怪奇ばかりな日常とゲェム記録   作:何処にでもある

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 ゲェム側は割と時間が飛びます。




ゲェム-葬式はする

 

「ゲェムの時間でーす」

 

 家に帰って俺は、早速ゲェムをやる事にした。

 コレに関しては自分の特典を知らなければどうなるかは健太さんが証明していたのでやる事にしていた。人の命賭けるのは普通にやりたく無いけどな。でもやらなかったからお前死ぬよとか言われたら世話ないのも事実だ。

 

「本当ならゴミ捨て場から拾った新聞のコラムを切り抜いてコラムノートに貼ったりしたいんだけどね。暫くはこれ一択だ」

 

 少なくとも、母さんが居ない時間はそう長くはない。昨日みたいに仕事で帰れないのはそこそこあるけど、逆を言えばまぁまぁ帰ってくる訳だ。なら母さんがいる時に今までの趣味をやる事にしようという感じである。ゲェム日記を書く時間も欲しかったしね。

 

「少なくともゲェムで見たステータスは書いとかないと後で見返す時に絶対困るだろうし…ステータス履歴なんて普通のゲームでも無いしな」

 

 コラムノート用のノートの間からゲェム日記を取り出す。普段の趣味で隠すには打ってつけの場所だ。母さんには早々にバレる事はあるまい。呪いのゲェム扱いされたら特典を使えなくなりそうだし、そうなったらお前死ぬよコースがチラつくからな。

 さて、修正ペンこと白色のインクはぼけっと帰る途中でお小遣いで買ってあった。黒の色紙もだ。

 毎回やる訳でも無いからアレだが、やるからには細かい場所まで再現せねばなるまい。

 

「それじゃあ…確か健太さんのステータスが…」

 

 


 

 

ゲェム記録

 

2020年4月2日

 昨日書いてなかったステータスを書いておく。昨日ゲェムを終える直前に見た物なので、コレが初期ステでは無い事を留意する必要がある。

相戸健太

男 20歳

職:怪対員/見習

出:転生者/人間

 

戦闘 4  4D6

探索 4  4D6

精神 2  2D6+6

判断 4  4D6

霊感 2  2D6+1

    スキル   

「餓死耐性」    

「怪奇対応/神格/丙」

『家守り』     

「裏世界帰還者」  

          

          

          

          

特典【    】  

 

霧晴千歌

女  6歳

職:小学生/1年

出:転生者/人間

 

戦闘 0  0D6

探索 1  1D6+5

精神 2  2D6+1

判断 2  2D6

霊感 8  8D6+15

    スキル   

「怪具/晴眼/甲」  

「専門/葬儀/丙」  

「怪奇探査」    

          

          

          

          

          

特典【ゲェムガチャ】

 

 考察:「怪奇探査」のスキルを手に入れたらしいが、日常を送って特に自分の能力で変わった事は無かった。パッシブ、常に発動するタイプでは無さそうだ。

 考察:能力値の隣にある1D6と書いてある。恐らくサイコロをふって成功するか判定しているのだろう。初回プレイでは俺が左手でポルターガイストとかの要領で祠を元の形に維持できないかなという無謀な考えで祠を見てくれだけでも直そうとした時だけ発動していた。

 

 8D6(5,4,3,6,6,5,2,1)32+15=47/40 成功

 

 というのが画面下の台詞欄に流れていたのでこれはほぼ間違いない。多分本来無理な事象をワンチャン出来るようにするみたいな奴だと思う。じゃ無いとこの茶碗も持てない貧弱な手で石の祠なんて維持できる訳ない。祠直しをやってて感覚がキモかったからそういう補正ないと俺じゃできない。

 なので本来なら不可能なものに可能性を与える力だと考察する。

 

 


 

 

「…こんなものか?書けるだけ書いただろ。後は怪奇探査が自力で発動するタイプか調べてからやるか」

 

 一息つき、時計を見る。15時半頃。まだ母さんが帰るには早い時間だ。余裕はある。異世界転移定番のステータスが出る手順調べみたいでちょっと楽しみだったのだ。

 

「んー…怪奇探査…探査…調査…本…記録…怪奇記録…」

 

 少しだけ左手が痒くなった。…ちょっと反応があったかこれ。怪奇記録ねぇ…?方針は間違って無さそうだ。ゲームボーイに嵌めたままのカセットを取り出して、手袋も外し、それからなんとなくで浮かぶやたら長くて具体的な言葉を言ってみる。多分あってるだろコレ。こういうのはパッションが大事なのが定番なのだ。

 

「【ゲェムブック:裏世界探索記録帳】」

 

 半透明な左手がカセットを取り込み、変化した。左手で握ったカセットから紙、紙、紙。周囲に大量の紙が舞い散り、その全てが寄り集まって左手を創り上げていく。

 

「…わあ、すごい…昔のゲームには取り扱い説明書があるからそっちかと思ったけど、自分で調べて埋めていく専用の観察記録帳を寄越すのは斬新だなぁ…埋める枠が千を超えてんなぁ…」

 

 創られたのはそこそこな大きさの本を持った手…正しくは本と癒着した左手があった。見た目に反して軽いし思うだけでそのページが開かれるから調べるのには便利そうだけど、片手が塞がれるからコレを見ながらゲェムはやれないし、自分で調べる前提っぽいから新しい情報は大したものは無さそうではあった。

 

「…あれだな。固定の初期の仲間だ。前世のソシャゲで言えば運命のシールダーとか源石病の魔王とか、そういう初めからいるそのゲームの顔。そういう物だわこれ。固定獲得イベントって感じの奴」

 

 健太さんのゲェムの内容に沿ったリザルトに比べると脈略がないやつだと思ったが、確定で手に入る枠のスキルだと納得した。ポケモン図鑑みたいなのだこれ。それも自分で作る方の。怪奇の事だし適当にページ捲ると変なの出てきそう。やらないでおくか?

 

「『軍旗の葬列』に『蛭沼』に『家守り』…神様に様付かないのか…見かけて知ってるやつは簡単な説明つき。でも知らない奴もあるな…『黄泉のはかばら』、『飴坊』、『繰り言洞』、『のろいし』、『旅籠歓楽街』に…『そかいせつじょ』。見て分からなかった奴らのことか?…でも挿絵に身に覚えないんだよな…」

 

 中身の方は見かけた怪奇の名前と簡単な説明、それから身姿が描かれていた。だが、それもまちまちで名前だけだったり絵だけだったりと差がある。ここは自分で調べろという事なんだろう。ゲェムとしてはそこを楽しんで欲しいらしい。

 

「ある程度調べたらその怪奇の経歴とか追記されそうではあるが、今は大して役には立たないか…」

 

 本を閉じる。左手に本が収納され、カセットとして手と分離した。左手は特典関係で確定。これで今調べられる事は調べただろう。

 

「続きからは無いんだよな…はじめるっと…マッチング中?あ、消えた」

 

 カセットを差し込んでゲェムを起動する。昨日は気づかなかったが、一瞬マッチング中という文字が表示された。どうやら強制的に裏世界に叩き落とすんじゃ無くて裏世界に落ちた人を探して操作するシステムらしい。なので場合によってはPCが変わったりもするんだろうが、今回は変わらず健太さんだった。運のない奴だなお前。

 

「…毎回裏世界に行く前の景色は観る事になるのか、時間ある時にしないとバレやすい仕様だ」

 

 そういえば…実況の体裁を取ってたか。誤解解くか?…それはそれで何か罠でもありそうだな。こちらが有利な条件とは言えゲームじゃなくてゲェムなんだ。向こうに声が聞こえるって事は向こう側に情報漏洩させる事で何か起こる余地があるって事。

 呪いのゲェムのPCに逆らわれて死ぬプレイヤーの怪談なんて常套句なんだ。隠せる間は隠して損は無いだろうな。

 

「それじゃあ…人生ダイスで一発勝負な探索ゲェはっじめっるよー」

 

 はい、よーいスタート。

 

 


 

 

「昇進…ですか」

「ああ、その通りだ。…もう一度理由を言ってあげようか。相戸君が所属していた神格対応班の6課は『青空腹様』に30名全員で対処し、相戸君と他7名が生き残った。お上から見ても大きなヤマだったからな。報酬に長期の休みを与え、その間に人員の再編も済ませた。相戸君は中でも一番活躍したと報告が上がっている。それらを踏まえ、課長になるに相応しいとの事だ。理解できたかね?」

 

「…はい。ありがとうございます」

 

 繰上げ昇進。言葉には出されないが、そう言う事だ。新人が上に行くなんて、そのくらいしか理由はないだろう。

 あの不思議な体験をしてから半月が経ち、小さく細やかながらも『家守り様』の住まいや祝いの席を上げ、そうしてる間に休暇も終わって仕事場に来てみれば、俺の昇進が待っていた。

 俺以外にも経験年数の長い人物は生き残った中にいる。それでも選ばれたのは、それだけ上の立場が死にやすいからだ。経験者が死ぬのは避けたかったのだろう思惑がみえた。

 

「うむ、コレからも励みたまえ。では、早速で悪いが仕事だ。だが身構えなくてもいい。簡単なのを寄越すよう私の方からも言ったからな」

「ありがとうございます」

 

 上司の(たちばな)良夏(りょうか)さんに感謝を告げる。実際、仕事が山ほどある中でこちらの事情を汲んでくれるのは有り難かった。

 

 

 

「だったんだけどな…」

 

 見覚えある壊れた祠を見て嘆く。あの日からなんだか頭が冴えるし体もよく動くし『家守り様』が心の調子を整えてくれてるし前よりもずっと強くなれたと思ったのだが、そう簡単には行かなかった。

 

「新人庇ったのがな…」

 

 『小道地蔵様』という虫を湧かせる怪奇の対処に新人を連れて行ったのだが…コレが中々に難儀な性格をしており、気を緩めて怒りを買った新人が『枯影虫』の群れに拐われるのを庇い、今に至っていた。こういうの相手なら、チートが有ればなぁ…使えなくなってるしな…。

 

【人生ダイスで一発勝負な探索ゲェはっじめっるよー】

 

「来たか、実況の人」

 

 身体が勝手に動き、進み始める。

 だが、そう途方に暮れる必要は無い。何故なら俺にはこんな異界からおさらばする為の頼もしいプレイヤーがいる。この世界がゲームかどうかは悩んでも仕方ないから考えない事で解決しておいた。

 それに今回は前回の大雨の夜と違って晴れていて青空が見えるし、絶望感は前よりは少ないのもあった。

 

 身体が勝手に歩いて進む。前回は雨だし夜だしタ走ってたしで碌に見えなかったが…改めて見ると廃家が立ち並び、道が荒れ果て、前回通って来た道路も遠くまで草木で荒れ果てていた。今いる場所は町の端の様で、家のある方は元々は立派だったのだろう家の跡地が続いている。不気味なくらい生き物の出す音が無い世界は、寂しさと不気味さがあった。

 

【さて!前回はピンポンダッシュみたく即帰宅を見せましたが、今回からは本格的な探索となります。雨の降る夜という最悪な条件下で探索は危険だからしょうがないね。その分暫くは雨が降ることが無いので初回に雨が降るのは幸運でした。親に見合わぬ幸運チャート誇らしく無いの?】

 

 その中でも響くこの声は、それらの不安をかき消してくれる。ゲーム感覚で俺の命が扱われるのは気に食わないが、その分俺の判断よりは的確に動いてくれるのは対価に見合っていた。

 

【では暫く風景から怪奇を観察…ごほん…楽しみつつ目的地まで移動しますので…待ってね今自作コラムノートの沙五間村関係の探してるから…あったあった……移動している間暇な皆様の為にーぃ…】

 

 クッはやめてくれ…。

 

【設定資料を解説していきたいと思います……観察した怪奇とこの情報から推測すると…この戦争野蛮すぎだろ…今作は裏設定が多く、そういうのを知っているとより楽しめる作品となってますからね】

 

 やったぜ。この異界の事を知れそうだしそういうのは沢山欲しい。

 

【今回のステージはかつて三度あった大戦争の三番目の戦争の被害受けた土地でして、元の名前は沙五間村という温泉と疎開先としてオススメだとよく新聞に取り上げられていた村となっております。…じゃなきゃ俺知らなかっただろうしな…】

 

 俺新聞は読まないから知らなかったな…。

 

【と言うのもこの土地、『飴坊様』という神様が治めていた土地で、あらゆる呪いが寄りつかないとして当時の戦争の顔の兵器、『呪怨超圧縮式悪霊搭載型核』の対抗怪奇の一つとして名が知れ渡ってまして、その為核を撃たれても大丈夫だと多くの人が集まって発展していったんですね】

 

 へー。60年前の戦争か。緘口令が敷かれてて詳しくは知らないんだよな。

 

【まあ普通に本土上陸された時に殲滅されたんやけどなぶへへへ】

 

 なにっ。戦争の時にそこまで、この世界の日本って追い詰められてたのか。

 

【そんな訳で…多分コレあそこの怪奇の仕業で時間を繰り返してんな……このステージはその本土上陸で殲滅される前と後の1ヶ月を繰り返すステージとなっております。色んなキャラが…多分…いて比較的安全な殲滅前、雨が降る日に行われた襲撃時、一番ひどい襲撃直後の夜、植物以外全部消えた殲滅後、今は前回に居た怪奇も粗方殲滅された後なので安全ですが、ステージをよく知らなければ進展が期待できない殲滅後となっています】

 

 絶句する。思わず動ける範囲の首だけで見渡して、景色を見る。さっきの話を聞いて、ここまで死体も見かけない事が、この異界の悲劇がどれだけの物かを語っていた。

 身体がそこら辺の廃家から棒を取る。

 

【で、す、が、今回は初心者向けのサクサクプレイが目的の実況、本来なら情報を集めてようやく辿り着ける…だろう…怪具の回収や仕掛けを動かしていきます。と言う訳で着きましたのがここ、「避難所」〜】

 

 足が止まったのは、道端の土草だけがある場所だ。身体は道のある所を蹴り、棒を刺すと、土が崩れて穴が空いた。上に乗っても全く分からなかったそれは、確かに下に隠れれば争いから逃れそうだった。

 

「…うっ」

 

 棒を開けた穴に突っ込み、地面を確認して下に降りる。入り口はあまり深く無く、少し進めば広々とした空間、そして複数人の若い少女達の、まだ生きていると思える死体があった。

 腐臭はしない。触れれば冷たく、避難所で無ければ白い髪と相まって幻想的ですらある。

 

「…これは」

 

【『疎開雪女』。戦争から逃れる為の手段の一つとして民間に広まり、『雪女』の別種として後に国に殺してよしと認定された臆病者達。そしてその被害を受けた『雪女』です。悲しいなぁ】

【三度目の大戦争は人と人の争いで、妖怪や幽霊は兵器として捉えられてました。しかし種類豊富な妖怪や幽霊の中には戦争に適さない種もいます。『雪女』はその一つでして、人は、民間人はこう考えたそうです。「あれの中に入れば戦争に行かなくて済むんじゃ無いか?」と。女子供も赤紙が渡される戦争末期の話です。我が子と妻を生かしたいと願う夫達の抵抗ですね】

 

 身体は『疎開雪女』の後ろに指を入れ、横に開く。簡単に、肉は開かれた。腐った肉がどろりと落ちる。子供の死体だった。妖怪の皮だった。生きて欲しいと願われた末路だった。

 

【まあこれ『雪女』からしたら迷惑なだけでして、皮を剥がされた『そかいせつじょ』はその皮を泣きながら探しています。殲滅後は殺されてますけど。まぁ繰り返すステージなので復活しますから、持って帰って襲撃前に出会ったら渡しましょう。ここにいる奴らで全員なので他を探す必要は有りません。おら脱げ!】

 

「…貰います。どうか成仏して下さい」

 

 誰にとっても悲劇だが、プレイヤーには関係ない。身体は次々と皮を剥ぎ取り、17人の皮を持って出ていった。

 

 次の場所に向かう途中…

 

【では装備しましょう。……それにしても帰り方どうすっかな。『家守り様』居ないしな…】

 

「はぁ!?…は、は?はぁ!?」

 

 町中を流れる川で皮を洗い、正気では出来ない皮を着るという所業を行った。コイツ、マジか…。

 俺の意思とは裏腹に身体は勝手に動き、服を脱ぎ、少女程の大きさの皮を着る。不思議と身体は皮の方に合わせて小さくなり、着込んだ時には白い髪に蒼い目の『雪女』の少女の姿になっていた。…服がぶかぶかだし、気分は最悪だ。

 

「やっちゃったよ…」

 

 声高ぇよ…。靴もぶかぶかで歩きづらいし…仕事服でここに来たから神主風の服なんだが、紐で調整出来る奴だから辛うじて着れていた。動きづらぁ…。

 

【はい、これである所に行ける様になります。この姿だと種族が妖怪扱いになりますので、妖怪専用の道を通る事が出来ます。元が人間だと知らないので通れる余地がありませんが、…俺の眼で見た感じ…攻略情報によればそこを通る事で前回の様に神頼みせずに自力で帰還できる様になれる様になります…の筈…】

 

「もう勝手にしろよぉ…」

 

 心が折れそうだ。生きたかっただろう子供にも『雪女』にも顔向けできないことしてる気がする…。

 

 それから、町中を行ったり来たり、崩れた壁を叩いたり壊れた桶を動かしたりして、気づけば俺は『小道地蔵様』がいる小道の方に帰ってきていた。

 

【はい帰還!では死なないと脱げない皮を被ったコイツの将来はどうなるって所でここまで。次回に続く】

 

「は?聞いてないんだが!?」

 

 は?俺一生このまんま!?プレイヤーってクソ野郎だなマジで!何してんだマジで!?

 

「うー…課長…!どうして俺なんかを庇ったんすか…!」

「泣くな新人。この業界、良いやつから死んでいくもんさ」

「でも先輩…俺…ウグ…俺なんかの為に…」

 

 あー、新人と先輩が話してるなー。この姿どうしようかな…どうにでもなぁれ!

 

「ぉーぃ、俺帰ってきたよー。相戸健太だよ!本当だよ!帰って来たよ!」

 

 目の前に免許証を掲げて、敵対する意思は無い気持ちを込めて出来るだけ笑顔で飛び出した。

 …沈黙に耐えきれず、手を振ってみる。通ってくれ…!

 

「…誰スカあんた」

「…待て、その見た目…『疎開雪女』か?…検査を受けてもらう。大人しく同行しろ。…相戸後輩」

「え、信じるんすか!?」

「本人の可能性がある以上はな」

 

 ひゅー!流石先輩話が早いわ。この16枚の皮どうし…あれ、どこにも無いな…有っても困るだけだし、いい…か?

 

 帰還した俺はコレからのことに頭を悩ませつつも、当面は何とかなりそうな気配に安心するのだった。

 

 


 

 

ゲェム記録

 

2020年4月2日

 当面の帰還方法の確保に成功した。少なくとも健太さんはこれから安定していつでも帰還できる様になった。裏世界に行った人からPCを探す都合上、他の人を操作する場合は分からないが…少なくとも、健太さんは確実に帰せるだろう。

 その対価に、健太さんには性別と見た目が変わってしまったが…あの人迂闊にまた裏世界に行きそうだし、必要駄賃と割り切ろう。

 今回は裏世界の様子も落ち着いていた為、たくさん見て大量の情報を集める時間が手に入った。少なくとも、沙五間村に関してはゲェムとして攻略の道筋が分かる程度には。

 考察:裏世界に行く前の様子から健太さんの方とこちらの時間の進みが違う。だが左手の感覚から向こうも現実だ。原因はなんだ?

 

 今回の探索で何故65年前の戦争の怪奇が、『家守り様』が生きていたか判明した。どうやら時間を繰り返しているみたいだ。

 考察:今回回収した皮が繰り返す中でどうなるか確認する必要がある。

 

 リザルトの方では、「怪具/雪の皮/丙」を16枚手に入れたと表示された。取り出せるか試してる内に「怪奇探査」を確認したら探索成果のページが追加されていた。文字を触れたら取り出せて押し込めば仕舞えるみたいだ。そこら辺の色紙やペンは仕舞えなかったのでゲェムで手に入れたもの限定なのだろう。

 ステータスの上昇はなかった。初回限定か、「裏世界帰還者」のスキルが原因か、多分後者だろう。

 

 『青空腹様』と『小道地蔵様』を至急調べる必要がある。これを起点にすれば、健太さん側のいる場所と時間がわかる筈だ。

 考察:時間の流れが違うなら、選択肢は2択だ。別世界か、生きる時間が違うか。

 

 


 

 

「この特典、もしかすれば相当大層な事をしてるかもしれん」

 

 記録ノートを閉じて、思案する。窓を向けば、夕暮れが見えていた。

 

「だけど…もしこの予想があってたら、俺はこの特典を今後一生使わないだろうな」

 

 ノートをしまう。別世界なら、まだ良い。関係ない事だ。だが、生きる時間が違う、こっちは問題がある。向こうが未来のことならまだいい。しかし、これが過去であれば…

 

「俺の血筋を殺されたら一瞬で終わり、過去が変わってそれが俺が死ぬことに繋がれば終わり…次はやらなければどうなるか、少なくとも3日は様子を見ようか」

 

 まだまだ知らない事ばかりだ。ゲェムの内容はこの目があればそう難しくはない。沙五間村の攻略の仕方は暴いた。余裕はあるだろう。

 

「平穏の為、この世界で安寧を得るため、悪く思うなよ」

 

 カーテンを閉める。前世でも不審者に見られない様に閉めていたが、この世界は夜に閉めないと怪異が来て危険なのだ。

 ゲェムをやって疲れた眼を指で抑えて、ズレた眼鏡を直した。

 

「…死んだら葬式はするから、暫くよろしくお願いしますね、健太さん」

 

 1人、俺の事情に巻き込んだ人に対する罪悪感から溢れた言葉は、虚空に消えて意味を為さなかった。

 

 






霧晴千歌
 葬儀屋の娘。小さい頃は葬式の手伝いをしていた。
相戸健太
 性転換する事になったが職場には受け入れられた。偶にあるらしい。
(たちばな)良夏(りょうか)
 簡単な仕事を回した部下が別の身体になってた。一杯奢って慰める予定が追加された。

『疎開雪女』
 『雪女』を狩ってその身体に入れる処置をして被った人間。
『そかいせつじょ』
 皮を取られた『雪女』。突然家に上がり込んで妻面をする妖怪の中身。
『呪怨超圧縮式悪霊搭載型核』
 怪奇を殺す兵器と怪奇以外を殺す核を足した兵器。受けた被害の倍を返す呪いで対抗されるのも有って敵味方問わず全て鏖殺する。三発撃ってからゴミだと処分された。
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