他を知る前に、真っ先に知る必要がある事です。
「じゃあみんなでゲェムを…みんな何を見てるの?」
やぁ、ご飯も食べ終わっていざゲェムをしようとしたら突然みんなが手元の虚空を見つめ出したぞ。メリーと同じく特典関係なんだろうけど、俺の特典に関しては俺の眼でも見えないんだな。
「霧晴、この【裏世界探索ゲェム】とやらを教えなさい」
「【不思議いっぱいTRPG】…TRPGってなにー?」
「【かなたらの願い】…これ、私の奴って事だよね」
「うーん、見えないから何のことやら…」
「え、霧晴でも見えないのかい?」
「…ほー、演劇って感じかー」
「ゲームボーイ貸しなさい。一旦起動してみるわよ」
「大体分かるよ?でも同じかは分からないねぇ」
うん、聞き覚えと見覚えしか無い名前だな。真倉達の手元に触れたら確かにそこに有るし…これ、かなたらの願いの初プレイ、多々良がディスクを見れてなかった時と同じか。
秘匿能力高いなぁ俺の特典…つまり、過去改変で記憶が継続する人がコレで増えるのか?マズいなぁ変化に追いつけない。数分で環境変わり過ぎだろ。
前に同じ感覚になった事あるけど、もうここまで来ると罪悪感とか湧かなくなるんだな。影響範囲凄過ぎて飲み込めない。
「ん、じゃあ誰からやろうかな…真倉やってみて」
「ええ、どんと来なさい」
真倉が見えないカセットを俺のゲームボーイに差し込み、起動するが、画面は見えない。
裏世界探索ゲェムをプレイしてる最中ってこんな感じなんだ…。
「…ランダムマッチ…フレンド指定…中身は…我が社の異界へ向かわせる先鋒隊の…行方不明者達じゃない!?」
「『裏世界』に迷い込んだ当時の本人達を、操作する事になるから気をつけてね。ゲェムする私達には危害は及ばないから、その点だけは安心していいよ」
「────へえ?」
真倉は俺の忠告を聞いて、笑って言った。
目付きが変わっている。彼女の、何か仕事人としてのスイッチが踏まれたみたいだった。
「なら都合が良いわ。彼らはプロよ?」
「えぇ!?下手すると死んじゃうよぉ?」
「それも業務の内だからいいのよ。何より、30年前の行方不明者が情報を残す成果を手に入れられる。その分のボーナスは其々の家庭に与えれば…あぁ、縁のある人物を対象にするなら、私よりもっと適任がいるか。なら、今はやらないでおくわ」
「えっと、誰に?」
「かつてこの部隊を率いた隊長さん。もうロートルでそろそろ退社するかって感じだけど、最後の仕事に相応しいと思わない?」
「………私の協力は」
真倉は自分のリュックからノートを出して、机の上に叩きつけた。
「操作方法と異界の特徴予測、出会うだろう怪奇、このゲェムで向かい合うだろう異界の情報、全て書きなさい」
「え、え」
雰囲気変わり過ぎだろ。普段からの様子から想像出来ないくらい眼光が光ってる。
「勿論友達価格とは言わない。過去に干渉する怪奇よ?それも、ドットでもリアルタイムで異界を観測出来て?こっちに被害が及ばない?…なんて有利な条件だ!イイ!イイ!!素晴らしい!!!」
何かが乗り移っている、とは、こういう状態を指すと思う。真倉の魂に付け足された2人目の父が、其処にいる気がした。そう錯覚する程、豹変していた。
「………そうねぇ霧晴?お金無かったわよね。一旦情報料にこのくらい、前金でそれだけ出せるわ」
今度は据わった目で、真倉は指を8本立てた。
「えっと…どこがお金になるの?」
「…霧晴、この国の法律で、異界を完全に制御下において長期間の管理維持が可能ならば、その土地と産出物、利用方法は全て、税金無しでそれを行った当事者の物になるの。まぁ、詳細の報告義務はあるけどね?」
「…うん」
「つーまーり、どんな異界であれ、金にも技術にもなるのよ。利益、それはもうすごいのよ?文字通り世界一つ、空間一つ、環境や周囲の怪奇のリスクを気にせずに実験できる環境…それが?既に死んだと思われてた人材と物資で?実質ただで手に入る…単位、億だから」
「わぁはちおくらぁ」
俺のちょっとした情報でそれだけ払えるの?マジかよヤバいな。え?情報だけでそれ?生涯年収余裕で超えるじゃん。俺のメガネほどじゃ無いけどさ。
「えっと、失敗するとか考えないの…?」
「
「……真倉ちゃん怖いよ」
「……冗談よ!情報だけ渡してくれたならそれでいいの。ちょっと怖がらせ過ぎちゃったわね?ごめんね?確かに成功する保証は無いものね!でも情報は書いて。彼らの事見殺しにしたく無いでしょ?」
情緒がわかんなぁい!この反応で利用してやろうって考えじゃ無くて、折角だからできるだけお金を渡してやりたいって思考してるのがこーわーいー!そーいうとこだよもー!
…失礼、取り乱した。どうしようかな。親切心からやってるムーブなんだろうけど、気分としては服の隙間に札束入れられる店員なんだよな。最近真倉の商売人化の進行が著しい気がする。
「…じゃあ、次は私でいいかい?」
「見てないで助けてよそこは」
「それは出来ない相談だな。正しい事を言ってるから止める理由が無かったんだ」
「まぁやっぱり後でやるから情報が欲しいって言ってるだけだけどぉ…」
「それじゃあ、テレビを借りるよ」
見えないディスクをテレビのプレイヤーに入れて、真倉用のノートを書きながら待つ。豪華な音楽とタイトル画面が出てきた。
コレは元からみんなでやる奴だからあんまり驚く事は無いな。なんか始めるの次にサーバーが分けられてるくらいだ。
「…ふむ、サーバー1(2023〜2028)、2(2030〜2401)、3(2591〜2608)があるね。重なる時期は無く、全て未来の日付だ」
「大体5年、400年、15年くらい…動乱期、安定期、終末期って感じかなぁ?」
「分かりやすい差があるし、そんな感じだろうね。今までが3番、終末期をやっていたと考えれば…うん、大体合ってるだろう」
「ケリーさんの時、最後は人類終わってたしね」
「なら、遡る形で…」
夏奈が2番を選ぶと同時に、夏奈はばたりと倒れてしまった。
「え、夏奈?大丈夫!?」
「お姉ちゃん!?…脈は正常…呼吸はある…寝てるだけだね!」
「…良かったぁ」
うーん、コレ夏奈がまた未来に行ったのか?少なくともテレビに映った、時間旅行していた転生者は肉体と一緒に転移してそうだったけど。
「…は!」
「あ、起きた」
「…布団を敷き直す必要は無かったわね」
「大丈夫?短い間だけだけど気絶してたよ?」
「…あぁ、問題ないとも。少し、電子生命体になってきただけさ…コーヒーを一杯用意してくれ」
「分かった!今持ってくるねお姉ちゃん!」
うーん、大問題だな。AIになったり、夏奈はそういう人工生命体によく成ると思う。
「それで夏奈、何が起きてたの?」
「…宇宙船で宇宙を航海していた」
そういえば、夏奈がAIになってケリーに仕えていた時に居たコロニーは宇宙船を改造した奴なんだっけ。それより昔なら、そりゃ宇宙船の中か。
…宇宙船と言えば聖杯の時に宇宙船を特典で出してる奴居たなぁ。アレの元の組織なんなんだろ。
「あぁ、コロニーとか、宇宙船を改造して作った奴だしそうなるねぇ」
「…其処では人類は肉体から解放されててね。電脳化の末にネットを活動の主軸に置いていたんだ」
「へぇ、それで何があったの?」
「ほら、今でもネットにも怪奇は居るだろ?何も変わらなかったさ。霧晴の書いたメモは全て覚えてるからね。前と同じ様に確保して、その数が100を超えた辺りでこっちに戻って来れた」
「本当に何も変わらないじゃんね」
「お姉ちゃん!コーヒーできた!」
「ありがとう、多々良」
夏奈はコーヒーをゆっくり飲んで、一息つく。今の彼女にとっては久しぶりの今だろうからな。ゆっくりさせてやろう。
「ふぅ…持ち帰ってきた事がある。ネット関係の技術、その進歩と併用すべき怪奇との組み合わせ方だ。全て暗記して来た」
「え、すごい…」
「これで、今までのようなゆっくりとした歩みでは無くなる。そうすれば、怪奇による精神汚染は起きすらせずに解消される…真倉、後でそっちの会社に行かせてくれ。覚えてる間に伝えておきたいんだ」
「…取り敢えず、新品のノートはもう1冊あるから、一番大事な事は書いておきなさい!」
「助かる」
わぁトントン拍子だ。なんか俺が動画サイトの助言した時と比べて、正しく動いてる…未来予知能力者みたいな最適解行動を見てる気分だ。
でも困ったなぁ、どっちも新しい機能がある。フレンド指定と未来への移動。どっちも今まで無かった…無かったかな?父さんが自動で選ばれたりPCとして夏奈が行ったりしたのを可視化しただけなんじゃないか?コレが説明や利便性向上に対しての成果だったりしないか?
「…自分の奴をやってみるしかないか。比較しないと」
そう言えば、ゲェムを一緒にやったのは真倉達だけじゃないな。座式先生や父さんもだ。
んー…今どうしてるんだろう?ゲェム貰ったか連絡してみるか?もうこうなったら俺が転生者だってバレる余地も無くなったし、全然情報吐いてもいいと思うんだけど。
「最後はウチの本だね!」
「それは持ってるけど私も知らないんだよねぇ」
「そーなの?なら一緒にやろ?二人でやれば怖くないよ!」
「頼もしいなぁ」
そんな訳で、休憩しながら話し合っている真倉と夏奈の隣でしっかりやってみることにした。
「最初に、やるシナリオかキャンペーンを選ぶ…直ぐに済むのがいいよね?」
「ん…【山奥からの誘い】、【裏路地の呪い】…長期は【TEL×NET】、【:(】とかあるねぇ」
どうもGMは決めなくて良くて、推奨人数に合った物が優先して最初のページに来るみたいだ。
難易度やPLとしての推奨・非推奨技能、PCへの推奨技能もある。クローズド系統は万が一があるし、そっちは選びたくは無かった。
「あ、コレは?【典型的転生】だって!異世界の魔王?を倒しに行くシナリオで15分で終わる!」
「それの推奨技能見てみなよ。*PLにチート能力がない場合、難易度が上がります。って書いてる」
「うーん…じゃあ【自作シナリオを作る】ってのはどー?【フック】から選んで、自分で舞台を決められるってー」
「んー…待ってね今開いてるから…近場だけでも『ウワサネット』に『アカイネ』に『鎌蛇様』に強そうな名前ばっかりじゃん私ら死んじゃうよ?」
「…難しいね!」
「だねぇ」
こういうのは紙とペンとサイコロだけの話だから面白いのであって、そうじゃなければただの事件事故誘発装置でしかないんだなぁ…それ言ったらゲェム全部そうだけどさ。
「………うーー…あ!これなんてどう!?【ハッピーァンハッピーリフレイン!!】。難度1で!歩いてるだけで終わる!2人からやれて、片方は寝てるだけだって!」
「んー…それなら良いの…かなぁ?」
「やったー!霧っちの審査通ったー!」
「よく元気にやれるねぇ?」
「だって、こんなに書かれた本だよ?それだけ頑張って楽しませよーって伝わるじゃん!ならウチもそれに応えたいよ!」
ちょっとだけ、眩しく思った。ゲェムに向けて、こんなに楽しもうと思える純粋さが、どうにも俺には明るいみたいだった。
…この純粋さを持ったままいられる世界ならどれだけ良かったか。夏奈の死が無くなって擦り切れてない多々良は、どうにもあの時より明るいな。
「…そうだね。じゃあやってみようか」
「うん!それじゃあ指でなぞって…光ったね」
「次はキャラメイク…このシナリオはしなくて良いのか」
シナリオ名が光り、俺と多々良の心臓に一筋の光を当てた後、シナリオ名を書いていたインクが膨れて、前にメリーと母さんの戦闘の時にも見た黒い人影になった。
【参加者二名。ではコイン、1D2を振って表が出た方が寝る側となります。数字を宣言してください】
「1!」
「じゃあ2で」
黒い人影から、女性にも男性にも聞こえる声が進行方法を決定した。人影の指がコインを弾き、コインが空を回った。
いつの間にか、俺達を中心に血で描かれた陣が出来て、身体には泥で模様が作られていた。
周囲には大人達が囲んでいて、野太い声で何か呪文らしきものを誦じていた。
【あなた達旅人は、かつて西洋に存在した村に伝わる儀式、心技体を乗り越えて戦士となる怪奇を取り入れた儀式、その最初の試練、『ココロの儀』を受けました】
多々良が虚な目で俺を見つめていた。周囲を見て、怪奇の種類から此処が過去であると判別した。
【それは心の強さで進むことこそが全てとなる夢の儀式。踏み込んだ者は踏破すれば、夢を見る者は向き合えば、今までより精神と判断が増して強くなれるでしょう】
身動きしようとして気づく。身体は縄で縛られていた。
【数字は2。過去も未来も今だけは忘れてしまってください。これは今を生きる者への贈り物です】
「にゅ…ここは?」
気付くと彼女は真っ暗な世界にいた。生暖かい水の中に揺蕩っていた。
「…影とシナリオは進めば良いって言ってたし、歩いてみよ」
数歩も進まずに世界は情報と音に満ち溢れた。
理解できない数と絵、無秩序な法則が視界に満ちていた。
「あ"う"…眼が…」
産まれ落ちて最初に感じたのは、頭だ。神経が身体からうんと伸びをして、その全てで感じたことを痛みとして伝えて来た、理解を拒む痛覚だ。
「い"あ"…進め"ば…」
だからこそ、そこから解放させてくれた相手には、何者よりも感謝と尊敬を捧げるべきだろう。
眼鏡がかけられて、神経が体の中に収まってくれた時、初めて光が差して、最初に見たのが母さんだったんだ。
「…痛くない」
『あぁ…良かった…よかった…生きてくれたかい…』
「…霧っちのお母さんだ」
『そうだな…ちか…千歌だな。千の歌より尊い私の子…それが、アンタの名前だよ』
「…進もう」
まともに食事が取れない、育つには軽い、そもそも、肉体のあらゆる部分に異常がある。
その全てを前に、母さんは向き合ってくれた。1人だけで、俺を死に向かわせるあらゆるものを捩じ伏せた。
なにより
『かあさん、しんでますね?ぶったです』
『仏さんだ。あんまり近づくんじゃないよ!…あぁもう真っ二つなんてどんな轢かれ方したんだか』
『でんしゃです?それはふしぎです。日もくれてません?たちおうじょーです。もえてますか?おみずです』
『雲の怪奇って事かい?』
『あってます?ちがいありません』
『…アンタら!シケた場所には近づくなよ!』
「霧っち昔は変な喋り方してたんだねー」
昔はどうにも狂っていた。多弁で、見えてる全てを口から溢していた。そうじゃなきゃ耐えられなかったんだろうか?もう分からないな。
思考は結構まともではあったんだが、どこか壊れてるのは否定出来なかったんだよな。まぁ、喋り方は素だけどさ。
「ここは…夜の…どこ?」
『月が見えますね。汚いです』
『千歌、折角の月見になんてこと言うんだい。ほら、お団子食いな』
『…………モグ…』
『食べてる間は小動物みたいに静かなんだけどねぇ?』
『ぞうきです。わるいですか?近くも遠くもふてきですね?大人しくします………モグ』
『はいはい、心配しなくても勝つよ』
『ア° ア°ア° ア°ア°ア° ア° ア°ア° 』
「うわ!…こっち来ないんだ!」
…少し、時間を飛ばそうか。
「あれ?成長してる」
小さな間は、そりゃあ母さんと沢山の死を見送ったものだ。
『…ひぐ…母ちゃーん!』
『ご臨終です。我々も努力しましたが…』
『泣くな、翔太……後は…お願いします』
『はい、幽霊とご遺体の方はこちらで』
『……かなしいですね?どうすればいいですか?』
『しっ…こう言う場は、線香とお香焚いて偲ぶもんさ』
『たくさん線香わたしたいです?コレはだれのためです?ゆうれーでしょう?』
『…難しいね。幽霊は本人なようで、本人じゃないんだ』
『そこにいます』
『居ないよ……生きてる本人には二度とね』
『ですか』
『そういうもんさ。死ねば終わる。変われば戻らない。似てても違う。当たり前の話だよ』
『ですね?』
「ずっと一緒にかー…ウチとお姉ちゃんは2人きりだったのに」
転機となった事を言うなら?…それは、宇宙に目をつけられた時だろうな。
正確には『宇宙の無意識領域』だな。
『…おつきみますか?またみたいです!母さんがいません?ひとりです。さみしいですね。ごまかしがひつようですか?ほしいです……おだんごありません』
今と同じだな。好奇心と取り敢えずやってみようとする精神。無駄に食い意地のある子供が、1人留守番してる時に安全な部屋から外に出て、満月を見ようとした。
無根拠でそうしたわけじゃ無い。母さんと一緒に夜の街を歩く時は、何も問題無く歩けたからだ。
「…なに、これ」
何よりも、無知は罪だった。
凸凹に歪んだ汚い月をもう一度見ようとして、街灯の無い街に、団地から一歩前に出て。
「…すすまなきゃ…おわれないよね」
俺は赤い稲穂の垂れた異界に迷い込んだ。
…今なら解説できるだろうな。其処は普通の人なら鎌ヶ原で最も危険な異界だ。
全部が赤くて、心は全てそれに染まる。
問題は、俺は精神汚染には滅法強かった事。発狂も飲み込まれもしなかった。
その異界は、精神に侵すだけあって、その手の怪奇と近い場所だった。
「もっと酷い場所に来ちゃった…」
最奥は、宇宙に繋がっていた。俺はこの時初めて道を間違えてたと気付いた。
一番間違えちゃいけない2択で間違えてた。俺は普通に出口に進んでるつもりだった。
「…もしかして霧っちってうっかり屋さんだったりする?」
…めっちゃ悲しい。もうなんか青いしどうするんだよ。帰れないぞ。
そう考えつつ仕方ないから進んでたら、途中卵みたいなのが有ったから、触ったら壊れた。
『市民、あなたは幸福です』、『決定論』、『英雄譚に』、お前達の存在は別に惜しく無いけど、産まれる前に壊しちゃったのは本当に申し訳ないって思ってる。特に『英雄譚に』は普通に面白かったから壊しちゃったのは本当に後悔してる。
「…霧っち案外アグレッシブだ!」
それでどうしようかなって考え込んでたら、なんか鳥みたいなのが出て来た。これが『宇宙の無意識領域』の核的なのなんだろうなって見て分かった。
それから謝って帰り道を尋ねたら、俺から幾らか心に関係する何かを取られた。多分認知とか認識とか記憶とかだと思う。特典関係で不自然に記憶空く事あるから多分コレだろ。
「あ、道だ」
『あ、道だ』
まぁ、後はなんかそのまま返されて、今の俺になった。それ以来なんか喋り方とか普通になったり、自分に対する価値観とか変わった気がするけど、自分が把握し切れない。取られた数も定かじゃ無いからな。
多分常識改変喰らった奴みたいな、平然と異常な事や矛盾した思考とかしてるんじゃ無いかって思ってんだ。
「あ、入学式じゃん!」
後はまぁ、サクサクやればいいだろ。こっちは途中から多々良見えてるからさっさと終わらせたいんだよ。これTRPGの試しだからな?こんなキャラの掘り下げシナリオは初回でお呼びじゃ無いんだわ。
『今日は厄日だ』『気にした方がいいか』『葬式はする』『本当に』
「…うわわ!霧っち…速い!急に早回しのビデオになった!急に走らせないで!」
『はい、よーいこれから頼りに協力時間大切に明かして考えない』
「ひーー!?」
はいサクサクいこー。なんで他の人に全部明かさないといけないんだよ。
俺の左手切ったり銃撃たれたり吐いたり泣いたり後悔したりやらかしたりした記憶なんて今はお呼びじゃねーんだわ。
『それであとやる死んだ諦め答え裏目にできるお小遣い』
「こけそー!?ちょ、止まって!止まって!」
『15分00秒00でタイマーストップ』
良い感じの部分が来たので止めた。休憩は大事だよな。
「…はぁ、はぁ、霧っち…それは無い…ないよ…」
『【それで、回収はできたか?】』
『【うん、時間の狭間に行った方の持ち主は回収したよ】』
『【なら直して未抽出の方に入れておこう。ガチャの景品としての価値はあるだろうしな】』
『【先輩も悪ですねー。こんな方法で楽しようなんて】』
『【まぁ、ゲェムの方に注力したいからな】』
「…知らない人…居る…はぁ」
うーん?知らない会話だなぁ。コレ『昨夜様』の神器壊して狭間に行った方の記憶か?俺は『屋根ダルマ』と向き合ってた方だけど、この儀式ってそこら辺対応してるのか。便利な奴だなぁ。
『毎日オーケストラ穏やか助かった花束を無情な終わり』
「だから!急に、走らせ…ヒュー…けほ…けほっ」
あ、ごめん。気が抜けちゃった。
『【ヴァー…新人はガチャの景品点検しろとかダル…まだDDテスト中だったのに…】』
『タスケ…イタイ…』
『【ん?…なになに?時間の狭間から回収したもう1人の持ち主、霧晴千歌…そういや残機回復の余剰どうするか決めてなかったなー、ほら、生きながら死ぬの辛いだろ?その内寿命手に入るから、そしたら渡してやるよ】』
『イタイ…ボケーッ』
『【ほーれ、ご飯だ。…はは!手足千切れてるから芋虫みてぇ!…説明には…あ、怪異に取られたのか…痛み止めあるかちょっと聞いてみるか…哀れな奴だなー】』
「…霧っちが…実感動物みたいになってる…」
へー、俺の取られた2年の寿命の行き先って残機と狭間の俺だったのか。
…生きとったんかワレー!特典に回収されてるじゃん!…ガチャコイン回さないと回収出来ないってマジ?…助けなくてもいいかな?だめ?
『あーあえあうお難易度異界の考えてまたようこそ』
「ここら辺はちょっと遅いね!余裕あるよ!」
昨日のところまで来た。後もうちょいだな。
『…ヒマー』
『【ほら、約束の寿命だ。6ヶ月分あるけど…慣れちゃってんな持ち主。まぁいいや。最近の新人がクローン強くてな?身体の方も直せそうだから取り掛かるぞ。景品の品質は上げないとだからな】』
『………!……?……!?』
『【PCとしての復活だから、肉体の制御権は無い!景品として引かれるまでは【ゲームガチャ】の備品として扱う事になったから宜しく】』
『………………!!』
『【で、早速で悪いけど【かなたらの願い】担当が『メリー』にDLCの事伝える為の肉体になってくれ。…まぁ前の【裏世界探索ゲェム】担当先輩の、肺と脳を直で弄られての腹話術の人形みたいな、辛い事にはならないからそこは大丈夫なはずだ】』
『………………!………………!!』
『【嫌がってて草】』
「霧っちも花一匁のウチらみたいな事されてたんだ…」
嫌な予感がしてきた。予感が役立った事少ないけど、覚悟は出来るよな。
コレ、契約とかの穴抜けに使われてない?そんな気がするんだけど。
『処分品だ』
「お泊まりの最中だね!」
『【ねー次どうする?】』
『【そろそろ誰か1人分クリアして欲しいもんだが…】』
『【ちょっと聞いてよ!今備品の眼で観測してたんだけどさ!明日契約書が発行されるかもだって!】』
『【え、マジで?】』
『【真面目も大真面目!いやー持ち主の幸運回収しただけはあるよね!運がいい!】』
『【よし、先に知れたのはデカい。契約が適用される前に条件を予想して抜け穴探すぞ】』
『【それなんだけど…じゃーん!持ち主!】』
『…………!!…!…………』
『【…あ!時間の狭間から回収したのかー。なら都合がいい。どうせ持ち主の許可とかの文脈入れられるだろうし、良い感じに脳手術しとこうか】』
『!?』
『【大丈夫だ、ちょーっとPC化の解除施術する時に、なんでも許せて嫌悪感を抱かず、どんな苦痛も喜べる性格みたいな言動と振る舞いに出力されちゃう失敗をした上で、景品から抜くだけだから】』
『【ついでに女の子らしくしとく?】』
『【どうでも良いからそれでもいいぞ】』
『【あ、泣いてる。大丈夫だ、泣きたくても満面の笑顔が出力されるように失敗するからな】』
「……なに?この人達。理解したく無い」
…景品から抜くとか言ってるから…ガチャを引いても助けられない?
なんで許可を貰わずにみんなに配布されたのかの理由がこれか?嘘だろ?
…確か条件4は利用者が遊べるゲェムは、事前に「霧晴千歌」(前世名「小鳥遊薬」)の許可を得る事。この際に誘導や洗脳、許可申請者は第三者を利用する事も含め、許可以外のあらゆる「霧晴千歌」への干渉は事前にやる事も含め禁止とする。
うん…過去に事前に用意しては〜とか書いて無いな…脳自体は正常だからな…許可するときの心境とかは書いてないな…嫌だって思っても「いいよぉ」って笑顔で言うって事でしょ?…時間が違うだけで確かに「霧晴千歌」(前世名「小鳥遊薬」)だからな…でも干渉を禁止に…あ。
コレ、許可申請者だけが干渉しちゃダメって書いてるから、許可を申請してない人の干渉は防げない…?
あー…………だからあんなとんでもない尊厳破壊なのが罷り通って…予想…出るかぁ…ょ。
『バランス崩壊』
「…えっと…まとめると…時間の怪奇の影響で2人に増えちゃって、片方があの悪い人達に攫われて、それが巡り巡って…ウチらがゲェムを持つ事になった…え?何あの邪悪な人達」
心の試練が終わりに到着する。真っ白で、聖堂のように厳かで、けれど機械があちこちに設置され、未来的なイメージも抱けた。
其処には、俺が居た。
…正確には、「聖女のような格好をした、真っ白な服で飾られた俺が居た」。
眼鏡は無い。閉じられた瞼から、抑え切れない血が流れている。
手袋は無い。全ての四肢は綺麗で傷一つなかった。
穏やかに笑っていた。その下に苦痛と悲嘆の音が流れていた。
背骨に血の増産を促進させる液体が注射され、脳に痛みを誤魔化す為の快楽物質を注がれていた。
機械のように動かず、硬直していた。
自由に動かせる部位は口だけで十分だと言う事なのだろう。
祈らされた上で、強制的に何かの観測機器として使われていた。
「…ごめん、霧っち。今のウチには、この儀式を進むことしか出来ない」
『………』
「でも!…でも!頑張るから!絶対に…!絶対に助けるから!…だから!待っててね!」
多々良は、泣きそうなのを堪えて言って、その俺を通りすぎる。
それをぼうっと見ていたからだろうか。いつの間にか、身体が有った。
「……俺も進まなきゃな」
それなら…聞こえてるか知らないが、俺も一つ宣言して進まなければならないだろう。
「…この世界の時間の仕組みの都合上さ、お前が戻れた場合、俺が消えるんだよ。お前が時間を移動した側になるからさ……だから、宣言しておく」
「───どっちが残っても、周りを悲しませないようにしような。俺」
『…』
ん、と肯定された気がしながらも、どこか繋がりを感じながら、俺も立ち去った。
【あなた達は、試練を乗り越えました。其々の精神と判断はより研ぎ澄まされるでしょう。その誓いがどうなるか見も…分かりませんが、確かな事は、この旅の途中に寄った村での思い出は…忘れられない物になったでしょうね】
【能力指標の精神と判断の基礎値が+1されました】
【同時に存在する霧晴千歌が相互に対象の存続を認めた為、「偏在自覚者」を獲得し、任意のスキルが共有されます】
【以下は変化後となります】
橘多々良
女 6歳
職:小学生/1年
出:覚醒者/人間
戦闘 1 1D6+4
探索 1 1D6+2
精神 3 3D6+1
判断 3 3D6
霊感 1 1D6+3
スキル
「人形使い」
「怪奇対応/神格/丁」
『鎌蛇』
霧晴千歌
女 6歳
職:小学生/1年
出:転生者/人間
戦闘 0 0D6+2
探索 1 1D6+5
精神 3 3D6+6
判断 3 3D6-3
霊感 11 11D6+20
スキル
「怪具/晴眼/甲」
「専門/葬儀/丙」
「怪奇探査」
「怪具/騎手型/乙」
「偏在自覚者」
「人工聖女」
特典【ゲームガチャ】
【これからも、ゲェムをお楽しみください】
霧晴千歌
許可の項目が陳腐化した事に悩んでいる。/やっと気づいてくれたので一息ついた。
橘多々良
とんでもない事実を知った。
橘夏奈
色んな情報を持って帰ってきた。
真倉朝凪
後から3人に情報を渡されて息が詰まりそうになった。
『アカイネ』
精神汚染する赤い稲穂のある異界。考えられる。
『宇宙の無意識領域』
異界を産み出す宇宙の擬鳥化の怪奇。火の鳥と言い換えてもいい。
『神名洗礼の儀』
神格は関係なく、対象を「神に祝福された聖なる人である」と見た者に認識させるようにする儀式。高度な儀式ほど、霊感が高まる。
『ウワサネット』
本体に特典に攫われなかった方の霧晴千歌の噂に自己を置いてる為、もし消えた場合、諸共消える。