ミサンガが千切れるまでは。
特典【メンシュビルド】御一行へ
其方は晴天模様と思われますが、いかがお過ごしでしょう。
転生者の特典にされて其方は幾分か時が経ったと思われますが、そろそろ我々への協力をしても良いと思います。…戦争、勝ちたいですよね?
メシアゲームプロジェクトは皆様のそのご意志に賛同しているにすぎません。過度な警戒は無駄であると提唱します。
教団員【不思議いっぱいTRPG】担当より
…ふむ、もう少し友好的な文はないでしょうか。
身内との会話しか出来てなかったのが悔やまれますね。
【どした?】
【他組織の方々へのお手紙ですよ。ゲェムの方の制御が受け付けなくなったとは言え、稼働自体は問題ない。ですのでそろそろコインの方を稼ごうかと】
【殊勝な心がけだ。他組織との交流は外貨を稼ぐ唯一の手段。友好的にしておいて損は無いからな】
【はい。ですので委託を受けないかというお手紙を。我々にはそういう外部との交流が乏しい組織ですので、こういうこまめな連絡を大切にしなければなりませんから】
先輩が私の言葉に感心し、頷いてますね。引き続き作業を継続します。
我々は過去のどの時点にも手紙程度の大きさなら置けますので、かなり有効な手段です。
【あーそうだ。聞きたいんだが、今日の備品管理は誰担当だったっけ?】
【あぁ、それでしたら私です。この手紙を送ってから保全しようかと】
【そうか、だったらそろそろ気をつけろよ。最近痛覚が鈍くなっている様だからな。精神安定剤は多めに入れた方が良い】
【了解です。引き継ぎご苦労様です】
スタスタと立ち去る先輩を見送り、手紙を書き直し、清書した物を送りました。
これで午前の仕事は良いでしょう。本日の配給券は…栄養補給剤と水ですか。普通ですね。
食べ歩きつつ、有機的備品エリアに向かいます。時間は有限ですから、仕方ない部分です。
【こんにちは「脳の眼」。本日も元気で…おりませんね】
はて、どうしましょうか。
私は元々一介の生物研究部門の者ですし、出来る事があるとすれば報告しか無いですね。
周囲の気配も有りませんし、散歩にしてもいつから動ける様になったのか。
動かないでいてくれた方が使い易いのですが…生き物である以上、仕方ありません。
既に報告は信号機器で伝えてますし、簡易的に捜索して終了とします。
…おや、折り返しが来ましたね。
[不思議、応答しろ]
【はい、先輩どうしましたか?】
[過去行き経路に未登録者の使用があった。そっちの報告と併せて「脳の眼」が脱出した可能性が高い。それをサブの監視機器でも使って監視してくれ]
【了解です。阻止等はよろしいので?】
[出来るならしたいところだが、今から40分後に複数の他特典からの逆侵攻が発生すると報告があった。お前もこっちの対処に手が追われるだろうから、出来ればでいい]
【では詳細は総合監査室の机かPCにお願いします】
[ああ、午後は監視業務を頼む]
なるほど、他の特典がコチラに向かえる様に道を作ったのですね。
今の「脳の眼」に思考は至難の筈ですが…あぁ、そういば私のゲェムで共有能力を得てましたか。
今から大変な事になるでしょうが、子供はヤンチャをしてこそですからね。
【ゲェムを遊ぶのはよろしいですが…健全な内に終えてくださいね?持ち主さん】
では、仕事に向かいましょうか。
1940年6月14日(ドイツ総督地域のポーランドにて)
学院に響く銃声と人々の怒声を聞いて、此処が去年の今頃、小鳥が囀り麗らかな日差しを浴びて過ごせる場所だったと想い馳せる人は居ないだろう。
「ドウシテ…勝ち組だったじゃん…」
机を障害物にして、私は想い馳せる。どうしてこうなったのだろうか。
答えの一つとして、根本的なことに第二次世界大戦が起きる時期のポーランドに生まれたことが挙げられる。
初めはね、親が学者で前世と同じ女生まれだから関係ないかなって思ったよ?
まさか指導層と知識層をまとめて逮捕して虐殺して、強硬的な愚民政策するとは思わないじゃん。
「こんな事なら世界史の枠取っとけば良かった、ヒッ!」
頬に銃弾が掠って悲鳴を上げた。ヤッベこの机もうダメだ。
この世界の人達っていつもそうですよね!殺すのに躊躇無いし、どうせ取り壊すから幾らでもぶっ放していいってばかりに殺しにくるんですから!
「ひー!ちくしょーこんな時に役立たなくて何が特典だよもー!」
よく思い出せない転生した時の記憶、その中にある【モアミスリル】なんて名前で、今までで一度も使えたことのない特典に、今の不幸の原因として当て逃げする。
もうオワコン過ぎだよこの人生!最後の神頼みも無理そうだし!死にたくなーい!
【…の為この鉱夫達は、ちゃんと掘り進める計画を立てなければ動きません。本来ならその手の知識や技能が必要ですが、今回は下方向に1キロ掘った場所にある異界に行くだけなので大それた指示はしなくても良いです。あどうもコチラ料金として…はい、あ、そんな感…】
「…え、誰うわ!」
撃ち殺されていた死体も、隠れていた人も、殺し回っていた人も、全員が建物と一緒に落ちていく。
「うわああ!!」
「足元が崩れ…!」
「助けてくれ!助けてください!」
「くそっ!誰が怪奇を隠していた!?」
落ちていく。堕ちていく。さっきまでの全ての状況が消えていく。
謎の、解説の途中だけ出てきたみたいな感じの声が聞こえて、爆音が鳴って、学院を呑み込む程こすっごいデカい穴が出来て、私以外の全てを落としてしまった。
下は何処までも深く続いていて、終わりが無いんじゃないかと思える暗闇だ。
その一番奥に何処か神聖な印象を受ける一筋の光が有って、見ているとそっちに行きたくなる感情に襲われた。
ハッとして目を逸らす。
兎に角、もう襲われる必要は無くなったんだ。
私がやらなくちゃいけない事は逃げる事。
決して、あんな得体の知れないものに関わる事じゃ無い。
幸いな事に私は建物の外壁側に居て、ギリギリ落ちない位置に居た。
窓や壊れた部分から幾らでも出ていける。
「どう考えたってさっきの声の仕業だろうけど…鉱夫…異界…鉱脈…丁度特典の事を考えてた時に…ミスリル…いや、兎に角逃げなきゃ」
あの解説の事が頭から離れない。
もしかしたらこの現象を起こした原因に自分が関わっているかも知れない可能性が思考から離れられない。
幼い時、ミスリル出ろとか言ってちょっと確かめたっきりだったけど…これってもしかして、地中にある目的の物にまで掘り進める特典だったんじゃ無いの?
それを、あの声に利用されたんじゃないの?
「…もしかしてこの世界って、思ったより怖かったりする?」
その質問の返答は、足を撃ち抜かれる事で成された。
「い…っ!」
「…報告、現場から脱出する奴が居た。原因不明の怪奇の情報を持っている可能性がある。連れて本部に帰還する」
血がどくどくと流れている。関節から先が壊れて動かない。
連れてかれれば、どうなるか分からない。少なくとも、悪い目に遭う。
だから、挙句だった。
「…も…【モアミスリル】!私が傷付かない安全な場所まで掘り進めてよ!」
どうなるかも分からない行動。
挙句に頼ったのが、そこにある事は確かなだけの、使い方の分からない特典への嘆願。
呪文でも詠唱でも無い、こんな曖昧な言葉なんて何も起こらない方が当然だ。
「…え」
だけど現実は、起こらない方が幸せだと思える結果になった。
言わなければ、何処までも続く洞窟に閉じ込められることもなかった。
ああ、神聖な光が見える。
1944年9月25日(徳之島周辺海域)
「…最後が沈没って、転生者の中じゃ珍しい死に方になりそうですね」
せめて最後は綺麗で有りたいと思い、ワンピースの汚れを手で払って、麦わら帽子を被り直した。
はぁ…転生して9年、沖縄の何処かだと思うんですがねぇ…まさか男から女に産まれてしまうとは。将来どうなるかと思いましたが…考える必要ありませんでしたね。
「ねーね…うとぅるさん」
「ふんふん、んーみーうぅくとぅうとぅるしこーねーんさぁ」
はいはい、ねーねいるから怖くないよー…お前さんだけは頑張って助けますよー。
「武洲丸」…村に居る人を乗せて九州本土に行く筈だったんですけどね。どうやら潜水艦に魚雷か何かを撃ち込まれている様で、どうにもここで終わりそうだ。
幸いと言うか、甲板上にテントを張って居たから、流れ込んでくる海水に阻まれて中から出られないって事は無いでしょうが…魚雷の爆発で海水がぼん!…と上に弾ける中で海に飛び込んで逃げれるかと言えば…。
ましてや子供ですから、波に飲まれて…とか、もう一つあった船は反撃しつつも離脱してますし、それが助けが来た頃には…とか。
「…もう沈みますね」
「うぇぇん!」
「泣かんぐーとぅー」
思いのほか沈むのが早い。出来るだけ一番上に立ってましたけど、足元が海水に沈んでます。
こんな事なら名前の一つや二つ、貰っておくんでした。村にいた時は怪奇に攫われるからーって10歳迄は名前付けて貰えませんでしたし。
それにしても怪奇ってなんでしょうね。会ったことないですし、迷信か何かだと思うんですけど…。
「うーん、最後だし自分で名付けましょう。前世の好きなキャラのジェロニモの本名から取って…
…なんだ、攫いに来ないじゃないですか。幽霊でもなんでも、今なら逆に助かったんですけどね。
「うぇぇ!んーみーなまーしべーらんぐーとぅー!」
「わっさいびーんてぃ…」
泣きながら怒られました…これならゴーヤとも兼ねてて沖縄らしくて良いと思うんですけどね…。
ふん、センスの良さを理解されないのは芸術家の宿命と聞きます。最後に才能が花開くのも悪く無いと思うんですけどね。
「わぷ!」
「しょっぱい!」
遂に肩まで浸かりました。お互いに身体を掴んでますけど、既に流され始めています。周囲に浮かんだ人達が居ますけど、下の方では未だ沈む船から出てる人や溺れてる人で大変な事になってるでしょう。
ここまで来るともう余裕なんて有りません。ふざけて心にゆとりを持つのも、限界そうです。
「…あぷ…誰か」
助けてと、そう願った時にそれは現れました。
【…で、『砂層』の異界から抜けると4年後の日本に辿り着く訳です。委託を受けた特典持ちの転生者に直で飛ぶのは制限されてますからね。この様に間に挟まないと無理だった訳です。さて、【霊道回廊】は近寄る幽霊を問答無用で引き寄せ石像にして回収します。なので近隣の幽霊の怪奇は特典内部に収容された訳ですが、この身体は中身こそ幽霊でも【コイン】のリソースから製作した「怪具/ミスリル鉱/丁」で覆われてますから、多少叩き込まれるまでゆとりがあり…】
それは後光を放ち、金属の肌に砂を服みたいに被せてました。
閉じた眼から血が流れ、背中から赤い血が垂れ続ける管を複数付けていて…患者みたいな、銅像みたいな、天使みたいな何かが、その本の形をした左手から黒い石を出すと…
途端、全てが大きな揺れと共に切り替わったんです。
「…えぇ?」
海は床に、人は石像に、空は廊下に、日差しは青く神秘的な何かに、まるで読み飛ばした本みたいに、全てが変わってしまいました。
驚く自分の方を向き、天使は穏やかな笑顔で声を響かせ続けます。
人工的で、男にも女にも、若者にも老人にも聞こえる声を。
【『悪霊』を引き寄せる『悪霊石』と、幽霊を引き寄せる【霊道回廊】、どっちの力が強いか、怪奇の方です。人の施設より、自然現象の方が強いのは当たり前ですよね。なのでこうして、『悪霊』の居る【霊道回廊】を海の上まで引き寄せました】
聞いて、ようやく思い出せた。そう言えば転生した時に【霊道回廊】って特典を貰ってた気がする。…なら、神様関係だし実際に天使の可能性が高いですね。もしかして助けてくれたのでしょうか。
【そして【モアミスリル】は仕事中、ミスリルがあればその方向へ向かいます。渡すと言えば、世界中を格子状の坑道を作ってでも働きます。つまりここに向かってる訳で…】
轟音が響き、何かが近づきました。
【この回廊って特定の洞窟…『霊道窟』を改装した物なんですけど、穴を掘って広げる事が出来るタイプの怪奇なんですよ。そして、4年間持ち主を死なない様にしながら世界中に広げた坑道が今まさに向かって来ている。…さて、そろそろですね】
壁が破壊されると同時に、天使の肌が粉々になって消えて、中に居た人が姿を現すと同時に、石像になって行きます。
【ポルターガイストは物体を動かせる…つまり、回廊を使って魂を石像化すれば実質生身を手に入れられる】
そして、石像になった天使、そのまま何処かへと歩き出しました。
もう血は垂れておらず、後光を放つ動く石像です。
【彼らの管理する『霊道窟』…世界中に広まりますし、『霊脈』とでも言い変えますが…からは出られません。ですがそれを世界中に広げたなら、話は変わります。実質何処にだって行けるんです】
「ぁ……あ」
「…あ!生身で倒れてる人が…片足が無いですね、今助けます!」
【そして、『霊道』を作った事により、【霊道回廊】の悲願が達成されます。大戦が終わらない内に世界規模の幽霊の輪廻機構を作りたがってましたからね。…なので、その功労者である私はこの特典の持つ技術、人員に対するお願いが大体通るようになりました】
「えっと、そうだ出口は…」
天使が振り返り、歩きながら指差します。教えてくれたのでしょう。そう思い頭を下げると、顔を上げた時には、もうそこには居ませんでした。
「まずは出口に…みんなごめん、後で絶対に来るからね」
「ぁ…ぁあ」
「気を確かに。少しずつでも進みましょう」
後から知りましたが、この日から世界中の人の幽霊を扱った兵器が動作しなくなったそうなんです。
記念日として祝日になって…一概に喜べない自分がいます。
結局、弟も村のみんなも、私以外全員死んでしまいましたから。
彼らが死んだ事に意味は有ったのか。慰霊碑を前にした今も疑問に思えてなりません。
1945年8月6日(大日本帝国首都 東京)
【どうか彼らの次がより良い物で有るように】
「どうかされましたか?」
【ん、なんでも。ただ、死者の為に祈っていただけだね】
「左様ですか。お望みのことがありましたら、どうぞご命令下さい」
石像はそのまま、また祈りに戻る。普段からそうだが、今日は一段と多い日だった。
怪奇には幾つか種類がある。完全に現象な奴、個体として現れた奴、その個体を生み出す奴。この石像は、一個体として現れた怪奇として、国家が秘匿すべきものとしての立ち位置にいた。
(それで俺が執事の真似事をしなくちゃならんとか…なんで俺を指名したんだか)
ある日突然皇室の住まう地帯の下に現れたこの石像は、最初に出会った人に大量の怪奇の情報を渡し、この地に住まう権利を勝ち取った。
すぐにじゃ無い。当然情報は精査されたし、排除しようとする案もあった。しかし、怪奇の得体が知れないのは普段の事。その上で情報が全てまともで的確って言うんなら…ま、特別扱いされても仕方ない。
多少の生贄は許容されるし、その指名通りに事が運ぶ。それこそ、平民凡人農民三男、簡単に買い上げられるって訳だ。
(ただ、それが転生者だってんだから…この怪奇は不気味なんだよな)
明らかに意図がある。半年足らずでこうなったんだ。一年後、こいつが国家を乗っ取っても不思議じゃ無いね。
【……そろそろ、スキップが終わるか】
「はい?…ッ!…ガ!」
最初に困惑し、次に銃を取り出し、最後に石像の見た目以上の重さで組み伏せられる。
小さな子供の石像とは言え、怪奇で、硬さで言うなら人よりも頑丈だ。それが突然技をかけて組み伏せて来たら、どうにもならない。
【はいでは最後の特典の【I•H】ですね。インターネットのハッキングという全力で使った場合刑務所行き間違いなしの物です。組織としては日本のネットワークポリスが元となっております】
!?
【今回はコレまで二つと違ってやる事は一つです】
特典の情報を…!何が目的で…!
【組織として、設立されるのを固定化する。つまりは最終段階まで成長させます。元々存在していた物ですので大した違いは有りませんが…だからこそ、今の歴史に致命的な結果を出さずに、『霊脈』の出現の固定化が出来る】
「形式変更同意書」と「必須となる特殊技能の提案と教育マニュアル」と「怪具/周波鏡の製作手順マニュアル」と書かれた三つのノートが取り出され、其々にコインが投入されると、急速に名前らしきものが書かれていく。
【ここで、特典に含まれた組織の実在と非実在、その違いを説明しましょう…と言っても大した違いは有りません。どっちも組織に出来る事を特典にされてて、その組織の与える影響範囲が広い程扱いに困る事になる】
三つのノートが燃えて、チリも残さずに消え去った。
【実在の方が元から存在した分、最初から出力が完成されています。ただし、成長限界…歴史に固定化される迄の変化量が少なくなってしまいます。組織形態の最適化、所有者の関係継続、設備追加、人員強化の4つから、3つを選び、それを私の【コイン】に相当するリソースを注がなければなりません】
自分の中から何かが抜け落ちた感覚を覚える。今まで見守っていた誰かが消えたように感じる。
特典が、消えた感覚がある。
【非実在はその逆。【コイン】に相当するリソースは比較的微妙に集めやすくても、それで全て完成させなければならない。途中で確定してしまえば、その分歴史に固定化された際にしょぼくなってしまう。…しかし、やり遂げてしまえば成果は膨大になります。想像上にしか無い程の組織の長ですから、それがどれだけ驚異的か…【ゲームガチャ】を見れば自ずと理解できるでしょう】
組み伏せられていたのが解かれたが、もう何をしても無駄だと感じた。
もう、全ては完了している。
【では実例です。実在組織【I・H】は所有者関係以外の全てを更新しました。「日本以外のインターネットも管理する世界的なネットワークポリスとして在り方を変更し」「『霊脈』を扱ったネットへの干渉手段…「電網霊渉者」の覚え方を手に入れて」「鏡をラジオにして何処でもネットに繋がれるようにした」…後は1998年に予定通り実際に組織として発足すれば、コレらの能力を携えた組織として、幾ら過去を変えても消えない組織として確立します。実在してくれる分、全てコチラでやらなくても良いわけですね】
何か起きた。そう肌で実感出来る何かが起きた。
【…あ、来たんですね広島の核。いい感じのトリガーですから今日を選びましたが…今頃、爆心地に居たのにも関わらず、奇跡的にそこから50km離れた場所に転移した子供が居るはずです。彼は成長して自身の能力が訓練すれば誰でも扱える事に気づき、それを二度とこの様な悲劇を起こさない為にと、警察を志すでしょう。今、貴方の特典でそうなるように固定化されましたから】
「…今の感覚、核の衝撃なのか?」
【タイマーストップ。では完走した感想ですが…はい、その通りです。貴方は生涯使わないだろう自分の特典を消して、核から一人無傷で救出しました】
「…なに、言ってるんだ。全部、全部お前がやっただろ?お前が…お前が!」
【そして、コレによって固定化された悲劇は、AB行動、「武洲丸」の沈没、広島の空爆、3人の転生者の人生を一部分。コレから何が有っても避けられないでしょうが、犠牲者は少なくなるかも知れませんね】
「…………は?」
何が何やらだが…こいつ今、空爆をまるで避けられた未来があったみたいに…。
【では、では。ご機嫌よう。実況は私、『ウワサネット』の本体「ジョイボーイ」がお送りしました】
そして石像は一礼し、砕けてしまった。触れてもただの石で、もう動く事は無い。
何が起きたのか分からない。分からない事だらけだ。
それでも確かな事は、この世界には、俺が思い馳せる以上に、アニメの悪役組織みたいな脅威となる存在があるのかも知れない、という事だけだった。
2020年6月25日(日本国鎌ヶ原市)
「…はーっ疲れた」
育成ゲェムを終わらせて一息ついた。いやぁ割と簡単なチャートを構築出来たんじゃないか?元からある何も生み出さない悲劇を、巡り巡って日本のネット関係を強くする物にしたんだし。
えー、確認っと…うん、対電網怪奇世界的対策組織が生まれてる。略して「
日本が主導してて、世界的に怪奇対策のネット関係が強くなって、そのお陰で風説や異界関係も強くなってるし、動画サイトやネット小説、ゲーム関係も日本を中心に2015年程度まで…パズドラやツムツムとか人気の頃くらいまで成長した。
俺の持ってるゲームボーイだって3DSに変化してるし、【裏世界探索ゲェム】もカセットが3DSタイプに変わっていた。そこは柔軟だねお前。
「まぁコレらはおまけで…『ウワサネット』はー…っと…あれ?」
確認したら、なんか強化されていた。なんで?…あ、「ジョイボーイ」って挨拶しちゃったからか?ダメだなぁ、久々に上手くいってたからつい調子乗っちゃった。
だけど、今までと違って人型の実態がある。なんかおばちゃんの天使っぽいし、本とか石の杖とか持ってるな。石の杖は想定通りだけど何を本体にしたら天使に変化するんだよ。
「だけど…ネットに対して人類が強くなった分、TRPGを好き勝手には出来てないな」
聖女の俺から共有された情報を分析し、そう判断した。しっかり日本国に情報を渡し、『ウワサネット』を名乗る事で、キャラ付けを誠実な物に寄せる作戦は、聖女の方の努力もあって上手くいったみたいだ。やっぱ本体の情報余計だったな?
「聖女の方は最早『霊脈』に溶け込んで二度と人には戻らないだろうけど…共有は出来るし、怪奇に所在を預けてるから消えたりしない…【霊道回廊】の連中にその手の処置は任せたからな。コレで、俺もあっちも死なず、もう痛みで嘆くことも無いし苦しまなくていい。誰かが助けようとして俺か聖女どっちか消えて、証が死ぬ事も無い」
はい、パッピーパッピー。『裏世界』やもっと大量の怪奇を扱うチャートも考えたけど、多分このルートが一番早いと思います。
1、リソースを渡せば逆侵攻してくれる組織を聖女の眼で6つ見つけて、お手紙とそれぞれに合った形に加工して産み落としたブツを一緒にこっそり渡し、【ゲームガチャ】の妨害が無いようにする。
1.5、何で作れるかと言えば、聖女の俺は母体としての改造もされてるからだ。あっちの方はそこをフルに使えるからな。産み落としって形で生成出来た。
2、こっそり転生者の下に行く機械を使って【モアミスリル】の下に行く。事前にお手紙送ってあるとグッド。
3、ポーランドの下には『砂層』の異界がある為、それを使って4年のスキップとリソースを置換してミスリル鉱の怪具を作っておく。何の面白みも無い何処までも続く砂だけの異界だからな。丁度ある育成ゲェムに搭載されていたスキップで飛ばしてコーナーで差をつけるんだ。
4、『霊道窟』を『霊脈』にする。名前変わっただけだけど、魂がある間は特段不利益はないからいいだろ。俺に関係ある事と言えば、月末の委員長の仕事が無くなった事だけだろうし。
4.5、見た感じ『霊脈』って電子技術に応用出来るんだよな。肉体を魂に置換して、ネットワークに直接侵入したりとかさ。実は自己の連続性途切れるタイプの置換だけど、まぁ客観的にも自己認識的にも分からないし許容範囲だろ。寝て起きた時くらいの感覚だろうしな。
5、【I・H】にコイン3つ分投資して、口出しに色々指示して終わり!人類はネットワークに強くなり、『ウワサネット』はTRPGをしっかり管理しないといけなくなり、俺二人いる問題も消えて、聖女の俺はその都合のいい能力だけ残した!
5.5、 ちなみに、何で『ウワサネット』がTRPGを管理してるって分かったかと言えば、普通に聖女の方の眼で知ったからだ。なんかあっちの方、特典も何もかも見れてるんだよな。何について知らないのか聞いたけど、神様と人の心以外全部見えるらしい。怖いね。
うーん、実にスマートだ。
まぁ、その内交代したりして聖女の方も今世を謳歌して貰う予定だけどな。『霊脈』に溶け込んだ今ならいける気がするんだよ。リハビリ…聖女部分の分離をしてからになりそうだけどさ。
【霊道回廊】も全面的に協力してくれるし、その内出来るって信じてるからな!そしたらまた、ごはんを食べたりお風呂に入ったり、たくさん寝てたくさん遊ぼう。
そして『霊脈』と一緒に消え去るまで、その思い出を胸に長い時間を耐えて欲しい。
聖女の方は怪奇と混ざって寿命を克服したけど、俺はそうじゃ無いからな。死ぬ権利は俺の方、死なずに見守るのはあっちの方。肉体のアレコレも含めて、コレで漸く痛し痒しの対等と言えるだろう。
「ふぁー…ま、コレで証の心配は消えたんだし…ねむ…ミサンガが千切れるまでのんびりしよぉっと」
怪具のパソコンやらなんやらを片付けて、お昼寝する事にした。脳みそ使って疲れたからな。
育成ゲェムの記録は…後でいいや。明日朝、学校でやればいいだろ。
「あ、でもコレだけやっとかないとな」
お香と線香を焚き、今日固定化する事になった悲劇の犠牲者に手を合わせる。元々そうなっちゃう人達だけど、それを利用したからな。今日も穏やかに眠れる様に祈るのは、大事だ。
「なむなむ…安らかにお休みください」
10分程祈って、それから俺はごろんと横になって目を閉じた。
ではみなさんおやすみなさい。いい夢を。
霧晴千歌
他の影響度外視でいい感じに自分の事だけ済ませた。
エルデ・フォン・メンドルフ【モアミスリル】
53歳まで生きて子供作って死んだ。
欠伸する長足【霊道回廊】
67歳まで生きて子供作って死んだ。
笠木三郎【I・H】
38歳まで生きて子供作って死んだ。
『砂層』
砂だけの異界。熱を逃さない。
『霊道窟』
剥き出しの魂を石化させる。石化させた分魂を作る。掘れば広がる。
『霊脈』
入った魂をゆっくり石化させる。その分魂を作る。上手く使うと瞬時に電子生命体と生身で転生できる。
『ウワサネット』
い や ぁ ぁ ぁ ぁ!筋肉がぁ!筋肉が病衣を着たおばちゃんになったあ!しゃあけど過去に行ける様になったわ!