皇国の幻想〜青春の物語(ブルーアーカイブ)〜   作:大和ゆか

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第十話 メインディッシュ

 セツが全自動肉料理製造機(欠陥品)を買ってユウヒとトヨヒコと別れてから、一同は中央のメイン広場に到着する。

 メイン広場は中央に大きい噴水があり、そこから出る水は、太陽の光を反射して幻想的に見える。その上には、デカデカとチキンボンバーのロゴが展示されており、その横にモモフレンズのキャラクターが描かれている看板が飾られてあった。

 

 

「“大きい看板だね”」

 

 

「そうなんです。毎年、この祭りが開かれる度にこのような大きな看板をここに飾るのです。今回はモモフレンズとコラボとのことで、一緒にモモフレンズのキャラが映っています」

 

 

 この看板は、デカデカと目立つように飾られているため、このイベントの目玉の一つである。現に、看板を見にきた他の生徒たちはスマホを一斉に看板に向けていた。

 毎年飾られるというこの看板だが、実は毎年デザインが違う。もちろん、飽きさせない工夫というのもあるが、実際はその年のイベントのテーマに沿ったデザインがされている。今回モモフレンズとコラボなので、当然だがそれに因んだデザインになっていた。

 

 

「あっ!!見てください!!ペロロ様がいますよ!!」

 

 

 ヒフミが見つけたのは、チキンボンバーのロゴの隣にいるペロロだった。そのペロロは、チキンボンバーの衣装を身に纏い、ここでしか見られない貴重なものとなっていた。

 

 メイン広場を堪能している一同だが、目玉はそれだけではなかった。

 

 

「“何かいい匂いがするね”」

 

 

「気付いた?先生」

 

 

 辺りに空腹感を刺激するいい匂いが漂い始めていた。その匂いはメイン広場の奥地から広がっており、周りの生徒たちも、スマホを一斉にそちらに向けた。

 気付くと、周りの生徒たちの数はどんどん増え続けていた。それは、メイン広場が埋まるほど増えており、まだまだ増えそうであった。これはつまり、これからメインイベントが始まるということである。

 メインイベントが見やすいように案内された一同は最前列に位置取ることに成功したのはいいものの、あまりの人の多さに人酔いしそうなほどぎゅうぎゅう詰めになっていた。人が密集し、通れる隙間がないほど人が集まっていた。

 

 

『さぁ、みなさんお待ちかね!!メインディッシュの時間です!!!』

 

 

「「「「うおォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!」」」」

 

 

 一斉にその場にいる全員の声が響き渡る。その声の大きさは、複数の声が重なって大きい。まるで何かのライブ会場みたいな熱気に包まれていた。

 

 

『我が社の商品を目の前で捌いてくださるのは、去年に引き続き、料理界の爆弾魔(ボマー)『爆坂マイト』です!!どうぞよろしくお願いします!!』

 

 

 そのアナウンスが終わったと同時に、メイン広場の奥に設置されているステージが盛大に爆発した。いきなりの爆発に先生一同は驚愕するが、サナとセツはなぜか冷静だった。どういうことだろうか?

 

 

「やっぱり爆発したね」

 

 

「そうね」

 

 

「な、なんでそんな冷静なんですか!?」

 

 

 そんな二人を見たヒフミはツッコミをいれる。周りを見てみると、他の生徒も「やっぱり」という呆れた表情でステージを見つめていた。驚いて騒いでいるのは、一部の知らない生徒たち、所謂、日ノ本学園以外の学園の生徒だけだった。

 

 爆発の衝撃で舞っている土煙が徐々に晴れていく。綺麗な広々としたキッチンがステージにある中、その奥から一人の生徒が無傷で何事もなかったかのように登壇した。

 

 

「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!料理界の爆弾魔(ボマー)とは私のことよ!!」

 

 

 そうマイトが名乗りを上げた瞬間、その背後で再び爆発が起きた。その爆発は先程のよりも大きく、爆風が観客の頭上を吹き抜けていく。

 

 

『えー、今回はどのような料理を披露してくださるのですか?』

 

 

「フフフ、今回はこれを使った料理を紹介するぞ!」

 

 

 そうして、テーブルが付いているカートの上に乗って登場したのは、舌を出している、ペロロに似た造形の生物の死体であった。おそらく狩ってきたばかりだと推測できる。

 この生物を一言で表すとしたら、とにかくデカかった。ステージに収まりきれないほどの大きさで、推定5メートル以上あると思われた。てか、よくステージに運べたな。

 今までで見たことのない生物に観客はどよめく。だが、一番動揺していたのはヒフミであった。

 

 

「あ、あれ、ペロロ様、ペロロ様ですよね!?」

 

 

「ヒフミ、落ち着いて」

 

 

「あれが落ち着けますか!?」

 

 

 ステージに突撃しようとするヒフミを必死に抑えるサナ。だが、意外にもその力は強く、ギリギリ抑えられている状況だった。しかし、それはすぐに収束することになる。

 

 

「これは“ペロロジラ”という生物である!!最近そこら辺の山に出現した謎の生物だ!!」

 

 

 実はこの生物、ペロロとは別の存在だった。ペロロに似ているが、それは見た目だけである。

 

 この生物がここにいる経緯はセツが説明してくれた。彼女はこれでも日ノ本学園生徒会の『ネクロマンス』の首脳部メンバーである。

 

 事の発端は、山籠りをしていたマイトが魔改造爆弾の試運転をしていた時の事である。この時の彼女は、日ノ本学園の自治区外の無人島にいた。その島の山で爆弾の威力を見ようと爆弾を投げまくっていたのだ。

 もう察している読者がいるかもしれないが、その山はペロロジラの生息場所だった。山の頂上付近で寝ていたペロロジラは、彼女が投げまくっていたどれかの爆弾に直撃したのだ。しかも、その爆弾は日ノ本学園製で、通常より威力が大きい。加えて、マイトが魔改造しているのだ。ただで済むはずがなかった。

 

 結果、ペロロジラは大ダメージをくらいながら起こされた。当然、ペロロジラは怒る。寝ているところを起こされたのだから。

 しかし、マイトは『料理界の爆弾魔(ボマー)』と言われている。最初の「料理界」は謎だが、その後の「爆弾魔(ボマー)」はなんとなく想像がつく。

 

 するとどうなったか。答えは簡単。ペロロジラは、気持ちよく寝ていたところを無理矢理起こされ、爆弾の雨に殺された哀れな生物に様変わりした。爆死したペロロジラがなんとか形を保っているのは、この生物の特徴が堅く強いであるからだろう。

 

 

「“そ、それは”」

 

 

「驚いた?」

 

 

「“そうだね”」

 

 

「今回はこれでメインディッシュを作ろうと思う!!みんな、ぜひ見ていってくれよな!!」

 

 

 マイトはカッコよくそう言うと、包丁を手に持ってペロロジラの解体を開始したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドォォォォォォン!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 その最中、突如マイトのステージ上で爆発が起きた。その爆発はマイトにダメージは与えられていないが、ステージが一部破壊されていた。

 日ノ本学園の生徒はいきなりの爆発に「これもマイトの演出か?」と疑問符を浮かべるだけで、冷静だった。しかし、実態は別だった。

 

 

「あ、あれは!?」

 

 

 サナが、その爆発の元凶を見つける。その元凶とは、銀髪に赤い髪をした生徒であった。

 

 

「これが『ペロロジラ』という食材ですか?」

 

 

 そう話す彼女の背後からは、ゾロゾロと彼女の仲間と思われる生徒が出てきた。そのほとんどがゲヘナの制服を着ていて、その先頭に立つ彼女含めてそれらのメンバーは悪い方で有名だった。

 

 

()()()()()、何のようなの?」

 

 

 セツが問いかける。今彼女が言った通り、犯人は美食研究会の者たちだった。

 美食研究会は、名前から察することができるように、食に関する部活である。だが、「不味い」という理由だけでその店を爆破したり高級食材を奪取したりとやっていることはテロリスト同様だった。

 彼女らのその悪行は、日ノ本学園でも伝わっていた。特にセツは、ネクロマンス首脳部メンバーなのでよく知っている。

 

 

「ハルナ……ここになんの用?」

 

 

 セツはもう一度聞く。

 

 

「風の噂でここに貴重な珍味があると聞きまして」

 

 

「そう…」

 

 

 完全に獲物を狙っている者のセリフだ。そう、先生は思った。

 ハルナのその言葉に、ペロロジラを狙っていることを把握したセツは、不機嫌そうに懐から「アイストリック」を取り出した。

 セツは毎年違うこのイベントを楽しみにしていた。今回は去年に引き続き料理だが、一度食べたことのあるセツにとって、出された料理はもう一度食べたくなるほどのウマさだったのを彼女は覚えている。

 

 今のセツは二つの理由で彼女らと相対しようとしていた。一つは上記のこと。もう一つは旭日隊の仕事としてだ。

 

 

「さぁ、構えて、美食研究会。食い物の恨みの恐ろしさを教えてやる」

 

 

「私もやりましょう」

 

 

 サナもやる気だった。2人が構えるのを見て、流れでヒフミも構えた。

 戦闘は避けられそうになかった。

 

 

「先生、指揮をお願いできますか?」

 

 

「“任せて!”」

 

 

「待て!!私も混ぜてもらおうか!!」

 

 

「「「ギャァァァァァァァァァァ!!!!」」」

 

 

 突然、美食研究会のど真ん中で大爆発が発生した。それと同時に、ステージ上から先生たち一同に声をかける者がいた。言わずもがな、爆坂マイトである。

 

 

「あなた、何を!?」

 

 

「ただ爆弾を投げただけさ。それより、ハルナ。君も爆弾を愛さないか?」

 

 

「お断りしますわ。私は美食研究会。あくまで食を愛するのですから」

 

 

「そう。なら、調教してその身に刻み込んでやる!!」

 

 

「“さっきから何言ってるの!?”」

 

 

 「爆弾を愛せ」やら「食い物の恨みを教える」やら「調教する」やら物騒なことを言っていることにツッコむ先生。もはや状況は、私怨と任務が混じり合っているカオスな状況になってきていた。

 

 

「マイト、その話のった!!」

 

 

「のらないで!?」

 

 

 サナも思わずツッコむ。セツとマイトがコンビを組むとどうなるか分かったもんじゃない。

 

 空は晴れ模様で、周りの建物は無傷。ステージが一部損壊しているだけで、あれだけ周りにいた生徒は既に避難している。この場には、先生一同と美食研究会しかいなくなっていた。

 

 

「私の楽しみを返してもらおうか!!」

 

 

「“色々台無しだよ!!”」

 

 

 こうして、戦闘が始まるのだった。

 

 

 

 




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