怪奇ばかりな日常とゲェム記録   作:何処にでもある

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 無くなった物の大切さは後から沁みますよね。




日常-肌寒くなった

 

 

ゲェム記録

 

2020年9月3日

 久々に書き記す事になる。めでたい事があったからな。コレだけはしっかり書く必要があるだろう。せっかくなので、まとめとして書く事にする。

 

まとめ

 ・【ゲームガチャ】について

 【ゲームガチャ】、別名「メシアゲームプロジェクト」はゲェムを残して俺の下から卒業した。

 前に引いていた特典の【プリズンワールド】が1983年に一瞬実在した組織…月人だったからな。そこに組み込む形での実体化だ。

 元々は非実在の連中だったんだけどな。どうにも【ゲームコイン】を堰き止めてたか、自分達で使ったか。後は実在する地域や時間を決めるだけだったから使う事にした。

 お陰で月人が想像以上に科学力のある国家になったが…そのおかげで『閏日』に巻き込まれた全日本人を助けられたんだから、アイツらも役に立つもんだ。

 

 ・ゲェムについて

 相変わらず、大半のゲェムは扱えない。記録帳は使えるけど、TRPGも動く気配が無くなったし、唯一まともに動くゲェムは【自己育成ゲェム】だけだ。そして【ガチャコイン】と【ゲームコイン】も動く。

 相互協力型にしたお陰か、特典が無くなっても消えなくなったみたいだな。

 それから【勇者召喚ゲェム】と名付けたネックレス…『妖精の幻聴』と一緒に『裏世界』に置いて来た筈なんだが、いつの間にか着けたままになっていた。

 月人の指示はどうなるかと慌てたけど、ネックレスに耳を当てると、吹き込んで置いた声自体はか細く聞こえるので、効果自体は残ってそうだ。温存して眼が使えるチカに届いてるのは確信して貰ったしな。

 チャート通りなら50万は最低でも生き残る筈だから、後は頑張ってくれ。

 

 ・周囲の評価についてです!

 コレに関してはチカが書き足します!分かりやすく喋りと同じ感じに書きますね。今回のチャートを走った結果、周囲からどの様に見られたかを記す物です。

 霧晴千歌が妖精眼を装着して種族を変えてやってたせいか、今回の騒動は「異界を彷徨っていたとんでもない『妖精』が人類の変化に鉢合わせした結果、魂と異界の怪奇が消えた」事になりました!

 まぁ、腕が6本、羽は7対、足は蟷螂や鳥の様になり、わかめみたいな黒い髪に、黄金に光る片目、もう片方の眼は空洞で血が流れて、口元は蝶の管が渦巻いてましたからね。

 はい、化け物ですね!『妖精』でもここまで人外な面してません!恐らく脳の眼と怪具の元になった『妖精』の要素が混ざったんだと思いますが、そんなのが『荊棘の書』なんて人の皮で出来たイカつい魔導書を持って、転移して現れたら誰だっていっそうヤバい奴だと判断します!

 実際、『ちい』だった時に見た感想としては

 『らん…』[ダメだ勝てる訳ない]

 と言いましたからね、禍々しい奴でした。

 

2020年9月4日

 なんかチカが変な事書き足してるので補足する。俺はまだ人間だ。

 なんせ、【自己育成ゲェム】が保証してるからな。

 昨日確認したら【自己育成ゲェム】が能力指標を表示出来るようになってたんだよ。

 「最初の特典を組織化する」クエストを達成していた報酬らしい。

 

 スキルの方は

 

「怪具/裁縫箱/甲」

 補正、霊感+15、一時的な状態をスキル化、永続化可能。

 

「妖精義肢」

 補正、戦闘1D+6、探索1D+5、模倣能力獲得、存在消費で妖精の能力使用可能、「四肢欠損」のスキル内包可能

 

「四肢欠損」

 補正、戦闘D1に、探索をD3、霊感をD10に変更。

 

 が追加されて、霊感が残ってて…幾つか消えて……もうまんま書き写した方が早いから書くわ。時間あるし。

 

霧晴千歌

女  6歳

職:小学生/1年

出:転生者/人間

 

戦闘 1  1D1+8

探索 2  2D3+10

精神 3  3D6+1

判断 3  3D6

霊感 8  8D10+30

    スキル   

「怪具/晴眼/甲」  

「専門/葬儀/丙」  

「怪奇探査」    

「怪具/騎手型/乙」 

「妖精義肢」    

「怪具/裁縫箱/甲」 

          

          

残骸【ゲーム】   

 

 ご覧の通りだ。魂が無くなったのに霊感が残ってるじゃんと思うだろう。

 コレは俺も予想外だったんだが、どうやら俺が「怪具/裁縫箱」で縫った際、魂も一緒に身体に縫い付けていたらしい。霊感も一時的な物だからな、妖精の手足と一緒に判定に巻き込まれたと言う訳だ。

 魂は21gの臓器で、肉体に満遍なくくっ付いている。嬉しい誤算だったわ。

 

→うわーん!ズルイです。チカは『ちい』を経由したせいで枠が謎の「神秘」になってたんですよ?それなのに霊感をまだ使えるなんて…ズルです!ずるっ子です!

→今の見え方書いてみろよ。

→今までの霊感8D6+15時代の時の見え方までなら特に消費はありませんね。常に大くらいの情報量が確実に見えてて、力を込めればメガネをしたまま、メガネを外した時以上の見え方になりそうです。出力の最低保証がくっ付いてる感覚ですね!

→「霊感」よりも安定して出力上がって扱い易いじゃんね。上位互換は劣化とは言わないんだ。悔しかろうが仕方ないんだ。

→代わりに頭痛がずっとしてて…朝起きるのが辛いです…。

→人の身体に『ちい』専用のシステムは規格が合わない感じか。

 

 


 

 

 そんなこんなでみんなが帰ってくるまで二人で掃除や洗濯、料理や買い出し…無断でレジ打ちをしつつ生活して、遂に9月5日になった訳だ。

 

「ただいまー…ほ、本当に二人に増えてる」

「お帰りぃ、父さん」

「お帰りなさい父さん!チカは待ってました!」

「姉妹みたいだな…片方は性格変わってて、片方は見た目が変わったけど…」

「そりゃあ『ちい』から戻る為にねぇ?まぁ、手足生えたから良いけどね」

「チカは頑張ったんです!沢山褒めてください!」

「あ、あぁ…。よしよし、どっちも頑張ったな」

「ぶへへ…」「ぶへへ!」

 

 やぁ、のんびり二人でインスタント飯を食べていた俺達だ。父さんが帰って来たぞ。

 

「時間と怪奇が色々ねぇ…人が二人になったままとか本当にあるんだな」

「はい!チカは頑張って『ちい』化を何とかしました!だから二人に増えたんです!」

「だからってなぁ…眼鏡や服も増えてるし…『閏日』を使ったからなのは分かるけど…」

「それより父さん、母さんは会っても大丈夫そう?」

「…怖がらないでやってな?」

「しないよそんな」「チカは何でも受け入れます!それが英雄ですから!」

「本当に性格が違うな…母さんから元々は元気だったって聞かなかったら別人だと思ってたぞ」

 

 そんな訳で正座待機だ。父さんが玄関から呼びに行き、母さんが勢いよく入って来た。

 

「あ、母さ「れろれろれろれろれろ!!」くすくす。くすぐったいです!」

「…うっわぁ「スーッ!ハーッ!スーッ!ハーッ!」暴走してるねぇ?」

 

「…まぁ、ご覧の通りだ。魂が無くなったからか、どうにも抑えられてた性欲が暴走しているらしい」

 

「どう言う事?性欲がどうして?」

「くすくす、母さん!犬みたいでかわいいですけど、脇はやめて…くすくす!」

 

「…どうやら元々この世界の人類は怪奇には数で攻めるスタイルだったみたいでな。母性も性欲もすごかったみたいでな…?魂による人口制限が無くなったのもあってかこう…な?」

 

「とんちきだねぇ…母さん、足をしゃぶるのはやめて?」

「ん…母さん…!おまたを触るのはきたないし…チカはこんなの嫌です…」

「百葉ぁ!俺で満足しろ!正気に戻ってくれ!」

「五月蝿いねぇ?私は正気だよ!こんな可愛い千歌が、二人も居るんだ!」

 

 母さんは一呼吸してから、叫んだ。

 

「満足するしかないだろ!!!!!」

「腹に子供が居るんだぞ?くっそ、バカになっちまって…!千歌、くれぐれも部屋からは出るな!外は今やばい事になってるから!」

「離しな!アンタも何だいそのエロい身体は!スケベさせろや!」

「黙れ!子供の前だぞ!!」

 

 母さんは父さんに引きずられ、部屋の外に出ていった。

 うん、魂が無いって…優秀じゃ無くなるって悲しい事だなぁ。

 

「…チカ、多分性犯罪抑制の為に性欲抑えられてたと思うんだよ」

「千歌、その通りですね。『性善説』さんは思ったより頑張ってました…」

「そこに魂が無くなって、脳みそだけで考える様になって、愚かさが加わって…」

「愚かさとは言い換えれば本能に忠実になると言う事です…理性的な判断が出来なくなると言う事…」

「持ってる知識を活用できないのもそうだけど…今は反動が強いだけだって信じたいねぇ…」

「はい…チカは今から友達と会うのが怖いです…」

「奇遇だね、私もだよ」

 

 二人揃ってため息を吐いた。一応月人に送られるまでの時間は有ったと思うんだけどなぁ…それでもコレだけはしゃいでるのは…酷いな。

 

「…母さんは葬儀屋でプロだ。みんな優秀だった時でも上澄みで…それでコレなら、普通の人は…」

「出歩いてみますか?チカはちょっと興味が湧いて来ました」

「やめよう。父さんがああ言うレベルだ。並大抵じゃない」

「むー…ならテレビのニュースです!スマホでも調べてみましょう!」

「だな。幸いチカの戸籍や学校関係は怪奇関係としてみんな居ない間にやっといたし、登校自体は7日からだ。事前に集めて一緒に登校しよう」

「ですね!」

 

 みんな居ない間は全てがザルだったからな。俺ら2人も居れば市役所のアレコレも改竄できた。人が居ればまず入れないだろうけど、今なら見本見ながらゆっくり出来る環境だ。霧晴チカとして家族関係に追加して、学校の名簿も追加作業を終わらせてる。

 まぁ、普通に落ち着いて問題なくなれば怪奇関係としてやってくれるけどね。折角時間あるんだから俺らでやろうって事になった。暇だったし。

 

「ニュースは…うわ、こんなに舌噛みながらやってるの初めて見た」

「ネットは…すごいです。前まで平和に会話していた人達が野蛮な投稿をしています!」

「うっわ、生放送でゲストが喧嘩してる」

「盗難に強盗、混乱の中での火事場泥棒…この記事、露出狂が10人並んで走ってます!」

「見てみて、海外についてのニュース。公式記録犯罪0件が30年続いてたメキシコで放火と銃のマフィア抗争が始まってる。綺麗な街並みが一瞬で崩れてるよ」

「うわーん!各国が関税の値上げを宣言してます!コンビニおにぎりが150円から250円に上がりそうです!」

「そりゃあ世界中で数日怪奇に荒らされ放題な畑とか考えたら…まだマシだろ」

 

 なのでチカは7日の月曜から登校出来るし、万が一どっちかが盾に成れる。

 俺はもう学習したからな。ゲェムのせいで運が無くなったって事は、今回の夏休みみたいな災難が来ると言う事。物語の主人公レベルに何か来ると警戒しないといけないって。

 そんな訳で調べたところ、こんな感じだった。

 

「纏めると…今まで普通に生きて来た人達の一部が脳の衰えでボケたり特定の物を異常に怖がったり…」

「アレルギーが急に出て来た人も居ました。それに花粉症、癌の進行の加速、弱視の中には、目が見えなくなった人も居たり…」

「ここら辺は魂が無くなったせいだな。普段を軽くしていた分、反動が来てるのか」

「そして、今まで普通に生きて来た人の中にも、口が急に悪くなった、すぐにカッてなる、鬱になる、他人を殴りたくなる、性欲が暴走する、殺人欲が溢れる、人に話しかけづらくなった、すごく眠くなる…挙げればキリがありません…」

「『性善説』で抑えられていた感情、価値観、犯罪のキッカケとなる個性、「普通の人」から外れる部分とかが戻って来てる感じだな」

「人が求める条件の普通とは、完璧と言い換えられます。今までその「普通」に成れていたのが消えたんですね…」

「肉体を「普通」以上にする魂、精神の「普通」を保証する『性善説』…チカ達にとっては、今の「人間」が普通です。でも、この世界の人達にとっては…」

「…ギャップ、すごいだろうな。前の方が良いと言う人は後を絶たないだろう。というか全員そうだ。でもこうしないとみんな『ちい』になって人間は絶滅してたし…」

 

 もっと良いチャートを作れたのかって言われたら…足りないものが多過ぎて無理だ。

 『宇宙の無意識領域』の死亡をキッカケにした連鎖崩壊以外の、『ちい』と『魔法』と『蟲姫』その他害のあるのだけを消すには……『メリー』が立ち去るときに頑張って引き留める事、座式比良との会話を上手くやって、【プリズンワールド】の王様と交流するキッカケ…はあるかは知らないけど、この特典の王の協力を仰ぐ事。

 それから…『春風様』を降して、『大雪様』と契約なんかして力を借りて…魔女になった雪町を呼んで……兎に角、色んな奴の力を借りないと無理だわ。

 理論上イケるけど、それをするには俺がもう3人居ないと時間が足りない。つまり無理だ。

 

「うーん…魂が無くなって人口制限が消えたのは良い事なんだけど…前までの自分が理想過ぎる事が…」

 

「…悩んでも仕方ないです!」

 

 そうして考えていると、チカが立ち上がってそう言う。

 

「事前に情報を集め、チカ達はまだ良い方だとわかりました。魂も神秘もあり、周りよりは相対的に良いです」

「…うん。それで?」

「つまり、チカ達はみんなのお手伝いが出来るって事です!出来る事は少ないでしょうが、出来ないことで悩んでたって仕方ありません。ここは一歩踏み出して行こうではありませんか!」

 

 …まぁ、今なら一歩踏み出せる脚があるんだ。出来ない事で悩んでないで、出来るようになった事と、やらなきゃいけない事に目を向けようか。母さんもその内戻ってくるだろうしな。

 

「…そうだねぇ。それじゃあ学校に備えて準備しよっか。日記も書き終わって無いしね」

「はい!チカも久々に本やゲームを楽しめましたし、千歌も一緒に楽しんで明日を待ちましょう!」

「聖女時代と指輪時代は出来なかったしね。いいよ、何して遊ぼっか」

「ゲーム開発部の双子ごっこ…」

「お変ク」

「このノリ知ってる仲なんですし、一回やってみたいです!」

「な・こ」

「うぅ…なら、音楽のデュエットを…」

「それなら良いよ」

 

 そんな感じに2人で遊んでいると、母さんと父さんが一緒に戻ってきた。さっきよりは落ち着いたのか、襲っては来ない。いやぁ、良かった。コレ以上母さんに失望しなくて済む。

 

「千歌、母さん落ち着いたぞ」

「…さっきは取り乱したね、千歌。ただいま」

「おかえりなさい、母さん!」「お帰りぃ」

「まさか私が実家の奴らと同じ事になるとはね…」

「血は争えませんね!」「根本は同じだねぇ」

「…話は変わるけど、母さんと父さんは暫く家に居るのが難しくなった」

「「なんでぇ?」」

「魂と入れ替わるみたいに出て来た怪奇の事さ。国からは怪異と名付けられたコレの調査員として、母さんは留守になる」

「父さんは神格だな。暫くやってなかった分予約が溜まってて、夜通し祀り上げる必要がな…」

「そっか、仕方ないねぇ」「チカは寂しいです…」

 

 何だか建前と本音みたいな感じになってるな、2人で喋ると。どっちも自分の本心を言ってるけど、側から見るとそんな感じになるわ。何だか俺が嘘ついてるみたいで嫌だなぁ。

 

「ぐっ…」

「…百葉、コレすごい心が痛いんだけど」

「健太、私はやっぱり2人とも連れて行きたい」

「百葉お前、隠さなくなったな…」

「気にしないで、どっちも本音でいってるだけだよ」「ぶー!もっと構って下さい!」

「…もう抱くか「百葉、早まるな」大丈夫だ深い意味は無い」

「わぁ」「きゃー!」

 

 2人一緒に母さんの膝上に持ってかれた。抱きつかれる力が強い気がするが、それ以上に鼻息が荒いな。頭に顔を押し付けて嗅がれると何か吸われてる気がして嫌だわ。

 

「父さん!チカは父さんの方がいいです!」「あ、ずる…」

「お、そうか?百葉、こっちは貰うぞ」

「…仕方ないねぇ、特別だ」

「ふふーん」「…まぁ、良いけどさぁ」

 

 アイツ自分だけ脱出したな…まぁ不快感の感じ方も向こうの方が大きいし、良いけどさ。

 俺は嫌な気持ちにも上限あるけど、あっちは簡単に超えるからな。ストレスの溜まりやすさで考えたら譲っても良いだろう。

 

「…めっちゃ良い匂いする」

「くすくす、チカは線香と甘い匂いがするらしいので!」

「何だこれ…めっちゃ安らぐし気分が良くなる…麻薬みたいだ」

「分かるかい?舐めてみな、トぶぞ?」

「それはダメだと思うなぁ。他に言う事あったりする?」

「……?あ、あー、そういう意味か。そうだね…留守なのは今週の間、その間に誰が来ても扉を開くんじゃないよ。人の暴走も今週で落ち着くって予想だし、それまでは友達でも開けちゃダメだ」

「分かった。チカに関してはもう戸籍や学校名簿には追加されてるの確認したから、後は細かいのを用意するだけだよ」

「え、手早…って違う違う……分かった。ランドセルとか服とかだね?業者に電話しとくさ。それまでは一緒に使い回しな」

「分かった。そうする」

 

 コレで母さんと話すべきことは終わったか。なんだ、冷静なら普通にやれるな。思ったより人間の能力は落ちて無いと見たね。

 

「良かった、落ち着いた母さんは今まで通りです!」

「…そうだな。頑張って仮面被ってるな」

「演技なんですか?」

「人間の性能が落ちたからかな…今まで完璧だったのが崩れてるんだよ」

「それは…悪い事ですか?親しみができただけなんじゃ」

「どうだろうな…こう言うのは普通に届かせる程無理が祟るからな…」

「でも……父さんは変わってないです!」

「それは…まぁ、色々とな?」

「むー…」

 

 お、何かむすっとした顔でチカが髪をたくし上げて聞く。

 父さんって『春風様』に俺の前世の危機一髪を見たけど、俺が転生者だって未だに気づいてないんだよな。流石にバレたかなって思ったけど…まぁどれも一瞬だったし、死に過ぎて最初の方を覚えてないせいみたいだけど…自分が転生者だと言ってくれないかな。

 そしたら俺も言えそうな雰囲気になると思うのに。

 

「それならちょっとだけ…だらしなくなってみませんか?ほら、母さんみたいに…一口だけ、ね?」

「……どこで流し目なんて覚えて来たんだ」

「……? あれれ、要らないんですか〜?勿体無いなぁ、チカが折角いいよ〜って言ってるのに…チカは父さんと仲良くなりたいだけですよ?」

「…………」

 

 お、アイツ前世と同じ感覚でからかい始めた。ヒャハハいいぞもっと弄んだれ!母さんの時は釣れな過ぎてつまんなかったけど、父さんなら面白い反応が返ってくる筈だ。

 

「……かぷ」

「うひゃあ!?くすくす、父さん!本当に耳を食べな…」

「うっま…あま…うっま」

「くすくす、くすくす!やめ、やめて!本当にくすぐった…」

 

 そうじゃ無い。確かにチカの方は『ちい』から戻った影響で全身お菓子みたいな味はするけど、そんなのは分かりきってるからどうでもいいんだ。

 ちぇ、父さんなら動揺する面白い景色見れると思ったのに…助けないとな。

 

「母さん、助けてよ」

「いや、アレは千歌が悪い」

「悪く無いねぇ。本当にやる方がダメなんだ。ダメな大人には制裁だよね」

「…やっぱり根は同じか。よし、両成敗だ」

「お、頼もし……私の耳を齧れとは言ってないよ?」

 

 うーん…擽ったいけど、チカ程笑う感じにはならないな。ゴキブリ見た時くらいの不快感はあるけど、それ以上はない。

 成程なぁ、この上限下限って神経の感じ方にも影響あるんだ。…その上であんなに痛かった蝶の産卵は一体?無かったらどうなってたんだろ。怖いなぁ。

 

 その後は暫く俺と同じ声の笑い声と、ダメな大人2人が子供と戯れる景色が続いた。

 終わった頃には、やたら元気な2人と、笑い過ぎて息も絶え絶えなチカが残る事になった。

 

「ほら、ティッシュ。拭いたら水洗いね」

「…はぁ…はぁ…寿命吸われた気分です」

「只の笑い疲れだね。落ち着いたらお風呂入って寝よっか」

「そうします…あ、虫だ。しっし」

「…居ないよ?」

「怪奇です…さては父さんの服に入り込んで来ましたね?」

「へー」

 

 そうそう、チカが『ちい』から戻った経緯を言っておこうか。

 何でも『指定した条件で人間に変身する』魔法をかけた後に『ちい』になって、くそ鳥やら何やらの影響を『ちい』の力で『消した』ら、人間に変身する予定だったとか。

 人間になったのはクソ鳥が死ぬ直前だったけど、何とか無事に霧晴千歌の記憶やらを全て思い出し、俺が『ちい』や『魔法』を消したから『ちい』から戻る手段を失ってそのまま。

 

「…という経緯です!改めて説明して分かりましたか?」

「…要は元指輪の『ちい』が「霧晴千歌」に変身して元に戻れなくなった感じか」

「記憶を取り戻すというより、素材元と同じ記憶で真っさらな『ちい』を上書きした感じです!」

「まぁ、素材が同じなら良いか。世界から別個体判定される程度には別人だけど、俺的には同一人物だ」

「『ちい』専用の神秘の枠のままですし、出したおしっことか『ちい』と同じくらい甘いですけど…チカはチカですから!」

「だな。脳の眼はあるし、【自己育成ゲェム】を起動できた。世界的には別人でも、転生させてくれた神様的には同じだ。人によるケースだよな」

 

 と言った会話は、役所で戸籍を改竄した時の話だ。

 そんなだから、チカを舐めるとお菓子を味わえるし、汗とか砂糖水だ。

 今の季節、確実に虫が寄ってくる事請け合いだな。虫除けと服はしっかりしないとだ。

 

「そんな訳で一緒に登校した訳なんだけど…」

「…コレは、どう反応するのが正解ですか?」

 

 手を繋いで学校に行っている途中は様子のおかしい人達を見るだけだったのだが、流石に教室がこうなってるとは思わなかった。

 

「………おは……れ」

「おねーちゃー!あそぼーよー!」

「はて…主人は何処だっけねぇ?」

「うんこ!うんこ!うんこ!」

「やーだー!男子そういうのやめて!」

「あは、あははは!!そっか!もうダメなんだ!私のもう戻れない!なんで?なんで?なんで?」

「まりかーやろーぜー!」

「いえー!」「ふうー!」「やろやろ!」

 

 上から順に真倉、多々良、夏奈、桐根、佐々木、座式比良、同じクラスの友達…と続いているぞ。

 …まぁ、コレを見れば分かるだろう。ものの見事に前世で見たことのある小学1年…3年?学級になっていた。

 

「…私ら馴染めるかな」

「どうでしょう?チカ達が2人になったのも理解出来るか怪しいです!」

「だよねぇ…委員長として纏め切れるかな…」

「地味に全員に怪異の特徴も有ります。そっちも注意した方がいいですね」

「…委員長の仕事、怪奇関係だもんね。やるだけやろっか」

 

 予め用意しておいたチカ用の席と俺の席で別れつつ、丁度先生が入って来た。

 座式先生も何だか眼に隈が出来てるし、コレはキャパが小さくなってそうだな。

 

 キーンコーンカーンコーン…

 

「ふー…全員席に着けー!!コレから朝の会を始めるぞー!!」

 

「…!こわいのいや!」

 

「いえーー!!」「しねー!」

 

「…全員!席に着けー!ダルマが来ちゃうぞー!」

 

「あかこうらをくらえー!」「うわー!」

 

「…勝手が違う」

 

 子供達の一部は席に着き、一部の子は騒いでいる。

 『屋根ダルマ』…お前忘れられちまって…コレはマジで犠牲が出かねないな?

 座式先生も頭抱えてるし…あの余裕そうな先生が見る影もない。

 …取り敢えず1人ずつ声をかける方向でやってみるか?

 

 フ…、

 

「!?…一位が!」

 

「…『パァ』!」

 

 そんな感じに地道にやろうと席を立った所で、チカがパァをしてDSの電源を落としてリセットしつつ立ち上がった。…あー、思い出させる方針ね?オッケー分かった。

 

「へぇい、チャイムなったよぉ。ダルマが来るよぉ」

「だーるーまーさーんーがー!!」

 

「…!?あ、やべ。早く席に着くぞ!」

「あれの前に!」「一位…くっそー」

 

「おー、霧晴委員長やるな…」

 

 まぁ、恐怖って本来こう使う物だからな。危ないことを回避する為の感情、本能に従い易い今ならよく効く筈だし、一番騒いでいた子達が席に着いたなら、集団原理で他も席に着く。

 最後に俺ら2人が座って…はい、みんな席に着いたっと。

 

「先生、お願いねぇ?」

「万事解決です!」

 

「…なんで2人に増えてるのかは……あー、怪奇だよな?…宇宙に放り出されたもんな…1人くらい増えるか、名簿にもあるし……では時間になったので、日直ー」

 

 まぁ、今まで積み重ねた知識は無くならないんだ。今は興奮してるだけ。その内少しは落ち着く。

 声が小さくなった真倉、ボケ始めてる夏奈、幼さが増えた多々良…問題は多いけど、今は手数が二倍なんだ。1人がダメでも片方は上手くいく。きっと新しい問題は増えたけど、きっと何とかなる筈だ。

 

「…くしゅん。肌寒い怪奇です!」

「…くしゅん。肌寒くなったねぇ」

 

 紅葉の変わりゆく9月の7日。ふとした時に寒さが訪れる風の気まぐれに、手を摩った。

 

 






霧晴千歌/チカ
 魂がそのまま、認識の歪みがそのままである事の価値をあんまり理解してない。
霧晴百葉
 身内とそれ以外の扱いに落差が出来た。
霧晴健太
 転生者だから変化は少ない。チカは生クリームの味がした。
真倉朝凪
 コミュ障な部分が出て来た。
橘夏奈と多々良
 持ってる記憶が多過ぎた。
 精神年齢が幼過ぎた。
座式先生
 今までみたいに行かなくてもどかしく感じてる。
他のクラスメイト
 全体的に子供らしさが出て来た。

『しぐれけむり』
 触れると冷たい、雨が降ると白くなる消えない煙。秋辺りに増える。
『ウワサネット』以外の怪異→『埋め込まれた怪異』
 噂によって人の身体に入り込んだ怪異。偶に動いて驚かす。
『みつみつめ』
 人の眼みたいな体色をした虫。甘い匂いに惹かれる。額に着けると目として働く。

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