怪奇ばかりな日常とゲェム記録   作:何処にでもある

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 霧晴千歌の配信で、最後まで残った視聴者は何人いたか。




日常-えあ

 

 

「…聞いた通りか。喋れなくなったのね?」

「あん」[うん]

「…というか、食べるのも出来てないじゃない」

「あんあぁあああぁ」[そのとぉりだねぇ]

「怪奇にやられたなら仕方ないけど…リハビリ大変よ?」

 

 ぐぅぅ

 

 給食の時間にメモを取り出して書きつつ、俺は何やら心配してこっちに来た真倉に事情を説明していた。

 1日食べてなかったしお腹が空いて仕方ないのだが、飲み込み方と噛み方が分からないから仕方ないんだよな。口を閉じれないからよだれも垂れっぱなしだし。目の前のいい匂いに顎を手で押さえないとだらだらになる。

 

「…まぁ、事情は聞いていたし…動画サイト設立のアドバイスの奴よね」

「ああん、ああ」[うん]

「未来の自分が言ってたからーって、悪魔を殺してからねっていう奴でしょ?」

「んあ」[そうだね]

「なら確認…ラララー」

「んあ!」[だからってそれは無いよ]

 

 真倉の行動にビビる。確かに俺は音楽と信仰の悪魔を殺したが、過去が変わった以上この世界でもそうなのかはまだ把握して無い。コレでまだ音楽の悪魔が生きてたら連れ去られてるところだ。

 …まぁ、特にそういった様子は見られないから大丈夫だと思うけどさ。『狂わしの音色』の影響も見られないのは…纏めて消えたのか?

 

「…はぁ、休み時間の間に何したのか知らないけど…時間関係の怪奇には関わらない方がいいわよ。ましてや都合のいい結果だけ残しての過去改変なんて、異界関係の怪対員に目を付けられる行い何だから」

「ん」[ねえ、音楽関係の怪奇は?『狂わしの音色』とか]

「…ちょっと待ちなさい…ああ、タイミング良く来たわね。緊急速報のニュースで政府から音楽関係の怪奇が全て無くなったって」

「んー」[仕事が速いね]

 

 真倉のスマホを覗いたニュース速報には

 

[緊急]音に関係した怪奇現象が確認されなくなりました。コレに対し、政府は音楽関係の検閲の解除、歩行矯正指導の撤廃、徒競走の復活、以下14の怪奇関係の事項を変更すると発表しており…[怪奇]

 

 という文面が流れていた。

 

 …マイケルの奴、音関係の怪奇も全て連れてったのか。アイツどれだけ高位の悪魔だったんだよ。死ぬだけで『妖魔』の怪奇に関係ない怪奇まで巻き込むとかさ、完全に想定外なんだわ。

 それを俺に見せた後、真倉はトントントンとリズム良く歩き、機嫌を良くする。『とびとび』に引っかからない歩き方をしなくていい事に気を良くしたみたいだった。

 

「…フフ、いいわねこれ。普通に歩ける様になっただけでも充分すぎる成果よ。ランニングや散歩でずっと気を張り詰める必要も無くなった。音楽以外のあらゆる事にも影響が及ぶでしょうね。()()思ったよりすごい事したわよ」

「あーー!」[知らないそれは知らないよ]

「その結果、千歌が口周りの使い方の記憶を無くすだけ。ええ、充分過ぎる大戦果ね!」

 

「二度とこんな無茶しないで?」

 

 急に態度を豹変させ、顔を鼻が当たるほど近づけられる。こんな話を信じてくれるのはありがたいけど、話した理由はどうすれば食べられるか教えて貰う為で脅迫される為じゃないんだよな。

 

「あ」[落差]

「ねぇ、霧晴千歌?私の家訓に誓って示唆された未知の怪奇による大事件はもう起こさせない。もしもになった、貴女が巻き込まれただろう怪奇事件と時間旅行の労力は必ず次に繋げる」

「んー」[さては心中穏やかでは無かったりする?]

「だって貴女、巻き込まれた方で木香と私達であちこち回った千歌じゃ無いでしょ?」

 

 うん、知らない話が出て来たな。木香と真倉と俺があちこち探るとか全然やって無い。俺も頑張ってたんだな。真倉が霧晴じゃ無くて千歌呼びになってるし、結構仲を深めるアレコレが有ったんだろう。関係が無くなるとかあるか?これは。

 

「あん」[うん]

「お陰で時間関係の怪奇はよーく理解できたわ。千歌に解説して貰ったしね?」

「んあ」[記憶の上書きはもうどうしようも無い]

「ええ知ってる。だからその成果は我が社が生かす。あぁ、疎遠になるとかは大丈夫よ?貴女も霧晴千歌だもの。其処は履き違えるつもりは無いし、逃がさないから」

「んー」[無理はしなくても良いよ]

「無理をしたのは霧晴の方でしょ?ええ、大丈夫よ…しっかり食べさせてあげるから」

「あー…」[やっぱいいかなって]

「バカね、拒否権無いから」

「あー!あー!」[先生助けてくれませんか]

 

 挙句、怖かったので先生に助けを求めるが、肝心の先生は今の真倉の戯言を聞いてから顔色を悪くしていた。どうしたの先生、授業中は普通にしてたのに。

 

「……真倉、今の話を聞くに、俺は授業を始める前まで…お前らの弾けた死体を見ていたのは夢や怪奇の見せた質の悪い怪奇じゃ無いのか?」

「…へぇ、先生も霧晴と同じで記憶を持ってるのね?原因に覚えは?」

「…霧晴が死ぬまでは、せめて誰かは見送らないといけないと思ってな。そしたらゲームが始まって…『花神楽』とやらが…」

「ああーっあ」[あぁ、コメント欄。放送最後まで観てたんですね。アザーっす]

「ふざけないで」

「ん」[はい]

 

 座式先生は最後まで観てたから、ゲームのあれこれも見ていたらしい。そのせいで記憶を引き継いだのは不幸な話だが、まぁあの惨状からなんとかなっただけ良かったと思う。

 真倉は出来る事ならその不穏な雰囲気を引っ込めて、そしてこの場から立ち去って欲しいなって思った。剣呑で眉間の皺がすごいから落ち着こ?

 

「…真倉、霧晴はやれる事をやっていた。『音楽の悪魔』に音楽で勝って殺したんだ。その為に…まぁ、色々有ったんだ。そう強く当たってやるな」

「…ふぅ…はい、先生。霧晴も、悪かったわね」

「ん」[全然いいよ]

 

 仲直りの握手をしてこの場は収まった。流石先生だ頼りになるぜ。

 

「よし、全員聞いてたな?お前らには身に覚え無いだろうけど、幾ら面白そうでも新しい事には直ぐに飛びつくなよ。先生もワクワク感に負けて死ぬ所だった。退屈って奴は遅効性の毒ってな。良く分かって無くても今言ったのはしっかり覚えておいて置くよーに!」

 

「はーい!」「はい」「はい!」「はい!!」

 

 先生がそう纏めると、クラスのみんなも返事をして食事に戻って行った。実感湧かないだろうけど、先生が言うからには何かあったのだと察せられる程度には頭が良いからな。やっぱ立場と説得力がものを言うんだよこういうのは。

 

 プルルルル プルルルル

 

「ん?」

「うん?霧晴どうかしたかしら?」

「ん」[電話鳴ってる]

「鳴ってないけど…鳴ってるのね?」

「ん」

 

 丁度その時、スマホが鳴ったので手に取ると、『メリー』という人から電話がかかって来た。どう考えても裏世界から飛び出してたメリーさんなのでそのまま放置してると、勝手に通話モードになる。もしかして先生と同じく俺の配信見てたから通話できる様になったとかそんな感じ?

 

 俺以外の全ての時間が止まった。

 

 冷たい人形の手が俺の肩をポンと叩いた。

 

[私メリー。今貴女の後ろにいるの]

「……ん」

『私メリー。今貴女の後ろにいるの』

 

 早いなぁ死んだかこれ?いや相手はあくまでも『人形』だ。橘の家で関わった経験を活かせ。

 

[貴女は裏世界から私を解放した。それって、私を拾ったって事よね]

「ん」

『良い返事ね!だったら、貴女はメリーの持ち主よね?』

「んー?」

[なんで?]

 

 下半身の感覚が消えた。血が溢れる感覚がする。視界はずれない。肩を掴まれたまま持ち上げられていたから。痛みが無いだけまだ優しいな。『魂蝶』よりもずっとマシだ。

 

『疑問に思う必要ってあるのかしら。貴女はメリーの主人よ?だったら貴女はメリーを慈しんで、親しんで、友愛を持ち、楽しんで、遊んで、永久に従いたいメリーの主人なのよ?』

「ん!ん!」

[そうよね?違うわよね?貴女は貴方では無いもの。2人目の主人は無口でいじらしくて小さくて可愛くて素直で私だけを見て病弱でか弱くて裏切らなくて私より身体が欠けてて死んだらずっと私の事だけを考えてくれる女の子って決めてたから。やり直したいってずっと思ってたのよ?]

 

 メンヘラァ!メンヘラ…いや違う気がする。本体が後ろにいるせいで見れないけど、聞いて分かった。この怪奇は主人と生きた人形が欲しいんだ。二つある求められた役割はそんな感じだ。無理だよ俺そもそもメンタル男だもの。何で1人目の主人の真反対を求められなくちゃいけないんだ。

 そして今聞いた音を考察して気づいたけど携帯の方と後ろにいる『メリー』別々だわ。本体と其処から派生した怪異の2つでお互い認知してない。コレは携帯と後ろで別けて考えないとな。せめて死ぬ前にその事は教えてあげないと。

 上下別れててそろそろ死にそうだし、最後はこんな終わりだったかぁ。

 

『でもね?それだけだとちょっと物足りないじゃない?だってまだ演じられる範囲だもの。本物じゃ無いと。実は偽物で…て、あの世界にまた捨てられるのは嫌だもの。ね?』

「ん」[そこの電話で喋ってるメリーの偽物は見逃すのに?]

[ねぇ、愛してるって言って?それで今は見逃すから、ね?]

 

『なぁに?オマエ』

 

 さっきから朦朧として拙くも書いていたメモを後ろに渡す。喋れないからメモを用意してたのが役に立つとかわからない物だな。コレで認知したし、もう死ぬ準備は終わったよ俺は。

 

『ちょっと待っててね?』

 

 『メリー』がそっと俺を椅子の上に載せて、前に出てスマホを持つ。

 朦朧としながら見たのは、数々の怪具やガスマスクを装備した、探窟家って感じの服装の、120cm程の金髪の人形だった。

 

[ねぇ、ねぇ、ねぇ、愛してるって言ってよ。それだけでいいんだから]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私メリー、今主人の前にいるの』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[は?誰、アナ『私メリー、今オマエの後ろに居るの』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間は止まったまま、俺が認識した頃には床に人が通れる程の穴が空き、下の階にも同じ様に穴が空いていて続いていた。

 移動方法、直進かよ。しかも物理。どこだろうな、聞いた感じヨーロッパ辺りだと思うんだけど。

 でももう帰って来たのは早すぎだろ。ちょっとしか経って無いよ。

 戸惑いながら死んでいく俺の頭を『メリー』は撫でた後、裁縫道具の怪具を取り出して俺の上下を繋いでいく。自分用の修理道具を使う感じらしい。

 

『ありがとう。こんなに成っても伝えようと頑張って、主人はいい子ね。メリーはきっといい人に拾われたのね』

「ん」

『はい、出来た。ごめんなさいね、チョリチョリ切っちゃったのは直したわ』

「ああ…」[すごぉい]

 

 立ち上がって確認する。下手に動いて大丈夫かと言う問いに、下手に怖がった動きを見せたら不機嫌になってマズいと答えないといけない相手だ。ここは童女らしくくるりと回ったりして媚びを売る時間だな。血も戻ってるし、裏世界を生き延びた怪奇ってすごいな。

 

『…もの足りないわ。もっと着飾って…そうね、メリーもおめかししないと。思えば今のメリーは淑女としてダメダメね…お家に行くのはまた今度。フォートナムとメイソンのを持って尋ねるわ』

「ん」[最近は怪異や異界や神様が居るから気をつけてね]

『ええ、またね』

 

 時間が進み始める。『人形』の怪奇、『メリー』は立ち去った。持ち主と認定されたのは痛いが、まぁ付き合いを間違えなければ問題ない。帰ったら母さんと父さんに話す必要はあるが…この件は後で良いだろうな。それよりも言うべき事があるし。

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 アレから給食は食べられないままチャイムが鳴って終わり、そのまま放課後を迎えて家に帰る事になった。地面の穴?封鎖する感じになったよ。真倉や夏奈に説明を求められたが、そこは怪奇の自滅と言っておいた。大体コレだしな。

 

「……ん」

 

 家に着きそろそろ喉が渇いて来たが、今飲んだら誤嚥間違いなしなのでしょうがない。1日飲まなくても何とかなるんだから其処は特に気にする必要は無いだろう。

 ここはゲェム記録を書いて待っているとしよう。

 

 


 

 

ゲェム記録

 

2020年5月26日

 ゲームコインで引けたのは【ふしぎいっぱいTRPG】という本のゲェムだった。怪奇を…誘導?して遊ぶ…もっと上手い言い方……指定した怪奇にちなんだシナリオが作られるから、それに沿う感じのゲェムだ。

 『花神楽』を【DDRPG】と連携して指定したら、『花神楽』に1時間以内に良い感じに助言してその結果を見守るみたいなシナリオだった。単体だとどうなるかはまだどっちも不明瞭のままだ。

 珍しく他者をそのままPCにするのでは無く、新しく怪奇の身体が造られ、それに憑依する形の様で、死ぬ事を選択肢として許容できるゲェムだったのは嬉しかった点だな。お陰で今も生きている。

 

 ガチャコインを2つ貰った。使わない方が良いのか、使った方が良いのか。

 『音楽の悪魔』達を殺せたのは切符での経験のお陰だが、きっかけも切符なんだよな。でもマイケルとの因縁が無ければ『信仰の悪魔』を巻き込みで殺せなかったし…動画サイトが流行って死者が出るのはいつかは起こる事だったし、片付けられて良かった…で良いのか?

 この世界の悪魔達はどうやって死んだんだろうな。

 

 不本意にも諸事情でゲェム配信をしてしまった様で、人と怪奇両方に過去改変の記憶の引き継ぎを多数発生させてしまった様だ。そのせいか今日、『メリー』という裏世界に居る『人形』の怪奇が訪れた。数日したら家に棲みつくと思うので、コレからのゲェム記録のやり方を考えなければならないな。

 でもメリーを慈しんで、親しんで、友愛を持ち、楽しんで、遊んで、永久に従いたいメリーの主人ってどんなキャラだ?仲良くすれば大体OKか?短い間だが見たんだし、多分演じられるだろうが…それはやったらダメな感じだよな。この世界の人達って鋭いし。

 

 …鋭いか。思えば、『花神楽』の最終ステージ。母さんとの問答で思ったんだけど、この世界の人達って…もしかしてこの鋭さを前提にした会話をする時が、求められる場合があるんじゃ無いか?

 その場合俺は無理だな。俺はハードボイルドな会話はできる気がしない。後からしっかり考えれば分かるけどさ。

 察するのが無理だ。脈略無しで短い行動と暗号を短時間で見抜くのは無理。

 もしアレがそういうのだったのなら、こうなるのは既定路線だっただろう。事前に情報でも有れば別だけどな。

 とても痛かったし、普通に発狂した。思考が真っ赤になって時間をまだかまだかと見続けたし。

 耐えられたか?出来てない。だが、今は普通に思考も出来ている。

 事前に書いておくならば、コレはゲェムは関係無い物だ。こういう精神構造になる出来事があった。俺の修羅場ランキング堂々1位の奴だな。今回のは2位だ。

 何があったのかは、それがゲェムに関係する様になったら書くとする。コレ、ゲェム記録だしな。

 

 


 

 

「ただいまー」

「帰ったよ」

「ん」[おかえり]

「おー、どうした千歌?メモなんて持って」

「文字で会話するのは大変だよ。程々にしな」

[あー][こっち来て]

「ん?」

「なんだ千歌?良い事でもあったか!」

 

 ぐぅぅ

 

 父さんと母さんが帰って来たので、記録を仕舞う。腹の虫を鳴らせつつも出迎えに向かった。母さんと2人だけで聞くつもりだったが、まぁ別に全員でもいいか。

 予め書いて机においたメモの前に座って待機しておく。それしか伝える方法無いからな。

 

[母さん、2年前に殺した妖怪居たと思うんだけど]

[アレは本当に私だよ。気づいてたと思うけどさ]

[言い忘れてたけどアレ1時間で現在に戻れるタイプ]

[時間が入り組んでなんか怪奇になってたね]

[アレは人間戻れるタイプだった]

[私に其処ら辺聞かなかった理由は分かるよ]

[2年前までまだ私の見た物伝えるの出来て無かったし]

[不幸な入れ違いだったと思うんだよね]

[お仕事大変だったろうし、お疲れさまだねぇ]

[あと『魂蝶』に吸われた口周りの動かし方忘れた]

[後ね、卵植え付けられるのは結構痛い]

[下水道に流れて硫酸に晒された方より痛い]

[マジで痛い。二度目は勘弁したい]

[まぁそれはいいや。口周り動かせないって事は]

[涎がダラッダラなんだよね]

[あと水もご飯も飲み込めないからお腹空いた]

[のどもかわいたねぇ]

[ご飯を口に入れても出るんだねぇ]

[なんか無い?点滴でもいいけど高いかな]

[後さ、『魂蝶』の卵がまだある気がするから見てくれない?]

[以上です]

[PS、不本意ながら『人形』の『メリー』が住まいに来る]

[らしいので来たら受け入れてやってください]

[めちゃんこ強いので追い払っても無理な奴です]

 

「んあ!」[と、言うわけで出来れば病院連れてって]

「あん!」[お腹が空いたよ]

 

 両親が顔を上げ、こちらを見る。俺は両手にメモを持つしかやれる事は無いぞ!喧嘩し始めたらいつでも言ってくれや。俺めっちゃ殴ったるし。

 

「これ、あのゲームの話か?千歌」

「ん!」[お腹が空いたねぇ!][詳しくは先生に聞くと早いよ]

「…んじゃ行こうか。病院…の前に卵か。仮に有ったら、栄養与えると孵化してマズいからね」

「百葉、ちょっと待て。殺したって何だ」

「タイムスリップって奴だね。未来から来た方が戻れる手段を持たない場合、殺さないと過去の方が消えるんだよ。魂関係で偶にあるのさ。そういうのが」

「でも、これは話し合えば」

「そう言うのは後だよ。先ずは千歌が先だ」

「…お前が千歌を撃たなければ」

「こうならなかったってのは無し。後悔も納得も、仕事の方が片付かなければ出来やしないんだから」

「……そうだな。お前は昔からそういう奴だった。だが、それは無いんじゃないか?」

「…と言うか、それ以上にさ」

 

 ぐうぅぅぅ

「ん!!」[そんな事よりうどんが食べたい!][甘口カレーでも可!!]

 

「この千歌を放って口喧嘩してる場合かい?さっきから私らの肩ポコポコ叩きながら主張してる千歌をさ」

「あー…そうだな…うん。先にそっちだな。ごめん千歌、父さん頭に血が昇ってた」

 

 その後、母さんが魂に植え付けられていた『魂蝶』を摘出した後、病院で点滴を受ける事ができた。コレで水分は大丈夫だ。問題は喉、飲み込み動作…嚥下の仕方がよく分からない事だな。

 一応、現時点でも手で顎動かして神経の位置を覚えて、意識させて動かすやり方で不完全には出来るし、喉を震わせて「あ」と言える。

 アレだ。筋肉を触って、触った場所に力を入れて普段使ってない筋肉の意識付けや使い方を学ぶ奴。

 前世の友達が野球やってて、なんか1人だけでリハビリみたいなのやってたからそう言うのは分かるぞ俺は。でも頬の筋肉ってあちこちに動かせるから制御は難しいぞ。

 折角なので紹介しよう。

 頬の筋肉を使う「い」だ。難しいぞ。

 舌の根本と頬を使う「う」だ。難しいぞ。

 「う」よりマシ。「え」。学校でも練習してたからそろそろいけそうだぞ。

 喉も使うから最難関の「お」。

 現時点で最も頼もしい味方は赤子時代にやってたお喋りの経験だ。転生者特権だな。暇で無駄に覚え方とか考えてたから無意識の制御無しでもやれる筈だ。

 

「あー、んー……あーあーあーぇー!あーぇーえーえー!え!え!え!」

 

 よし、出来た。やっぱお喋りは簡単に戻れるわ。頑張って赤子時代の記憶引っ張り出しやればいける。問題は嚥下だよ…腹を素早く膨らませて縮ませてを繰り返せば神経刺激して意識できるか?

 いや考えみたらもっと手っ取り早いのあるな。喉に何か突っ込んで嘔吐の動作を……涙が出る程ひたすら気持ち悪いけど反応しないな。無意識の部分が消えてるから反応もしないのか。これ点滴で腕に刺す必要無かったな。

 

「えあ…ん」[食べ方覚えなきゃなぁ…うん]

 

 まぁ、今日はご飯は食べられなかったが…空腹感はマシになったので良かったと思おう。

 さっき母さんと父さんが喧嘩し始めたのは…まぁいいや。疲れて気が立ってるんだろう。仕方なかった事だって話せば父さんも分かってくれるさ。

 

 病院のベッドに横たわる。もう遅いし、一先ず死ぬ事は無くなった。それでいいだろう。

 明日になればきっと何とかなるんだから。

 

 






霧晴千歌
 入院した。喉の位置を調整しなきゃいけない音は消えて欲しいなって思った。
霧晴百葉
 本人だと確信して撃ち殺してた。
霧晴健太
 最終的に千歌が許してるならそれでいいという結論になった。
真倉朝凪
 会社の怪奇対応能力を調べたら、既に起きた怪奇の管理の商売だから未知の怪奇への警戒能力が無いのに頭を抱えて指摘した。
真倉のお父さん
 異界への先遣部隊とかの貸し出しで未知の怪奇への警戒心はあると思ってた。それが全体に行き渡ってないのを指摘されて、開拓はそれ専門の他社への投資で一旦済ませる事にした。
座式先生
 夢じゃなかった。

『メリー』
 捨てられた『人形』の怪奇。障害は全て消し飛ばし殺して向かう。『裏世界』の4つ目の異界に居た。
『メリー』
 捨てられた『人形』の怪奇の都市伝説の怪異。自分を本物だと思っている。主人候補との会話を破綻させて『メリー』に殺させる。死んだ。

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