ、俺が迎える末路は同じだろうな。
霧晴千歌
自分の味で見えた寿命はとっくの昔に割り切った。
霧晴百葉
「蟲師」の漫画全巻の味だった。
桐根聡
後でタイトルを調べても特にヒットしなかった。
真倉朝凪
盗み聞きしててタイトルを調べたけど特に見つからなかった。
橘多々良
冬服コーデも今のうちに考える事にした。
『地獄』
多数の魂を食べた霊が行く場所の総称。下にある。
『天国』
壊れた魂が行く場所の総称。上にある。
『辺獄』
普通の霊が行く場所の総称。次元のズレたすぐ隣。
『冥界』
魂を捕まえる異界。海外にある。