怪奇ばかりな日常とゲェム記録   作:何処にでもある

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 ゲームの醍醐味は、こだわりの一つ以外が最初と最後で全く違う物になる事だと思います。強くなるんじゃなくて、その場その場の環境に合わせた物に変える…楽しいですよね?




ゲェム-やけに生き

 

 

 空洞になった眼に「怪具/妖精眼/乙」を入れ、身体を妖精のものにする。

 

 グチャ、ぐしゅ、

 

 神経と眼が繋がり、羽が生えて、無くした手足の代わりに蟲の脚が生えた。

 ハーピーみたいな、蟷螂の脚にも見えるものだな。

 

『転移、『宇宙の無意識領域』まで行きましょう。宇宙に迷い込みますが、妖精の身体だと死なないので魔法を使わずに時短になります。そ…』

 

 まぁ、転移する間は意味が薄いが、格好はつく。時短にはなるだろうな。

 転移は横の移動に特化した作りだ。縦や次元の位置はそのままに移動する。この異界から何処に行けば辿り着けるかはもう見終わってる。

 

『魔法/合成/甲』

 

 一瞬で世界は青い宇宙から解放された。

 なんて事は無い。『荊棘の書』と『宇宙の無意識領域』を混ぜただけだ。承諾?あの鳥は俺の認識を弄った。なら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。魔導書の方は製作者特権の部分を使った。

 あの鳥に認識を弄られたと言う事は、俺の認識にはあの鳥の要素が多少含まれるからな。魔法的にはそれでイケるのだ。

 まぁ、コレで前世の…元の精神性に戻る術はなくなったが…あの鳥の被害者はもう戻らない事が此処に確定したが…異界の根っこ部分を叩いたなら、枝葉も変わる。戻れる術を人質にとって、お高く止まってただけの鳥はコレで終わった。

 

『殺す…殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す……!!!この、妖しき羽虫がッ!!!』

 

『…して、相手は無理やり合成されたと思うでしょうが、認識を弄る時に自分の羽を相手の脳みそに入れる都合上、魔法の判定的に……』

 

『全ての人に善性を与えたのですよ!異界の宝を!天敵を放棄する場すら与えた!妾は善なる創世の鳥ぞッ!!盟約を果たしなさい!!誰ぞ!あの妖精を殺せ!!』

 

 本の塊に変わった鳥が、無差別に『人類』を呼び出して、俺を睨む。

 認識と異界を産む鳥は、魔法を産むだけの鳥へと身を堕とした。

 そう睨むなよ。いつでも殺せたのに、魔導書を手に入れても何もしなかったお前が悪いんだから。

 それとも、俺の魔法の使い方で魔法が無害だと、そう思ったのかな。

 

『らー?』『んら?』『らら…』

 

『…ッチ!!あの箱庭のクズしかおらぬか!!もういい!子供達!あやつを殺せ!散々に後悔させてから殺せ!』

 

 鳥が、コレまで自分で産んだ異界と認識の怪奇を集める。中に居る怪奇も『ちい』も含めて、全部だ。俺を散々苦しめて殺そうとしてるんだろうな。

 

 その性格の悪さが命取りだってのにな。

 

『ところで『ちい』って10人も嫌だなって思えば、『消した』が働くんですよね』

 

 本の鳥は消えた。その異界を無くし、その身体を無くし、『ちい』の反感を買って消えた。

 あー…おっかない。『ちい』っておっかないよ。

 

 自分が居る為の前提を崩すんだもん。

 

『魔法の要と変質した鳥を『ちい』が『消した』ので、『ちい』化は止まります。『ちい』になった人物や、『閏日』にまだ居る人達は宇宙に放り出されますが、コレも息苦しさを『ちい』が嫌がって、同様に破裂や凍死も…ただの人が消えていく異界から放り出される前に、生存環境が整います。そして……』

 

『きぇえええ!!!』

 

 『蟲姫』が、身体が半分消えていく中俺に立ち向かう。賢いよなぁこの世界の生き物って。俺がこんなことした元凶だって覚えてるんだから。

 

 『山奥の骸』が崩壊した原因の顔、覚えてたんだな。

 

 『一つになる』魔法を使う前を覚えてたんだな?

 

『ん……らぁああ!!!??』

 

 だから死ぬ。

 

『ぐがッ…!』

 

 俺にたどり着く前に病人のように苦しんで、陸に上がった魚みたいにジタバタする。その身体から、無数の蟲の死体が溢れ出した。

 あんまり動かない方が良いよ。死に様くらいは良いものにしたいでしょ?

 

『はい、連鎖崩壊が始まりました。『宇宙の無意識領域』が消えたから『性善説』が消えて、大多数の異界も消えて、『魔法』も一緒に消えたから、『魔法』で作った物も消えて、『蟲姫』は『山奥の骸』と『魂蟲』に別れて、どっちも死にかけなので私にたどり着く前に死んで……』

 

 全ての『ちい』もまた、その身体を崩し、膨らんだり小さくなったりして、最後には真っ白な花火みたいに肉片をばら撒いた。

 いやぁ、盛大に自爆しちゃったね。もう少し時間があれば、消しちゃいけない物の判別も出来たのに…危険を避ける賢さを先に手に入れちゃったからには、怖いものは消したくなるよね?

 

 だから、死んだ。

 

『魔法の材料にした『霊脈』も消えて、『霊脈』に有った『霊魂』も巻き込まれて消えて、『霊魂』は既に時間経過で存在は600しか有りません。何より、魔法って蟲の方が沢山犠牲にして作ってますから、そっちが消えちゃうと…』

 

 じんわりと、宇宙の冷たさが戻ってきた。『ちい』が死んだから、それらが望んだ消滅も無かった事になる。とはいえ、戻り切るには24時間はかかるだろうから、まだ大丈夫だな。

 そして、自分の中に有った魂が消えていくのが分かった。心臓が冷たく感じるけど、コレが普通の人の、36.5の温度だ。

 

【因果律の変動を確認。ゲームコインを1枚進呈します】

 

 お、片方消えたか。

 

【因果律の変動を確認。ゲームコインを1枚進呈します】

 

 よし、両方消えたな?

 

【因果律の変動を確認。ゲームコインを1枚進呈します】

 

 チャート通りだな。根本を抜根したんだ。『ちい』が消えたんだから『消した』が問題なくなって、夏奈が未来から持ち帰った技術がしっかり広まる時間が出来た。

 え?そもそも人類居ないだろって?大丈夫だ。見た感じまだ50万も世界中にいる。歴史の揺り戻しによる人材の急増もある。なら、まだまだ未来は残っている。だからこそコインを貰えたんだ。

 

『はい。『霊魂』も『宇宙の無意識領域』も消えましたね。今後は霊感は使えず、存在を消費して見たり聞いたりする事になるでしょう。私は今『妖精』なので存在は300程有りますが、100使う度に人だった時の存在も1つ減るので、大した事は出来なくなります』

 

『なので此処で使い切る勢いで使い潰しましょう』

 

 魂が前提となる全てが崩壊して、転移の魔法を無くした俺にはもう地球に帰る術はない。当たり前だよな?宇宙に行ったっきりの片道切符なんだ。

 今の俺が持ってるのは精々【ゲームコイン】が3つ。

 この世界に一瞬でも現れた特典なら、過去改変した結果を持って来れる数だ。

 

『出番だよ、【プリズンワールド】。約束は3つ、1983年に現れた君達に怪奇への耐性を10億人分、怪具の概念と歴史の追加、王権として【ゲームガチャ】の譲渡だ。月の王様はさっさと頷いてね。代わりに、「人間」に対する友好的な関係を築く事。宇宙で死にそうな「人間」を直ぐに助けに行く程度はやってよね』

 

 3つのコインが消えて、この世界から産まれてから有った、数多ある関心と視線が消えた。

 もう【ゲームガチャ】も【プリズンワールド】も存在しない。俺の身体から抜け落ちた。

 

 やったのは簡単だ。特典として【ゲームガチャ】が既にやってたっぽい事を、持ち主として1983年に現れた時にもやると約束しただけだ。

 向こうはきっと、【ゲームガチャ】に助けられて10億も人口が残った。だから【ゲームガチャ】を有能で素晴らしい存在だと思っている。だから、この条件で頷いた。

 推理は眼鏡を外して答え合わせして、確信になっていた。まぁ1983年に怪奇として出現してた、実在した人達だったのは驚いたけどさ。

 

 さて、コレで怪奇として月に出現した別世界の人類、その世界の偉人として生まれる事になる【ゲームガチャ】の人達は、滅びゆく【プリズンワールド】の為に頑張らないと行けなくなった。

 出てきたら世界が滅ぶのが確定する組織は、滅んだ世界に渡せば万事オッケーって事だな。

 代わりに、手足や会話の補正とか消えたけど…今は妖精なんだし、蟷螂みたいな手足で補えるから問題ない。

 

[突如出現した人類に告げる。我々は月人である。国際法に則りこちらには救助する用意がある。生存者は速やかに……]

 

 月から、さっきまで存在しなかった宇宙船が出動する。異界が崩壊して飛び出た人間を助ける為だ。

 歴史が変わって月人として地球と交流する事になった以上、別世界の人間だとしても社会に帰属する。まぁ、距離が離れ過ぎて戦争する余地が少ないからな。地球を欲しがるには怪奇が怖すぎるし、月に怪奇は少ないから引きこもりが安定だ。

 

『コレで『ちい』も『蟲姫』も『閏日』も、魂と魔法と異界ごと消しました。次は……』

 

 ついでに【ゲームガチャ】と【プリズンワールド】の思惑やらも壊したし、『夜廻り』の怪奇やら何やらも消えたが…まぁ、事故だと思ってそのまま死んでくれ。祈るくらいならやるからさ。

 

 ペンダントの解析が終わったので、自身の首に着ける。

 すると視界が真っ白に染まり、気が付けば俺は姫のような格好をしてイギリスの皇室に居た。

 ただし、部屋は荒れ果てて本来なら存在する筈の警備兵や王様も誰も居ない。

 廃墟となったお城だった。

 

 近くの瓦礫に座り、片手を上げる。プレイヤーを宣言する必要があるからだ。

 

『はい、ゲェムスタート。プレイヤーは月人全員。目標は…今私が居る『裏世界』の完全攻略で』

 

 コレの正体は切符や聖杯みたいなゲェムの開始起点だ。

 装着する事で『裏世界』に飛ばされて、【姫役】に任命される。姫役はプレイヤーを自由に呼び出す事が可能であり、元の世界に戻れる条件を設定できる。達成されれば俺も一緒に帰れて、無理なら俺も野垂れ死ぬ。

 名付けるとするなら、【勇者召喚ゲェム】だな。勇者を呼び出して、任務を渡す。最後の最後にいい感じのゲェムを渡してきたもんである。

 

【『はいでは何が起きてる知らない月人の皆さん。帰りたかったら指示通りに動いて下さい………』】

 

『はいでは次ですね。月人への指示は幻影に任せて、【裏世界探索ゲェム】と行きましょう』

 

 妖精の存在値を100使って、俺が指定した通りに喋る幻影を作り、幻影はペンダントを通して呼び出した月人に話しかける。妖精の悪戯、幻聴の話はあるだろう?それをやった。

 まぁ、指示通りに動けば死ぬ事は無いよ。ペンダントがマイクにもなってたからこうしただけで、無かったら直接行って指示する予定だったし。

 ほんと時短できてありがたいね。『裏世界』に落とす手間と指示する手間が無くなったんだから。

 

 さて、コレで俺は自由になった。妖精の羽で空を飛んで、目的地まで一直線に飛ぶ。

 到着した先は、廃墟になった医療院。そこの地下を進めば、メリーが持っていた「怪具/裁縫箱/甲」があった。赤い線は兎も角、こっちは比較的量産可能な怪具だからな、あると思ってたんだ。

 

『「怪具/裁縫箱/甲」は繋ぎ合わせる怪具です。手足や壊れた道具、切られた後など、外傷に対する治療道具として打ってつけです。もう一つあったのは見えていたので取りに来たんですね』

 

 帰り道はかつて『メリー』が通っただろう穴だ。天井をぶち抜いて出来た穴を飛んで通り、上に向かっていく。いやぁ、物理的に強い奴が開けてくれて助かった。お陰で『裏世界』を攻略して出るという荒技をしないで済むんだから。

 後は…怪異と神様の連中か。真っ直ぐ上に続く洞穴を通りながら言葉を紡ぐ。

 『春風様』、俺の手足持ってるだろ?手放さなかった己の悪因悪果を恨め。

 

『捧げる物の対価を払え 身の丈に合わぬ対価を祓え 腐る澱みに後悔を募らせ』

 

 本来神格の甲も無い俺がこんな事を言っても何も起きないだろう。だが、今なら存在を扱える。霊感が無い今使えるそれは、使い切りの代わりに運命を確実にしたり、身の丈以上の力を出せる。

 霊感も破格だったけど、存在も使い方次第で破格なんだよな。それがまだ200もあるんだ。神格に届かせるくらいなら何とかなる。

 

『約束を此処に その春風を過去に向かわせよ 我が身を地上に この眼を過去に 連れ去り給え』

 

 やって貰う事は単純だ。『閏日』で既に過去に行った人達は、俺にとって不確定要素だ。それが今にたどり着いた時どうなるか、今の俺にも分からない。

 だから、それより更に過去に居る怪異達に、この妖精眼を渡す事を頼む事にした。聖杯で変わる前の、昔の怪異に。予想つく過去改変で上書きする。

 あ、地上への転移はオマケだ。普通に飛び疲れたからな。長いんだよこの道。

 

 そうして風と共に『春風様』がやって来た。まだ未確定だった生贄との約束を聞く為に。過去に行く能力は無いと言う為にだ。

 

『過去に向かえない風にその力は無い』

『春の力を使えば良い。春の季節だけ、あなたなら何年も過去に行ける』

『我が身を削れと?』

『身体の存在を100年分、それを明け渡す』

『成立としよう』

 

 瞬きをする間にこの身体は鎌ヶ原市の自宅に辿り着き、眼から「妖精眼/乙」は抜け落ちた。

 床に辿り着く事なく零れ落ちた目玉は風が攫い、忽然と消える。約束通り過去に持って行ったみたいだ。眼の怪具は総じて見た景色を保管する。怪異ならそれを見て動きを変えるくらいやる筈だ。

 

『約束は果たした』

 

 身体から、自分から何かが削れる。妖精として使った存在値、人間換算に2年分。

 …やるべき事は全てやり切った。

 

「…タイマーストップ。後は…手足か」

 

 眼鏡を掛けて、目玉を生やし、妖精の手足が繋がってる間に裁縫箱を使い、繋ぎ目を縫い合わせる。コレで手足が腐り落ちる事もない。

 繋がなかった羽や追加で生えた4本の腕は腐り落ち、妖精というより、蟲人間みたいな見た目になった。

 何はともあれ手足は復活したんだし、めでたい事だ。本来なら達磨のまま朽ちる予定だったのが、望外の結果に落ち着いた。何より、妖精の物なのが良い。それならこうして…。

 

 ぐちゃ、ぐしゅ、メキャ、

 

「…よし、見た目は寄せたね」

 

 『妖精』はその身体を人の見た目に似せて、森の奥に誘ったりする。デフォで付いてる性能が割りかし高いんだよな。お陰で、寄生獣みたいに見た目をそっくりに出来た。

 

「…よし、無くした物の確認。怪異はどうなったかなっと」

 

 何年前の怪異に渡したのか知らないが…まぁ今見た光景でそんな大きく変える事は無い筈だ。

 自分の身体を見た感じだと魂は無いし、見渡しても大半の異界は存在消えたまま。少なくとも俺の動きを変える事は起きてない。

 …あぁ、そう言う感じ?今回の『ちい』の顛末に合わせて噂を…成り変わりでは無いし放っててもいいか。

 

 今後やらかしそうな月人は大半を『裏世界』送りにしたが、その原因が俺だとは思わない…と思う。攻略して表に出てきた『裏世界』の領地を自分たちの物とは言いそうだけど、それくらいだな。

 

「スマホとテレビ…時系列的に、先ずは月人から」

 

 検索した結果、1983年に確かに出現した記録があった。

 話し合いの結果世界的には国として認め、その後はちょくちょく交易する緩やかな関係らしい。

 それ以上は無いな。距離的にも隔たりがあるし、月に地球由来じゃ無い人が居る事になっただけだ。精々が今回の地球人の救出劇と大半の月人の『裏世界』落ちが歴史に追加されるくらいだな。

 

「…それで『ちい』はどうなったかなっと」

 

 現在の時刻は9/2で、『閏日』の最終日となる日だ。『ちい』になったのは8/31の夜、世界的にまだ混乱してるからアレだが…なんと驚き、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 おっかしいなぁ、この目で破裂したのは見たんだけど。

 

「…怪異のせいだよねぇコレ。…成程、先んじてこう予言してたんだ」

 

『8/31に魂と異界の全ての怪奇が消え失せる。人類はその過程で一瞬新人類へと進化するが、その対価に新人類共々消え失せるだろう』

『しかし、それを逃れる術がある。帰ってきて欲しい人を先んじて強く呼びかけるのだ。さすれば砕け散った新人類は怪奇の肉片を借りて、君達の下に戻ってくるだろう』

 

「まぁ…アイドルの時の焼き増しだねぇ。あの時との違いは、自分達が『ちい』になる人達の身代わりになったって事かな」

 

 本来なら「人間」→『ちい』が、「願われた人に似せた怪異」→『ちい』になった。

 世界を騙す、魂を騙すのは得意な連中だ。『ちい』になる筈だった人間は、一旦ネットの中でも怪異の中にでも隠して騙した…と。

 

「勿論タダでは無い。噂には怪奇の肉片を借りてってあるから、片腕か内臓か…身体の一部を怪異の物にされた」

 

 だからって寿命が減るわけじゃ無いぞ?変質したアイツらのなりたいものは、「注目度がある日常の一つ」だ。其処に、「偶に傷んだり暴走したりする身体の一部、しかしそれに助けられた過去がある」…なんて物に成れる立場を用意してみれば…。

 

「…まぁ、助かったんだから対価として今後の生活の一部として付き合うし、しかし異物だから注目される…よく考えたもんだよな」

 

 アイツらなりの目標達成のやり方の一つでしか無いだろうけど、ただじゃ起きないその姿勢は評価出来る。そのお陰で『ちい』になった人類は全員助かったし、俺の妖精の手足もその一つとして受け入れられるって訳なんだから、世の中何とかなるもんだ。

 コレでアイドル成り変わり計画を邪魔した分は返したぞ?報復するのは辞めとくんだな。

 

「そしてメイン。『ちい』は怪異の一部を埋め込まれる代わりに生還した。『閏日』も無くなった」

 

「…『霊魂』と『性善説』が無くなったって事は、全人類の優秀さと善性の担保が消えたと言う事。今後は愚かな人や悪人も出てくる。つまり、一人で出歩く事は危なくなったって事だ」

 

 コレが一番怖い。俺も元からどっちの影響も受けていたけど、大半は前世由来の物が多かった。

 ゲームの腕前も知能もピアノも手話も性格も、元から持っていた。

 しかし、元からそれがあったこの世界の人達は?魂に頼っていた部分はたくさんあっただろうし、心の底から湧く悪意を知らない。

 少なくとも、小1で九九を学ぶなんて詰め込みをしていた連中だ。全ての行動に善意があった連中だ。

 

 何より、この世界はホラー寄りな世界だ。人の狂気…それも恐怖だろ?

 それを忘れた人類は、どれだけ耐えられるんだ?自分達の感情に、どれだけ耐えられる?

 優秀じゃ無くなった人類に…どれだけだ?

 

「分からないなぁ…少なくとも、『性善説』がある頃から監禁とか性的な奴とかやられたんだぞ?…真倉と笠木と橘姉妹と母さんと…父さん以外会うの怖いぃ…」

 

 転生者の父さんなら兎も角ね、それ以外今会うの怖いの。

 スマホで確認したら、月人が救出した日本人が到着するのは9/5…今は日本に居るのは俺だけだが…続々上陸してくる野蛮人ラッシュがこんなに怖いだなんて俺は聞いて無いよ!

 もう…冷蔵庫にあったアイスを食べるしか…!

 

「あむ……怪奇も特典も何とかなった…少なくとも大粒は、日本の問題は何とか…後は自力でやれる筈……手足も戻ったし、寿命は遂に1年未満になったけど……海外から入り込んだ怪奇が幅を効かせそう……もう寿命の事はバラしとくか?…取り敢えずラインには父さんから先に会いに来てって…」

 

 あ、母さんや真倉や…みんなからメール爆撃され始めた。月に居ないから探してるのか。

 写真添付して「上手くやって無事に日本に帰還できた。寿命が一年未満になったけどね。見てこの景色。この蟲みたいな手足。絶対あの予言の奴だよ。そして日本に私一人だけだよ」…と。

 うわ、どんな感情でやってるのか分からないメールの山が……そういえば指輪の俺どうした?

 

 確か、魔法が崩壊したから死んで…いや『ちい』になったしなぁ…其処に怪異でしょ?月に居るはずじゃ…じゃあこのメールの山は何だ?

 

「それはチカの方から説明します!」

「おう急に出てきたね」

「何故か妖精の手足になってる人に言われたく有りません!」

「取り敢えずチャートと帰還までのタイムは俺の方が早かったって事で…」

「眼鏡無しチャートはズルだと思いますよ?」

「代わりに今後一月くらいは怪奇見れないから…」

 

 後ろを振り返ると、何やら俺そっくりの奴が前世の喋り方で説明すると言い出した。

 『春風様』に転移させて貰った俺が言うのもアレだけど、お前はお前でどうやって此処にきたんだ?どんなチャート組んで走ったんだよ。

 何だか、お茶会の時とは逆だなぁ。…先ずは先に俺の方を説明するか。

 ほら、お茶とアイスだ。お互いお疲れ会しよう。

 

「…で、俺は指輪の後始末として魂関係全部と異界の大半を潰して、月人を『裏世界』攻略に駆り立てて戻ってきた訳だ」

「月人の件は要りました?」

「だって…全部攻略しないと『黒谷』死亡みたく地球がいつか壊れるし…」

「怪奇産の人間なら罪悪感もそんなに湧かないと言うわけですか!この外道!」

「…まぁ、ついでに四肢も戻したし良いじゃんね。それで、そっちはどうやったんだ?」

 

 いやぁ、自分の手足で食べられるお茶は美味いなぁ。手袋のある方と無い方で力の関係が難しいけど、左手があるって便利だわ。身長も104に戻ったし、健康な身体はそれだけで有難い。

 

「はい!千歌はちょっとした思い付きで『ちい』の現象を発生させちゃいました!」

「ばっかもんがぁ…!」

「『ちい』になって肉体と正常な思考を取り戻し、例の怪異の噂で人間に戻り…その結果、チカは霧晴千歌のクローン?妹?判定として、この世界に正式に居られる事になりました!そう見えました!」

「…あぁ、もう時間関係は気にしなくても良いって感じね」

「なのでコレからはチカと読んで下さい!カタカナですよ?」

「同じだよ。しかもチャートって言うか俺が大半頑張っただけじゃんねぇ?」

「はい、だからチカはお姉ちゃんが大好きです!チカを助けてくれましたから!」

「…自分を姉の立場に置かないだけマシかぁ」

「はい!もう思考が戻らない姉の分まで、しっかり自己肯定します!自分大好きって感じです!」

「…気色悪いねぇ」

 

 お互いの違いは精々……眼鏡同じ、手袋同じ、髪型も…あ、服と裁縫跡は違う……特典はどうなった?

 

「そういえば特典は?そしてどうやって帰ってきた」

「特典は消えました!コレで自由ですね!帰りは笠木ちゃんに頼んで帰ってきました!」

「へー…笠木がどうやって?」

「魔女になったから、『魔法』や『霊魂』が無くなっても使えるんだそうです。魔法使いにジョブチェンジですね!フレンドなので転移もやってくれました!」

「……複雑だなぁ、この頃の俺と話すとか…まぁ、それならいっか。俺二人になったのどうする?」

「…様々な怪奇が重なり、過去と未来が分裂、そのまま個別の存在として確立した…と言えば良いんじゃないでしょうか?」

「まんまじゃん……でも、今回の件だけでも成立する話だな」

「はい!嘘は言ってません!」

「だな、嘘は言ってない…そっちの寿命は?」

「12で死にますね」

「そ、俺は今年だけ。ネズミは俺の方だったみたいだね?」

「…はい、悲しい話で、何とかしたいです」

「なんだ、やけに生きたがるね」

「本来のチカなら、そう思うだけです」

 

 ともあれ、二人に増えたとしてもやる事は変わらない。

 普通に生きて、寿命で死ぬ。もう大体やって、やり切れた感があるんだ。

 何とかしたいって考えるのは勝手にやっててくれ。

 俺はのんびりお茶でも飲んでゆっくり出来ればそれでいいんだから。

 

 






霧晴千歌
 【ゲームガチャ】代わりの妖精の手足を手に入れた。沢山食べないといけなくなったが、2時間の制限なく動ける。幻影の所に置いたネックレスはなんか戻って来た
霧晴チカ
 『ちい』化の原因。眼を温存し千歌を信じて全て託した。
【プリズンワールド】の人類
 『星の世界』の『人類』。怪奇として1983年にこの世界にやって来た。今は月人として過ごし、コレから『裏世界』に大体殺される。
【ゲームガチャ】の人々
 まだ『星の世界』が有った頃に巻き込まれて実体化して、最終的に冷凍保存された。今から『裏世界』を自力で攻略する事になる。
霧晴健太
 なんかみんなの様子が可笑しいと思ってる。生きた代わりに頭から紙が生えた。
霧晴百葉
 生きた代わりに影が波打つ様になった。
真倉や橘姉妹等の全人類
 いつもより思考が鈍く、肉体が弱く、訳のわからない感情が湧いているのに混乱している。

『宇宙の無意識領域』
 死んだ。もう星を見ても狂わない。
『山奥の骸』
 死んだ。
アカイネ
 死んだ。ゲェムを使って爪痕を残した。
『屋根ダルマ』
 抑える相手が死んだのでやる事が無くなった。最近赤い稲穂を拾った。
『性善説』
 死んだ。コレから悪人も出てくる。
『魔法』
 死んだ。魔女だけはまだ使える。
『霊魂』
 死んだ。例外を除いた幽霊は全て消えた。
『魂蟲』
 絶滅した。肉体だけで成立する虫は残った。
『霊脈』
 ただの坑道になった。代わりに『ミスリル』が出来た。
『怪異』
 ようやく腰を落ち着けた。「特別かつ日常」な物の研究も進んできた。
 この超能力や異能って概念いい感じじゃないか?

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