皇国の幻想〜青春の物語(ブルーアーカイブ)〜   作:大和ゆか

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第十一話 トラック爆弾投げ選手権

 美食研究会との戦闘は、先生の指揮というアドバンテージもあり比較的先生一同の優勢で進んでいた。あちらこちらで銃弾が飛び回り爆炎があがる中、駐屯部隊という軍に所属するサナとネクロマンスという学園最強格の1人であるセツが中心となって暴れていた。

 

 戦闘開始直後、セツが一番に飛び出した。当然、大多数の敵の弾幕がセツに襲いかかるが、セツは怯まない。それを無視してセツは会長であるハルナに真っ直ぐ突貫する。

 

 

「よくも楽しみを邪魔してくれたね!」

 

 

「なら、あなたも一緒にやればいいじゃないですか。ともに美食を探求しましょう」

 

 

「美食に興味ないね!!」

 

 

 セツはハルナの懐に入り込みほぼゼロ距離で連射するが、ハルナは素早く後退、数発被弾しながらも華麗にかわしていく。それをセツはさらに踏み込み追撃する。

 だが、その横から他の美食研究会のメンバーが攻撃していく。それを姿勢を低くする事でかわしたセツは、姿勢を低くしたまま地面を力強く蹴って他のメンバーに接近、肉薄する。

 

 

「たあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 セツは相手の懐に飛び込んで腹部目掛けて渾身の拳を突き出す。その衝撃でふらついた相手を続く蹴りで吹き飛ばし、さらに次の相手に肉薄する。飛び蹴りを相手の顔面にかまして意識を失わせた後、周りに銃を乱射する。その銃弾も相手に正確に着弾し、外れた弾は少ししかなかった。

 

 一方、サナは先生を守りながら「アリジゴク」を構えて、的確に敵を倒していた。彼女の持つ銃は狙撃銃であるが、それでもCQCを駆使したり銃を鈍器代わりにしたりして近接で無双していた。その姿は、流石隊長だというべきだろう。

 そんな彼女は、今美食研究会の1人の鰐渕アカリと対峙していた。片方はアサルトライフル、もう片方は狙撃銃と近接での相性は最悪だ。よって、戦況はアカリの優勢になるはずであったが、サナの優勢で進んでいた。

 

 サナは持ち前の狙撃の正確さでアカリを射程外で牽制しながら周りの敵を倒していく。先生の指揮によってヒフミとセツが前線で暴れているので、心置きなく彼女の相手ができていた。

 

 

「ど、どうするの!?相手は日ノ本学園の一部隊の隊長を任されている人だよ!!どうするの、アカリ!!」

 

 

「フフ。どうするも何も、大事なのはペロロジラという食材が食べられるかどうかだけですわ!!」

 

 

 ジュンコが焦るようにアカリに言うが、アカリはペロロジラだけに目がいっていた。その他のメンバーもペロロジラのことが気になっていた。

 ペロロジラは未知の食材である。この生物はどこにも生息していないし、どこにも存在しない。故に、珍味であるという噂が広がるのは仕方ないことであり、それ目当てでこのイベントに来る者もいた。彼女ら美食研究会はそのうちの一つだろう。

 だがしかし、爆破は違う。ペロロジラを奪おうとして爆破したのだろうが、それを日ノ本学園の生徒が許すはずがなかった。

 

 

「“ヒフミはそのまま牽制!!セツは3秒後に手榴弾を10時方向に!!サナはジュンコに狙撃!」

 

 

 先生の指揮によって、一同は美食研究会を圧倒する。ヒフミはペロロを出して相手を翻弄し、サナはジュンコを狙撃しながらアカリを相手する。セツはハルナと戦いながら周りの美食研究員を巻き込むようにして戦う。

 

 

「流石先生ということですね。ならば、私たちの秘密兵器を投入しましょう」

 

 

「“秘密兵器?”」

 

 

「そうです!これが私たち、美食研究会の秘密兵器、『巨大マグロボット』ですわ!!」

 

 

 それは、巨大なマグロだった。とても大きいマグロのロボットだった。マグロに二本足が生えているキモい形状のロボットだった。

 

 

キモ

 

 

「キモい!?この美しい形状がキモいと!?」

 

 

「だってそうじゃん。マグロに二本足だよ?キモいに決まってんじゃん」ドォォォォォォン!!!

 

 

「「「…………」」」

 

 

 そのマグロは突然爆発した。何の前兆もなく、いきなり爆発した。マグロボットだったそれは、跡形もなくすべて破片と化していた。黒煙が立ちこめ、見るも無惨な姿になっている。

 爆発の衝撃で土煙が舞い上がる。アスファルトはヒビが入り、飛び散った破片は近くの美食研究会の部員に次々と当たる。

 

 

「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!やっぱり爆発は芸術だ!!!」

 

 

 その元凶、爆坂マイトは、片腕に大きいトラックを抱え美食研究会一同の方を向いていた。そのトラックは見た感じ2トントラックのようだが、中に爆薬を詰め込んだあるのか投げる度に大爆発している。

 

 

「“ト、トラックを投げてる……”」

 

 

 そのあまりの光景に先生は指揮を中断してしまう。それほどの衝撃な光景だった。にも関わらず、マイトは次々とトラックを投げ込んでいた。狂気を思わせる笑顔で、次々と投げ込んでいた。

 投げ込まれたトラックは中に入っている爆薬によって大爆発を起こす。美食研究員を多く巻き込み、意識を失う者を続出させる。

 

 

「随分派手なことをする人もいたのですね」

 

 

「“派手過ぎないかな…”」

 

 

 満面の笑みで笑い声が絶えないまま、マイトはトラックを投げ続ける。これに対して、ヒフミはある疑問を抱いた。

 

 

「あれ?そういえばそのトラックって、どこにあったものなのですか?」

 

 

「お?いい質問だ!!ペロロ少女よ!」

 

 

「そんな、私がペロロ様だなんて……」

 

 

「誰も言ってないわよ…」

 

 

 マイトにペロロ少女と言われ照れるヒフミだが、それをサナがボソッとツッコむ。その間にも、マイトは片腕どころか両腕にトラックを担ぎ、思いっきりぶん投げる。

 

 

「よくゲームとかで何もないところから出てくるシーンがあるだろ?」

 

 

「“そうだね”」

 

 

「それだ」

 

 

「“何が!?”」

 

 

 意味不明な回答に戸惑う先生。対するマイトはドヤ顔をしながらトラック投げを続行していた。たまにトラックの中からガソリンが出てきてそれに引火して美食研究員を火だるまにするが、それを気にも止めずにマイトは容赦なく投げ込む。

 

 

「さて、ペロロ少女よ。何やら理解不能な表情(かお)をしているな」

 

 

「そりゃ、そうでしょう。私にだってわからないもの」

 

 

 サナは呆れた表情をしながら、マイトに言う。マイトは頭に疑問符が浮かんでいる。

 

 

「さて、先生。お願いがあるのだが……」

 

 

「“どうしたの?戦闘指揮なら任せて!”」

 

 

 何かを思いついたかのように先生に顔を向けてそう言ったマイト。先生も、他ならぬ生徒の頼みであるためにその頼み事を聞く。

 だが今回、頼むのはマイトで聞くのは先生である。そして、マイトは爆弾魔(ボマー)と言われるほどの個性的な人物だ。そんな彼女の頼み事が普通であるか。否、そんなはずがない。

 

 彼女と先生の会話は、美食研究会と戦闘する一同にも聞こえていた。サナとセツはマイトが言おうとしていることを察して、ヒフミはマイトの言う事が気になるのか耳を傾ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君もトラックを投げないか」

 

 

「“………はい?”」

 

 

 あまりの予想外な頼みに固まる先生。目の前のマイトは、なぜか得意げな表情だった。

 

 

「フッ。君もトラックを投げないか」

 

 

「“いやいや、聞こえているから!”」

 

 

「そう?なんなら、爆弾も愛そう!!先生なら気が合うと思うんだ!」

 

 

「僕もそう思うな♪」

 

 

「あなたたち何を言ってるの!?」

 

 

「“ハハハ”」

 

 

 先生は苦笑いを浮かべるしかない。サナが何かと彼女らにツッコミをいれているが、ボケの数が多い中でそれが先生にとってありがたかった。

 

 

「よ〜し!マイト!!どっちが多く巻き込めるか勝負しよう!!もちろん、被害の責任は先生持ちで」

 

 

「“え?”」

 

 

「フッ、トラック投げのプロと呼ばれるこの私に勝負するのか?」

 

 

「もちろん♪」

 

 

 セツは上機嫌で頷くと、いつの間にか持っていた5トントラックを美食研究会に投げつけた。先程よりも大量の爆薬が詰め込んであるトラックに、美食研究員は何が起きるのか察して逃げようとする。着弾地点付近にいるハルナも同様だ。

 

 

「ポチッ♪」

 

 

 セツは笑顔で手元に持っているボタンを押す。その瞬間、5トントラックが空中で大爆発を起こした。

 地面に着弾する前での爆発。それは、爆弾を回避しようとする美食研究員の多くを巻き込んだ。最後尾にいたアカリやジュンコはもちろんのこと、ハルナや味方であるはずのマイトも巻き込んだ。

 

 

「………よし!」

 

 

「“よしじゃないよ!?味方まで巻き込んでいるんだよ!?”」

 

 

「……先生、落ち着いてください。彼女らにとって、これが普通です」

 

 

「“え?”」

 

 

 すると突然、背後から呆れたような声がかかる。慌てて振り向くと、黄色の髪をした生徒が手に電気を纏わせながら立っていた。

 先生はいつの間にかいた彼女に困惑する。さっきまでその気配はなかったはずだ。アロナも気づいていなかったのか、困惑の声をあげている。

 

 

「あれ?違いましたか?」

 

 

「“い、いや、私で合ってるよ”」

 

 

「そうですか。改めて、初めまして。八戸ミツルと申します。あのアホ2人が申し訳ありません。今からお仕置きをするので多めに見てやってください」

 

 

 そこまで言ったミツルは、手に纏っている電気の出力をあげるとマイトとセツ目掛けてその電気を放った。明らかにイナズマが迸っていることから、相当な出力だと思われる。

 その電気は、見事に2人に命中した。電気で痺れて動けないのか、その場で固まる2人。彼女らは、その状態のまま、器用にもおそるおそるといった感じで振り返る。

 

 

「何やっているの?マイトにセツ」

 

 

「ミ、ミツル……」

 

 

「こ、これはですね……」

 

 

 ミツルのことを認識した2人はしどろもどろになる。冷や汗をダラダラ流し、目が泳いでいる。

 

 

「ねぇ、マイト。トラック投げ選手権にアレの撃破も追加しない?」

 

 

「あぁ。いい案だ。のった」

 

 

「聞こえてますよ?」

 

 

「「ひぃ!」」

 

 

 2人は咄嗟にトラックを投げ込む。美食研究会に投げた時よりも速いスピードでトラックがミツルに向かっていく。

 巨大なトラックと豪速球で飛んでくるトラック。ミツルはそれを、電気の力でなんなく防いで見せた。電気の力でトラックを防ぎ、2人に向かって投げ返す。それを見た2人はさらに投げる。

 

 

「“えっと、この状況は、いったい……”」

 

 

 先生はもはや指揮どころではなかった。ただ混沌と化した戦場を投げる眺めることしかできなかった。

 ミツルが投げ返したトラックを2人はしゃがむことで避ける。避けられたトラックは、一直線に美食研究会に向かっていく。

 

 

「あっ」

 

 

 ミツルが気づいて声をあげたが時既に遅く、2トントラックと5トントラックは美食研究会のど真ん中に着弾した。地面が揺れたかと錯覚するほどの大爆発が起き、辺りに黒煙がたちのぼる。

 

 

「よっしゃ!!ミツルに続け!!」

 

 

 それを見たマイトとセツは、ミツルに続くようにトラックを投げ入れた。大爆発が連続して起き、敵味方が爆発の巻き添えにならないように逃げ惑う。

 

 

「アカリ!!この状況どうすんの!?」

 

 

「フフフ。どうするも何も、ペロロジラを手に入れるまでは引けませんわ」

 

 

 事態はもはや、食材争奪戦の様相になってきていた。美食研究員がペロロジラを狙って進み、それを先生一同が迎撃する。その手段がトラックというかなりオーバーキルになっているが、その元凶の2人は未だに笑顔で投げ続けている。

 

 

「はぁ、サナさん。先生とヒフミさんと下がっていただけますか?」

 

 

「…わかりました」

 

 

 サナはミツルの要請通り先生たちと後ろに下がる。戦闘していた美食研究会の生徒たちは、マイトとセツのトラック投げにより戦線が押し出され、ある程度の余裕ができていた。

 

 

「どうだ、マイト!!これがダブル投げだぁ!!」

 

 

「なんの!!こっちはトリプル投げだぁ!!」

 

 

「これ以上、備品を壊すな!!」

 

 

「「ダァァァァァァァァァァ!!」」

 

 

 アスファルトや味方を巻き添えにして見境なくトラックを投げ込む2人に、ミツルは物理的に雷を落とした。ミツルが指を鳴らした瞬間、空から空中に電気が迸り、彼女らに雷が落ちた。

 ミツルは周りの惨状を見てため息を漏らす。それほどまでにステージはボコボコになっており、それ以外の場所もアスファルトがボコボコ、周りの屋台は全壊しているところがあるなど見るも無惨な状態になっていた。

 

 

「仕方ありません。今日は撤退しましょう」

 

 

 突然、ハルナがそんなことを言ってきた。先生はいきなりのことで困惑するが、遠くから多くの足音が聞こえてきたことでその理由を察することができた。

 旭日隊の到着。それは、日ノ本学園の治安維持組織、ゲヘナでいう風紀委員会のような組織の人員が到着する合図であった。

 

 

「あっ!カイト!」

 

 

「“カイト!”」

 

 

「久しぶりですね、先生。シャーレの当番以来ですかね?」

 

 

 その旭日隊を率いてやってきたのは、船橋カイトであった。彼女は、その場に現れるやいなや、先生に挨拶する。その後すぐに現場に向き直り、逃走準備する美食研究会に向けて歩き出した。

 

 

「美食研究会ですね?」

 

 

「あら?あなたは?」

 

 

「日ノ本学園ネクロマンス所属、船橋カイトです。今回の件についてお話を聞かせていただきたい」

 

 

 カイトは周りをおもむろに見渡し、それに釣られてハルナは周りを見渡す。そこにら、いつの間にか美食研究会を包囲している旭日隊の姿があった。あまりにも早い展開に、先生一同も、サナを除いて驚愕していた。

 

 包囲されていることを認識したハルナは大人しく投降した。それに続けて他の部員も降伏する。

 

 

 

 

 こうして、一連の事件は幕を閉じたのだった。

 




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