本来の予定だと一話一月の72話で小学校卒業と一緒に終わらせるつもりでした。
ダイスで【ゲームガチャ】が特典になった瞬間プロットは崩壊してました。
「今日は何を読もうかねぇ」
『ジジ…ジ』
「んー…そっちは良いかな。私には何も出来ないしね」
やぁ、10月になって冬が訪れた中、本を読んでいる俺だ。9月19日のあの日から今日で12日目だな。
あの日から、家族全員帰って来なくなり、真倉達も全員行方不明になった。
残ったのを数えた方が早いくらいで、俺の知り合いだと座式先生と比良。
後は佐々木や桐根辺りの関係の薄いクラスメイト所は大丈夫だったけど、証や雪町は消えてしまった。
最近関わった真倉の父は大丈夫だったんだけどなぁ、お前は学習しないのか?会った回数で言ったら一回、チカでもう一回なんだよ。
「傾向的に霧晴家とそれにある程度関わった人達だからね。天皇や華族も行方不明になった大きな神隠し、場所は分かってるから、天皇救助の為に政府も頑張ってる。怪対員総動員で私が頑張る必要ってあるかなって思うんだよね」
『ジーー…ジ!』
「どうかなぁ、霧晴家で唯一攫われてないのが私って言っても、それが手がかりには成りにくいんじゃない?精々、取り込まれた怪奇や怪具を知ってる限り伝えただけだよ」
政府が傾向を特定した後にしたのは、俺への事情聴取だった。実に3日間に及ぶ拘束だったが、保護者は誰も居ないから責める人は居ない。その間に俺はわかってる事は大体言ったし、身体の事も大体教えた。
転生者なのとゲェム関係の詳しい事とか其処ら辺は言ってないけどな。それ言うと余計な混乱が起きるし。
お陰で『無縁仏画展』の攻略は死者を多数出しつつも進んでいるし、俺の出来る事は過不足なくやれたと思うよ。毎日死者を弔う為に線香を焚いてるレベルの死者の数だけど。1日平均50人は死んでるのはもうアレ過ぎるよね。
「かつて存在した異界の再現、空想上の怪物達、取り込まれた人間の可能性を再現した兵士…」
一応葬儀屋の端くれだから葬式の末席に座ってるけど、ずっと座ってると学校に行けないから、偶にこうして席を外してるし。
お陰で最近は学校に通えてないんだよな。行かない間に机の上に花瓶が置かれたりし始めたし、上履きとかもいつの間にか捨てられてたし…学校に行ってない間に何が有ったんだか。お陰で足裏が冷たいわ。
「合計して100を超える怪奇の集合体…いやぁ、末恐ろしいよね。最早一つの別世界だし、過去に存在した怪奇の展覧会でもある。ゲェムを取り込んだ影響で、特典持ちの転生者すら再現されて居るんだから話にならないよ」
『ジ…ジジジ』
「ん、『裏世界』と比べたら『裏世界』の方が厄介だね。あっちはこういうのを取り込めるから」
一方で『裏世界』の攻略も死者を出しつつも順調に進んでいる。こっちは毎日平均100万は死んでるんじゃ無いかな。祈る資格は無いからやってないけど、我ながら酷い選択をしたもんである。でも将来的に月人は地球の脅威になりそうだったし、【ゲームガチャ】の人員を抱えてるのはめっちゃ怖いんだわ。
「ブリテン島の上辺り、かつては「ペン島」と呼ばれた島の首都…時間が狂ったせいで、イギリスの首都を呼び出しちゃったのが運の尽き。【かなたらの願い】の未来を観測する技術の元と思われるものが、ここに有ったと」
4階層のイギリスの一部だったとある島、時間を狂わせる『ロンド時計塔』やクリッカー系ゲームレベルの増築をする王城の『おしろ』など、その土地そのものが怪奇の集合体の島だし、『人狼病』なんてもので味方が敵になる物もある。
攻略人数が多いほど死ぬし、少ないほどもっと早く死ぬ、そんな第四層も殆どの怪奇が殺されて浮上した。
まぁ、辛うじて残ったのは抉れた土地と、『ロンド時計塔』の時計針くらいだけどな。今頃針が怪具に加工されてるんじゃ無いかな。
「次が中国の「
5層目は山一つだ。『南極鯨』と比べて大した事ないと思わない方が良い。実質ここは、洞穴に入る事で別世界に行ける、世界の十字路の再現だ。
昔の話だ。怪具にした洞穴を世界に見立て、『ちい』の様な揃うと出てくる怪奇を引き出そうとした。やりたい事は分かる。『ちい』だけでも不老不死や魔法が使えるんだ、それ以外もとんでもない力が手に入ると思っても不思議じゃない。
『裏世界』にある時点で解るだろうけど、その試みは失敗した。とんでもないハズレを引いたからだ。
『宇宙の無意識領域』。この怪奇が産まれた原点であり、人類に深く関わる様になった契機の場所。かつての世界で創世の鳥と呼ばれた、燃える鳥の世界が完全に再現された、フルコンタクトお人形遊び世界だ。
まぁ、もう全部ぶっ壊れて抉れた山だけが残ったんだけどな。
「その特性は、踏み込んだ瞬間に行われる自我の乗っ取り。問答無用でその世界の住民になり、かつて有ったのだろう歴史を再現する舞台装置になる…即死の方がまだマシだねぇ」
そんなこんなで、月人が犠牲になりながら攻略してる訳だが。沢山人がいるとチャートの作り方が楽に済んで便利だよな。俺だけだと絶対無理だったわ。この犠牲には感謝するしかないだろう。
「この二つだけでも『無縁仏画展』よりも難易度が高い…生還不能な領域。比良の話だと想定より犠牲は少ないけど…裏ダンジョンみたいな場所とか、行きたくないよねぇ」
『…ジジ』
「………んー」
机の上に追加の本を置き、放課後の読書を続ける。足を床に置くと冷たいから、椅子の上で体育座りをしながらの読書だな。机端の花瓶の花がアクセントだ。
直ぐに帰るのは嫌なんだよな、戻れば葬式の準備や片付けを手伝わないとだし、家の方は俺一人には広過ぎる。
俺の周りに居ると怪奇とよく出会うのはクラスのみんなが知っていたから、近くには誰も居ないし、静かで読書向きだ。ゲェム関係で本や娯楽は増えたから、その分暇つぶしや趣味は豊かになったのは良いことかな。空気が冷えてて寒いけど、楽しめる余地がある。
「それでも、助けには行かないよ。警察や国の人達に、大人しくしていなさいと命令されたからね。そしたら出来るのは読書と葬式の手伝いだけ、眺めることしか出来ないんだ」
『ジジ…ジジ』
「そもそもテレビは一度も会ったことがないでしょ?寧ろ、私は何で其処まで気にするのかが分からないかな。神様に料理を振る舞うだけでも手一杯なのに、これ以上はねぇ…」
まぁ、行っていいなら準備有りで3時間で攻略出来るとは思うけどな。時間が経って眼も復活したし、体調は万全だ。命令さえ無ければさっさと終わらせてたよこんなの。
『ジ…』
「体調は戻ったし、真倉のお父さんも気迫迫る勢いで怪異の制御装置を完成させた。それを優先的に攻略班に配布して戦力も増やした。焦る必要は無いよ、自分でやれないなら手伝ってあげれば良いんだから」
そんな訳で、今日も俺はのんびりしている訳だ。何もせずに大人しく普通に過ごす。それだけで命令されたからな。
キーンコーンカーン…、
「ん、もう6時か…そろそろ帰った方が良いかな」
『ジジ…』
「今日は…そうだねぇ、散歩でもしよっか。誰も関わって来ないから、変化もないしね。気分転換だ」
『…ジ』
「河川敷でも歩こうか?ずっと前に散歩しようとして、それ以来出来てないから」
多々良に声をかけられたり、それどころじゃなかったり…ここ最近は忙しかったから、丁度いいだろう。
靴を履き、ランドセルを背負って、黄色い帽子を被る。気分転換だから、今日は普段しない帽子も被る事にした。子供っぽくてしない方が多いから新品同然だな。
「ら、ら、らー…っと、流石に飛ぶテレビを連れてると人が不気味がって避てくね。…4月から本当に変わったなぁ」
『ジ…ジジ』
「…冬は暗くなるのが早くていけないね。夕暮れ景色が直ぐに真っ暗になる」
真っ暗な道を歩きながらボヤく。光がないと怪奇が寄って危ないんだが、この河川敷においてはそうでもない。空を見ると取り込んでくる宇宙の鳥は消えたから、ここ最近だと本当に安全だ。人も寄りつかないからな。
「まぁ、景色が見えてたとしてもゴミ山しか無かったし、暗い方が寧ろ不快感は無いかな。……川底に溜まったゴミが上側に漂流したりする河川敷、最近はそこに乗じての不法投棄も増えてきた川、今はもう無いけど、そこに居続けると唯のゴミと認識される様になる『ごみのいし』も有ったんだから、本当に立地が悪いね」
『ジジ』
「ん、鎌ヶ原市を全然探検出来なかったから、私も詳しくは知らないよ。精々地図と遠目に見た知識だけだ」
俺の活動範囲が狭かったから見る機会が無かったけど、鎌ヶ原市って結構変な場所あるんだよな。
今居るゴミ山の道然り、鎌蛇神社や怪療院もそうだけど、まだまだ見れてない景色が沢山あるんだよ。ゲェムのせいで全然散歩できなかったし…過去が変わる前の最初の頃との違いとか、見比べたかったわ。
…ちょっとだけ愚痴っても良いかな。今はテレビしか居ないし。
「テレビ。私ね、入学する前は真倉達と一緒に街のこういう場所行ってさ、ちょっとした冒険をしながら平和な日常を送ってさ、小学校を卒業すると同時に楽しかったって満足しながら死にたかったんだ」
『ジ…ジジ』
そうなってたらゲェム記録もさ、冒険日記とかにして、その日に会った怪奇の事を書くだけに使ってたと思うんだよな。他の人の特典とかをもし俺が貰ってたら、普段は使わずに、いざという時に手を借りるだけに留めてた気がするんだ。
何より、メガネなんて絶対に外して無かったわ。そういう事態になってないんだもの。『裏世界』みたいな露骨に危ない所に行かなければ死ぬ事も無いしな。
「そうならなかった原因はって?……ゲェムかな。コレが有ったから眠っていた『裏世界』を攻略しなくちゃいけなくなったし、父さんは生きてる事になったし、夏奈は未来に行ったし、多々良が産まれたし、委員長の仕事は減ったし、怪奇災害は起きたし、証はそれで一回死んだし……」
歴史を見てみると、他の転生者とか全然目立った事をしてないのは、こういう事なんだろう。
怪奇のいる世界の歴史で、良いものを目指そうとすれば必ず今の俺みたいな大変な事になる。落ちぶれたり早死にしたりも有ったと思うけど、それ以上に…。
「自分の幸せを考えるなら、ここまで大袈裟な出来事と波乱は要らないんだよね。普段の日常の中に、怪奇という刺激は十分過ぎるんだよ」
『ジジジ…ジ』
「そうだなぁ…物語で例えるなら、裏設定や行く必要のない場所に踏み込んだ様な物かな。何もしなければ2025年に地球は消えてただろうけど、私の人生だけで語るなら、ほんの1年先送りに出来れば良い。だって、2026年には寿命で死んでるんだから」
特にホラーのジャンルなら、その人が死んだ後に怪物が復活する展開はよく見たし、その一つとして終われれば俺は満足だった。コレは鳥に認識を弄られる前からそう考えてたから、間違いなく俺の意思だ。
「だけどさぁ、蓋を開けてみればコレはなに?初手で裏世界で父さんを操作する事になったし、多々良が生えて来るし、真倉は付き纏って来るし、私が増えるし、ゲェムは碌な物じゃ無いし、怪奇の根本から対峙しないといけなくなったし……猿展開を現実でやるのはルールで禁止だよね」
『ジジ?』
「何でも無いこっちの話……兎に角、現実は上手く行かないなってだけ!」
結局はコレに尽きる。ここまで走ってきたけど、怪奇がしつこい程復活するし、あまりにも密度の濃い一年だ。何で転生したのにずっと苦しまなきゃいけないんだ?
何だかムカつくなぁ、生きてても死んでてもどっちでも良いから生きてたけど、そろそろ全部投げ出したくなって来たなぁ。
「…よし、決めた」
『ジ?』
「初めから死ぬのに抵抗は無かったけど、最近の怪奇と世界には、ほとほとに愛想が尽きた!」
『…ジ?』
「テレビ、お前はそもそも最初から愛想なんて持ってなかったよ。だから自分も愛想が尽きたのかと心配しなくて良い。最初から無いから!」
『ジ……』
パッと知り合って十数日の怪奇に愛着なんて湧く訳ないだろ?人間なら兎も角、テレビには良い思い出がないんだよ。『赤テレビ』とかテレビゲェムとかジ…だけで全ての会話済ませたりとかさ。
そろそろ普通に喋れるのもうこっちは見抜いてるんだよ。分かってたらゆるキャラやマスコットとして好かれようとしたって癪に障るだけなんだわ。
「だから、最後くらいは好き勝手してやろうって思うんだよね。全員の思惑とか感情とか全部裏切ってやって、自分一人だけ高笑いしながら死んでやるとかさ、きっとやり遂げられたら素敵でしょ?」
最近沢山の人の葬式とかやってるとさ、死ねばどれだけ蛆虫な奴でも平等になるって分かって来てさ、それなら死ぬ事を前提に動けば俺みたいなのでも何したって良いんじゃないかって思えて来たんだよね。
最近月人の大量虐殺の実行にサインしたんだし、もうこれ以上功罪で良くなる事も無いと思うんだ。だったら、最後は無敵の人として暴れ散らかしても良いんじゃないか?どうせ許されないならやっても良いだろ。
「…そうだなぁ、久々にゲェム記録を書こうか。最後まで振り回されたんだし、その締めとしては十分だよねぇ?」
『…ジジ』
「逃げるな、お前はチャートの最初に必要なんだよ。死にはしないからついて来い」
ゲェム記録
2020年10月1日
激おこ。
消えろ。
ぶっ潰す。
みんなが消えてまで生きる気は無いし、
寿命伸ばしてやりたい趣味は無いし、
死んだ方が元気になる気がするし、
チカが居るから死んでもいいし、
俺が生きる意味が無いんだわ。
薬になるにはやり過ぎだし、
毒になるには普通の人だし、
生きるにはやる気が無いし、
死ぬのを嫌がる奴が居たし、
でも最近は俺一人になった。
何で転生者にさせられたのか、
何でこんな見る目があったのか、
何で不幸が押して終わらないのか、
何で半端にエロい事が最近多いのか、
次を望む希望はどっかに落とした様だ。
3時間以下で全部終わらせるから、覚悟しろよ。
はい、よーいスタート。
霧晴千歌
最後までゲェムに振り回された。
『恐怖の世界』
誰かの怖いが詰まった世界。怪奇として終わったものを再現する。
誰かが怖がる限りなんでも続くから、全てが終わりに成り切らない。
何かしらを完全に終わりに出来たなら、この世界そのものが変質する。