怪奇ばかりな日常とゲェム記録   作:何処にでもある

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 前回のついでに転生者引いた特典のベスト10を紹介します
 侍従連合、王宮と酒池肉林、時間旅行、現代国家、生物研究、戦勝国家、怪奇、怪奇、怪奇、マンション




日常-実家に

 

 

「…霧晴、一つ…二つ…聞きたい事が沢山あるから、答えてくれ」

「急にどうしたの夏奈」

「や、大した事は無いんだけどね。テレビを見たら霧晴が居たものだからさ」

「そう!霧っちどうやってテレビに出れたの!?何が有ったか教えてー!」

「多々良ぁ、そんな事言われても成り行きとしか言えないよ?」

 

 偶には証の所に行かずに教室で穏やかに過ごしていた時の話だ。橘姉妹が話しかけて来た。大した事じゃ無さそうだけど、まぁ雑談なんてそんなもんだよな。

 

「スカウトされて、即合格貰って、番組の退場役の代わりになったら、思ったよりやばい異界で私以外ケガをした」

「それでしばらく…て所かい?」

「おぅいえぇす。2回だけだけどね」

「それでもすごいよ!この前の回って今までと比べても特にヤバかったもん!」

「アレくらい普段通りだけどね」

「あの番組、基本的に普通は見られない絶景観光だけど、5体同時に怪奇が来るのは、普通だったら有り得ないという事を忘れちゃいけないよ?」

「あぁ、普通は一月一回あるか無いかだっけ?普段から会ってると感覚が麻痺するねぇ」

「その眼、恐らく霧晴じゃなくてそれ以外にも効果を及ぼしてるっぽいからね。私達だって、霧晴と一緒にいる時とそうじゃ無い時では遭遇率が違う」

「え?そうだったの?」

 

 雑談から出て来た衝撃の真実である。そうか、俺って居るだけで怪奇に遭遇しやすくなる生きた魔物の餌だったか…ちょっとショックだ。

 

「寧ろ、気付いてなかったのかい?気付かなければ触れ合えないようになってるのに、そばに居る人みんな見えてただろう?」

「えぇ?でも3ヶ月前に多々良と居た時とか、多々良だけ見えてなかった事有ったけどなぁ?」

「ん?そうなのかい?」

「…有ったっけー?…覚えてない!」

 

 今夏奈の言った理論には欠点がある。

 多々良とゲェムのガチャをどっちか引くかじゃんけんした時だ。かなたらの願いを引いた時、忘れてないからな。

 

「ほら、かなたらの願い引いた時だよ」

「…有った気がするけど…あれ?あれってお姉ちゃんじゃ…あれ?ウチお姉ちゃんからこんな話聞いたっけ?…知らないのに知ってる?」

「待て多々良、一旦考えるのをやめよう。聞いてて私も記憶が二重にある感覚がして来たから」

「変なの掘り起こしちゃった感じかぁ」

 

 橘姉妹が頭を抱えて眉を顰めたのは、まぁ時間が特に変わった場所だからだろうな。

 俺も例として出すには不適切な物だったと反省する事にする。例外ってあるよな。

 

「まぁ、細かい事は横に置いて…その時妖怪含めて4人でじゃんけんして、多々良は見えてなかったし、夏奈の考えは怪しくない?」

「…困ったな、私の記憶に人だけでも二人と四人と三人と五人でやった記憶がある。妖怪が見えたパターンと見えなかったパターンもだ」

「わお、推定今まで変わった分が掘り起こされてる」

「ウチも…霧っちとだけやったのと、妖怪見えてたのと…気持ち悪い…これ、上書きって奴なの?」

「なんじゃ無い?ゲェムやってて半端に記憶出来るようになったのかなぁ?」

 

 母さんとか時間耐性とやらで記憶が戻ったりしてたし、俺はそんなスキルなくても記憶があるからな。ゲェムをしているとその手の耐性が出来るのは確定事項と見て良さそうだ。

 

「だが…コレは比較検証に便利だな。ノイズはあるが状況がほぼ同一だ。ちょっと待っててくれ、ノートに書き出して答えを導くから」

「お姉ちゃんお願い…ウチはもう限界……」

「あれ?お姉ちゃん何してるの?」

「おぉ、上書きされてる現場初めて見た」

 

 さっきまで有った多々良の疲れやストレスが消えてるし、何ならよろけて動かした机や椅子も元に戻されていた。へー、こうして変わるんだなぁ。コレ、半端に思い出せる今だから起きる事なんだろうな。

 

「霧晴、分かった。匂いだ。霧晴から線香みたいな甘い匂いがしない時、妖怪は見えてなかった。つまり霧晴の体臭が……済まない、私も限界だ」

「まぁまぁ失礼な事を言うだけで言ったねぇ」

「不自然に時間が飛んでないかい?それに真っ白なノートを持って、私は何をしたんだ?」

「二人揃ってぼうっとしてたんじゃない?」

 

 隣の席に座っていた夏奈が俺の机の前に転移…と言うより、始めから動いてなかった事になって、記憶が消える。本来なら思い出すことすらできないっぽいし、出来ただけゲェムはすごいのだろう。

 それはそれとして俺の匂いがダメだと言われたが。傷つくほどじゃ無くても、俺の何が国が張り巡らせてる怪具の影響を取り除くんだよ。認識しなければ触れ合えないようにする怪具、俺も仲間に入れて欲しかったよ。

 この匂いのせいで俺よく遭うとか…本当に魔物の餌じゃん。匂い袋じゃ無いんだぞ。

 

「まぁまぁ、それは置いとこう。テレビ出演とは関係ないからねぇ」

「あ、そうだ霧っち!来週に転校生が来るって知ってた!?」

「めっちゃ話変わるじゃん。知らないけどさ」

 

 いつの時期でもなんでこの時期に?って言ってやるけどさ、よく夏休みの月に来たよな。

 

「それがね、あの時の可愛い女の子!髪の毛が白くて、目が赤いあの子だったんだよ!」

「夏奈、いつ会ったっけ」

「前にかなたらの願いを引いた時居ただろ?通りすがりのあの子さ」

「おっと、思い出した。居たねぇそんな子も」

 

 辻褄合わせにしても急造だと思うけど…そういえば人だけも五人とか夏奈が言ってたし、何かきっかけが無くて出会わなかった子なのかもな。そう、テレビ屋みたいに。

 俺から見たら無から生えた感覚だけど、最新の今がそうなのなら合わせるだけだな。

 

「楽しみだよね、来るのこの教室みたいだし!」

「そうだねぇ。実質初めましてな気分だから楽しみだよ」

「学校で会うの、初めてだもんね!」

 

 そんな感じに他愛無い話をしばらくやって、質問にも答えていった。

 そうそう、ゲェムの方は二人とももうやって無いらしい。夏奈はもう長生きは勘弁と言って、多々良は無理矢理じゃ無いからだそうだ。無理もない話だな。

 夏奈なんて、精神年齢ならとっくに親を超えてるだろうし。よくもまぁ小学校に毎日律儀に通える物だ。

 

「ふぅ休憩…ぶる…ん…早く帰ってトイレ行こっと。夏だからって水飲みすぎた」

 

 まぁこんな事をしていると時間はあっという間に過ぎる訳で、久々に一人で帰ろっかなと帰宅していた時の事だ。

 

「あ、奇遇ですね、霧晴ちゃん!」

「…どうしてここに居るんですか?笠木さん」

 

 オフの笠木雪町こと、「マジカルガール」14歳だ。家近くの公園で休憩をしていたら話しかけられたぞ。

 

「いやぁ、暫く番組を単独でやって貰うのは申し訳なくって。私は庇われたおかげでケガも少なくこの通り。それにあの後放送見たんですけど、すごい特技持ってるじゃないですか!誰も知らない怪奇の情報とあの遭遇率!間違いなくこの道やってけますよ!」

「あらまたこれはご丁寧に…私はそのつもり無いんですけどね。スカウトから一瞬であそこまで行かされましたし」

「あれ?」

 

 笠木さんは不思議そうな顔をしながら首を傾げた。

 

「…霧晴ちゃん、私のファンで一瞬でもペアになりたいからこの仕事受けたんじゃ?」

「あの時初めて貴女の事を知ったくらいには知らないねぇ。合格した日の夜に車が家の前に止まってて、ロケ行かされましたから」

「あれぇ?」

「一応、歌も演技も見られたけど…踊りはひどい物だったし、明らかに退場役の代打じゃ?」

「……退場…役?」

 

 おっと、齟齬があるな。

 

「ここに来たの、誰かに言いました?」

「まさか!プライベートなお礼ですよ!ほら、菓子折りも!」

「わぁい!」

 

 高そうなチョコの詰め合わせだった。俺はこう見えてお菓子はチョコが好きなタイプ…笠木ちゃんって奴は分かってるな。

 

「………美味い!」

「小動物みた〜い!あーでも…ちょっとアレな採用だったかー。会ったの誤魔化さないとなー」

「そもそも……14と6歳は……あま…あま……いた…ペアにしても無茶があると…あまーいたーい」

「…甘痛い?」

 

 すげぇ、このお菓子人を味わった時みたいなイメージが来る。しかもイテェし。

 「ほうかごがかり」みたいな甘いお菓子の中にカッターレベルにトゲトゲした骨を混ぜた生肉の味があるし…後味最悪だけどもう一口食べれば誤魔化せるし…食べるほど口の中の傷増えるし…人の血が混じってない?コレ大丈夫な菓子折りか?

 

「…血を混ぜたりしました?」

「うそ、わかるんだ」

「誰の?」

「私」

「将来70までは元気に過ごせるだろうけど、そこからは健康に気をつける事。怪奇には魅入らないようにね、怪奇に適応する才能はアイドルの才能より凄いけど、他人に害するタイプの才能だから、成ったら私が迷惑する。恋愛は無縁、そもそも女性が好きでしょ?でも他人を傷つけて喜べちゃう間は、そういうの作らないほうが良いよ?…以上」

「すごーい!私の全部味わえるんだ!!」

「甘いけど、食べたら傷付くタイプだよ…ほふぁ、ふひぃのなふぁふふぁふぁ」

 

 あー、と指を使って口の中を見せる。悦んでる反応からして、実際に血が出てるのだろうな。

 最初は問題なかったけどねぇ…他の人が食べたら問題ないんだろうけどねぇ…俺が食べるのは無理だ。勿体無いし我慢して食べ切ろうかと思ったけど無理。味は良いのに勿体無いことするもんだ。

 

「ごめんね?私のファンなら喜ぶと思ってやったの。ほら、サプライズって言うし、ファンの贈り物とか、そういうのにもあるから普通かなって」

「方向性が過激だねぇ。サプライズならこうして出会うだけで十分だし、一緒に歌ったり踊ったりしてあげればそれで良いんだよ」

「…それだけ?」

「血を取る為に腕に傷つけるの、嫌だって考える人居るからね。ダメとは言わないけど、こういうのは相手に合わせる物だから」

「なるほどぉ…」

 

 相手次第なら、血はアリだ。怪奇とかそういうの欲しがる奴居るしな。人相手にやるのは問題あるけど、重い相手なら寧ろプラスだろうし。

 いやぁ、『性善説』って凄いよな。弱ってるとはいえ、コレがなかった場合の雪町を考えるとゾッとするわ。会話が成立してる分マシだよね。

 

「それで要件はコレだけ?チョコは返すから、バレないうちに帰るんだよ」

「あ、待って待って!まだ用事あるから!」

「なぁに?私は口の痛みがじくじくしてるから帰りたいの。引き留めるならしっかり要件を言うんだよぉ?」

 

 例えば口の中の上側を爪でゴリゴリしたとして、それをカッターでやるのを想像してみよう。考えるだけで嫌になる事をマジにやられた痛みと傷があるのが今の俺だ。割りかし怒ってると考えて貰おうかぁ。

 

「あのね?霧晴ちゃん、どうすれば霧晴ちゃんみたいに怪奇といっぱい出逢えるかな?」

「はい、さようなら」

「あー!待ってよー!さっきやめとけーっとか言ってたし解るけど、でもでも凄く惹かれるっていうか、羨ましくてぇー!」

「だからってその道はダメだよ?他の人が迷惑するのよ。怪奇から産まれた生き物、妖怪、悪魔、異界、もし人とそれら比べたら怪奇の方に天秤傾くでしょ?」

 

「……人の興味を集めるアイドルの仕事してるとね、人のダメだなーって所が見えて」

「だから、今回の番組に興味があって、無理を言ってやらせて貰って」

「…そこで霧晴…ううん、千歌ちゃんを見て!すごく、凄く輝いてた!これだって思ったの!!」

「私に足りなかったのはこれなんだって!だから、お願い!絶対に絶対にぜーったいに人の為にやるから!千歌ちゃんのこと、全部教えて!!」

 

 うーん、俺の何にそんなに惹かれてるんだ。怪奇と関わるなんて笠木も月一で会ってるだろうに。

 そもそも小1の散歩風景に一体何を見出したの?キノコ生やしながら歩いてただけなのに。

 聖女の奴か…?いや本人の気質だな。ずっと抑えてたし、偶然見惚れたのが俺の振る舞いだっただけだな。俺が居なければ番組の隊長さんに行ってただろうし、テレビ屋がその手の過去を見せればそっちに、ただ俺越しに怪奇を見ているだけだ。

 

「…うん、やっぱりダメ。平和な世界でゆっくり乾いた末に骨を墓に埋めてて」

「うあーん!お願いだよぉー!」

「私が欲しいのをもう持ってるのに、何をそんなに欲しがるんだか…」

 

 笠木は俺を抱き抱えてベンチに座り、そのまま離さない構えの様だ。力が無いと簡単に捕まって逃げられないから困るよな。ランドセル取られてベンチに置かれたし、他から見れば仲良く座ってるだけだし…仕方ない、もう少し話すか。

 

「…で、8歳年下の小学1年生に泣きついてる笠木お姉ちゃん、恥知らずな真似はこの際置いておくとして、怪奇のイメージを言ってみて?」

 

「幽霊は身近で頼りになりそう!妖怪はお祭りしてそうで仲良くなれそう!異界は不思議いっぱいでちょっぴり怖い!悪魔は趣味悪そうだけど人の事なんだかんだ嫌いじゃなさそう!」

 

「そうかそうか、じゃあ実情を言おうか。幽霊、『霊脈』の事もあり今地上にいる様なのは性格終わってるのしか居ない」

「終わってるの!?」

 

「妖怪は魂が無いと正気を保てないのに、地上を彷徨う人の霊が少ないから生きた人を見たら襲ってくる事間違いなし。害虫」

「害虫!?」

 

「異界はそもそも産まれ損ねた卵みたいな物。もし知能が有ったら…相当性格悪くなると思うよ?普通に生きてるこっちが羨ましくて仕方ないだろうし」

「…かわいそうだね?」

 

「悪魔はダメ。人は嫌いじゃ無いだろうけど、好きの方向性が道具にする前の木材や鉄、お子様ランチの旗、未開封のガチャポンの容器、にんじん白菜キャベツとかの食べ物の部類の好き」

「にんじんと白菜とキャベツ好きなの?」

「うん」

 

「神格は意思のある自然現象。不条理って道理を押し付けてくる不合理な原理。言えた義理じゃ無いけど安全管理もままならない処理不可能な無理難題。行動原理は無理解推奨の推理不要」

「途中韻踏み始めたよね。作曲やってみる?」

「ん、遠慮する」

 

「怪異は…いいとして、こんなのに憧れや興味を抱くのはやめろと言われてもしょうがない事だよね。利益は有っても百害有り。付き合う必要がないなら会いたくない連中だよ」

「怪異とはー!?言いかけたのなに!?気になる気になる!」

「藪蛇叩いちゃった…」

 

 以上、怪奇ネガティヴキャンペーンである。失敗したぞ。実は案外難しいな?この手の興味深々なのを相手するの初めてだから、どんな言葉をかけたらいい感じになるか分からんぞ。

 

「千歌ちゃーん、そんなネガんないでよー?ユニットがペアなんだよ?もう直ぐ夏休みだし、仲良く踊ろー?」

「姉妹レベルに年離れてるから無茶を超えた無茶。そもそも小1にそれは無理だよ。せめて小6は無いと誤魔化すのも無理だよ?」

「それは大丈夫なんじゃない?だって…ほら、これ見てみて」

「んー?」

 

 目の前に出されたスマホには、[超低年齢アイドル!?リリカルガール!]という見出しと共に、ネットニュースで番組と共に謎に話題になっていた。

 大半は死ぬ役担当やろとか、めっちゃ喋ってるとか、茶化しやら面白半分だ。もう半分?なんか…女神降臨とか言ってるキショいの…。

 

「笠木、もしかしてファンに女神とか言われてるタイプ?」

「マジカルちゃんって、親しみ込めて呼ばれてる!」

「ほな私かぁ…なんで?」

「カリスマーって感じの雰囲気ありますもん」

「私は子供だよぉ?」

「ですけど、こうして抱えでもしない限りそれ以上に見えますし…多分成人確認も突破してお酒買えちゃうよ?」

「流石にそれはないでしょ」

「本当だよ!直で見るのとテレビ越しで全然違ってた!ほら、これ!」

 

 そんな集団幻覚を疑うと、今度はこの前の放送が流れる。そこには、身長160くらいの大人な俺が居た。…そういや何故か特典の連中に匿名にされるのが有ったな。ゲェムの声とか動画とか、なんでアイツらこんな事するんだろうな?

 

「編集やってるね」

「やってない!カメラの向きとか違うけど…何故か低年齢で売り出してるのにみんなそっちに反応してないけど、でもこうなってるからにはユニットやれるって判断されるよ!」

「うぼぁ…」

 

 どこまでも牙を向くよな特典は。なんか俺に恨みでもあるのか?こんな所でしょうもない辻褄合わせしちゃって…どうしよう。

 

「ゆっくり真綿で首を絞められてるみたいだね」

「首絞めてないよ?」

「そろそろ本当に離してくれない?いい加減尿意が来てるんだよね」

「…………」

「何でそっと腹回りを掴むの?」

「…………」

「何で向きを変えて向かい合わせにしたの?無理やりに足が開いちゃって我慢が辛いんだけど」

「千歌ちゃんっていい匂いするよね…線香みたいで、甘くて…」

「私の何がそんなに琴線をかき鳴らしたの?」

「いいんだよ?私を使いなよ」

「私は笠木ちゃんのファンじゃないんだよ?」

 

 マズいなぁ、そういや夏奈が匂いで周囲に怪奇を見え易くしているって言ってたっけ。

 ここで漏らしたら笠木の服に臭いがついちまうよ。尿はこの特性含まれるかわからないけどさ、こんな馬鹿げた方法で向こうの思惑達成されるのも嫌なんだよね。二重の意味で。

 頭を胸に抑えられてるけどね、こんな事で心音なんて聞きたくないんだ。何が悲しくて人のごちゃごちゃした欲求を聞きながら漏らさないといけないんだよ。

 こうなったら全力で罵倒するしかないな。唸れ俺の猿頭マネキン。

 

「……へんたい、いじょーせいへき、さーど」

「千歌ちゃん、やっぱり君、アイドル向いてるよ」

「いたチョコ、れいぱー、頭怪奇スキー、アイドルしっかく」

「あ、最後のぐっと来た!」

「くそぼけしゃわしゃわてぃむららら」

「あ、そろそろ余裕無くなってきた?いいんだよ、千歌ちゃんなら」

「ん…」

 

 ダメだなぁ、なんか声が甘い感じになる。尿意で筋肉の制御が効かないんだわ。やべぇぞ助長させる結果になった。変態ってこういうので興奮するんだな。俺初めてだよ、可愛い顔した14歳に怖いって思ったの。

 俺さぁ、コレから尻丸のページで笑えなくなるかも知れない。程度の大きさじゃないんだよね。状況が怖いんだ。なにより周囲に人がいる状況なのが宜しくない。助けを呼ぶのは笠木のアイドルとしての価値を下げるのが宜しくない。それは流石に憚れる程度には良いところを理解してしまった。

 それ以上の変態性っていうか、個性っていうか、無知が目につくけど、ギリ向こうの立場を考える程度には嫌いになり切れない。

 アイドルって遠目で眺めるから良いんだな。俺学んだよ。だからどんな手を使ってでもトイレに行く。

 

「…………よし」

「あれ、どうしたの?」

 

「雨を降らせる儀式って知ってるかい?」

 

『あまにふむ みづはねぬ さえるこゑに あわめぶく かしにつきては きぶねのままに』

 

 『あわくもの儀』は果たしてどれだけの人が覚えているのか。かく言う俺も、今使い方を思い出せた所である。かなたらの願いで裏世界探索ゲェムに使えるかなって思いつつ覚えていて、全く使わなかったアレだ。

 緩い拘束で助かったな。お陰でポッケから鉛筆を取り出せたし、その先を俺の尿にする事も出来た。尿が一斉に泡となって服と身体をすり抜けて上がる。

 虹色に光るあぶくは…知らなければ綺麗に見えるだろうな。

 勿論全力だから、甲と乙の間くらいの儀式だ。甲まではあまり練習してなかったから出来てない。

 

「わぁ…きれい」

 

「………」

 

 拘束が緩んだので、さっさとランドセルを持って立ち去った。尿だと知ってるのに綺麗だと言っているコイツは知らん。

 

「…はぁ。やっと帰ってこれた」

 

 玄関前でへたりと座り込んだ。服が汚れるが、そんなのあの危機的状況から逃げられたのに比べたら安いもんだ。

 

「ただ…尿と……言わないで置こっと」

 

 この儀式、融通はあまり効かなくてな。別扱いする為に歌いつつも全力でアレを放出したのは…まぁ、服は濡れてないからセーフだ。俺の羞恥心と若干の温もり以外、もう証拠は無い。

 

「へーぇ、そんなとこで座り込んで、何を言わないって?」

「!?……え、あ!母さん!?え、どうしてもう帰ってるの!?」

「仕事、少なくなった分調整出来る。そして、今日は三者面談」

 

「さっきぶりだな霧晴…千歌さん。お邪魔してまーす」

 

「せ、先生!?」

 

「千歌、遅かったじゃないか。話し合いはある程度やったからほら、座んな」

「母さんその前に一応トイレ行ってからね!今気分的に落ち着きたいから!」

「あいよ、待ってるからゆっくりしな」

 

 座式先生と母さんが玄関に座る俺を出迎えて来た。うん、完全にド忘れしていた。

 あのアイドルの個性ですっかり忘れていた。コレ言えばあんな事しなくてもワンチャン帰れた…怪しいかなぁ!?

 

「…お待たせしました」

「はいでは続きを…話したのは千歌ちゃんの成績と普段の態度だぞ」

「千歌、アンタ普段から授業中に寝てたらしいじゃないか?テストの点数良かったから騙されたよ」

「母さん…」

「だが、知らないことになると姿勢良く聞いてるし、わからない事はよく質問し、休みには教科書を見たりもしてる…自分のペースでやれてんなら、私からは何もないよ」

「母さん…!」

 

 ただ本が面白いから読んでただけなんだけどな。でも母さんのそういう所俺は好きだぜ。

 

「はいでは続きですね、友達とも良く話してます。関係は良好ですが、最近は疎遠っぽい…よりも、他クラスの友達の所に行っているようです。孤立とかは心配なさらずとも問題ないかと」

「そりゃあ良いな。母さんみたいになってないってのは」

「それで、委員長としてもよく働いてくれます。体力がないなりにプリント配りや自習で分からない子に教えたり、掛け算や割り算とか、九九とかも率先して教えてました」

「良いじゃないか」

「えへへ…」

 

 この世界、魂があるお陰か学習能力高く、倫理や生活以外の基礎教科の進みが早いからな。一年で九九を学ぶとか、本当中学に通わなくて良い現状がちょっぴり有り難い。それでも寿命は欲しいけどさ。

 

「そして、怪奇関係」

「はい、どうでしたか?」

 

 母さんの目つきが仕事用になった。最近痩せて来たのも有って決まってるぜ。

 

「歯に着せぬ言い方になりますけど、ここまで見えてる、関わらせるのはやはり異常ですね。他クラスと比べて、やはり全体の遭遇率が高い。千歌さんの体質としてそうなるのは事前に教えてもらってましたので、怪奇関係の授業には力を入れてますけどね」

「やっぱりそうですか…」

「…知らない話だ」

「あー、千歌には言ってなかったか。こう言うのは言わなきゃ迷惑だろ?だからね」

「まぁ個性ですよ。学校内ならまだ取り返しが付きますし、幼い内から学ぶ機会が多ければ将来役に立つ。そう悪い話じゃないですよ」

「そう言っていただけると助かります」

 

 なんかすごく大人な話してる…そして座式先生すごく頑張ってる…先生ぇ!立派な人だ!

 

「まぁ、ゲェムとかテレビとかなんとか、厄介ですけど…その分千歌さんも頑張って対応してますし、見守る方向で」

「ありがとうございます」

 

 だけどなんだろうな、自分の事で母さんが頭を下げるとなんかもやもやする。コレが罪悪感や申し訳なさって奴か。

 

「以上ですね。後何かご質問は?」

「ゲェムを貰ったお子さんって何処ですか?」

「こちらが把握しているのは…私と、真倉さん、橘さんの姉妹、他のクラスの友達の木香くんですね。恐らく、一緒にゲェムをしたのが条件になってます」

「ありがとうございます。他に千歌が関係した怪奇でお困りのことは?」

「いえ、先ほど言った通り問題ありません…他にはないなら逆に其方に質問させて下さい」

「はい、何でしょうか?」

 

 どうやら逆に先生が質問する様だ。母さんの質問を聞いて一瞬疑問を抱いたみたいだし、それだろうな。

 

「霧晴さんの家って普段何時ごろご帰宅されてますか?」

「それは…私も旦那も遅いですね。偶に忙しくて帰って来れなかったり…」

「家、上がった時から思ってたんですけど、下側とか綺麗なんですけど、上側はあちこち掃除し損ねてる」

「それはー…」

 

 まぁ俺がやってるからな。床と机は普段からやってるけど、椅子を動かしてやる部分は面倒と下の階の人に迷惑にならないようにやってない。

 

「台所も変だ。カップラーメンやインスタント食品が多い…これは忙しいみたいなので不思議では無いんですけど、近くにローラー付きのお立ち台みたいなのが置かれている…食器も、不自然なくらい下側に置かれてますね」

「……………」

 

 あ、母さんがなんか汗をかき始めた。まぁ普段はインスタントだし、ご飯を炊くのは大変だから偶にしか動かさない。食器?俺しか料理しないから下に置くに決まってるだろ。割ったらどうするんだ。

 

「…私ね、結構教師として様々なご家庭に上がったんですけど…霧晴さん、貴女は普段から千歌さんと外食とか、遊園地とか、そこまでに無いにしても、そういう家族の付き合いってされてますか?」

「…はい」

 

 母さんは何を焦ってるの…?本当になに?

 俺は別に何も問題ないよ。転生者だもの。ちょっとがっかりする事はあれど、そこまでの問題では無いと思うんだけどなぁ。忙しいって仕方ないでしょ。

 

「…まず、霧晴さんは千歌さんに何か言う前に感謝と時間を設けてください。確かに学校に通ってずっとそばにいた時とは違います。勝手も違います。ですが、この部屋がゴミ屋敷になってないのは自分の娘さんのお陰であるとご理解ください。彼女が非力なのにここまで頑張ってるのも含めてです」

 

「そして、極端に離れなくても良いんです。確かに多少親離れさせる時期では有りますが、この塩梅は上流の家程、家が広い分間違える。ですがいつでも出会えます。壁一枚ですから。ですが仕事で会えないのは頂けない。忙しい仕事であると理解してますが、それでも他の社員に任せるなり、方法はある筈です。まずは仕事場と相談してください。これは先生として、増やした方がいいというアドバイスです」

 

「では三者面談を終えます。お疲れ様でした」

 

 三者面談は何となく苦い空気で終わった。

 母さんと自然と目が合う。なんか気まずそうな感じっぽいけど、いまいち状況を把握してないんだよね。

 先生の立ち去る足音が小さくなって聞こえなくなった頃、最初に喋ったのは母さんからだった。

 

「千歌…いつもありがとうね」

「?…うん」

「母さんもう一度自分を振り返ってみるよ…ちょっと、余裕が無かったみたいだ」

「???…うん」

「一回実家に帰る事にする。そんで、頭下げて色々頼んでみるからね」

「母さんがんばれぇ。実家に負けるなぁ」

「うん、母さんがんばる」

 

 めっちゃ複雑な心境の変化があったみたいだけど把握し切れないな。家庭持ったことのない俺には理解し切れない領域だ。つまり思考を放棄するのが最適解と見た。

 兎に角、今日は母さんの好きな料理で固めるとしよう。暫く実家に行って留守にしそうだしな。

 

 






霧晴千歌
 別に現状に不満は無い。持ちたく無いとも言い換えられる。
霧晴百葉
 『宇宙の無意識領域』に迷い込んだ時より前の千歌を見ている分、今の千歌への違和感が拭えない。
笠木雪町
 何に対しても変だと思わない感性がある。
橘姉妹
 やりたい事をしたり、それを手伝ったりしてる。
座式先生
 良くある事なので、いつも通り言った。初回だと5回に1回はこんな感じ。

「上書き」
 怪奇じゃないこの世界の現象。怪奇に影響されなくなった物に対し、最小限の時間の修正がされる。多少の熱量の減少は許容される。
『あわくもの儀』
 水を泡や雲にする儀式。やり方次第では服や身体を透けて浮かぶ。
『儀式』
 特定の手順で起きる現象の総称。怪異がやってたり、悪魔が契約を果たしたり、幽霊に対する指示だったり、何かにお願いするのが大半。少ないが、なんの手助けも無く、手順だけで現象を起こす、本当に魔法みたいな儀式もある。

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