怪奇ばかりな日常とゲェム記録   作:何処にでもある

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 ゲェムのしらせ
 想定外の【ゲームコイン】の投入により、各ゲェムに異常事態が発生しています。
 持ち主の安全は仮称【神様】により設置されていた【一時間前停止斜線】により保証されましたが、それ以外の方々の安全は保証されていません。
 【DDRPG】がver.0.80からver.3.00に変化しています。計画表に無いバージョンの為、仕様もバグも不明です。
 【GGDDLC,1】の完全稼働が確認されました。更に、2、3の存在も確認されています。内容を分析していますが、「脳の眼」による観測以外が不可能であり、作業が遅々として進んでおりません。
 【裏世界探索ゲェム】の運営に必要なデータが消失しました。位置特定装置によりますと、『裏世界』の最下層から発信されています。協議の結果、より運営に適した存在へと強制譲渡されたと推測されます。
 【かなたらの願い】での可能性観測装置が全壊。破損した箇所を調べた所、『宇宙の無意識領域』との接続及び、融合による取り込みと変質がなされたと推測されます。
 【不思議いっぱいTRPG】のマスタリング権が怪異化しました。『ウワサネット』管轄の下、特典の急速な拡大が予測されます。直前に暗号処理と反怪奇処理をされましたが、一月後には活動が行われる見込みです。
 【相互協力ゲェム】は未だに存在を捕捉出来ておりません。
 以上の現象は我々の知る所に無い【コイン】による【ゲーム抽出】以外の活用法と、特典の【相互協力型】への移行が原因かであると推測されます。いずれも仮称【神様】によって制定された箇所であり、我々の組織とは関与しない部分です。
 コレからもゲェムをお楽しみいただけるように調整します。お楽しみください。




日常-約束通り

 

 

「…ぶへへぇ」

「うーん、ダメね。シンプルにアホになってるわ」

「霧っちー、正気に戻ろーよ」

「うぇっへへ…ふふ…」

「うーん、ニッコニコだね。ここまでにやけ顔な霧晴は初めて見た」

 

 6月も終わりを迎えるような時期、晴れてる空が眩しいやら暑いやらだが、それ以上に俺の心はホットだぜ?やぁ、俺だ。調子に乗りまくっててマズいなぁって思ってても浮き立つ心が止まらないぞ。

 いやー、俺にも春、来ちゃったかー!相手小学生の男の子でも嬉しいもんは嬉しいってハッキリわかんだね!少なくとも童貞よりはマシだし、どうせ中学は無理だから今のうちに人生謳歌するのがアドってもんだよな!

 はーっ!心がふわふわするなぁ!聖女の俺、すまんな。

 お前が苦しんでるのは最近共有の感覚が掴めてから痛覚の分担してて理解してるが、その分俺の幸福と記憶も渡してるからそれで等価交換だ。

 負担の軽減と、社会復帰に問題ない情報、俺達仲間だからな!今の俺なら常に聖女側の痛みを90%貰っても耐えられる程度にはふわふわ恋愛脳だ!

 ちなみに90%で『魂蝶』の時の15%くらいの痛みだよ。全身が骨折して筋肉が剥がれてる感じだね。

 ぶっちゃけ全部こっちが負担しても全然生活出来る。向こうが申し訳ないからって全部渡すの拒否ったからこの割合だけど、俺はアレで結構慣れたもん。

 

「よーしそれじゃあ…ていや!」

「うげぇ…!」

 

 そんな感じにふわふわしていたら、めっちゃ身体を揺さぶられたよ。なんだなんだと見渡すと、目元に隈の出来た真倉達に囲まれていた。

 うん、気付かない程度には視野が狭くなってるな俺。幾ら前世からの憧れだったとはいえ、いざ叶うとこうなるのは頂けない。そんなクリスマスで周囲を気にせずイチャつくDQNみたいな思考はダメだな。そういうのを世間は死亡フラグって叫ぶんだから。

 でも誰が相手でもこうなるわけじゃないぞ?俺の事を好きになってくれて、その上でずっと側に居てくれる人だけだ。…それを世間で相手は誰でも良い尻軽と言う?でも寿命が短い分浮気は許容できるぞ俺は。将来的には他の人と幸せになってくれ。

 

「うぇ…どうしたの?」

「ようやく正気になったわね?」

「まぁ、元から正気だけども」

「聞きたい事があるのよ。ほら、霧晴って前々からゲェムを持ってたでしょ?」

「うん」

「今、それはどうしてるのかしら?」

「ん、もうやってないよ?」

 

 DDのプレイ拒否から一旦全部確認したら、TRPG以外の全部、はじめるの選択に斜線が引かれてて、確認するの項目が追加されていたからな。なんかこれ以上関わるなって感じになっていた。

 なので、俺はもうコレをゲェムクリアとして受け止めた。相変わらず記録帳は使えたり、ゲェムの大きさの可変は可能だが、それ以外は向こうからアクションが無い限りは無理だろうな。

 

「今筆箱に入れてるけど…ほらコレ。本以外はもうプレイ出来ない状態になって、安定化した。なんだか肩の荷が降りた気分だねぇ」

「…こっちは、逆よ。毎回寝ると、夢の中で続きをしなければ起きられなくなったわ」

「うん、それでどうして欲しいの?」

「話が早くて助かるわ」

 

 コレに関しては俺、もうやれる事少ないんだよね。ゲェムの確認終わった後、ゲームとガチャのコインを其々束ねたら、【10連ゲームコイン】と【10連ガチャコイン】と【5連ガチャコイン】になってまとまったり、試しに裏世界探索ゲェムのカセットにコイン押し付けたらそのまま飲み込んだりしたくらいだ。

 …うん、夢の中で強制プレイさせられるの、まとめられない4枚を其々のゲェムにコイン入れたせいかも知れん。正直台所に置くの、洗い物の邪魔になるから端数処理したかったんだよ。

 と言う訳で俺の手元には、【10連ゲームコイン】と【10連ガチャコイン】と【5連ガチャコイン】の3つがある訳だ。最近聖女の方から呼べば額に向けて転移するってやり方を共有で思い出させてくれたから、家に置いてあるぞ。

 二人いると二倍考える事が出来てお得だよな。身体は一つ、心も一つ、だけど効率は2倍だよ!

 

「単刀直入に言うわ…それを貸して頂戴」

「あ、出来るようになったの?」

「アップデートと称してね。招待しなくても、代理として可能になったのよ」

「良いけど、何に使うの?」

「研究よ。分解して、解析して、理解を深めて、相手の手口を暴くのよ」

「いいよぉ、持っててもしょうがないしね」

「ありがとう、恩に着るわ」

 

 拒否する理由無いからな。父さん母さんも其処は自分の持ってるのを使ってるみたいだし。

 なんか途轍もなく巨大な相手を見た顔をしてたけどな父さん母さん。世間もなんだか騒がしいし、怖いもんである。

 そうして立ち去っていく真倉達を見送って、俺も下校する事にした。いつの間にか授業全部終わってたからな。昼休みに証の所行ってた記憶以外飛んでるが、まぁ大した事じゃない。家で復習すれば問題ない。だから校門前で待ってるのも問題無いな!

 

「証、一緒にかーえろ!」

「…あ、千歌…ごめんね、今はちょっと…僕に関わると危ないと思うから」

 

 音を確認し、全てを見る。目から血が流れたが問題無い。原因は把握した。

 

「…え、怒ってる?…それとも悲しんだの?」

「大丈夫、大丈夫です?そんな訳ないです。少し驚きました?原因が分かりました。少し待っててください」

「え、え?本当にどうしたの?」

「引き摺り堕ろせ【ガチャコイン】」

 

 がしゃん

 

 オイタはダメだろうが…それも俺のマブによゥ?

 10連を回す。俺の周囲に景品が並んだ。

 浮遊するパソコン、黒い石、サントラ、音楽書、21枚のカード、マグネット、ペットボトルロケット、錠剤の入った瓶、鏡…最後にアドバンスなカセットのゲームが出た。やっぱ10連は最低保証が無いとな。

 

「え、え?なにこれ、急に現れて…」

 

 確認する。【自己育成ゲェム】と書いてあった。

 んー…10連コイン入れる対象の選択増やしたかったけど、微妙だな…俺とか強くなっても仕方ないし…あ、でも最悪投入する候補のTRPGよりはマシか?

 

「んー…どうしてくれよう」

「えっと…千歌、なにが起きてるの?」

「いやね、ゲェムってクリアするとコインが貰えてさ。それをゲェムに入れたりする質が上がるっぽくて…ちょっとTRPGの運営さんに文句ついでに懲らしめられたらなって」

「…それ、ゲェム以外は入れられないの?」

「…あー、出来るかも」

 

 提案書行けたし、景品も出来るか…ん?それなら元々景品だった聖女の俺も投入出来たりする?…確か向こうも俺だからコイン呼べるよな。

 周りを見渡してみる。…ふむ、眼が良くなったからかゲェム関係も分かる…違うな怪奇関係を引いただけだな…まぁ、他のめぼしいのは…。

 

 どこでもゲェムが出来るようになる「怪具/万能ゲーム機/乙」のパソコン版。

 『悪霊』を集め、一定数で集まるとより強力な霊を出す『悪霊石』。

 飲むと一時的に知能が上がる「怪具/動物会話/丙」。後遺症は一生続く知能低下。

 実質鏡の形をした無線ラジオ(画面通話付き)の「怪具/周波鏡/丙」。

 

 後は死んだように存在するハズレ…当たり枠だな。無害だし。

 ゲェムのBGMのサントラ、リズムゲームが出来る絵が動く音楽書、カードゲームの試作の下書きっぽい奴…あ、動いた…けど、出て来れないのか。

 それと、強い衝撃で増えて、ぶつけたら減るマグネットに、手作りのペットボトルロケットだ。

 

 …これ、だんだん適当に景品を作って行ったんだろうな。ゲーム関係ならなんでも入れられるって途中気づいて入れたろ。明らかにハズレ率上がってるし。取り敢えず怪具と怪奇は記録帳で仕舞って…と。よし、コレなんだかんだ便利だな。

 普通のやつはランドセルに入れとけば良いか。ペットボトルロケットとサントラしかないけど。

 

 しかし…どうすればこの中からTRPGの管理人にお灸を据えられるだろうか。

 

 …いや、よくかんがえたら今はゲェムの時間じゃ無いな。証と下校する時間だ。ついかっとしてガチャを引いてしまった。こんなのでは食卓で待つ俺を置いて仕事に行った親をとやかく言えないな。

 

「…ごめんね、証。ちょっとかっとなっちゃった」

「…落ち着いた?」

「うん。証に無理させてるのが嫌だなーって思ったらつい…ね?」

「それなら…ほら」

 

 証が手を差し出した。

 

「一緒に帰ろっか。あんな事言っちゃったけど、それで千歌を心配させちゃダメだしね」

「うん、困ったら相談してよ。私に出来る事ならなんでもするからね」

 

 差し出された手を握る。俺に合わせた優しい握り方だった。

 急にコインとかガチャし始めても引かずに受け止めてくれてる…いつも歩くのを俺に合わせてくれるし、彼女面したくなって来たなーぁ!…ヤルか。

 

「えっへへ…証」

「どうしたの?」

「ん!」

 

 こっちを向いた証をぎゅっと抱きしめて、どさくさに紛れて軽く首元に口付けする。一瞬だからわからないだろうけど、味見はもう終わった。

 

「嬉しそうだね」

「うん!急にこんな事しちゃってごめんね?でも、とっても嬉しかったから」

「それならよかった」

 

 一緒に歩く。好きな事、最近の事、家族の事、面白かった事、一緒の思い出にしたい事は尽きやしない。道を別れるのが惜しいほど、隣に居たい。

 そう願いながら、聖女の方と共有しつつ味を反芻する。

 

 「少公女」の味だった。心掛けをしっかりしていれば仲良くなれる人もいる。どんなに辛い日々を過ごしていても、いつかはその辛さの分だけ報われるんだよって話。

 疲れた心がぽかぽか温まって癒されるような、マシュマロを浮かべたあったかいココアの味だった。

 俺この話好きなんだよね。前世の小学校の時は何度も繰り返し読んだし、主人公がネズミと仲良くしてる所とか、俺好きなんだよ。うん、俺も丁度賢いネズミが出てくる「アルジャーノンに花束を」の味だし、俺たちってベストマッチなんじゃ無いか?

 また一つ惚れ気話が…出来ちまったなァ!

 あ、それ以外の情報としては、長く生きれるだろうし、恋愛も上手く行くよ。俺が居るからな。

 才能は普通だけど、金運には恵まれそうな感じはした。

 

「…でね!…あ…もう別れなきゃだね」

「うん、ここからは別々だけど…千歌、ちょっと目を閉じて」

「ん、分かった」

 

 言われた通り目を閉じる。なんかごそごそ音が鳴ってるなぁ。腕に何か通されてるなぁ!

 うん、全く同じ方角って訳じゃ無いからな。途中で別れなくちゃならない。団地と住宅街って近いけど、それはそれとして寂しいよな。

 

「よし、もう大丈夫だよ」

「ん、ん?わぁ…!」

 

 変化を確認する。通された腕輪には、ミサンガが着けられていた。千切れた時に願いが叶う、そんなお守りだ。怪奇は関係ない、普通のお守りだ。

 

「曲がりなりにも誓った訳だし、何か渡さないとなって思ってさ。でも、僕に出来る事は少ないから、せめてお守りだけでも渡したいなって…どう、かな?」

 

「‭─‬‭─‬‭─‬ありがとう、証。大切にするね」

 

 人って、こんなにも心が満たされるんだな。

 この感情を果たしてどうすればいいやら。

 言葉にするのも不粋なのかなって思う。

 

「どうか、千歌が危ない目に遭いませんように。千歌は危なっかしくて、いつか目の前から消えちゃいそうだから、そう願ったんだ」

 

「うん、うん!分かったよ!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

「…最速?」

 

「だから、ばいばい!きっと明日には何もかもが良くなってるから!」

 

「…あ、またね!」

 

 自分に出来る限りの速さで走る。頭の中では新しいチャートを弾き、眼から血を流しながら情報を掻き集める。スタート地点は合図をしてから、ゴールはこの特典の騒動を収まるまで。

 今から他人事だと人任せにするのはやめだ。結局この特典は俺のなんだから、全ての責任は俺にあると言える。それをなんとかすると言うんだから、誰にも邪魔させない。

 

 晴れやかに笑う。爽やかに笑う。

 聖女の眼も使って情報は集め切った。

 やろうと思えば、この程度なら直ぐに終わる。

 チャートは創り出した。最速で通れるかの検討は終わった。

 ガバ運でも通せるか検証は済んだ。その程度の計算は聖女の脳を使えば問題無かった。

 

 我が家に辿り着く。何もかも使って台無しにする覚悟は既に終わった。

 

 力が無くても、幾らかの対価を払えばなんとか出来る事は昔から知っている。

 

 ただし、証と約束した以上、ここに居る俺は動かない。

 危ない目には遭わない約束で、そういうレギュレーションだ。

 

「元景品である聖女に投入だ【10連ゲームコイン】」

 

 だから、もう一人の自分が居る必要が有ったんですね。

 持っていたコインが消える。どんなカセットも扱える怪具のゲーム機を取り出し、新しく手に入れた【自己育成ゲーム】を起動する。制限はされて無かった。新入りに教える余裕がないのか、どうなのか、ともあれ都合が良い。向こうに全て一任する必要は消えた。

 はじめるを押すと画面には、ゲェムをする俺と聖女の方が別枠で映されていた。

 

「聞こえるなら手を振って」

 

 手が振られる。音声有りなら、もっと楽だな。一々思考を共有しなくていい。

 予想通り動けてるし、本当に良いものを拾えた物だ。育成だけあって能力指標のステータスも見れるし、自分の事を把握できるのが良い。

 

 最後に聖女の方を確認する。

 

████

█  ██

職:███/聖女

出:転生者/██

 

戦闘 0  0D6-20

探索 0  0D6-20

精神 5  5D6+3

判断 4  4D6-82

██106 106D6+45

    スキル   

「█の眼」     

「盲人」      

「専門/葬儀/乙」  

「人工聖女」    

「偏在自覚者」   

『相互誓いの儀』  

██【      】

「怪奇探査」    

██【██████】

 

 うん、やっぱり眼が凄いことになってた。元々と合わせて100越えしてるし、こんなに凄いと幽霊がやる様な特殊行動も…スキルの枠が無いし無理か。普通にできる事だけやれる感じだな。取り敢えず見るのと、ポルターガイスト…かな?を起こせるのは知ってる。

 ゲェムのシステムは…うん、クエストって奴をこなして、それで自分を育てるってコンセプトか。

 悪く無いけど、もう少し早めに来てくれたらゲェムとして楽しめたかも知れないな。

 空白?ナナシノゲェム呼びでよくね?どんなのか共有されたけど、大量のリソースで、今回なら存在1000同等を自由に譲渡できるんだって。魂の無い頃の人や怪奇に渡したら喜ばれそうだ。

 

 よし、御託はここまで。

 

「じゃあ約束通り、儚く消えない様に盛大に…はい、よーいスタート」

 

 ゲェムさせたいんだろ?今から戦争ゲェムするぞ、泣けよ。

 

 






霧晴千歌
 時間パズルなチャートを作った。/記憶は共有した。やってんなコイツって思ってる。
木香証
 善意で押しちゃいけないRTAスイッチ押した。
真倉朝凪
 米軍が強過ぎて停滞中。
橘多々良
 複数人の人生を体験してすり減り中。
橘夏奈
 真倉の社員と一緒に電脳化の技術開発が成功した。
座式先生
 ゲェムは物置きの奥に放置してる。

『悪霊石』
 呪われた石。核の素材にもなる。

 霧晴千歌提唱名【ナナシノゲェム】
 神様が進呈するゲームコイン10枚分の外装が剥がれた姿。コイン1個で存在100相当。そのままガチャを回せるし、ゲェムにしたいものをゲェムにできる。
 全ての特典に同様の要素がある。

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