セツが加わってさらに賑やかになった一同は、会場の一角にある、ある展示場に辿り着く。そこに展示されているのは、主に料理関係の家電であった。
毎年開催されている肉祭りでは、このように料理関係の家電が展示される。何故、展示されているのか。それは、この祭りには毎年多くの生徒が集まり料理に関する様々な製品を買っていくからだ。つまり、稼ぎどきなのだ。故に、毎回様々な企業の家電が立ち並び、一種の競争になっていた。
「“すごい量の企業が参加しているんだね”」
「そうですね。今年はコラボということで特に多く、平年は200社ぐらいなのが300社以上の企業が参加しているんです」
「そうなんですか!?」
ヒフミは目を見開いて驚愕する。普通、他の学区でこのような祭りをやったら、日ノ本学園みたいに集まらない。良くて50社いくかいかないかだ。それなのに、日ノ本学園は集まったのだ。
一同は、展示されている大量の家電を見て回る。周りをよく見てみると、他の学区の生徒たちも家電を見て回っており、この祭りの知名度が窺えた。
その時、いきなり奥の方から爆発音が響き渡った。
「えっ?な、なんですか?」
「はぁ、また、あの人たちですか」
「“あの人たち?”」
突然の爆発音に驚く一同だが、その元凶にサナとセツは心当たりがあるらしい。先生はその人たちのことについて聞く。
「えぇ。日ノ本学園中から
「そういえば、昨日、何か作るって言ってたね」
セツは彼女たちと面識があった。つい昨日も、彼女は彼女たちと接触していたらしい。
セツは考え込むような仕草をとる。昨日話していた内容を思い出しているようだが、思い出せてない。
「“行ってみようか”」
一同は、爆発があった場所に向かうのだった。
爆発があった場所は、展示場からそれほど遠くなかった。周りには、爆発の影響なのか工具が散乱していて、部品も散乱していた。
それらがある中心には、2人の生徒が煤で汚れた状態で散乱した物の片付け作業を行っていた。
「あっ!!セツ!昨日ぶりだね!」
2人のうち一人が一同に気付くと、セツに真っ先に声をかけた。
「ユウヒ!!生きてたんだね♪」
「勝手に殺すな!!」
セツと仲良く話す少女ユウヒ。その様子を先生は微笑ましそうに見ていた。
明石ユウヒ。ユウヒのフルネームである。彼女は、卓越した頭脳を持っていて、ものづくりや魔改造が得意な生徒である。彼女はたまにセツと遊んでいるのだが、セツからすればユウヒはおもちゃであって、よく遊びという名の戦闘でボコボコにされている不憫な生徒でもある。
「セツ、どうしてここに?」
もう一人の生徒も一同に気づいて声をかけた。
「あっ、トヨもいたんだ」
「ずっといたよ。それで?どうしてここに?」
「先程の爆発の現場を見にきただけです」
「ん?あっ!サナもいたんだ!」
ユウヒと一緒にいた少女、トヨと呼ばれた生徒はセツに問いかけた。
太田トヨヒコ。トヨのフルネームである。彼女は、ユウヒの相棒として知られており、よく一緒にものづくりや魔改造をしている生徒だ。トヨヒコもユウヒと一緒で、セツに遊びという名の戦闘でボコボコにされている生徒でもあった。
トヨヒコの問いかけに答えたのはサナであった。彼女は変わらず先生の横に立っていた。
「ところで、何を作っていたのですか?」
サナは未だに散乱する破片を見ながらそう問いかける。その破片を見ても、元の原型が残っていないため、何を作っていたのか推測できかった。
「聞いてくると思ったよ」
ユウヒは、ない胸を張りながら自信満々に続ける。
「見るがいい!!これが作ろうとしていた物だ!!」
ユウヒは、近くに置いてあったパソコンを見せる。その画面に映っていたのは、彼女らが作っていた物の完成予想図と思われる図であった。一見すると電子レンジのように見えるが、ボタンが沢山あって使い辛そうに見えた。
「“ボタンが沢山あるだけの普通の電子レンジにしか見えないけど……”」
「普通なら、ですがね」
「どういうことですか?」
サナが意味深なことを言う。それもそのはず。ユウヒとトヨヒコが
そんな彼女らが作る電子レンジだ。普通なわけがない。
「例えばこのボタン。先生、カーソルを合わせてクリックしてボタンを押してみてください!」
「“うん”」
試しに言われた通り押してみる先生。すると、普通のレンジみたいに秒数が表示され、温めが開始される。
「“普通だね”」
先生がそう呟いた瞬間、突如、蒸気がレンジの中を埋め尽くした。中をよく見てみると、鶏肉が蒸されており美味しそうに仕上がってきていた。
だが、先生は頭に疑問を浮かべる。先生はサナの言っていた「普通なら」という発言が未だに引っかかっていた。しかし、その理由はすぐに知ることになる。
「ねぇ、ユウヒ」
「どうした、セツ?」
「他の肉は?」
「………」
セツの問いかけに急に口を噤んだユウヒ。逆にトヨヒコは口笛を吹いて誤魔化している。それを見たサナは、先生からマウスをもらうと牛肉をレンジに入れて、ボタンを押す。
その瞬間、
ドオォォォォォン
「“………”」
盛大に爆発した。このレンジは、パソコンの中のシュミレーション用であったため助かったが、実物となると、近くにいた先生は大変なことになっていただろう。爆発した後の光景が広がっている画面を見た先生は、その爆発の威力に唖然としていた。
「もしかして、さっきの爆発ってこれを作ってたからなの?」
「よくわかったね、サナ」
「だが、既に一号機は完成している!!」
トヨヒコとユウヒは、隅の方に置かれていた電子レンジを持ってきてそう言った。見た目は設計図通りになっていて、新品特有の光沢が光り輝いていた。
「これは『電子レンジ型全自動肉料理製造機』!!これがあれば、いつでもどこでも肉料理を食べることができます!!」
「先生!!良かったらお一つ、買っていきませんか?」
「“でも、鶏肉しかできないんじゃ…”」
「さしずめ、『電子レンジ型全自動
セツのその言葉は、ユウヒとトヨヒコにとって鋭利なナイフ以上に突き刺さった。彼女たちを見ると、心なしか落ち込んでいるように見える。
「くっ!せっかくの傑作が!!」
「ここは、無理矢理にでも買わせなければ!!」
ユウヒとトヨヒコは立ち上がると、一同に銃を構える。
「“みんな!!”」
「はい!!」
「全く、あの人たちは!」
「遊んでくれるの?」
一同もそれに呼応して銃を構える。場は一触即発の雰囲気になっていた。
未だに散乱している破片がある場所で銃撃戦が起きようとしていた。
「先生、あの人たちの銃に気をつけてください。何かしらの魔改造が高確率で施されています」
「よくわかったね、サナ」
「いつものことでしょう」
銃を構えてから数分、銃撃戦はまだ起こっていなかった。それぞれ発砲すらせず、ただ言葉を交わすだけだった。
サナは先生を守れるような位置に立ち、ヒフミは最前線。セツはその横で構えている。逆にユウヒはHGの照準をセツに向けていて、トヨヒコはHGの照準をヒフミに向けていた。
「このままじゃ、埒が明かないね。だから、こちらから行かせてもらうよ!」
そして、ユウヒがセツに発砲することで銃撃戦が始まった。ユウヒが放った銃弾はセツの頬を掠め、サナに向かっていく。
「この感じ……まさかレールガン?」
ユウヒが放った銃弾を避けたサナは、銃弾の速度に違和感を感じた。何の違和感かというと、いつもより銃弾の速度が早かったのだ。そんなことができるのは、専用の装備を使用するかレールガンだけだ。
「“レールガン!?”」
先生は彼女らの技術力に驚愕する。しかし、ここでふと我に帰る。そういえば、アビドス駐屯部隊にある装甲車からビームが出てたなと。そう考えると、日ノ本学園の技術力が高いのではないか。
「先生、あなたは私たちに勝つことはできますか?」
「“私は何もしないよ”」
「えっ?」
先生が本当に何もしないかのような普通の振る舞いにユウヒは困惑するが、突如、ユウヒの足元が凍った。これには先生も驚愕した。
足元が凍って動けないユウヒに、セツは「アイストリック」を容赦なく連射する。腹部目掛けて放たれた大量の銃弾は、ユウヒが痛みを我慢しようとして呻き声を上げるほど効果的であった。
「ユウヒ!!」
「よそ見してる場合?」
サナは、ユウヒに気を取られたトヨヒコに照準を合わせて撃つ。神秘が込められた銃弾は、トヨヒコの額に寸分の狂いなく命中する。
銃撃戦開始からたった10分。それだけの時間で、ユウヒとトヨヒコは制圧されたのだった。
「仕方ない。今日は潔く諦めるとするよ」
ユウヒはしょんぼりしながらそう言った。だが、先生に売り込むというのはまだ諦めていなかった。
「ですが!!改良したら、また売り込みにいきますからね!」
「“あはは”」
先生は苦笑しながらも、待っている旨を伝える。
「そうだ!ユウヒ、あれヒフミにあげてよ」
突然、セツがユウヒに言った。ユウヒは、その言葉に首を傾げる。
「あれ?」
「そう。今回のコラボのやつ」
「あぁ!」
ユウヒは奥の方から二つのモモフレンズのグッズを取り出す。それを見たヒフミは目を輝かせていた。
実は、今回のコラボのグッズの一部は彼女たちが作っていた。彼女たちは一応技術者である。故に、こういうのを頼まれるのは少なくない。
「こっちがセツで、こっちがヒフミね」
「あ、ありがとうございます!!」
「ありがとね♪」
ヒフミが真っ先にお礼を言った。それに続いてセツも言った。
「先生にはこちらを」
ユウヒの横でトヨヒコは先生にお守りを渡した。そのお守りは、普通のお守りと比べると重かったがそこまでの重さはなかった。
「“これは?”」
「自動結界生成装置です。先生は少しの被弾でも命に関わるので」
自動結界生成装置。それは、自動で結界を展開してくれる装置のことである。しかも、常時展開という機能までついているので安心安全とのこと。だが、それでも限度があるので、できるだけ被弾しないようにとトヨヒコは先生に忠告する。
「“ありがとう、トヨヒコ”」
「いえいえ。でも、お礼がしたいなら、あのレンジを買ってくれませんか?最悪、値段も全てまけるので」
「トヨヒコ?」
「イエ、ナンデモアリマセン」
サナの睨みにカタコトになるトヨヒコ。そんなトヨヒコの様子を見たセツは、満面の笑みを浮かべながらレンジに向かっていった。
「セツちゃん?」
ヒフミが首を傾げる中、レンジの目の前に立ったセツはレンジを持ち上げた。
「これ、私に売ってくれない?」
「「「「“えっ?”」」」」
セツの衝撃の一言に、一同は慌てるようにセツを止めようと説得にかかる。
「“セツ、さすがに考え直そう?他にも良いレンジがあるかもしれないしね?”」
「先生の言う通りです。こんな鶏肉しか料理できないレンジなど粗大ゴミでしかありません」
「そうですよ!!買うならペロロ様の柄が入ったビックコング社のレンジを買うべきです!!」
若干約一名ズレてるが、一同の説得を受けるセツ。だが、それでもセツはレンジを買おうとしていた。
そこで先生はなんで買おうとしているのか問いかける。
「“なんでこのレンジが欲しいの?”」
その質問は、至極当然の質問だった。どうして態々欠陥品のレンジを買うのか。セツの意図を先生は知りたかった。
逆にセツに対して嫌な予感を覚えている二人がいた。ユウヒとトヨヒコである。何故なら、彼女たちにとって、今のセツの満面の笑みは悪い事を考えている笑みにしか見えなかったからだ。
「いい遊び道具になると思ったから♪」
セツはユウヒとトヨヒコをチラッと見ながらそう言った。その瞬間、ユウヒとトヨヒコに鳥肌が立ったのは間違いではないだろう。
結局、セツはこのレンジを10個買ったという。